企業兼大株主大同特殊鋼東証プライム:5471】「鉄鋼 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で290名であります。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は6,567百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。

(1) 特殊鋼鋼材

 主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および溶製から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,512百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

・大型アルミダイカスト(ギガキャスト)金型に適した高靭性鋼の開発

 カーボンニュートラルに向けた自動車の電動化や軽量化の動きにより、バッテリーケースや車体部品などの大型ダイカスト製品の実用化が進んでいます。大きな金型では、焼入れ熱処理時に内部の冷却速度不足により、中心部近傍の靭性が低くなり金型が割れるリスクが高くなります。そこで当社は、ギガキャスト用の金型のような、焼入れ時の冷却速度をあまり速くできない場合においても、内部靭性の低下を抑制する高靭性鋼を開発いたしました。開発鋼には従来の熱処理を必要とする金型製造工程に対応する鋼種(焼入焼戻しタイプ)と、当社にて指定硬度に熱処理済みでご提供してお客様での熱処理工程短縮に貢献する鋼種(プリハードンタイプ)があります。今後、日本および海外のお客様に提案し、金型でのトライアルを実施してまいります。

(2) 機能材料・磁性材料

 主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は3,823百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

・大型品の3D造形を可能とするプラスチック金型用ステンレス系粉末「LTXTM420」

 プラスチック射出成形金型において、サイクルタイムの短縮や成形品の品質改善を目的に、水冷孔を自由に配置できる3D造形金型が実用化されています。耐食性や耐摩耗性が要求される金型では、SUS420J2系粉末の使用が望まれますが、造形が非常に難しいという課題がありました。当社は、造形時の割れメカニズムを解明し、材料成分調整によって連続的に大型品の造形が可能なステンレス系粉末を開発いたしました。一部の3Dプリンタメーカーで造形テストを実施し、良好な結果が得られております。

・高圧水素ガス雰囲気材料試験機の導入

 近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、自動車や発電等のさまざまな分野で水素エネルギー利用に関する技術開発が進められています。水素はしばしば金属材料の特性を劣化させてしまうため、水素雰囲気に曝露される部品には水素に強い耐水素材料が必要とされ、耐水素材料を研究開発し部品に適用するには、高圧水素ガス雰囲気において、材料の各種機械特性を評価する必要があります。当社では、耐水素材料の研究開発を加速すべく、材料評価を自社で管理しながら実施するため、(公財)水素エネルギー製品研究試験センター[HyTReC(ハイトレック)]内に高圧水素ガス雰囲気材料試験機を設置いたしました。水素利用機器の普及拡大に向けて、耐水素材料のコスト低減や強度等の特性向上を引き続き進めてまいります。

・生体用低弾性率Ti合金Ti-15Mo(ASTMF2066)の量産製造実現

Ti-15Mo(ASTMF2066)は骨に近いしなやかさを持つチタン(Ti)合金です。モリブデン(Mo)は高融点の特性を有するため溶解時に溶け残りやすいという課題がありましたが、当社では特徴的な浮遊(レビテーション)溶解法であるLIF炉を活用し、ラボでの溶解挙動予測技術を組み合わせることでその課題を解決し、国内で初めて量産製造を実現いたしました。また、当社がこれまでに販売してまいりましたチタン合金とは異なり、モリブデンを多く含有するTi-15Moは材料特性が大きく異なるため同等の検査を実現することは困難でしたが、超音波を送受信するためのアレイプローブを新設計し、Ti-15Moにおいても超音波の内質検査規格であるAMS2631に準拠した超音波探傷を可能といたしました。当社星崎工場に導入しております。

(3) 自動車部品・産業機械部品

 主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,061百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

・クラウド型材料開発プラットフォーム「ICMD®」の導入

 当社はこれまでNi基合金におけるプロセスから組織の予測に取り組み、「Ni基超合金の自由鍛造ディスク製造技術に関する研究」で(一社)日本塑性加工学会の新進賞を受賞しております。さらに一歩進んでプロセスから特性までを一貫予測する先進的なモデルとして、材料開発の分野で高度な技術を有するQuesTek International LLC(以下QuesTek社)が開発したクラウド型材料開発プラットフォームであるICMD®(Integrated Computational Materials Design)を導入いたしました。ICMD®はQuesTek社がSpaceX社やマサチューセッツ工科大学などの初期評価ユーザーによる広範なテストを経て提供され、当社が世界初の導入となります。ICMD®の導入により、高性能な特殊鋼の開発期間の短縮や効率化だけでなく、生産時における品質の安定性向上への貢献が期待されます。

(4) エンジニアリング

 主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は169百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

・浸窒処理技術を開発し真空浸炭炉「ModulTherm」に浸窒機能を追加

 自動車の電動化進展に伴い、駆動系に使用されるギア部品は高強度化や低歪み化といった特性の向上が求められています。当社はこれら要求に応えるために、独自の浸窒処理技術を確立し、ギア部品の表面硬化用途に使用される真空浸炭炉「ModulTherm」に浸窒処理機能を付加して販売を開始いたしました。本機能により、強度の40%向上と歪み量の40%低減が期待できます(当社測定値)。また、当社独自のシミュレーションソフト「浸窒くん」により、お客様は容易に熱処理条件の設定が可能となります。当社は本技術を通じて自動車の電動化技術を支え、自動車産業のカーボンニュートラル実現に貢献してまいります。

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