商船三井 【東証プライム:9104】「海運業」 へ投稿
企業概要
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社が判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、商船三井グループの企業理念、グループビジョン、価値観・行動規範(MOL CHARTS)を以下の通り設定しています。
脱炭素化を始めとする環境意識の高まりや、企業として社会のサステナビリティに貢献することへの期待が高まるなか、輸送にとどまらない事業領域への拡大やそれに伴う価値観の変化を反映し、更なる成長を実現するために、社会における当社グループの存在意義、目指す姿、および価値観を確認したものです。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、2023年度にグループ経営計画「BLUE ACTION 2035」を策定し、2035年度のありたい姿(グループビジョン)の実現へ向けて取組を開始しました。
初年度は、3つの主要戦略(ポートフォリオ・環境・地域)のうち、ポートフォリオ戦略では2035年度に目指す事業ポートフォリオの実現に向け、液化ガス事業や不動産事業を中心に順調に投資を進め、安定収益型および非海運事業のアセット比率を増やしました。環境戦略では、2023年4月に更新した環境ビジョン2.2のアクションプランに沿って、2050年におけるグループ全体でのネットゼロ・エミッション達成に向けた取組を継続しています。地域戦略では、グローバルな事業推進体制への移行を目指し、専任の執行役員を各地域に配置して各地域の営業・コーポレート組織の強化を進めました。
その結果、2023年度は税金等調整前当期純利益が2,954億円となり、「BLUE ACTION 2035」のPhase 1における最終年度(2025年度)の目標として定めた2,400億円を初年度で大きく超える結果となりました。
当社グループのサステナビリティ経営は、長期的な戦略に基づき、社会課題や環境面からも受容できる、持続的な成長の実現をめざすものです。企業理念・MOL CHARTSの精神に沿って「BLUE ACTION 2035」に取り組むことで、サステナビリティ課題を解決し、さらには企業価値の向上、最終的にはグループビジョンの実現へと繋げていきます。
「BLUE ACTION 2035」では、長期的な外部環境の変化を分析し、当社グループの強みを再確認した上で、2035年のありたい姿をグループビジョンと定義しています。2035年にグループビジョンを実現するためのメインシナリオが事業ポートフォリオ変革です。2035年に向けて事業ポートフォリオ変革を推進する為、“3つの主要戦略”に加えて、その基盤整備にもあたる“サステナビリティ課題への取組”のうち最重点5項目を「BLUE ACTION 2035」の中心に据えています。
“サステナビリティ課題への取組”の詳細については第2 事業の状況 2「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
「BLUE ACTION 2035」では、2035年度をグループビジョン実現の時期とし、ゴールまでの期間を3年+5年+5年の3フェーズに分けて中間目標を設定しています。グループビジョン実現へ向けて、毎年Core KPIをモニタリングしながらアクションプランを更新していきます。
<BLUE ACTION 2035で目指す事業ポートフォリオ>
BLUE ACTION 2035で目指す姿として以下2点を設定しています。
•海運不況時でも黒字を維持できるポートフォリオへの変革
•成長投資の積上げと株主の期待に応える利回り(ROE 9~10%)の両立
これらを達成するための事業ポートフォリオとして2035年度時点で「税引前利益 4,000億円/総資産 7.5兆円」と「市況享受型:安定収益型= 40:60 のアセット比率」の目標を設定し、リバランス計画を策定しています。
海運市況と損益の相関性が高い市況享受型事業において海運好況時には高リターンを得る一方、安定収益型事業の比重をより高め、海運市況軟調時でも黒字を確保することを目指します。安定収益型事業では、海運の長期契約のみならず、海運業と市況サイクルが異なる非海運事業もさらに成長させていきます。
<BLUE ACTION 2035における主要なテーマ>
BLUE ACTION 2035では3つの主要戦略とサステナビリティ課題への取組の内最重点5項目を中心に据えていま
す。各戦略・項目の要点は以下の通りです。
(1)ポートフォリオ戦略
・事業別ROA目標を設定し、個別投資採算基準もそれに沿ったものとする。利益規模だけでなく資本効率の改善を図り、全体としてROA資本コストを上回るROAを達成すべく、高リターンを期待する市況享受型事業に継続投資する一方、相対的に低リターンながら安定収益型である事業への投資の傾斜を高める。
・IFRS(国際会計基準)の早期適用に取り組む。
・効率的なポートフォリオ変革のため、スピード感を持ってM&Aを推進する。
(2)地域戦略
・事業ポートフォリオ変革を支えるグローバルな事業推進体制へ移行する。
・地域組織主導のM&A・非海運を中心とした新規事業開発を促進する。
(3)環境戦略(サステナビリティ課題「環境」への取組)
・環境ビジョン2.2(2023年4月に更新)の下、環境への取組をリードする存在であり続ける。
・2020年代の外航ゼロ・エミッション船就航に向けた準備も進める。
・燃料需要家としての立場を活かして燃料調達・サプライチェーンに参画し海運業界におけるクリーン燃料サプ
ライチェーンの構築を後押しする。
(4)サステナビリティ課題への取組 「安全」
・安全ビジョン(2024年1月に策定)の実現に向け、2025年度までの主な取組となるアクションプラン
(Safety Vision 1.0)を策定。安全の土台を強固なものにする。
(5)サステナビリティ課題への取組 「人財」
・Human Capital(HC)ビジョン(2023年4月に策定)の下、グループ・グローバルで一元的な人財計画を推進する。
・Phase 1(2023~2025年度)の3年間を「変革期」と位置づけ、2025年度末までの目標達成へ向け、行動計画「HC ACTION 1.1」(2024年2月に更新)に沿った取組を進める。
(6)サステナビリティ課題への取組 「DX」(Digital Transformation)
・DXビジョン(2023年2月に策定)の下、全体ロードマップに加えてPhase1の3か年における行動計画「DX
ACTION 1.1」(2024年1月に更新)も策定。ビジネスとカルチャーの両面から変革を推進する。
(7)サステナビリティ課題への取組 「ガバナンス」
・グループビジョンの実現を支えるガバナンス全般の高度化を推進する。
<BLUE ACTION 2035 Phase 1の具体的なアクションプラン>
「BLUE ACTION 2035」では2035年までの期間を3年+5年+5年の3フェーズに分けて中間目標を設定しています。各事業本部の2035年に向けた方向性とPhase 1(2023~2025年度)のアクションプランは以下の通りです。
ドライバルク事業 | 2035年に向けた方向性: 貨物構成の変化に対応しつつ市況エクスポージャーを戦略的に取って、好況時には高リターンを獲得する。 |
Phase 1の具体的なアクションプラン: ・脱炭素・低炭素化社会の進展により創出される新規貨物・拡大が見込まれる既存貨 物の輸送需要取り込み(バイオ燃料、穀物、肥料、スクラップ鉄など) ・世界経済のサプライチェーン ・トレードパターンの変化に対応するグローバルな営業ネットワーク整備 ・貨物需要・トレードパターン・船腹需給の変化に適切に対応するためのインテリジ ェンス機能の強化 ・GHG排出削減に寄与する環境対応船整備の強化 ・高いリターンを実現するための市況エクスポージャー許容度の引き上げ | |
エネルギー事業 | 2035年に向けた方向性: エネルギーシフトの大きな流れに積極的に対応し、Green Transformationをリードする存在であり続ける。 |
Phase 1の具体的なアクションプラン: ≪タンカー・ケミカル船≫ ・Methanex社との提携なども活かした、船舶燃料としてのクリーンメタノールの調 達、事業機会の獲得 ・代替燃料船隊による脱炭素ソリューションの提供 ≪液化ガス船≫ ・今後の需要増を見据えLNG船の中短期契約向け船隊を整備、一定の範囲内で市況リスクテイクを進める ・LPG/アンモニア船隊の整備 ≪海洋事業・洋上風力発電≫ ・欧州中心に広がる見通しのCCUS事業(二酸化炭素回収・貯留)へ参画 ・台湾・日本での洋上風力発電への参画実績を積み上げ、周辺事業の取り込みに繋げる | |
製品輸送事業 | 2035年に向けた方向性: コンテナ船・自動車船の競争優位を磨く一方、物流への積極投資で非海運分野での成長を遂げる。 |
Phase 1の具体的なアクションプラン: ≪コンテナ船≫ ・ONE発足を通じて獲得した規模のメリットの維持・拡大 ・環境・デジタル戦略を柱とする更なる優位性の構築 ≪自動車船≫ ・環境への対応をリードし顧客の評価を高め、パートナーとして選ばれる存在となる ・増加する中国・インド発ビジネスでの優位性構築 ≪物流≫ ・宇徳・商船三井ロジスティクスをコアと位置づけ、両社を中心に成長を図る ・海外M&Aによる事業拡大 | |
ウェルビーイングライフ事業 | 2035年に向けた方向性: 不動産・フェリーに加えクルーズなどの多彩な事業群を形成し、非海運分野の柱に育てる。 |
Phase 1の具体的なアクションプラン: ≪不動産≫ ・国内:アセットタイプの拡充、再開発・街づくりに取り組む ・海外:ベトナム・豪州の事業拡大に加え、東南アジア諸国・インドへ進出 ≪フェリー≫ ・経営統合(商船三井さんふらわあ設立)のメリット最大化 ・貨物・旅客それぞれのマーケティング強化 ≪クルーズ≫ ・新規投入船「MITSUI OCEAN FUJI」のサービス開始 ・国内顧客に加え、インバウンドを中心に海外顧客の基盤を拡大する |
<BLUE ACTION 2035の定量目標(利益計画・財務計画・投資計画・株主還元策)>
(1)利益計画
利益計画については、第2 事業の状況 4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」 (7)「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。
(2)財務計画・投資計画
財務計画・投資計画については、第2 事業の状況 4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」 (7)「経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。
(3)株主還元策
株主還元策については第4 提出会社の状況 3「配当政策」をご参照ください。
<コンプライアンス上の対処すべき課題>
当社グループは、2012年以降、完成自動車車両の海上輸送に関して各国競争法違反の疑いがあるとして、米国等海外の当局による調査の対象となっております。また、本件に関連して、当社グループに対し損害賠償及び対象行為の差止め等を求める集団訴訟が英国等において提起されています。このような事態を厳粛に受け止め、当社グループでは独禁法をはじめとするコンプライアンス強化と再発防止に引き続き取り組んでまいります。
なお、当社におけるコンプライアンスに関する取組については第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (2)役員の状況 ④「業務の適正を確保するための体制の概要」に記載のとおりです。
<アドバイザリーボード>
当社は、経営戦略の更新・改善およびリスク管理の観点から優先度の高い分野について社外の有識者から意見を得ることを目的として、2024年4月から社長のもとにアドバイザリーボードを設置しています。今年度は以下5名の有識者を選任しました。
氏名 | 主な経歴 | 専門分野 |
石井 菜穂子氏 | 東京大学グローバルコモンズ担当総長特使 未来ビジョン研究センター特任教授 | サステナビリティ |
江藤 名保子氏 | 学習院大学法学部教授 | 地政学 |
上月 豊久氏 | 前・駐ロシア日本国特命全権大使 | 地政学 |
的場 大輔氏 | デジタル・ブレイン・イネーブルメント株式会社 代表取締役 | DX |
小柴 満信氏 | 前・当社社外取締役 | 技術経営 |
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