古河機械金属 【東証プライム:5715】「非鉄金属」 へ投稿
企業概要
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「鉱山開発に始まり社会基盤を支えてきた技術を進化させ、常に挑戦する気概をもって社会に必要とされる企業であり続けます。」を経営理念としています。
この経営理念を実現するために、「運・鈍・根」*の創業者精神を心に刻み、「変革・創造・共存」を行動指針として実践します。
「 変 革 」… 未来に向けた意識改革により絶えざる自己革新を行う。
「 創 造 」… 市場のニーズに対応し、信頼され、魅力あるモノづくりを目指す。
「 共 存 」… 経営の透明性を高め、環境と調和した社会の発展に貢献する。
* 創業者である古河市兵衛の経営哲学に「運・鈍・根」があります。これは、人間にとって最も大切なのは運だとしても、何か重要なことをやり遂げるには愚鈍さと根気が必要だということを意味しています。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、創業150周年を迎える2025年度に向けて、連結営業利益150億円超の常態化を目指します。
(3) 経営環境および中長期的な経営戦略
当社グループの強みは、創業以来149年に及ぶ長い歴史の中で培った経験を活かし、様々な製品・技術・サービスを提供できることです。
この強みを活かし、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめ、我が国における国土強靭化、生産年齢人口の減少など、様々な「社会課題」の解決に役立つインフラ整備、製品・技術・サービスなどを提供することで「企業価値」を創造すると同時に、「社会インフラ整備」、「安全で環境に優しい豊かな社会の実現」という「社会価値」の創造に寄与し続けていくことが、社会における当社グループの役割であると認識しています。
この意を込めた経営理念を具現化するため、2025年ビジョン「FURUKAWA Power & Passion 150」を制定しています。「2025年ビジョン」においては、「カテゴリートップ・オンリーワンを基軸として成長する企業グループの実現」をありたい姿として、連結営業利益150億円超の常態化を目指しています。
|
|
|
|
1.2025年ビジョン「FURUKAWA Power & Passion 150」 「カテゴリートップ・オンリーワンを基軸として成長する企業グループの実現」 ―創業150周年を迎える2025年度に向けて、連結営業利益150億円超の常態化を目指します―
2.2025年ビジョン達成のための方針 (1) CSV*の視点を織り込んだ「マーケティング経営」による古河ブランドの価値向上 マーケティングを経営の根幹に据え、激変する市場の中で価値を認められる製品やサービスを提供し、顧客が抱えている課題を解決することにより「企業価値の向上と持続的な成長」を成し遂げるとともに、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめ、我が国における国土強靭化、生産年齢人口の減少など、様々な「社会課題」を解決し「持続可能な社会の実現」に貢献していく。 ①顧客ニーズを捉えた技術営業力(提案型・ソリューション型)の強化 ②市場ニーズに合致した製品・技術・サービスの開発 ③強みを活かせるニッチ製品への集中と差別化戦略によるカテゴリートップ化の推進 ④新たな市場・カテゴリーの開拓・創造と新たなビジネスモデルの構築 ⑤社会基盤を支えてきた製品・技術・サービスを進化させ、「社会課題」の解決に貢献
* CSV(Creating Shared Value:共通価値/共有価値の創造):企業が社会問題や環境問題などに関わる社会課題に取り組み、社会価値と企業価値を両立させようとする経営フレームワークです。
(2) 機械事業の持続的拡大 ①インフラ関連・資源開発等を中心に拡大する海外市場における収益基盤の強化 ②ストックビジネスの拡充・強化 ③グループ総合力の発揮、エンジニアリング力の強化によるビジネスチャンスの拡大
(3) 人材基盤の拡充・強化 ①新しい古河の活力あふれる人づくり・風土づくり ②国内外の多様な人材の確保・活用・育成 ③営業・サービス人材の重点強化
(4) 企業価値向上に資する投資等の積極的推進 ①成長に必要な設備投資の積極的実施 ②戦略的なM&A、アライアンスによる事業拡大
(5) 経営基盤の整備 ①二桁台のROEを意識した収益性・資本効率の改善による企業価値の向上 ②堅固な財務基盤の確立 ③成長投資と株主還元へのバランスのとれた配分 ④当社グループのCSR/ESG課題に配慮した事業運営の実践による企業価値の向上
|
|
|
|
|
(4) 中期的な経営戦略
「2025年ビジョン」達成に向けた取り組み
当社グループは、長期経営計画である「2025年ビジョン」を3つのフェーズに区分し、各フェーズの位置づけの明確化を図り、戦略的な落とし込み、長期・中期それぞれの時間軸に対応した個別・具体的なアクションプランを策定し、運用しています。
「2025年ビジョン」達成のための重要なツールとして、毎年、期間3年で中期経営計画をローリングする方式を採用し、各フェーズが始まる際に対外公表する中期経営計画のシームレスな策定を実現しています。
(5) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
①「中期経営計画2025」の位置づけ
当社グループを取り巻く事業環境は、ひと言で言えば先が見通せない「VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代」が到来していますが、「中期経営計画2025」においては、「2025年ビジョン」第2フェーズにあたる2020~2022年度において注力した体質強化・収益力の増強を礎とした成長を実現し、「2025年ビジョン実現への総仕上げ」を行う期間と位置づけ、2025年ビジョンの更にその先を見据えた基盤固めを行っています。
②「中期経営計画2025」における経営方針・経営計画と進捗および拡充・強化した取り組み
2023年度は「中期経営計画2025」の初年度で、経営指標である営業利益は85億円、ROEは13.8%となりました。財務水準であるデット・エクイティ・レシオは0.4倍、有利子負債/EBITDA倍率は4.5倍となり、デット・エクイティ・レシオについては2025年度の財務水準イメージを前倒しで達成しました。
企業価値創造力*の向上を図るために拡充・強化した具体的な取り組みとしては、2024年2月に政策保有株式の縮減目標を設定し、2026年3月末までに連結純資産に対する保有比率を20%未満にすることを公表しました。これを更に推し進め、1年前倒しで2025年3月末までに低下させる予定です。
政策保有株式の売却資金は、「中期経営計画2025」において株主還元に関する方針として設定した自己株式の取得(3年間)の目安を30億円程度から50億円程度に増額し活用する予定です。更に、M&A等の成長投資のほか、環境投資としてカーボンニュートラルおよび環境保全に係る投資に活用する予定です。なお、カーボンニュートラルに向けたロードマップは2024年度中に策定し公表する予定です。
「中期経営計画2025」の経営方針・経営計画および進捗については、以下に記載のとおりです。
* 企業価値創造力:「ROIC-WACC」を意味する当社造語です。
a.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組みの拡充・強化
当社グループは、2017年度以降、連結および事業部門ごとに資本コストを算定するとともに、期待する企業価値創造力の確保が可能なROICをハードルレートとして設定し、事業ポートフォリオの見直しをはじめ、設備投資、出資を伴うアライアンス、M&Aの投資判断に活用する等、資本コストを意識した経営の実現に取り組んでいます。
しかしながら、市場の期待に応えられる企業価値創造力の実現ができていないため、「価値創造バロメーター」とも呼ばれるPBR(株価純資産倍率)は、2017年度以降7年連続して1倍を割っており、「PBR1倍超の早期実現」が重要な経営課題となっています。
このため、「中期経営計画2025」においては、「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」を実現すべく、企業価値創造力の向上を図るための具体的な取り組みを拡充・強化していくとともに、適切な情報開示や投資者との積極的な対話について一層の充実を図り、市場から十分な評価を得ることで「PBR1倍超の早期実現」に努めています。
なお、企業価値創造力の向上を図るために拡充・強化する具体的な取り組みの骨子は、次のとおりです。
R O E 8% 程 度 の 達 成 | 成長戦略による利益の増加 |
◆ 2025年度の連結営業利益を130億円程度に ● コア事業と位置づけている機械事業の持続的拡大を新たなステージに ● 事業ポートフォリオの見直し強化に加え、各事業部門内の事業(製品)ポートフォリオ戦略も可視化し、収益性の改善や低収益事業(製品)の見極めを推進 | |
資本効率性の改善 | |
◆ 政策保有株式*の縮減 縮減目標:2025年3月末までに連結純資産に対する比率を20%未満まで縮減(※) ※ 2023年5月12日公表時は縮減目標なし、2024年2月9日公表の「2026年3月末までに連結純資産に対する比率を20%未満まで縮減」の目標を2024年5月13日に変更 | |
自己資本のスリム化・最適化 | |
◆ 株主還元 ● 増配および中間配当を検討し、原則として1株当たり50円以上の年間配当金および連結自己資本総還元率((配当金総額+自己株式取得総額)÷連結自己資本(期首・期末平均)×100(%))3%以上を目安に ● 1事業年度における自己株式取得の目安をおおむね15-20億円、2024年3月期から2026年3月期までの3年間で50億円程度に(※) ※ 2023年5月12日公表時の「1事業年度における自己株式取得の目安をおおむね10億円程度に」の方針を2024年5月13日に変更 | |
資 本 コ ス ト の 逓 減 | 非財務リスクの逓減に資する適切な情報開示や投資者との積極的な対話 |
◆ サステナビリティへの取り組み ◆ 非財務資本への投資(研究開発、知的財産、人的資本、DX) | |
財務リスクの逓減 | |
◆ 格付戦略を核とした最適資本構成の追求 ● 「A-」以上の格付引上げとなる財務水準 ■ デット・エクイティ・レシオ:0.5倍台に ■ 有利子負債/EBITDA倍率:3倍台に |
* 政策保有株式:保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式の連結貸借対照表計上額(非上場株式を含むが、非連結子会社および関連会社に対する株式を除く。)+みなし保有株式
b.成長戦略(機械事業に経営資源を集中し、リターンを上げる。)
基本方針 |
◆ 当社グループは、CSVの視点を織り込んだ「マーケティング経営」を実践することを基本方針としており、「社会インフラ整備」と「安全で環境に優しい豊かな社会の実現」という「社会価値」の創造に寄与する戦略を事業計画の柱としました。 ◆ コア事業と位置づける機械事業は、気候変動により増加している災害に対する防災や減災などの社会課題解決に貢献するインフラ整備、働く人の安全・安心な現場、労働力不足を解決する製品・技術・サービスなどを提供していきます。 |
成長戦略を担う機械事業の事業計画 |
◆ 産業機械部門は、ポンプ、破砕機をはじめとする各種マテリアル機械や、ベルトコンベヤ、橋梁をはじめとする大規模な国内インフラプロジェクト向け製品の販売増を図ります。 ◆ ロックドリル部門は、製品ライフサイクル全域でのカスタマーサクセス*を実現する「FRDモデル」の構築、ユニック部門は、国内での安定的な収益確保に加え、海外販売での収益拡大を進めます。 ◆ 機械事業については、設備投資累計額の70%を投下し、2025年度の連結売上高において50%以上、連結営業利益において80%以上を占めることを目指し、更に将来における非連続な成長を実現するために、アライアンスやM&Aへの取り組みについても一層強化していきます。 |
* カスタマーサクセス(Customer Success):言葉のとおり、製品やサービスを通じて顧客の成功を支援する概念で、企業が自ら能動的に顧客の将来を考え、顧客が抱えている課題の掘り起こしや、製品やサービスを利用することでかなえられるプランの提案などを含む助言や支援をしていきます。
c.収益計画
基本方針 |
◆ ROE向上に向けた取り組みの強化 投資に伴うリスクおよび資本コストを勘案した採算性に留意し、個別の投資判断を行うとともに、効率性、収益性の改善への取り組みを強化していきます。 また、資本コストを活用した事業ポートフォリオマネジメントを運用することにより、経営資源配分の全体最適を追求し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現していきます。 |
2025年度の目標とする経営指標 | 2023年度実績 | |
連結営業利益 | 130億円程度 | 85億円 |
自己資本当期純利益率(ROE)(%) | 8%程度 | 13.8% |
d.資本政策
財務戦略に関する方針 |
◆ 金融情勢によらず必要な資金の調達を可能とするため、引き続き堅固な財務基盤の確立を目指していきます。 ◆ 格付戦略を核とした最適資本構成の追求 2025年ビジョンの最終年度となる2025年度には、日系格付機関による発行体格付で現行の「BBB+」から「A-」以上の格付引上げが可能となる財務水準をイメージし、今後とも継続して財務の健全性向上に努めていきます。 |
2025年度の財務水準イメージ | 2023年度実績 | |
デット・エクイティ・レシオ | 0.5倍台 | 0.4倍 |
有利子負債/EBITDA倍率 | 3倍台 | 4.5倍 |
株主還元に関する方針 |
● 配当に関する方針 持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するための投資を優先したうえで、増配および中間配当の実施を検討し、原則として1株当たり50円以上の年間配当金および連結自己資本総還元率3%以上を目安といたします。 ● 自己株式の取得・消却に関する方針 自己株式の取得・消却については、株価の動向や資本効率、キャッシュ・フロー等を勘案しつつ適宜検討していきます。 なお、1事業年度における自己株式の取得の目安は、おおむね15-20億円、2024年3月期から2026年3月期までの3年間で50億円程度(※)とします。 ※ 2023年5月12日公表時の「1事業年度における自己株式取得の目安をおおむね10億円程度に」の方針を2024年5月13日に変更 |
2025年度の財務水準イメージ | 2023年度実績 | |
連結自己資本総還元率(%) | 3%以上 | 3.1% |
年間配当 | 1株当たり50円以上 | 55円 |
自己株式の取得 | 15-20億円 | 16億円 |
株主還元に関する方針 |
● 政策保有株式については、毎年、個別の銘柄ごとに、その保有目的、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか、また同時に定性面、定量面からの総合的な判断を含め精査し、取締役会においてその保有継続の適否を検証しています。 ● 保有の必要性が認められなくなった銘柄は適宜売却を行うなど、縮減に努めています。 ● 縮減に関する進捗の指標として、政策保有株式の連結純資産に対する比率を継続的に開示しています。 |
政策保有株式の縮減目標(※) | 2023年度実績 | |
連結純資産に対する政策保有株式比率(%) | 2025年3月末 20%未満 | 2024年3月末 40.8% |
※ 2023年5月12日公表時は縮減目標なし、2024年2月9日公表の「2026年3月末までに連結純資産に対する比率を20%未満まで縮減」の目標を2024年5月13日に変更
e.サステナビリティへの取り組み
以下の基本方針にのっとり、サステナビリティ中期目標(2023年度~2025年度)を策定し、PDCA(計画、実行、評価、改善)のサイクルを展開しています。
基本方針 |
◆ 当社グループは、サステナビリティへの取り組みを経営の最重要課題の一つと位置づけ、持続可能な社会の実現に貢献していくとともに、成長に向けた経営基盤の整備および事業を通じた「社会課題」の解決により、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現していきます。 |
基本方針を具現化するための取り組み状況 |
● 「攻め」のサステナビリティ:事業を通じた社会課題の解決 CSVの視点を織り込んだ「マーケティング経営」による古河ブランドの価値向上を図っていくとともに、「社会課題」の解決に役立つインフラ整備、製品・技術・サービスなどを提供することで、「企業価値」を創造すると同時に「社会価値」の創造に寄与しています。 ● 「守り」のサステナビリティ:成長に向けた経営基盤の整備 成長に向けた経営基盤の整備のため、全社的リスクマネジメント体制を強化・拡充し、「当社グループのCSR/ESG課題に配慮した事業運営の実践による企業価値の向上」を図っています。 |
マテリアリティ(重要課題)への取り組み推進 |
|
脱炭素への対応 |
● 現行のCO2の削減計画については、各生産拠点におけるCO2削減施策を追加するなどの見直しを行います。 ● 再生可能エネルギー由来の電力利用などを織り込んだカーボンニュートラル宣言の実施とその実現に向けたロードマップの完成については、2025年度を目標としていましたが、前倒しして2024年度中の公表を目指します。 |
気候変動に関連した情報開示への対応状況 |
● TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った開示を行うために、まず、売上高の大きい金属部門およびロックドリル部門においてシナリオ分析に着手し、TCFDの提言への賛同表明を行いました。 ● 次に、他部門についても気候変動に係る情報開示の強化を推進していきます。 |
SRI・ESGインデックス構成銘柄への採用、ESGに対する外部評価の改善 |
● SRI・ESGインデックス構成銘柄への採用や外部からの評価については、当社グループのESGの進捗度を測る重要なモニタリング評価として捉えるとともに、事業活動等を通じたESGへの取り組みを一層強化しつつ、適切な情報開示や投資者との積極的な対話に努めていくことで、継続的に改善していきます。 また、FTSE Blossom Japan Sector Relative Indexより厳しい選定基準であるFTSE Blossom Japan Indexにも組み入れられるよう、開示内容の充実を図っていきます。 |
f.事業ポートフォリオの見直し
基本方針 |
◆ 7つの事業部門ごとに資本コストを算定し、3要素[X軸:企業価値創造力、Y軸:売上高年平均成長率、バブルの大きさ:企業価値創造力×投下資本額/年]をバブルチャートにプロットし、事業ポートフォリオの可視化・識別を行います。そのうえで、成長性と企業価値創造力を判断基軸とする4象限分析を行い、これまでの歴史や思い入れに過度に引きずられない合理的な経営判断を実施していきます。 ◆ 更に、各事業部門内の事業(製品)ポートフォリオ戦略についても可視化し、収益性の改善や低収益事業(製品)の見極めを推進していきます。 |
見直しの状況 |
● 金属部門において、委託製錬事業の抜本的な見直しとして、2023年3月末に小名浜製錬㈱との委託製錬契約を終了し生産規模を縮小した結果、必要銅精鉱量が減少したため、銅鉱山権益への出資についても見直し、ジブラルタル銅鉱山(カナダ)の権益の25%を保有する Cariboo Copper Corp.の株式を2024年3月に譲渡しました。 ● ロックドリル部門において、海外マーケティング力の強化・再構築を行うべく、パナマおよび中国の海外子会社については、2023年度に清算を結了しました。 ● 不動産事業において、将来の収益基盤をより一層堅固なものとすべく、古河大阪ビル跡地の将来構想を検討した結果、その共有持分の一部を2023年8月に譲渡しました。譲渡代金を原資として、当該地に建築中のホテルおよび一部住宅を用いた賃貸事業を計画しています。 |
g.経営資源の配分等
基本方針 |
◆ 持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するための以下の投資を優先し、そのうえで、安定的・継続的な株主還元を実行していきます。 ● モノづくりの強化を支える設備投資 ● 社会課題の解決に貢献する研究開発投資 ● 競争優位を確保するための知的財産への投資 ● 働きがいのある会社を実現するための人的資本への投資 ● 成長戦略と業務変革を加速化するためのDXへの投資 ● 将来における非連続な成長を実現するためのアライアンス、M&Aへの投資 ● 脱炭素・環境負荷低減やバリューチェーンにおける人権尊重などのサステナビリティへの取り組みに対する投資 ◆ 持続的な成長と中長期的な企業価値向上のための投資や株主還元の原資は、内部留保や持続的に創出するキャッシュ・フローを基本とします。なお、非連続な成長を実現するためのアライアンス、M&Aへの投資については、必要に応じ資産売却(政策保有株式の売却を含みます。)等を選択肢に加え、最適な資金調達手段を講じて充当します。 |
ア.営業キャッシュ・フローの配分
基本方針 |
◆ 堅固な財務基盤の確立を目指しつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するための設備投資を行うとともに、株主還元に配慮した営業キャッシュ・フローの配分に努めていきます。 |
連結営業キャッシュ・フロー(3年間累計額のイメージ) | 400億円 | |
配分のイメージ | 設備投資 | 200億円 |
成長投資 | 100億円 | |
維持更新 | 100億円 | |
配当 | 70億円 | |
自己株式の取得 | 30億円 | |
有利子負債の削減 | 100億円 |
イ.設備投資
基本方針 |
◆ モノづくり力の強化を支える設備投資計画 コア事業と位置づけている機械事業を中心に設備投資をしていきます。 |
設備投資(3年間累計額のイメージ) | 200億円 | |
配分のイメージ | 機械事業 | 140億円 |
素材事業 | 50億円 | |
その他 | 10億円 |
ウ.政策保有株式の売却資金の使途(2024年度以降)
政策保有株式の売却予定と生じる資金の活用(※) |
政策保有株式については、2024年度は約150億円規模の売却を予定しており、2025年3月末の連結純資産に対する保有比率を縮減目標である20%未満まで低下させる予定です。当該売却資金は、「中期経営計画2025」において株主還元に関する方針として設定した自己株式の取得(3年間)の目安を30億円程度から50億円程度に増額し、活用する予定です。更に、M&A等の成長投資のほか、環境投資としてカーボンニュートラルおよび環境保全に係る投資に活用する予定です。 |
※ 2024年度の政策保有株式売却予定額は、2024年3月末時点における売却予定株式の株価から算出したものであり、今後の株価推移等による不確実性を伴います。
エ.研究開発投資
基本方針 |
◆ 社会課題の解決に貢献する開発テーマの製品化・事業化を推進するとともにメーカーとして不可欠な生産性の向上に向けた現場力の活性化を図ります。 |
重点課題への対応状況 |
● 省人化を目指した自動化技術開発の推進 ● 全固体電池用の固体電解質の材料および量産化技術開発 ● 高効率化・軽量化等による環境負荷低減に寄与する機械製品、技術の開発 ● DXの効果的活用 ● 技術者人材育成プログラムの本格運用による次世代を担う技術者の育成強化 |
オ.知的財産への投資
基本方針 |
◆ 知財活動を重要な経営戦略の一つと捉え、競争優位を確保するために知財情報を活用する体制を整備します。 ◆ 当社グループにおける各事業会社等の技術の権利化を基本とし、知財活用を含む事業全体の価値評価を適切に行います。 |
重点課題への対応状況 |
● メーカーの競争力の源泉である技術力を目に見える形で評価できる知的財産権に関する知財活動(発掘~権利化~維持~活用)の活性化 ● 保有権利の価値評価をすることで、産業財産権の有効活用を促進 ● 特許情報を収集分析し、企業戦略を策定 |
● IPランドスケープの効果的運用
|
カ.人的資本への投資
人的資本への投資に関する基本戦略 |
◆ 社員一人ひとりが能力を最大限に発揮して新たな価値を創造することができ得る働きがいのある会社の実現 |
人材育成方針への対応状況 |
● 当社グループが事業活動を通じて社会課題を解決し持続的な成長と企業価値の向上を成し遂げるためには、様々な個性をもった人材の成長が不可欠です。そのため当社グループでは、新たな価値の創造を目指し挑戦する気概をもって自律的に行動できる多様な人材の育成に取り組んでいます。 |
社内環境整備方針への対応状況 |
● 当社グループでは、多様な人材がやりがいをもって健康を保ちながら、安全で効率的に業務を遂行できる働きやすい環境の整備に取り組んでいます。 |
キ.DXへの投資
基本方針 |
◆ 当社グループの成長戦略と業務改革を加速させ、市場のニーズに対応し、信頼され、魅力あるモノづくり、コトづくりを支えるDX推進に取り組んでいきます。 |
重点課題への対応状況 | |
● DX推進委員会(2023年4月設置)による当社グループ横断の推進体制を構築しました。 ● モノづくり、コトづくり、業務改革を3つの柱とするDXを推進しています。
|
ク.アライアンス、M&Aへの投資
基本方針 |
◆ 現有の機械事業の隙間を埋めて連続性を創るような周辺の事業会社や、機械事業における第4の柱となる事業会社を対象としたアライアンス、M&Aを検討・遂行していきます。 |
重点課題への対応状況 |
● コア事業と位置づけている機械事業については、引き続き持続的拡大を図っていくとともに、将来における非連続な成長を実現するために、アライアンスやM&Aへの取り組みを一層強化しています。 |
h.セグメント別の基本戦略、重点課題
〔機械事業〕
産業機械部門では、エンジニアリング力の更なる強化と部門横断的取り組みやDXの推進により、単なる機器メーカーからの脱却を図るとともに、SDGs、防災・減災などの社会課題の解決に寄与するインフラ整備に取り組むことで、国内市場における事業基盤を構築することを基本戦略としています。ポンプ、マテリアル機械においては、積極的な提案営業を推進しており、製品力強化による戦略機を中心に、新規顧客から受注を獲得するなど確実に成果が表れています。また、顧客情報管理をサービスの強化に活用することで、更新需要の取り込みやストックビジネスでの収益基盤を整備しています。マテリアル機械の大型プラント案件において、工事遅延等に伴い追加原価が発生した事案を踏まえ、マトリクス組織による厳格なリスク管理を実施していきます。コントラクタ事業については、リスク管理、プロジェクト管理を徹底し、受注精度・確率の向上を図るとともに、土砂搬送時の搬送効率やCO₂削減に貢献する長距離ベルトコンベヤ、環境配慮型製品である密閉式吊下げ型コンベヤ(SICON®)の需要創出と販売促進を図っていきます。
ロックドリル部門では、製品ライフサイクル全域でカスタマーサクセスを実現するビジネスモデル(FRDモデル)の構築を基本戦略としています。まずは国内において、コアコンピタンスである油圧ドリフタとその運用ノウハウ等を最大限に活用し、製品販売、部品消耗品販売、整備サービス、サポートプログラム、下取り再販の各フェーズでカスタマーサクセスを実現するビジネスモデルの構築を目指しています。サポートプログラムについては、油圧クローラドリルの稼働サポートシステムのデータを基に、顧客の生産性向上支援プログラム等の有償提供を行っています。整備サービスについては、自社整備体制を更に強化するため、2024年4月に専任部署を新設しました。
また、重点施策として「集中販売・集中生産」を掲げ、海外においては、北米では、ブラストホールドリルの大型機市場の開拓、西部地区の物流合理化およびサービス体制強化を行うため、ネバダ州に拠点を新設しました。東南アジアでは、「砕石市場創造」を掲げ、砕石市場向けに投入したアタッチメントドリルの販売展開強化により、さく岩機の油圧化を促進しており、また、下流展開(砕石プラント向け)を産業機械部門と協業して進めています。国内においては、油圧圧砕機の小割機集中販売、解体機市場向け油圧ブレーカ・油圧圧砕機の首都圏集中展開を図るとともに、砕石市場では、少子高齢化に伴うオペレーター不足という課題の解決策として、油圧クローラドリルにセミオート穿孔機能を追加し、他社との差別化による販売強化を図っています。トンネル関連製品では、全自動ドリルジャンボに続き、全自動ロックボルト施工機の市場投入を行い、掘削現場での安全性と生産性向上に資する製品を拡充しました。今後も、山岳トンネル施工現場でのICT化や無人化等の課題解決に取り組んでいきます。生産現場においては、集中生産を加速すべく合理化を推進し、コストダウン、品質強化、リードタイム短縮を図ります。
ユニック部門では、国内販売での安定的な収益確保と海外販売での収益拡大を目指し、製品の高機能化・高付加価値化、サービス体制の整備による競争力強化、海外における製品力・営業力・サービス技術力の強化を基本戦略としています。国内においては、ユニッククレーンの高機能化・高付加価値化による競争力強化に取り組んでいます。ユニッククレーンG-FORCEシリーズの吊上げ性能を向上したマイナーチェンジ機の市場投入を完了しており、ジョイスティック式ラジコン操作機、全自動油圧7段ブーム、狭小地用クレーンなど、優位性のあるユニック製品の拡販を図るとともに、近年はトラックの出荷遅れによる影響を受けたため、トラック架装に依存しないミニ・クローラクレーン、オーシャンクレーン(船舶用クレーン)の販売を拡大しています。海外においては、吊上げ荷重10トン以上の超大型クレーンや新型ミニ・クローラクレーンの導入、販売網の拡充、販売店の販売力強化、サービス力の向上により収益拡大に取り組んでいます。三極生産体制(日本、中国、タイ)におけるマザー工場である佐倉工場においては、トラックの電動化に対応するための開発体制の強化と研究開発を推進し、カーボンニュートラルに貢献する製品づくりを行っており、生産現場ではDXの推進により自動化、品質向上、業務改善を図り、コストダウン、環境負荷低減を進めます。
〔素材事業〕
金属部門では、委託製錬事業の最適化への取り組みを基本戦略としています。委託製錬事業の抜本的な見直しとして、2023年3月末に、小名浜製錬㈱との委託製錬契約を終了し、生産規模を縮小しました。これにより必要銅精鉱量が減少したため、銅鉱山権益への出資についても見直した結果、2024年3月に、ジブラルタル銅鉱山(カナダ)の権益の25%を保有するCariboo Copper Corp.の株式を譲渡しました。引き続き、採算性と安定化を追求していきます。
電子部門では、戦略製品の事業拡大による収益向上を基本戦略としています。窒化アルミセラミックスについては、熱対策部品向けや半導体製造装置用部品向けなどの需要が増加する見込みで、生産能力増強のための設備投資を実施し、増産体制を整えています。また、高熱伝導品の開発に取り組んでおり、更なる事業拡大を図っていきます。回折光学素子(DOE)については、技術的に優位性のあるレーザー加工用を端緒として拡販を図り、併せて新製品の開発を進めていきます。コイルについては、成長分野に向けた開発・拡販による収益拡大を目指します。
化成品部門では、既存製品の収益拡大と新規開発製品の育成・拡大を基本戦略としています。硫酸については、化学工業の各分野で不可欠な基礎材料として大きな需要があり、不純物が少ない高品質硫酸による差別化展開を強化しています。酸化銅については、5G関連やクラウドサーバー向けに販売が伸長することに備え、増産に向けた設備投資を実施しています。新規開発製品である金属銅粉については、品質、量産・販売体制を整え、サンプル展開から販路の拡大を図っていきます。
〔不動産事業〕
室町古河三井ビルディング(商業施設名:COREDO室町2)の安定収益確保と、保有する不動産の有効活用を基本戦略としています。2023年8月には、古河大阪ビルの跡地その他の土地の共有持分の一部を譲渡しました。譲渡代金を原資として、当該地に建築中のホテルおよび一部住宅を用いた賃貸事業を2027年度中に開始することを計画しています。
(注)文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
- 検索
- 業種別業績ランキング