双日 【東証プライム:2768】「卸売業」 へ投稿
企業概要
(1) サステナビリティ チャレンジ
当社グループにとってのサステナビリティとは、「双日グループ企業理念」に基づき、ステークホルダーと共に事業を通じた「2つの価値(双日が得る価値と社会が得る価値)」の最大化を図り、当社グループと社会の持続的な成長を目指すことです。
この「2つの価値」の最大化に向けて、当社は中長期的に取り組むべき「サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)」を定めました。このマテリアリティの策定にあたってはパリ協定や持続可能な開発目標(SDGs)などを参照し、当社グループと社会の持続的な成長のために対処すべき普遍的な課題として「人権」「環境」「資源」「地域社会」「人材」「ガバナンス」を抽出、設定しました。
このマテリアリティの中から、個別具体的な課題を特定し2050年に向けた長期ビジョンとして「脱炭素社会実現への挑戦」と「サプライチェーンを含む人権尊重」の2本柱からなる「サステナビリティ チャレンジ」を策定しました。この長期ビジョンは「中期経営計画2023」における成長戦略を策定する上での下敷きにもなっています。
当社は、このような課題への対応のため、ステークホルダーとの対話などを通じ、当社グループにとってのリスクと機会の把握に努め、脱炭素社会実現に向けた対策や人権関連方針などの各種個別方針を策定、それらを「中期経営計画2023」にも反映し、具体的なアクションにつなげています。また、当社グループは2018年8月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の最終提言に賛同し、そのフレームワークを活用して積極的な情報開示と透明性向上に努めています。
ガバナンス |
当社グループにおけるサステナビリティに関するガバナンス体制の主要な構成要素は、取締役会、経営会議、サステナビリティ委員会の3つの会議体です。また、執行役員の中から、サステナビリティ全般を管掌する担当役員が任命されています。
サステナビリティ委員会は社長(CEO)が委員長を務め、年に4回以上開催されています。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する方針や考え方の整備、サステナビリティ推進体制の構築、リスクと機会の特定・評価、指標や目標の策定、取り組み状況のモニタリングなどを行っています。サステナビリティ委員会では、サステナビリティ推進部が事務局としてサステナビリティ委員会の執行の実務を担っています。
また、サステナビリティ委員会の活動や検討・協議された方針・課題は経営会議及び取締役会に付議又は報告されています。
経営会議は社長(CEO)が議長を務め、原則毎月2回開催されています。経営会議では、サステナビリティに関する全社方針や戦略などの重要事項の審議・決裁を行うほか、サステナビリティ委員会の活動報告を受けて、必要に応じてサステナビリティ委員会に対応の指示を行っています。
取締役会はこれらのプロセスを定期的に監督し、必要に応じて対応の指示を行っています。
<サステナビリティ推進・実行体制図>
リスク管理 |
サステナビリティ推進部が、社内外の動向の把握、ステークホルダーとのコミュニケーション、外部専門家や有識者からの助言・指摘等を通じて当社グループにおけるサステナビリティに関するリスクの識別・特定・評価に関する情報を収集し、サステナビリティ委員会に報告しています。
サステナビリティ委員会は、それらの報告を受けて、検討・議論を行い、当社グループにおけるサステナビリティに関するリスクを特定・評価しています。
また、社長管下の業務執行機関である内部統制委員会が、業務遂行に伴う様々なリスクの認識、新たな事業や環境の変化により生じるリスクの検討を行い、必要な体制の整備とモニタリングを通じた改善施策の協議、担当部署への指示を行っています。
環境・社会(人権)リスクは、当社グループが認識するリスクの1つとして特定され、脱炭素、気候変動対応、サプライチェーンを含む人権問題の防止・対応についてのリスク管理運営の進捗、改善状況を内部統制委員会がモニタリングの上、その結果について四半期毎に経営会議、取締役会に報告しています。
加えて、当社グループの個別の投融資案件を審議する投融資審議会での審議過程において、サステナビリティに関するリスクの特定と評価が行われています。
以上のほか、当社では毎年、外部の有識者を招いて経営陣との間でステークホルダーダイアログを開催しており、その中でサステナビリティ関連のリスクが当社事業に与える影響について議論・確認しています。
環境・社会に関するリスクについては、第2事業の状況 3事業等のリスク (8)環境・社会(人権)リスク(53ページ)を併せてご参照ください。
① 脱炭素社会実現への挑戦
戦略 |
Scope1、Scope2の削減
当社は、CO2排出の削減は脱炭素社会実現に向けた当社グループの責務であると考えています。したがって、当社グループによるCO2排出(Scope1とScope2)の削減を加速し、来たる脱炭素社会への耐性を高めると共に、この社会移行を新たな機会と捉え、幅広い分野におけるビジネスを進めていきます。
2021年3月には、「サステナビリティ チャレンジ」を実践すべく脱炭素対応方針を策定し、Scope1とScope2の削減のための目標(後述)を設定しました。
Scope3、Scope4の計測と把握
当社は、脱炭素社会の実現のためには、当社グループのCO2排出(Scope1とScope2)削減に加えて、サプライチェーン全体のCO2排出(Scope3)までを含めた取り組みが必要であると考えています。また、Scope3の多い産業とそのサプライチェーン上の工程においては現在又は将来的に排出削減ストレスがかかる可能性が高いと考え、リスクとしてその計測と把握を行っています。
具体的には、外部専門家を起用して、当社が事業を行っている産業のサプライチェーンにおいてScope3の多い所を特定し、リスクが高い、又は高まる箇所として分析し、その結果を示したものが次のCO2分析図です。縦軸に当社グループが関わっている一般的にCO2排出が多い産業分野を、横軸にサプライチェーン上の工程を置き、当社グループにとってのリスクがある所を定性的に表しています。そして、当社グループへの影響が特に大きいと考えられる発電分野からScope3の計測による定量把握を進めています。
一方で、CO2排出(Scope3)が多い所は当社グループにとってリスクであると同時に、CO2削減貢献による新たな事業創出の機会のある所でもあると捉え、当社グループの成長に向けた取り組みを推進すると共に、その削減貢献量をScope4として定義づけ計測と把握を行っています。
リスク(Scope3) | CO2排出が多い所ほど一般的にはCO2排出削減のストレスが高まり、移行リスクとして、脱炭素に向けての規制の強化、政策の変更、市場における需給の変化、技術革新が生じ代替される脅威にさらされやすくなります。 |
機会(Scope4) | 当社グループは、脱炭素又は低炭素のエネルギー事業、省エネ事業、循環型製品・サービス事業を通じて既存・競合他社の製品・サービスに代替し、あるいは新たに創出された市場、セグメントでの優位な位置を獲得することによる収益化を目指します。 |
<サプライチェーン上のCO2分析図>
注:GHGプロトコルが規定する、Scope3の15カテゴリーを簡略化して作成しています。
カテゴリー別の詳細は、https://www.sojitz.com/jp/csr/sojitz_esg/e/data.php をご参照ください。
* Scope4の計算方法:(IEAが公表する2021年の世界火力発電原単位(745g/kWh)-当社発電原単位)×発電量
脱炭素ロードマップ
中期経営計画2023では、再生可能エネルギー事業、トランジション事業を含む「エッセンシャルインフラ」や「素材・サーキュラーエコノミー」を掲げていますが、それらの戦略の下敷きの1つとして、下記、脱炭素ロードマップがあります。「社会動向」や「必要な技術」を年代毎に想定し、当社の「リスク」と「機会」を整理しており、今後も定期的に見直していきます。
- 増加している再生可能エネルギーやサーキュラービジネスは恒常的に拡大し、将来的には余剰再エネ電力を使用したグリーン水素の活用が見込まれます。
- ただし、脱炭素社会への移行には、再生可能エネルギー普及時の不安定さを下支えするトランジション期間が必要と考えています。
- 当社は、トランジション事業として、高効率のガス火力発電や省エネサービス事業を推進することで、脱炭素社会への移行を事業機会につなげていきます。
- なお、技術動向は刻々と変わるため、随時見直しを行い、当社の対応の方向性を定期的に更新していきます。
<脱炭素ロードマップ>
シナリオ分析
● 移行リスク
外部調査、内部分析も踏まえ、「リスク」と「機会」が、当社グループの経営戦略、事業活動、財務計画に対する影響がより大きいと考えられる事業分野について順次シナリオ分析を行い財務への影響を分析しています。具体的には、CO2排出量の多いリスクのある所(<サプライチェーン上のCO2分析図>を参照)の中で当社グループが事業を行っており、特に影響が大きいと考えられる石炭権益事業と発電事業における移行リスクについてシナリオ分析を行いました。
<シナリオ分析>
リスク | リスク | 機会 |
石炭権益事業 | ・分析手法 1.5℃シナリオを前提として、2050年までの石炭需要と価格見通しを想定し、当社保有資産の財務影響を分析。
1.5℃シナリオが現実化した際には、生産コストの増加の影響で一部資産に劣化の可能性はある。 | 当社グループが分析するいずれのシナリオにおいても、再生可能エネルギーの需給増加が見込まれています。当社グループは、再生可能エネルギー事業などの脱炭素事業に加え、トランジション事業として、高効率のガス火力発電や省エネサービス事業を推進することで、脱炭素社会への移行を事業機会につなげます。
2023年3月期の主な実績 ・北海道でのバイオマス発電所の営業運転開始 ・国内の家庭用蓄電システム販売開始
|
発電事業 | ・分析手法 1.5℃シナリオを前提として、炭素価格と需給変動の影響を踏まえ、当社保有資産の財務影響を分析。
炭素価格や需給変動の影響を受ける発電所は限られており、財務影響は限定的。 |
● 物理的リスク
気候変動が抑制できず温暖化が進行した場合の物理的リスクについては、まず、海岸洪水や河岸洪水などの水に関するリスク(急性リスク)に注目して分析を行っています。具体的には、世界資源研究所(World Resources Institute)が提供する水リスクの分析ツールAqueductの評価「Extremely High」と「High」の地点に所在する事業・資産(製造・加工工場などの非オフィス)が水リスクにさらされていると考え、その2023年3月末時点の有形固定資産額(リース資産は除く)をその財務影響額として分析しました。その結果、東南アジア地域を中心に、一部の事業拠点における海岸洪水・河岸洪水の水リスクが高いことを確認し、財務影響のある資産(有形固定資産)の額は約310億円になると算定しました。
指標と目標 |
当社は、前項で説明した当社グループの気候変動における移行リスクとその機会を評価及び管理するための指標と目標を脱炭素方針として設定しています。その進捗状況を実績と共に以下のとおり示します。
<脱炭素方針と進捗状況>
<Scope1、Scope2排出量の推移(総量※)>
| 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
Scope1 (都市ガスなどの燃料使用による直接排出) | 97万t-CO2 | 71万t-CO2 | 70万t-CO2 | 73万t-CO2 |
Scope2 (購入した電気・熱の使用に伴う間接排出) | 15万t-CO2 | 21万t-CO2 | 22万t-CO2 | 21万t-CO2 |
合計 | 112万t-CO2 | 91万t-CO2 | 92万t-CO2 | 94万t-CO2 |
※2020年度以降の新規事業を含む
<Scope1、Scope2削減の進捗(既存事業)>
<権益資産推移>
なお、上記の目標は、現時点の将来見通しに基づいたものであり、社会動向や技術革新の状況の変化に応じて柔軟に見直しを行います。また、2022年度のScope1、Scope2排出量は現時点の集計値であり、第三者保証を取得した数値については当社ウェブサイト及び統合報告書にて開示いたします。
② サプライチェーンを含む人権尊重
当社グループはグローバルに様々な事業を展開していますが、その事業に関わるサプライチェーン上のどの国・地域においても人権尊重に努めるべく、人権リスクの把握及び低減を図っています。その取り組みにあたっては、「国際人権章典」及び国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」を支持し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」フレームワークに沿って人権尊重への対応を行っています。
<国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」が定める人権対応のフレームワーク>
戦略 |
方針の策定・共有
当社グループは、「国連グローバル・コンパクト」の10の原則などを踏まえて、「双日グループ人権方針」や「双日グループ サプライチェーンCSR行動指針」などの方針を策定しています。サプライヤーやグループ会社に対して、当社の方針を周知し、理解と実践を求めています。
また、サプライチェーン上の人権尊重においては、事業現場における認識と理解が重要であると考えています。そこで、当社グループ各社からの人権尊重への理解と事業現場への認識徹底を行う旨の確認書の取得や、グループ各社の経営陣とサステナビリティ推進部(サステナビリティ委員会事務局)との間での対話を通じ、方針や取り組みの周知及び現場の対応状況の確認を行い、人権尊重意識の徹底と理解の浸透を図っています。
リスク評価
当社グループはグローバルに事業を展開し、その事業の範囲は多岐に亘る上に、川上から川下までサプライチェーンに広く関わっています。そこで、リスクベースアプローチの観点より、英国NGO「ビジネスと人権リソースセンター」が保有する人権リスクの発生事例データベースをもとに、当社グループの事業の中でも特にリスクが高い事業分野を特定すると共に、サプライチェーン全体において一般的にどの位置で人権リスクが発生しやすいか、分析・確認をしています。
上記のとおり特定した高リスク事業分野に対し、当社では以下のPDCAによる確認を行う体制を構築しました。
● リスク評価のPDCA
● 現地デュー・ディリジェンス
当社は、人権リスクを調査・確認するために、個々の取引や事業において取引や事業が行われている現場でのデュー・ディリジェンスを必要に応じて行っています。例えば、当社グループは木材の調達(輸入)について、合法性の確認、環境への配慮、社会への配慮の3本柱からなる木材調達方針を定めていますが、この方針の実践として、供給元を当社自身にて訪問し、その経営陣、現地NGO、行政機関、地域住民代表との面談を含む調査を行っています。
指標と目標 |
改善・救済/実績開示
策定した方針にしたがい、リスク評価を行い、サプライチェーンを含む人権尊重の取り組みを進め、「国際人権章典」や国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」が掲げる人権尊重の実現を目指します。
2023年3月期の高リスク事業分野に対するリスク評価においては、当社グループ会社のみならずサプライチェーンにおける対応について問題がないことを確認しました。今後も、外部専門家の意見も聴取しながら、これら高リスク事業分野において、PDCAを通じた継続的な改善を進めると共に、適時・適切な開示も行います。
● 木材調達における指標と目標
当社グループは、戦略のリスク評価の項にて説明のとおり、高リスク事業分野を特定しており、その中で木材分野については木材調達方針として指標と目標を定めています。具体的には、海外から調達(輸入)する木材について原産地までのトレーサビリティと、環境・社会(人権)へ配慮した森林管理の適切性に応じて以下の4つのレベルに分けて評価し調達を行うための目標を定めています。
レベルA:認証材(※)
レベルB:トレーサビリティに加え、認証以外で環境・社会(人権)に配慮した森林管理の適切性を
検証済みの木材
レベルC:トレーサビリティが確保されている木材
レベルD:トレーサビリティの確保が不十分な木材
※ FSC(R)、PEFCなどによる認証木材
2025年度目標 | 2025年度までに、レベルAとレベルBの取扱いを100%にします。 |
<定量推移と目標>
*毎年、評価基準を厳格化しており、2020年度以降はレベルAを認証材のみとしております。2022年度の
レベルA比率は22%。レベルA+Bは2021年度94.5%→2022年度94.4%(▲0.1ポイント)となっています。
※上表における調達木材の取扱いに関する比率は、WWFジャパンの「林産物調達チェックリスト」を用いて当社が実施した評価に基づいて当社が決定したレベル毎の木材(輸入材)の[調達金額]÷[調査対象とした木材(輸入材)総調達金額]で算定しています。また各年度の調査結果は、対象先の選定・分析作業に時間を要するため2年度前のデータを使って算定しています。したがって、2022年度の調査結果は2020年度における木材調達金額をもとに算出しています。なお、2020年度より第三者保証を取得しています。
なお、当社グループの木材調達方針とその目標・実績の詳細については当社ウェブサイトをご覧ください(ただし、適宜内容を更新することがあります)。
<参考リンク>
木材分野における『サプライチェーンCSR行動指針』の実践 〜木材調達方針〜
https://www.sojitz.com/jp/csr/supply/lumber/
(2) 人材戦略に関する基本方針
2030年の目指す姿「事業や人材を創造し続ける総合商社」に向け、多様性と自律性を備えた個の成長が企業の価値創造の源泉であると考え、人材戦略の3つの柱「多様性を活かす」、「挑戦を促す」、「成長を実感できる」のもと各種施策を実行しています。「多様性を競争力に」をテーマに、社員の多様なバックグラウンドを活かし、多角的な視点からマーケットニーズを発掘すると共に、Hassojitzプロジェクトをはじめとする「挑戦」の機会を設け、所属本部外での海外トレーニーなど新たな経験を積み、「成長」を実感できるサイクルを繰り返すことで、社員の成長が当社の成長へとつながる仕組みづくりを推進しています。
<参考リンク>
人材施策特設サイト
https://www.sojitz.com/jinzai/jp/
商社にとって価値創造の中核であり最も重要な資本である「人材」の力を最大化させ、自ら変革し新たな価値を創造し続けられる「個」の集団を形成し、価値創造につなげる「人的資本経営」を次の実行体制のもとで推進しています。
ガバナンス |
人的資本経営の実行体制として、取締役会で経営視点での方針の議論を経て、重要な人事事項は、社長(CEO)が議長を務める人事審議会で審議・決裁しています。具体的な取り組みである人材KPIの進捗状況や人事施策の効果・課題などは経営会議と取締役会で定期的に議論しながら進めています。リスクの早期発見・対処のため、エンゲージメントサーベイや360度サーベイなどを活用してモニタリングする体制を整え、また、コンプライアンスホットラインや社内目安箱を設置し、現場の意見を吸い上げ、持続的な企業価値向上の推進力を高めていきます。
<人的資本経営 実行体制図>
リスク管理 |
人的資本価値の毀損「リスク」と、価値向上のための「機会」という「攻めと守り」の両面から各重要課題にアプローチすることによって、企業価値向上につなげています。また、2030年の目指す姿の体現に向け、足元の課題のみならず、将来を見据えて今着手すべき課題に対しても取り組みを開始しています。
指標と目標 |
人材KPI(動的)
当社では、人事施策の浸透度を定量的に効果測定しながら当社の人づくりを実行するため、2021年6月に以下のとおり「人材KPI」を設定しました。外部環境や人事施策の浸透状況に応じて柔軟な見直しができるよう動的KPIとし、場合によっては具体的施策の見直しなども踏まえながら、モニタリングする体制を整えています。KPIはその進捗を人事施策の取り組み状況と併せて、半期毎に経営会議及び取締役会へ上程し、経営陣と議論を重ねています。
<人材KPI(動的)と2022年度の実績>
*1 年間評価プロセスの中で設定するチャレンジ項目は、2020年度(人材KPI策定前)は任意設定者に限定されていたのに対し、2021年度からは全総合職を必須化したことによるもので、母集団は変わっています。
“双日らしい”人的資本経営を示す指標
2017年より開始したエンゲージメントサーベイ(社員意識調査)は、より当社の状況を正確に把握し、効果的な人材戦略につなげるために外部専門家の監修のもと、当社独自の設問を策定・導入しています。特に、当社における企業風土に関する回答結果からは、多様性に富むチャレンジ旺盛な社員の思いを実現できる「双日らしい」企業風土を示しています。2022年8月に実施したエンゲージメントサーベイの回答率は99%となりました(2021年回答率91%)。これらの結果は人材KPIや役員報酬の一部に組み込まれており、人的資本経営の実践に活用しています。人材と組織の実態を可視化し全社で共有、各現場組織が自らの状態を分析・改善する活動(組織改善プロジェクト)につなげることで、挑戦意欲のある人材が働きがいを感じながら挑戦し続けられる環境づくりを推進しています。
<エンゲージメントサーベイ結果(2022年8月実施)>
また、「2030年の目指す姿」の実現に向け、全社を巻き込んだ対話型プロジェクト“双日らしさの追求プロジェクト”を2023年4月より開始しました。将来と現在、会社と個人などの観点から、現状を認識、議論を通じて双日らしさ・目指す姿の輪郭を明確にし、人材の力を会社の力につなげていきます。
戦略 |
人材戦略の柱①「多様性を活かす」
当社では、人材の多様性を、変化の激しい市場環境に対応し、常に迅速に事業創造できる組織の力へと変えるため、女性、外国人、様々な経験を持つキャリア採用者など、多様な人材の採用、起用を積極的かつ継続的に行いつつ、それぞれの特性や能力を最大限活かせる職場環境の整備や管理職層の教育などの取り組みを進めてきました。これら多様な社員から、新たな着想や意見を多面的かつ効果的に取り込むことで、当社の価値創造につなげる環境づくりを目指しています。
<参考リンク>
人材施策特設サイト > 多様性を「活かす」仕組み
https://www.sojitz.com/jinzai/jp/diversity/
● 女性活躍推進
当社では、ダイバーシティマネジメントの専任組織を設け、人事部とも協調しながら、各種施策を実施しています。多様性をイノベーションの創出といった競争力につなげていくために、女性活躍推進を人材戦略の最重要テーマの1つと位置づけています。2030年代に全社員に占める女性社員比率を50%程度にすることを目指し、中長期の視点で、当たり前に女性が活躍する環境づくりを進めています。将来的に組織の意思決定に関わる女性社員を増やしていくために、各世代層のパイプライン形成と経験の蓄積、男女間における経験値のギャップ解消、女性特有のライフイベントを見越した「キャリアを止めない」施策に取り組んでいます。女性総合職の海外・国内出向経験割合をKPIとして設定するほか、女性課長職比率などについても、目標を設定しています。
<女性活躍推進目標と進捗>
- 女性総合職の新卒採用比率は2018年度以降継続して30%以上を維持
(2023年4月入社:34%)
- 女性課長職比率は、2023年度に10%以上の目標を2022年度に前倒しで達成
(2023年3月31日時点:12%)
- 女性総合職の海外・国内出向経験割合は2023年度に40%の目標を2022年度に前倒しで達成
(2023年3月31日時点:42%、2023年度はKPIを50%に上方修正)
人材KPIについては、指標と目標 人材KPI(動的)(34ページ)をご参照ください
- (ご参考)取締役8名のうち2名、監査役5名のうち2名が女性役員
(2023年3月31日時点:女性役員割合31%)
- (ご参考)専門知識や経験を備えた外部からの人材登用や内部昇格により、
女性執行役員は2名(2023年3月31日時点)
ジェンダーに関わらず仕事と育児を両立することについて、職場全体が理解・応援できる環境を整えることは、女性がライフイベントを経てもキャリアを中断することなく活躍できる企業風土醸成のために重要であると考え、人材KPIとして2023年度の育児休暇取得率100%を設定しており、2022年度に100%を達成しています(女性社員の育児休暇取得率100%の維持と男性社員の育児休暇取得率100%の達成)。ジェンダーに関わらず活躍できる職場、組織、会社を目指し、業務効率化やチームマネジメント力の強化に取り組んでいます。加えて、早期復職支援や柔軟な働き方の推進により、社員の仕事と育児の両立を支援しています。
多様な属性・価値観を持つ部下の個を活かし、組織の成果につなげるダイバーシティマネジメントの重要性を伝える施策として、全部課長向けにeラーニングでイクボス研修を実施し、「双日イクボス宣言」への賛同を確認しています。また、女性のキャリア意識醸成のためのコミュニケーションの場として、女性取締役によるキャリアトークセッションや、女性執行役員と社員の少人数の座談会、中堅女性社員向けのメンタープログラムなど、多様なキャリアや仕事観に触れる機会を複数提供しています。
<男性の育休取得状況>
※育休取得率 対象年度に出生後1年以内の子の養育を目的に育休を開始した男性社員数 ÷ 対象年度に子が生まれた男性社員数
※平均取得日数 対象年度に出生後1年以内の子の養育を目的に育休を開始した男性社員の平均取得日数(休業した所定労働日に連続
する所定休日含む)
<男性の育休取得日数の変化>
男女の賃金の差異については、第1企業の概況 5従業員の状況 (4)女性活躍推進法等に基づく「女性管理職比率」、「男性の育児休業取得率」及び「男女の賃金の差異」(11ページ)及び後述の女性活躍推進法による情報開示(補足説明)(44~46ページ)をご参照ください。
<参考リンク>
双日、なでしこ銘柄に7年連続で選定(2023年3月)
https://www.sojitz.com/jp/news/2023/03/20230322.php
女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画(2021年度~2023年度)」
https://www.sojitz.com/jp/csr/employee/pdf/kodo2021.pdf
● 中途採用者の活躍
当社では、経営人材、DXなどの専門人材、女性・外国人などの多様性を強化すべく、中途採用にも注力しています。2023年3月末時点で、管理職ポストにおける中途採用者の割合は21%、役員ポストでは35%を占めています。なお、2022年度の採用に占める中途採用者の比率は31%でした。今後も引き続き、毎年の新規採用者数の約3割を中途採用者としていく予定で、そのうち半数程度を女性とする方針です。また、2021年12月には、CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)・執行役員として専門人材(女性)を社外から迎えました(※)。これまでに他社で培った知見や女性ならではの視点などを経営や現場との対話に活かし、新規事業の創出と事業モデルの変革に繋がるデジタルの実装を加速していきます。
※2023年4月1日付でCDO兼CIOの常務執行役員に就任
<参考リンク>
統合報告書2022(61ページ)
https://www.sojitz.com/jp/ir/reports/annual/upload/ar2022j_a3.pdf
● 外国人人材の活躍
海外事業会社を起点に現地ネットワークに入り込み、事業領域の拡大や新規事業の創出につなげるため、外国人人材のCxOポストをさらに拡大し、2021年度時点で40%である海外事業会社の外国人CxO比率を、2025年度までに50%に引き上げることを目指しています。現在順調に現地化を進めており、2023年3月末時点の実績は46%となっています。また、域内での意見交換/情報共有によるマーケットイン・事業機会発掘の強化、共創と共有を推進するための海外地域における取り組みとして、海外事業会社外国人TOPで構成するアドバイザリーボードを米国で開催しました。社長の藤本も参加し、米州の事業会社のCxOと今後の成長戦略に関し積極的に議論しました。このような交流を通じ、共創・共有の実践による新たな価値創造を目指しています。
人材戦略の柱②「挑戦を促す」
デジタル化の進展やESGに対する意識の高まり、価値観・ニーズの多様化など変化が激しいこの時代に重要なことは、新たな視点でユニークな発想を見出し、発想の実現に責任と覚悟を持つことと考えております。とことんやり抜く探求心と自立心を持った社員の挑戦を促しています。未来の飛躍に向けた成長を続けるために、既存のビジネスや固定観念の枠を超えて価値創造できる人材の育成に取り組んでいきます。目指す姿の実現のためには、文化や意識・考え方の変革が必要です。人と人とが徹底的に向き合い、対話を通じて個人の成果を引き出し、会社の成長につなげます。当社が考える「挑戦」は、現状に満足せず周りの共感を得ながら、変革を通じて企業価値・生産性を高める自律的な行動です。
<参考リンク>
人材施策特設サイト > 挑戦を「促す」仕組み >
https://www.sojitz.com/jinzai/jp/challenge/
● 発想×双日 プロジェクト (通称:Hassojitz プロジェクト)
当社における「さらなる成長」を考え、未来構想力や戦略的思考を定着させるべく、2019年に新規事業創出プロジェクト「発想×双日プロジェクト」を開始しました。2020年度のチームであるeスポーツや早生樹の案件は会社を設立するなど、事業化を進めています。開始から4年目となる2022年度は「情熱×覚悟」をテーマに、有識者やアルムナイへのピッチとディスカッションを行い、発想を起点とした事業創出を加速させました。また、社会課題を解決する事業アイデアとそれに取り組む社会起業家を育成するインキュベーター企業である株式会社フェニクシーが提供するインキュベーションプログラムに、2021年度よりメンバーを派遣するなど、異業種交流を通じた事業アイデアの精緻、高度化、共創による発想・イノベーションの加速を促し、起業家精神の醸成と自律的に事業を創造できる人材の育成を促進しています。
● 双日アルムナイ
退職後も経済・社会活動を続けるOB/OGと当社役職員との人的ネットワークの形成・拡大により、ビジネス領域の拡大を促進するプラットフォームとして活用すると共に、緩やかな当社グループの形成を通じ、現状の事業領域に捉われない新たな事業機会の創出やオープンイノベーションを促進していきます。Hassojitzプロジェクト最終発表会の審査委員に双日アルムナイ幹部を招き、社外で培った知見を基にしたフィードバックやアドバイスを得て、イノベーションの質を高めています。2022年は双日アルムナイ設立1周年を迎えました。今後も、定期的に双日アルムナイの会員(当社現役職員と退職者)が関わる機会を持ち、外部の知見とネットワークを活かして事業創出につなげていきます。
● 独立・起業支援制度
独立・起業を企図する社員のために当社のリソース(資金・情報・ネットワーク)を提供し、事業推進を支援します。なお、前述のHassojitzプロジェクトを通じて発案されたアイデアも、この制度を適用して事業化・独立・起業することが可能となります。「事業や人材を創造し続ける総合商社」として、当社は独立・起業を目指す個人を含めた全社員の望むキャリアパスを支援すると共に、起業家精神を持ち積極的に挑戦し続ける人材の確保・育成、企業文化の変革を目指します。
● 双日プロフェッショナルシェア株式会社
これからの時代を見据え、年功序列や終身雇用という概念に捉われず、多様な価値観やキャリア志向を持つ全ての社員が、高いモチベーションを維持し、働き続ける環境を整えています。35歳以上の社員の多様なキャリア・ライフプランを支援するプラットフォームで、「70歳定年」「就業時間・場所の制限なし」「副業・起業」を可能とし、社員一人ひとりが新たなキャリアパスで活躍し続けられるよう支援します。当社勤務のほか、社外で大学非常勤講師や、地方中小企業のコンサルタントとして事業をサポートするなど、これまでの知見を活かし、活躍・貢献の場を拡大しています。
● デジタル人材育成
デジタル人材については、第2事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)DXの取り組み(48ページ)をご参照ください。
人材戦略の柱③ 「成長を実感できる」
失敗を許容する風通しの良い風土の中で、社員が積極的に「挑戦」することで、「成長」を実感し、社員一人ひとりの「多様性」が育まれていく好循環が生まれています。当社では、社員自らが成長・貢献を実感できることが重要な報酬の1つと考え、社員と会社が選び合い、高め合う環境をこれからも築いていきます。
<参考リンク>
人材施策特設サイト > 成長を「実感できる」仕組み
https://www.sojitz.com/jinzai/jp/growth/
● 指導員制度、メンター制度
当社では、新入社員を「現場が育てる」施策として、指導員制度とメンター制度を設けております。指導員は、新入社員と同じ部署の先輩社員が務め、1年間のOJTを通じて、所属部署での業務知識や社会人としての基礎知識を指導します。メンターは、新入社員とは異なる部署のベテラン社員が担当し、業務から離れた視点で、新入社員の視野を広げ、キャリアプラン形成のサポートとなるようメンタリングを行います。
● 海外トレーニー制度
当社では、400社を超えるグループ会社を通じて多様なビジネスを展開しており、それぞれの事業会社の経営を担う人材の育成は重要な課題です。経営人材の育成・確保のため、海外トレーニー制度、MBAプログラムへの派遣制度、語学自己研鑽制度など、様々な研修を行っています。特にユニークな取り組みとして、現所属組織とは異なるミッションを持つ本部外トレーニー制度があります。例えば、コーポレート(職能)出身の人材が事業会社で営業を経験、また化学本部のトレーディング業務を担当していた人材が航空産業・交通プロジェクト本部主管の事業会社でM&A後の統合効果を最大化させるべく、経営・業務・意識統合に向けた取り組みに携わるという形で、これまでと異なる経験を積みます。
今までと異なる経験を通じて、社員が多角的な視野を身に付け、知識や人脈に加えそれぞれの幅出しのきっかけとなる成長の機会となっています。2022年度は26ヶ国に海外トレーニーを派遣(うち31%が女性社員)、日本とは異なる現場を早期に経験し、さらなる成長に繋げグローバルで活躍出来る人材の育成を目指しています。
● 研修プログラム
当社では、自ら考え、行動し、やり抜くことで、世界を舞台に「価値を創造することのできる人材」を育成すべく、各種研修を実施しています。全ての世代・階層に提供するデジタル人材育成プログラムなどのコンテンツのほか、新入社員向けや管理職向けの研修、役員向けの研修など、それぞれの世代・階層に合わせた様々な研修コンテンツを提供し個の成長をチーム・組織の成長へつなげていく取り組みをしています。さらに、次世代リーダー育成を目的に、選抜研修に注力することで、組織のレジリエンス力の向上、豊富な人材プール・サクセッションプラン構築による計画的な後継者育成を推進しています。経営人材としての素養の醸成、高度な経営スキルの獲得、他社経営人材とのネットワーキングなどを目的に、専門家によるコーチングも実施し、さらに各種異業種交流型研修にも人材を派遣しています。
<研修プログラム>
● ジョブローテーション制度、社内公募制度
当社では、管理職登用までに2つ以上の異なる業務(出向や海外駐在を含む)を経験して多様な専門知識とスキルを身に付けるジョブローテーション制度や自らが思い描くキャリアを切り拓く機会としての社内公募制度など、社員の育成促進とキャリアの幅を広げる制度を導入しています。当社は、社員とキャリアプランを共有するために定期的に面談を実施するほか、異動して約半年後のタイミングでアンケートを行うなど、社員のモチベーションをモニタリングできる体制を整え、必要に応じて面談を実施しています。また、2020年度からは昇格要件として求める経験年数を短縮し、経験を積むスピードを早めています。
● 多様な人材の活躍を支える制度・取り組み
当社グループの成長は社員と共にあると考え、多様な価値観やキャリア志向を持つ全ての双日パーソンが、挑戦・成長を積み重ねることで、高いモチベーションを維持しながら自律的に働き続けられる環境を整えていきます。
・ 健康経営
当社グループにとって最大の財産である社員一人ひとりとその家族が心身共に健康であり、社員が働きやすさと働きがいを持てる健全な職場環境づくりは、会社の重要な責任の1つと考えています。社員が仕事に対する高い意欲を持ち、最大限の力を発揮することが組織力向上につながり、当社が掲げる「新たな価値と豊かな未来の創造」を実現するという考えに基づき、健康維持・増進に関する『双日グループ健康憲章 "Sojitz Healthy Value"』を策定しました(2018年3月)。疾病の未然予防・健康増進に加え、仕事と治療の両立を図るべく、健康推進担当の組織体制を強化し、各健康関連施策を実施すると共に、定期健康診断の一次受診率100%を継続しながら、早期発見・疾病予防を高めることを目指し、二次健診受診率を人材KPIとして定め、2023年3月末時点では67%まで向上しています。また、2022年度には健康経営で解決したい経営課題と、それを解決するための手段の可視化をすべく、健康戦略マップを策定しました。これらの取り組みが評価され、「健康経営優良法人(ホワイト500)」に4度目の認定を受けています。
<参考リンク>
健康戦略マップ
https://www.sojitz.com/jp/csr/employee/pdf/strategymap.pdf
2022年4月からは、女性活躍推進の取り組みを健康面でも後押ししています。子宮頸がん・乳がん検診の対象を全年齢に拡大し、思わぬ疾病によりキャリアが長期に亘り中断されることを防ぎます。月経や更年期症状などによる影響を低減し、日頃から心身共に健康で安定的に力が発揮できるよう、社内に気軽に相談ができる婦人科嘱託医を配置、不妊治療に関わる相談窓口も設けています。また、外部企業と契約し、医師や専門家から女性の健康に関するオンラインセミナーを定期的に行うことで社員のリテラシーを高めると共に、不妊治療を含む各種検査費用の割引クーポンの提供を行います。今後も、女性社員のキャリアとライフを支援する取り組みを整えていきながら、全社員が心身健康な状態を維持し活躍し続けられる環境を整備していきます。
また、がん対策としては、40歳以上の社員に対し3年に1回、通常の健診項目に加え、胃カメラ、大腸内視鏡、胸部CT、腫瘍マーカーなどを実施し、がんの早期発見・治療に努めてきました。2022年10月からは、がんの早期発見の機会をより増やすべく「N-NOSE®」(*)の社員とその家族への紹介を開始いたしました。がんの早期発見の機会の提供による、社員とその家族の心身の健康の維持を目指します。
* 株式会社HIROTSUバイオサイエンスが開発・提供するN-NOSE®は、嗅覚に優れた線虫という生物が人の尿内に含まれる
がんの匂いを検知することを利用した、がんの一次スクリーニング検査キット
<多様な人材の活躍を支える主な制度・取り組み一覧>
● その他施策
当社は、2023年2月に、従業員持株会の会員である社員に対して、特別報酬として1人当たり100株を付与することを決定しました。現時点において当社従業員の持株会加入率は90%程度となり、この施策を通じて、社員に持続的な企業価値向上に向けた意識を醸成することを企図しています。
女性活躍推進法による情報開示(補足説明)
● 当社(提出会社)における男女の賃金の差異の状況について
当社の正社員は総合職と事務職で構成されています。総合職は基幹業務において主体的に役割を担い、事務職は総合職を補佐し事務処理業務全般を担う職種です。また、非正社員は主に定年再雇用社員です。
当社では、それぞれの職種毎に役割等級制度を採用し、年齢や性別を問わず、本人の資質や能力、取り組み意欲に応じて役割が決定されています。職務の内容や異動の範囲などが同じ役割等級では性別の違いによる賃金の差はありません。(時間外勤務などの変動要因によるものを除く)
<年間平均賃金(職位別)>
・ 「全従業員」、「正社員」、「非正社員」の雇用管理区分による男女の賃金の差異
女性活躍推進法に基づく「全従業員」、「正社員」、「非正社員」の雇用管理区分(以下「女性活躍推進法に基づく雇用管理区分」)で算出した場合の男女の賃金の差異は以下のとおりです。
<男女の年間平均賃金の差異(男性社員の年間平均賃金に対する女性社員の年間平均賃金の割合)>
全従業員 | 正社員 |
|
| 非正社員 |
総合職 | 事務職 | |||
57.3% | 58.0% | 70.1% | - | 52.0% |
<人員数(2023年3月31日現在)>
(人) | 全従業員 | 正社員 |
|
| 非正社員 |
総合職 | 事務職 | ||||
男性 | 1,754 | 1,643 | 1,643 | - | 111 |
女性 | 769 | 707 | 335 | 372 | 62 |
計 | 2,523 | 2,350 | 1,978 | 372 | 173 |
・ 女性活躍推進法に基づく雇用管理区分で発生している男女の賃金の差異の理由と当社の考え方について
女性活躍推進法に基づく雇用管理区分においては男女の賃金の差異が発生していますが、その要因として、当社では総合職において管理職層で女性社員の割合が少なくなっていることが挙げられます。現在、人材戦略の重要施策として、女性活躍推進に取り組んでいます。2030年代に全社員に占める女性社員比を50%程度にすることを目指し、新卒及び中途採用における女性総合職社員の採用増加に加えて、仕事と育児の両立環境の整備、各世代層のパイプライン形成と経験の蓄積やキャリア意識の醸成を積極的に進めています。今後は管理職層の女性社員増加により、この要因による男女の賃金の差異は縮小していくと考えています。
各世代層のパイプライン形成については、●女性活躍推進(36~37ページ)をご参照ください。
また、総合職とは役割が異なる事務職において全員が女性社員(2023年3月31日時点)となっていることも、男女の賃金の差異の要因です。当社は事務職を多様な働き方の1つの形態と位置づけ、今後も採用を継続していく方針です。事務職は、性別に関わりなく選択可能な職種ですが、新卒採用・中途採用共、応募者は女性となっていることから、今後も男女の賃金の差異への影響は発生すると考えています。一方、当社では、総合職と事務職との間で相互に職種転換を可能とする制度を設けており、男女共に入社後に社員個人のキャリア・働き方に応じた職種転換が可能となっています。
非正社員は、主に定年再雇用制度に基づき、定年退職後(60歳定年制)に有期雇用社員として継続雇用された社員です。定年再雇用者に対する賃金は、定年時に担っていた職種と職種毎の役割等級に準じて決定されますが、女性の再雇用社員の多くが事務職からの雇用継続となっていることから賃金の差異が発生しており、全従業員の男女の賃金の差異にも影響しています。
<職種別の人員状況>
・ 総合職における男女の賃金の差異について
当社は、2016年度に公表した女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画において、2021年度までに新卒女性総合職の採用比率を30%以上に引き上げる目標を設定しました。2018年度にその比率は目標の30%を超え、以降も30%以上を維持しています。
現在、主任級までの各職位に亘って30%程度を女性総合職が占める人員構成となっています。一方で、採用増加前の世代となる係長級以上の上級職をみると、各職位に在籍する女性総合職の比率が大きく落ち込みます。総合職の職位別年間平均賃金をみると、職位毎に一定のバランスで女性総合職社員の分布が広がっている下級職では、男女の賃金の差異は100%に近いものの、上級職になるにつれて漸減し、部長級を含めた累計(総合職全体)で、70.1%という数値となっています。当社では、前述のとおり、経営戦略として女性総合職社員の採用増加(新卒及び中途)と仕事と育児の両立環境の整備、各世代層のパイプライン形成と経験の蓄積やキャリア意識醸成を積極的に進めています。今後、女性管理職の割合が増えるにつれ、総合職の全職位に亘って男女の賃金差異が縮小していくと考えています。
<総合職の職位別人員数(累計)>
<総合職の職位別年間平均賃金(累計)>
(3) DXの取り組みについて
ガバナンス体制の強化
当社は、「事業や人材を創造し続ける総合商社」への変革に向けて、社長が自ら指揮を執り、全社員がデジタルを共通言語として理解・活用し、事業ポートフォリオの変革に取り組み、DXの実装とデジタル人材の育成により、事業価値の向上を目指します。
当社は、既存事業におけるデータの活用やテクノロジーの実装を加速し、付加価値の向上、新しい価値の創造を実現します。社長自らがDX推進委員会の委員長を務め、営業本部長・コーポレート担当本部長と共に事業へのデジタルの活用のための活発な議論を交わし、迅速な意思決定を行う体制を整えています。また、組織体制としては、2023年4月1日付で「CDO室」、「IT業務部」、「ERP刷新推進室」の3部を統合・再編しデジタル推進第一部と第二部を新設しました。これにより、デジタルテクノロジーに関する機能・人材を集約させ、ビジネスへのDX推進・デジタル人材育成に加え、ERP刷新・その他ITシステム維持・刷新に関するスピード・品質向上、機動的な人材配置の実践を図ります。加えて、情報セキュリティの最高責任者であるCISOを設置することで、DX実装の加速化とデータ活用の加速に向けたセキュリティの強化を両輪で推進し、新規・既存事業双方のデジタル化を推進しています。
こうしたDXを実践するための体制づくりと、経営戦略・事業戦略に紐づいた実践によりデジタルが業務に浸透している点が評価され、当社は、経済産業省が東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構と共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄2023」に選定されました。
<参考リンク>
「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄2023」選定
https://www.sojitz.com/jp/news/2023/05/20230531.php
システム・情報セキュリティに関するリスクについては、第2事業の状況 3事業等のリスク (11)システム・情報セキュリティリスク(54ページ)をご参照ください。
デジタル人材の育成・補強
当社は、DXを事業の変革・競争力強化の手段とし、事業モデル、業務プロセスの改革とさらなる価値創造に貢献していきます。社内外のデータやデジタル技術を利活用することでビジネスモデルや業務プロセスの変革を実践できる人材を「デジタル人材」と定義し、その育成に注力しています。多くの社員がデータやデジタル技術を活用しながら、日々の業務を行うため、デジタル人材育成計画を策定致しました。入門レベル、基礎レベル、応用レベル、更に応用レベルの中に応用基礎、エキスパート、ソートリーダーに分類しています。攻め(DX)と守り(情報セキュリティ)の両輪を意識した基礎レベルコンテンツと共に、応用レベルについても2022年夏に開講致しました。
さらに2022年から業務効率化を加速させるべく各現場の業務担当者が自身で業務アプリ開発を行うこと(市民開発)を目的としたローコードツールの社内の認定開発者の育成を開始しました。
・入門レベルのITパスポート試験は総合職の92%、事務職の63%が資格を取得
(2023年3月31日時点)
・基礎レベル修了者は1,380名、修了者率は70%(2023年3月31日時点)
・応用レベル(応用基礎編)修了者は159名、進捗率は53%(2023年3月31日時点)
・応用レベル(エキスパート)修了者は13名、進捗率は33%(2023年3月31日時点)
・社内の認定開発者は100名(2023年3月31日時点)
※海外勤務者は対象外
サステナビリティ全般に関する取り組みはSojitz ESG Bookも併せてご参照ください。
<参考リンク>
Sojitz ESG Book
https://www.sojitz.com/jp/csr/sojitz_esg/
※将来情報に関するご注意
本資料に掲載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、業績を確約するものではありません。実際の業績等は、内外主要市場の経済状況や為替相場の変動など様々な要因により大きく異なる可能性があります。重要な変更事象等が発生した場合は、適時開示等にてお知らせします。
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