共栄セキュリティーサービス 【東証スタンダード:7058】「サービス業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
日本経済は、国際情勢の不安定化、人手不足による経済活動への制約の強まりなど、不確実性は一層高まっております。
警備業界は、社会活動を維持するために必要不可欠なサービスであることから、引き続き底堅い社会的ニーズが見込まれております。一方で、少子高齢化が進展し就業者数が頭打ちとなることに加え、働き方改革関連法の適用開始による2024年問題への対応などから一人当たり労働時間も抑制傾向が続いており、人手不足は事業活動の制約となるほど深刻化しております。また、人材獲得競争の激化から賃金上昇が続くものの、警備業界の労働分配率はすでに高く、物価高の中での持続的な賃上げには限界もあるなど、警備業界をとりまく環境は大きく変化しております。
このような経営環境の下、当社グループは、長期的な事業の成長に向けて、売上及び利益拡大に取り組んでおります。
経営方針、経営戦略
(1) 長期視点での経営方針
当社グループは、施設警備、交通誘導警備、イベント警備、ボディーガードなどの人的警備、また、人材派遣、マンション管理人派遣などの周辺領域にわたり、幅広く人的サービスの事業を展開しております。当社グループは、これらの事業が人の力に依存したものである一方で、人の力でのみ創出することができるバリューがあると考えており、引き続き人的サービスに注力してまいります。一方で、競合他社との価格競争による料金低下圧力や深刻な人手不足は業界レベルの課題であり、この難局を規模の強さで乗り越えていくため、長期視点での経営方針として「売上高800億円、社員数2万人」を目指し、規模拡大に取り組んでおります。
(2) 事業戦略
当社グループは、引き続き出資・買収、常駐契約増加、また2025年大阪・関西万博の警備の準備に取り組んでまいります。
① 出資・買収
国内の警備市場は3兆5,250億円(警察庁「令和4年における警備業の概況」)となっております。このうち機械警備業の推定市場は6,617億円(公益社団法人日本防犯設備協会「2022年版 統計調査報告書」)となっており、差額の2兆8千億円超が当社グループの活動する人的警備などの市場規模と考えられます。
また、警備市場全体の成長率は、2015年~2022年の8年間で5%成長(警察庁「警備業の概況」)している一方で、警備業界における売上高上位100社は、およそ4倍となる20%成長(警備保障タイムズ「警備業売上高ランキング」)しており、大手・準大手の警備会社などの規模の強さが競争優位性となっている状況であります。また、国内の警備業者は中小企業を中心に1万社超ある環境下で、事業承継問題が顕在化していることから業界再編が活発化している傾向がみられ、売却案件数も増加傾向であります。
このような環境下、当社グループは、M&Aを成長戦略の中核と位置付けております。
・ 引き続き、警備会社や周辺領域(ビルメンテナンス等)に対する出資・買収などを継続的に実施してまいります。
・ 47都道府県のプラットフォームを構築することを目指しており、前述の市場シェアの拡大によって、人員数とエリア補完体制を拡大・強化してまいります。
・ 規模の強さによる料金改定、スケールメリットによる利益創出を実現し、ステークホルダーである従業員と株主の皆様への利益還元につなげてまいります。
なお、当連結会計年度に実施したM&Aは次のとおりであります。
・ 2023年10月2日、東神産業㈱を完全子会社化
東神産業㈱は、神奈川県に本社を構え、交通誘導警備、及び人材派遣等の事業を展開しております。
・ 2023年10月26日、㈱セキュリティを完全子会社化
㈱セキュリティは、埼玉県に本社を構え、施設警備や交通誘導警備の事業を展開しております。
・ 2023年10月26日、㈲セキュリティ・ライセンス・KOBを完全子会社化
㈲セキュリティ・ライセンス・KOBは、埼玉県に本社を構え、施設警備や交通誘導警備の事業を展開しておりました。2024年4月1日、㈱セキュリティが同社の権利義務全部を承継し、同社は解散いたしました。
・ 2023年12月21日、東邦警備保障㈱(千葉県)を完全子会社化
東邦警備保障㈱は、千葉県に本社を構え、施設警備や交通誘導警備の事業を展開しております。
・ 2024年3月11日、㈱セキュリティにより東邦警備保障㈱(埼玉県)を完全子会社化
東邦警備保障㈱は、埼玉県に本社を構え、施設警備や交通誘導警備の事業を展開しております。
② 常駐契約増加
常駐契約増加については、新規案件の受注に取り組んでまいります。当社グループは、ユーザーエンゲージメントの向上のため、警備品質をともなった上で、重要防護施設、中央省庁、物流施設、データセンターといったランドマークかつ業界屈指の警備実績の積み上げに取り組んでおります。また、これらの警備実績は従業員にとっての体験価値となり、"One Person, 10 License"をキーワードとする警備・消防関係の資格取得と相まって従業員エンゲージメントの強化につながり、採用効率及び定着率の向上として収益貢献すると考えており、引き続き取り組んでまいります。
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、長期視点での経営方針として、「売上高800億円、社員数2万人」を目指しており、売上成長と利益拡大に取り組んでおります。売上成長の経営指標として「売上高」及び「警備員等の人員数」、利益拡大の経営指標として「営業利益率」を主要なKPIと位置づけております。
経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題
コロナ禍前である2019年以前の国内警備市場5年間(2015年~2019年)のCAGR(年平均成長率)は1.45%であり、市場規模は緩やかに拡大してきました。また、コロナ禍の成長率は2020年が2.25%減少、2021年が0.57%減少にとどまっており、2022年は2.06%の増加に転じております。このように、警備業に対する社会的ニーズは底堅く推移していることがうかがえます。一方で、警備料金が上がらない、募集しても人が集まらない、実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済本格化といった経営課題によって、警備業界の見通しは不透明性が増しております。
<競合他社との競争にともなう価格低下圧力の高まり>
国内の警備業者は中小企業を中心に約1万社あり、競合他社との競争にともなう価格低下圧力の高まりに直面しております。当社グループは、競争優位性を失わないための取り組みにチャレンジしてまいります。
・ 採用強化及びM&Aに取り組み、あらゆる規模の警備も実施可能とする動員力の実現
・ セコム株式会社との資本業務提携を背景とした営業力強化、及びサービス品質強化
・ "One Person, 10 License"をキーワードとする警備・消防関係の資格取得によるサービス付加価値向上
<人手不足を背景とした労務費や採用コストの上昇>
2024年4月30日に厚生労働省が発表した2024年3月の保安職業従事者の有効求人倍率は6.33倍と採用環境は大変厳しく、深刻な人手不足が続いております。当社グループは、前述の資格取得による技術的・職業的スキルの開発を通じ、社員のキャリア形成を後押しすることによって社員エンゲージメントを高め、採用力の強化と離職率の低下を図り、人手不足を克服してまいります。また、適正な料金設定につとめ、人件費の上昇に対応してまいります。
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