八十二銀行 【東証プライム:8359】「銀行業」 へ投稿
企業概要
当行グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものであります。
当行は、地域社会の持続的な発展に貢献するべく、「中期経営ビジョン2021」において、サステナビリティを「経営の根幹」に位置付けています。また、当行が目指すサステナビリティの姿を「サステナビリティの基本的な考え方」としてまとめ、ホームページで開示しております。これからも地域に必要とされる銀行であり続けるために、「環境経営」で培った力を「サステナブル経営」でも発揮し、あらゆる社会的課題を解決できる総合金融グループへと成長してまいります。
2020年、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の最終報告書(TCFD提言)に賛同し、提言に則した開示に取り組んでいます。今後もお客さまとのエンゲージメントを通してサステナビリティに積極的に取り組んでまいります。
(1)ガバナンス
当行は、経営会議の特定目的会議として原則として半期に1回開催される「サステナビリティ会議」を設置し、サステナビリティ全般および全般的調整を必要とする事項について、協議・決定しております。
また、企画部担当役員を委員長、本部部長を委員として随時開催される「サステナビリティ委員会」では、当行のSDGsやESGに関する取組みについて協議し、重要な事項についてはサステナビリティ会議や取締役会に報告しております。
サステナビリティ委員会委員の所属部の担当者および委員会が必要と認める部署の担当者で構成される「サステナビリティ作業部会」は、随時開催し、横断的な情報交換や課題共有により本部各部の連携を強化し、より実効性のある施策を検討したうえで、サステナビリティ委員会に意見具申する役割を担っております。
(2)戦略
当行は、お客さまニーズや社会環境の変化にあわせてビジネスモデルを変革していく姿として、中期経営ビジョン2021「『金融×非金融×リレーション』でお客さまと地域を支援する」を策定しました。5つのテーマ「経営の根幹としてのサステナビリティ」「ライフサポートビジネスの深化」「総合金融サービス・機能の提供」「業務・組織のデジタル改革」「成長とやりがいを支える人事改革」の実現を目指すとともに、経営理念で掲げる地域社会の発展に貢献するため、幅広い活動を展開してまいりました。
ア.気候変動への取組
(ア)リスク
当行は、気候関連リスクとして、脱炭素社会への移行過程において、気候関連の政策強化等の影響を受けるお客さまに対する信用リスクが増加する可能性の移行リスクと、気候変動に起因する自然災害によって、お客さまの事業停滞に伴う業績悪化や担保価値の毀損等により信用リスクが増加する可能性の物理的リスクの2つを認識しております。2021年度は、以下のシナリオ分析を行い、与信コストへの影響を分析しました。
a.移行リスク
2℃シナリオを基に、炭素税が導入された場合の与信先(ポートフォリオ)の状況等を分析し、当行財務への影響度(2050年までの累計値)を算定しました。対象先は「エネルギー」および「自動車・運輸」の2セクターに該当する与信先とし、結果、与信費用増加は2050年までに累計で約60億円の見込みとなりました。
b.物理的リスク
4℃シナリオを基に、長野県内全域にて2050年までに想定される大規模水害による与信先(ポートフォリオ)への影響を分析し、当行財務への影響度を算定しました。分析については、「担保毀損」「売上減少」の2点からアプローチし、結果、与信費用増加は2050年までに累計で約60億円の見込みとなりました。
(イ)機会
気候変動関連の機会としては、再生可能エネルギー事業へのファイナンスやお客さまの脱炭素社会への移行を支援するコンサルティング提供等のビジネス機会の増加を想定しております。また、企業としての適切な取組みと開示による社会的な評価向上を想定しております。
イ.人的資本、多様性への取組
(ア)中期経営ビジョン2021 ~成長とやりがいを支える人事改革~
当行は、「中期経営ビジョン2021」を通じ、お客さま対応をご相談や課題解決によるリレーション重視へと変えていくことや、職員の価値観やライフスタイルの多様化に対応するため、人事改革に取り組んでおります。人事制度や働き方の改革により、職員一人ひとりの能力発揮を支援することで、企業価値と人的資本価値の向上に努めてまいります。
(イ)人材の多様性の確保に関する方針
ダイバーシティ&インクルージョン推進を経営課題のひとつと捉え、性別・年齢・仕事の経験、さらには価値観などの「多様性」を尊重し、それを「組織の力」にすることを基本的な考え方としております。
多様な持ち味のある職員一人ひとりがお互いを認め合い高め合うことにより、全員の力でお客さまと地域に貢献するために、「ダイバーシティ&インクルージョン基本方針」を策定し、様々な取組みを推進しております。
◆ 八十二銀行グループ ダイバーシティ&インクルージョン基本方針
スローガン<多様な持ち味×認め合い×高め合い> 多様な持ち味のある職員一人ひとりが、互いを認め合い高め合うことで、 ①能力を最大限発揮できる組織風土を醸成します。 ②職員が自分の意見を素直に表現できる職場環境を創り、前向きな行動を後押しします。 ③職員の働きがいと成長意欲を高め、新たな発想や価値を生み出します。 |
(ウ)人材育成方針
経営理念実現のため、人材育成においては「お客さま・地域社会の課題解決に当事者意識を持ち伴走できる人材を育成するとともに、多様な人材が彩り豊かな発想を生かし、能力を最大限発揮できる環境整備と組織風土の醸成を進めていく」との考え方のもと、各種施策を実施しております。
能力伸長支援については、高度化・多様化するお客さまニーズや環境変化に対応すべく、幅広いマネジメントスキルや分野別の業務知識、汎用的なビジネススキル等の習得を支援しております。また、職員のキャリアビジョン実現や選択したコースの専門性深化に向け自己研鑽ツールを拡大する等、多様な学習を後押しする環境を整備しております。
| 当事業年度 |
年間の総研修費用(単体) | 259,937千円 |
従業員一人当たりの平均研修費用(単体) | 85.5千円 |
(エ)社内環境整備に関する体制・方針
多様な人材が意欲や能力を最大限発揮できるように、職場環境整備や福利厚生の充実に力を入れております。
多様性を企業経営に活かす方針のもと、ダイバーシティ推進や働き方改革につきましては人事部ダイバーシティ推進室を、職員のキャリア形成支援では人事部キャリア開発グループをそれぞれ設置し、職員の価値観やライフスタイルの多様化に対応しながら、人事制度や働き方の改革を進めております。
a.健康経営の取組
すべての役職員とその家族の心身の健康保持・増進が役職員の能力を最 大限発揮するために極めて重要との認識のもと、考え方の基本となる「健康経営基本方針」を策定し、各種健康施策に取り組んでおります。
また、ファイナンシャル・ウェルネスに関する取組みの一つとして、新入行員の金融リテラシー向上を目的に、キャリアとライフ・マネーに関する研修を重点的に行っております。
◆ 八十二銀行グループ 健康経営基本方針
八十二銀行グループは、役職員およびその家族の心身の健康保持・増進が、組織の持続的成長に不可欠であるとの認識のもと、健康経営に積極的に取組み、役職員やその家族のウェルビーイング実現を支援します。 |
b.ファイナンシャル・ウェルネスに関する取組
当行では、給与天引きにより当行の株式を積立購入することができる「八十二銀行職員持株会制度」を整備しております。なお、一定の口数を上限に奨励金を付与しております。
また、ファイナンシャル・ウェルネスに関する取組みの一つとして、新入行員の金融リテラシー向上を目的に、キャリアとライフ・マネーに関する研修を重点的に行っております。
(3)リスク管理
当行は、異常気象・自然災害の増加や、気候変動対応への遅れが経営に重要な影響を与えるリスクであると認識し、気候関連リスク(移行リスク・物理的リスク)のシナリオ分析を行った上で、信用リスク等の管理の枠組みで対応しております。
また、「八十二銀行グループ サステナブル投融資方針」を定め、環境・社会・経済にポジティブな影響を与える事業に対しては積極的に投融資していくとともに、環境・社会にネガティブな影響を与える可能性が高い特定セクターへの投融資に関しては、本方針に適切に対応することで、環境・社会への影響を低減・回避するよう努めております。
(4)指標及び目標
ア.気候変動への取組
(ア)サステナブルファイナンスの目標と実績
環境問題や社会課題を解決し、持続可能な社会の実現に資するサステナブルファイナンスを2021年度から2030年度までの10年間で、累計1.5兆円(うち環境分野で1兆円)実行する目標を掲げております。2022年度までの累計実行額は4,109億円となりました。
(注)サステナブルファイナンスは、環境・医療・福祉・教育・創業・事業承継などに対する投融資と定義しております。
(イ)温室効果ガス排出量の削減目標と実績
温室効果ガス削減目標として「①2023年度までにネット・ゼロ」、「②2030年度までに2013年度比60%削減」を掲げております(スコープ1・2)。2021年度は8,810t-CO2となり、2013年度比39.8%の削減となりました。CO2フリー電力の活用や空調の電気化、新店舗のZEB化などに取り組み、温室効果ガス排出量の削減を更に進めてまいります。
(ウ)温室効果ガス排出量の状況
当行は、2014年度よりスコープ3カテゴリー14までのサプライチェーンを含めた温室効果ガス排出量の把握に取組んでまいりましたが、2021年度からはスコープ3カテゴリー15投資についても算定に取り組んでおります。今後も算定対象範囲の拡大や排出量把握の精緻化に努めてまいります。
温室効果ガス排出量(2021年度) (単位:t-CO2)
計測項目 | 2020年度 | 2021年度 | ||
スコープ1 | 直接的エネルギー消費 | 重油、灯油、都市ガス、ガソリン、プロパンガス | 2,689 | 2,484 |
スコープ2 | 間接的エネルギー消費 | 電気 | 7,352 | 6,326 |
スコープ3 | 13,315 | 19,149 | ||
(サプライチェーンにおけるCO2排出量) | 1購入した製品・サービス | 文具品・コピー用紙、上水道、下水道等 | 2,238 | 5,680 |
2資本財 | 当行全体建物、建物仮勘定、その他有形固定資産 | 5,426 | 7,987 | |
3スコープ1・2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 | 重油、灯油、都市ガス、ガソリン、プロパンガス、電力 | 1,724 | 1,629 | |
4輸送・配送(上流) | 郵便費、輸送 | 1,849 | 1,949 | |
5事業から出る廃棄物 | 廃棄物全般 | 123 | 71 | |
6社員の移動に伴うエネルギー消費 | 出張 | 511 | 481 | |
7雇用者の通勤 | 通勤 | 1,444 | 1,352 | |
15投資 | 国内事業法人向け融資 | ― | 下図参照 | |
合 計 | 23,356 | 27,959 |
(注)スコープ3の算定方法、排出係数等は「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドラインVer2.4(環境省 経済産業省 2022年3月)」「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer3.2(環境省 経済産業省 2022年3月)」より使用(スコープ3カテゴリー8・9・10・11・12・13・14は算定による数値がゼロ)。
本排出量についてはLRQA Limitedによる第三者検証を受けています。
なお、2021年度の当行グループ全体の温室効果ガス排出量(スコープ1・2)の算定結果は、9,256t-CO2となりました。今後、グループ全体のスコープ3の把握を検討してまいります。
(エ)スコープ3カテゴリー15の分析結果
投融資を通じた間接的な温室効果ガス排出量は、金融機関におけるスコープ3(サプライチェーンにおけるCO2排出量)の中でも大きな割合を占めるため、2021年度よりPCAFスタンダードの計測手法を参考に当行の国内事業法人向け融資について算定しました。
スコープ3カテゴリー15の計測項目は投融資ポートフォリオの温室効果ガスの排出量が対象となりますが、今回は国内事業法人向け融資のみを算定対象としました。今後、算定可能な範囲を順次拡大してまいります。
なお、温室効果ガス排出量の算定方法については、国際的な基準の明確に対する議論が進む中で、将来変更される可能性があります。算定概要は以下のとおりであります。
当行融資先をTCFDの14業種に分類した業種別排出量 (2021年度)
業種 | 炭素強度 (単位:t-CO2/百万円) | 排出量 (単位:t-CO2) |
| 業種 | 炭素強度 (単位:t-CO2/百万円) | 排出量 (単位:t-CO2) |
農業 | 4.51 | 105,006 |
| 自動車 | 5.93 | 532,999 |
製紙・林業 | 2.41 | 124,775 |
| 電力 | 29.07 | 1,270,712 |
飲料・食品 | 3.69 | 549,814 |
| 不動産管理・開発 | 1.08 | 92,127 |
金属・鉱業 | 5.78 | 1,133,176 |
| 陸運 | 3.68 | 249,783 |
化学 | 4.50 | 572,563 |
| 海運 | 13.30 | 55,207 |
石油・ガス | 2.55 | 396,615 |
| 空運 | 12.14 | 11,998 |
建築資材・資本財 | 4.39 | 2,221,629 |
| その他 | 2.03 | 2,866,522 |
|
|
|
| 合 計 | ― | 10,182,924 |
(注)1 業種別炭素強度の算定式
炭素強度=Σ[融資先毎の炭素強度]/融資先数
2 排出量の算定式
排出量=Σ[融資先毎の炭素強度×融資先売上高×当行融資の寄与度]
3 時点
融資残高:2022年3月末時点
融資先売上高等財務指標:算定を行った2022年3月末時点で当行の保有する各融資先の最新決算情報
イ.人的資本、多様性への取組
上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び行内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。
(ア)多様性確保の目標と実績(単体)
男女の固定的な役割分担意識を解消し、誰もがあらゆるステージで能力発揮ができるように、キャリア形成支援や全職員を対象とした柔軟な働き方の促進等の取組みを進めております。
指標 | 目標 | 実績(2023年3月末) |
管理職(注1)に占める女性比率 | 2026年9月までに18%以上 | 12.5% |
指導的地位(注2)に占める女性比率 | 2026年9月までに30%以上 | 19.8% |
男性の育児目的休暇取得率 | 2026年9月までに100% | 89.5% |
(注)1 管理職とは、「課長級」および「課長級より上位の役職(役員を除く)」にある従業員の合計で算出しております。
2 指導的地位とは、「主査(係長級)」および管理職にある従業員の合計で算出しております。
(イ)健康経営に関する目標と実績(単体)
重点健康課題を「疾病の早期発見と生活習慣病の予防」「メンタルヘルスケア」「働きやすい環境の整備」と捉え、以下の通り健康経営に関する数値目標を設定しております。
重点健康課題 | 項目 | 目標 | 実績(2022年度) |
疾病の早期発見と生活習慣病の予防 | 精密検査受診率 | 90% | 82.2%(注) |
特定保健指導実施率 | 70% | 78.0%(注) | |
BMI値25以上(肥満者)率 | 19%以下 | 18.6% | |
喫煙率 | 11%以下 | 11.9% | |
メンタルヘルスケア | ストレスチェック受検率 | 100% | 99.2% |
働きやすい環境の整備 | 有給休暇取得日数(年平均) | 13日以上 | 15.9日 |
(注)速報値
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