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企業概要

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

Ⅰ.気候変動に関する考え方及び取組

 当社は、2023年6月27日開催の取締役会において、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate–related Financial Disclosures)(*1)による提言への賛同及び提言に基づく情報開示について、決議いたしました。

 当社は、最先端の技術による電子・電気機器、電子部品を取扱うエレクトロニクス技術商社として、また環境に配慮した工業薬品を製造するケミカルメーカーとして時代のニーズに対応する商品やサービスの安定供給に努めてまいりました。このような企業活動を通じて、気候変動を始めとするサステナビリティ課題の解決は取り組みを強化すべき重要課題であると認識しております。今後も引き続き、気候変動関連情報の開示の充実に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献できるよう取り組んでまいります。

(*1) G20からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立。気候変動によるリスク及び機会が経営に与える財務的影響を評価し、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について開示することを推奨しています。

(1)ガバナンス

 気候変動課題に関するリスク/機会の分析・特定、施策及び指標・目標の策定、進捗管理のため、「リスクマネジメント委員会」(*2)の下部組織として「気候変動分科会」を設置いたします。

 気候変動分科会は、具体的取り組みの推進主体となる「各部門・グループ会社等」の計画・推進状況を把握・管理し、リスクマネジメント委員会(年4回開催、委員長:リスク担当取締役)へ報告いたします。

 「取締役会」はリスクマネジメント委員会からの報告内容に基づき、取り組み全般のモニタリング、指示・監督を行います。

(*2) 当社グループのリスク管理の総括機能を担う委員会組織

■TCFD推進体制図

(2)戦略

 日本国内の主要事業を対象に、気候変動課題に伴うリスク/機会がもたらすインパクトを把握するため、短期・中期・長期(2025年・2030年・2050年)の時間軸でシナリオ分析を実施いたしました。

 シナリオ分析では平均気温が1.5℃、もしくは4℃上昇する将来像を中心に、低炭素経済への「移行」(*3)や気候変動がもたらす「物理的」変化(*4)に関する社会経済シナリオを参照し、当社にとってのリスク/機会と、取り得る対策案を検討いたしました。

 検討過程では、分析対象である各事業部門へのヒアリングを通じて、約60の社会経済シナリオに伴うリスク/機会について「小・中・大」の3段階で定性的に評価いたしました。

 評価結果をふまえ、「移行」関連は1.5℃シナリオ、「物理的」関連は4℃シナリオを前提に、中期(2030年)から長期(2050年)にかけて当社の経営・事業にもたらす影響が「中」以上の主な項目を、以下のとおり開示いたします。

(*3)  低炭素化経済の実現にむけた政策や法規制、市場、企業への要請等の変化

(*4)  気候の変化に伴う「急性」(渇水・干ばつ、風水害の増加等)、および「慢性」(平均気温の上昇、海面上昇等)の事象の発生

〔主な参照シナリオ〕

移行

1.5℃シナリオ:IEA「Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」

※1.5℃シナリオに該当するシナリオが無い場合、2℃未満シナリオ(IEA「Sustainable Development Scenario(SDS)」等の近似のシナリオで補完

物理的

4℃シナリオ:IPCC「RCP8.5」

社会経済シナリオ

リスク/機会

対策案

移行

政策・法的

炭素税の適用

〔リスク〕

・自社活動への炭素税適用

・SCOPE1~3の定量化・削減

・取引先気候変動対応のモニタリング

・関連規制・技術のモニタリング

〔リスク〕

・取引先のコスト増加(自社の購買・調達・配送コストへの転嫁)

・輸出入に係る規制・炭素税適用への対応

施設・設備のGHG排出量削減

〔機会〕

・ZEB化に貢献する製品・サービスの需要拡大

・自然冷媒・グリーン冷媒機器への入替に伴う関連製品・機器の需要拡大

・SCOPE1~3の定量化・削減

・関連規制・技術のモニタリング

低炭素化・省電力化・省スペース化の要請

〔機会〕

・企業・家庭向け製品・機器の需要が拡大

・製造プロセスの低炭素化・効率化に貢献する製品・機器の需要が拡大

・関連技術・製品のモニタリング

技術

EV・FCVの普及

〔機会〕

・関連製品・機器・製造装置の需要が拡大

・関連技術・製品のモニタリング

市場

石油精製業関連の既存取引減少

〔リスク〕

・関連製品の需要減少

〔機会〕

・バイオ燃料、廃プラスチック再利用技術関連製品の需要拡大

・関連技術・製品のモニタリング

評判

気候変動対応

〔リスク〕

・低炭素化取り組みの要請への対応が不十分な場合、取引の縮小・停止

・開示情報の不足による企業価値低下、若手層等の人材確保困難

〔機会〕

・適切な情報開示を通じた企業価値向上

・中長期的に安定した人材確保

・具体的取り組みの推進・進捗管理

・適時・適切な開示

物理的

急性

渇水・干ばつの発生

〔リスク〕

・購買・調達先での水使用量制約による原材料・製品の高騰・調達困難

・サプライチェーン全体の水リスクの把握

風水害の増加・甚大化

〔リスク〕

・自社の事業拠点・太陽光発電施設、購買・調達先・ロジスティクス拠点の被災

〔機会〕

・製品・機器の交換・修理等を通じた顧客の事業継続への貢献

・サプライチェーン全体の風水害リスクの把握

(3)リスク管理

 気候変動分科会は、気候変動に伴うリスク/機会を分析・特定し、リスクマネジメント委員会へ結果を報告します。

 リスクマネジメント委員会は報告内容に基づき、対応の優先順位を評価した上でリスク管理計画(*5)に組み込み、取締役会へ管理状況を報告・提言します。

(*5)経営が管理すべき重要リスクについて、リスク事象への対応・モニタリングのための対応計画

(4)指標及び目標

 当社では、環境問題への取り組みとして気候変動を最重要課題と認識しており、温室効果ガス(CO2)排出量に対してパリ協定の1.5℃目標に準じた数値目標を今後設定し、低減に取り組んでまいります。

 なお、現時点で把握しているGHG排出量の実績は、下記の通りです。

(ご参考)GHG排出量の実績

項目

2021年度

2022年度(暫定)

Scope1

580.65 t-CO2

555.6 t-CO2

Scope2

612.68 t-CO2

554.5 t-CO2

Scope3

*当社単体数値

Ⅱ.人的資本経営、多様性に関する考え方及び取組

 当社は、事業を取り巻く環境変化が予測困難な状況下において、人材を「経営の根幹に位置づけられるべきもの」として捉え、人的価値(社員価値)の向上・創造のため、2022年度より人事制度を改定いたしました。改定のポイントは、メリハリのある透明で納得感の高い評価や処遇を実現すること、自律的なキャリア形成を促すことにあります。当社社員が会社を自己実現の場として活用し、モチベーション高く成長し続けることが、当社の持続的企業価値向上に直結するものと考え、今後とも経営戦略実現に必要な人材の確保や教育、投資を積極的に行ってまいります。

 当社の人材育成方針、社内環境整備方針及び当該方針に関する指標の内容や当該指標による目標・実績は次の通りです。

(1)教育・研修プログラム

 当社は、「社員の成長無くして、会社の成長は無い」との基本的な考えから、事業環境の急速な変化や多様化する個人の価値観・ニーズに対応した人材の育成、また、更なる専門性の向上に向け、各階層にマッチした研修を毎年モディファイしながら展開しています。「社員一人ひとりに自律的に成長を続ける機会を提供し、変革と共創を引き起こす人材を育成する」というテーマの下、各階層に応じて、以下の能力向上に取り組んでいます。

・若手社員:論理的思考力や自律的に周囲に働きかけ成果を出す能力を磨く

・中堅社員:戦略目標や人材育成を主体的に考え実行する力を伸ばす

・管理職:マネジメント能力、人材・組織の力を引きだすリーダーシップ力を身に付ける

 また、上級管理職に対しては、360度サーベイを実施し、周囲の評価と自己認識とのギャップを認識することで、自身の強みや課題、行動特徴を把握、それをマネジメントスキルの向上やマネジメントの視野拡大に繋げる取り組みを行います。

(2)ダイバーシティとインクルージョンの推進

 当社は、性別・国籍の垣根無く、積極的に有能で多様な人材を採用し、全社員に対するキャリア採用者の割合は、約65%(3人に2人)に上っており、実力ある人材については管理職への登用を行い、管理職の70%をキャリア採用者が占めているほか、直近5年においては、毎年外国人を採用し、現在14名(内管理職2名)が在籍しています。また、女性管理職の比率は前期5.4%に対し、当期7.5%と大幅に伸びておりますが、2025年度には10%を目標としています。なお、男女賃金格差については、以下の通りとなります。

・全労働者:61.5% ・正 社 員 :67.7% ・有期社員:63.2%

 ※当社は男女の違いによる給与差は設定していないため、主たる要因は職種に占める割合に拠るものとなりますが、女性の管理職比率の向上ならびに職種と業務領域の拡充を通じて、給与格差是正に努める所存です。

 今後とも労働力人口の減少を見据え、女性活躍に向けた諸施策を中心に、多様な人材の活用に取り組んでまいります。

(3)働き方改革

 当社は、在宅勤務、時差出勤、サテライトオフィスを導入し、場所や時間に捉われず、柔軟に働ける仕組みを整備しました。また、オフィスの一部をフリーアドレス化しWeb会議スペースやミーティングスペースを増やすなど、快適な職場環境づくりにも注力しています。

 有休取得に関しては、「マンスリープレミアムデー制度」(期初に各々が毎月の有休取得日を決定できる制度)を導入しています。前期の有休取得率は72%と比較的高い水準にはあるものの、目標を80%に設定し、ワークライフバランスを更に推進してまいります。

 なお、男性の育児休業取得率は27%となっていますが、平均取得日数が13日に留まっていることから、取得率のみならず、取得日数をも伸ばしていく所存です。多様な人材が多様なスタイルで活躍できる環境を整備し、社員の生産性や心身の健康保持増進に向け、注力してまいります。

(4)安全衛生基本方針と健康経営

 当社は、伯東グループ安全衛生基本理念及び方針ならびに健康宣言の下、健康管理(フィジカルケア)、メンタルヘルスケア、働き方改革の3つの柱からなる健康経営に取り組んでおり、優良な健康経営を実践している法人として、2019年より『健康経営優良法人(大規模法人部門)』に認定されています。代表取締役社長及び人事担当役員が健康経営責任者となり、健康経営を牽引するとともに、健康推進担当が中心となり、産業医や保健師、健康保険組合と連携し、社員の健康づくりを推進し、「ホワイト500」の再認定を目標として、健康経営に関する指標の改善に努めています。今後も、時流をとらえた課題やニーズを踏まえたうえで、社員の健康維持増進に資する施策に積極的に取り組み、社員ひとり一人の「働きがい」「働きやすさ」の充実を目指してまいります。

(5)エンゲージメントの向上

 当社は、社員の満足度やエンゲージメントについてのサーベイを定期的に実施し、向上させる諸施策を講じて参ります。また、コミュニケーションの活性化及び上司と部下との信頼関係を強化させるため、効果的な1on1ミーティングを実施することに注力しています。これにより部下の成長促進やモチベーション向上、働きがい向上といった効果が期待できます。人事制度改定と共に導入したキャリアアップ支援制度の活用を通し、エンゲージメントの向上に繋げたいと考えております。

(6)グローバル人材の育成

 当社は、意欲あるハイパフォーマー社員を積極的に海外子会社へ出向させ、海外でのビジネス経験を積ませることでグローバルな視点を養い、今後増々拡大する海外ビジネスへの対応に備えております。語学力強化においては、聴く・読む・書くだけでなく、英語での発信力の向上に向けた研修を取り入れております。

 また、若手社員に対して「海外現地のリアルビジネスに直結した課題を達成させ、グローバルマインドセットを鍛える」という研修も導入しています。なお、2022年度に改定した本社人事制度をベースとして、海外グループ会社の人事制度の改定にも取り組んでいます。将来的には、グループ内での人事ローテーションや研修による人材交流を行い、多様な価値観を持った社員が個々の力を発揮し、イノベーションが生まれるような環境を目指します。

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