亀田製菓 【東証プライム:2220】「食品業」 へ投稿
企業概要
当グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ推進に向けた全体像
当グループは、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティに対する取り組みを重要な経営課題として認識するとともに、事業機会の観点からもサステナビリティ対応の強化を掲げ、持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでおります。当該活動の中で、2021年度において当グループのサステナビリティ基本方針を以下のように定めております。
「亀田製菓グループは、“Better For You(美味しく からだに良いものを選び、食べ、楽しむ、健やかなライフスタイルへの貢献)の食品業”への進化を通じて、持続可能な社会の実現に資する企業グループとしての成長に向けて取り組んでいきます。」
このサステナビリティ基本方針のもと、外部環境の変化が当グループの活動に与えるリスクと機会の両面から重要課題として人的資本および気候変動関連を特定し、その枠組みの中でガバナンス及びリスク管理について次のとおり取り組みを進めております。
① ガバナンス
サステナビリティに対する取り組みについては、2021年度に策定したサステナビリティ基本方針のもと、代表取締役会長CEOを責任者とするサステナビリティ推進タスクフォースにおいて、サステナビリティに関する方針や各種課題の解決に向けた詳細な目標の設定、それらを実践するための体制および具体的な実行方法の立案、各種施策の運用状況のモニタリングなどを行っております。
また、2022年度においては、社内ワークショップにより課題候補を抽出し、社内外の役員および社外のステークホルダーにより重要度評価を実施することで、経営全体のマテリアリティ(重要課題)へと見直しを行いました。
サステナビリティ推進タスクフォース主導のもと目標およびKPIを設定するとともに、これら活動内容の進捗状況等については、定期的に取締役会に付議・報告することで、その重要課題への対応状況を取締役会が監督しております。
② リスク管理
当社は、サステナビリティ課題を含む事業へのリスクについて、四半期ごとに開催する定例のリスク管理委員会で検討・モニタリングを実施しております。同委員会での審議内容や検討状況を取締役会に定期的に報告することで、リスク管理全般の統制管理を行っております。
なお、当社のリスクマネジメント体制の詳細は、「3.事業等のリスク」に記載しております。
(2)人的資本関係
当グループは、人事基本方針として「従業員全員の活躍実感、成長実感を高める」を掲げております。仕事を通じて従業員一人ひとりが活躍し、日々成長を感じながら、会社とともに豊かな社会を創り出すことを期待しております。
① 戦略(人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)
当グループは、国内米菓事業・海外事業・食品事業の三本柱の確立により、特長あるグローバル企業としての企業価値向上を目指しており、その実現に向けた人的資本経営の重要課題は、以下3つであると認識しております。
重要課題 | 選定理由 |
a.従業員の心と体の健康経営 | 従業員が心身ともに健康であることで、従業員一人ひとりのポテンシャルが最大限引き出され、中長期的な当グループの企業価値向上につながると考えております。 |
b.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン | さまざまな価値観や考え方、多様な個性を認め合い、公正に評価することが従業員一人ひとりの能力発揮を実現し、強靭かつ競争力のある組織になると考えております。 |
c.事業基盤を支える人材の育成 | 事業基盤を強固なものとするため、当グループとして求める人材を育成する仕組み・制度は必要不可欠であり、その整備は重要な経営課題であると認識しております。 |
上記3つの重要課題への施策としては、まず、従業員の心と体の健康経営を実現するために、セルフケア・ラインケアの充実や内部通報・メンタルヘルスケア体制の整備と周知、重大労働災害のない安全で快適な職場環境の整備に取り組んでおります。
また、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンについては、管理職および監督職における女性任用比率や男性の育児休業取得率の向上、男女間賃金格差の縮小やシニア雇用率および障がい者雇用率の向上など、多様な人材が能力を発揮できる働きやすい職場環境の整備に取り組んでおります。
さらに、事業基盤を支える人材の育成としては、視座の高さ、実行力、人間力を持ち、新たなことへ果敢にチャレンジできる人材を育成するために、様々な研修制度を通じて従業員全員の成長をサポートする体制づくりに取り組んでおります。
② 指標及び目標
上記、重要課題の達成状況を確認するための主な指標と目標は以下のとおりであります。
指標 | 2022年度実績 | 2030年度目標 |
女性管理職比率 | 15.6% | 30% |
女性監督職比率 | 13.4% | 30% |
男性育児休業取得率 | 51.7% | 80% |
男女間賃金格差 | 68.1% | 80% |
※当社はグループ各社と連携して人的資本経営の重要課題に取り組んでおりますが、具体的な実績及び目標に関しては連結ベースの数値ではなく、当社の数値を記載しております。
その他、健康経営を実現するために、定期健康診断の100%受診率の継続、ストレスチェックの集団分析研修の定期的な実施、内部通報制度やメンタルヘルスケア体制の整備・周知などを目標としております。また、事業基盤を支える人材育成については、教育投資の拡大や定期的な管理・監督職へ向けた試験の実施などを目標としております。
(3)気候変動関係
農産物を主原料とする当グループにとって、サプライチェーンに重大な影響を与える可能性のある気候変動への適切な対応は、優先度の高い重要課題であると考え、2021年11月にTCFD※1(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、賛同企業や金融機関が議論する場であるTCFDコンソーシアム※2に加入しております。
※1TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース):Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略。G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立。
※2TCFDコンソーシアム:TCFDに関する企業の効果的な情報開示や適切な取り組みについて議論を行う目的で2019年に設立。
① 戦略
a.シナリオ分析
気候変動によるリスクおよび機会の特定にあたり、当グループにおける製品およびサービスの調達・生産・供給までのバリューチェーン全体を対象として、国際機関等が公表するシナリオをもとに4℃シナリオと2℃シナリオの2つの将来世界観を整理し、2030年時点における当グループへの影響を考察するとともに、それぞれの世界観におけるリスクと機会を特定しております。
4℃シナリオ、2℃シナリオにもとづく将来世界観
4℃シナリオ | 2℃シナリオ |
気候変動対策への取り組みは現行の政策や規制以上の進展がなく、化石燃料由来のエネルギーが継続的に使用されることによって温室効果ガス排出量が増大し、産業革命期頃と比較して、2100年頃までに地球平均気温が4℃以上上昇する将来予測。台風や豪雨をはじめとする異常気象の激甚化や、慢性的な気温上昇に伴う作物生育への悪影響といった、気候変動による直接的な被害が増加するのに対し、法規制や税制という形での市場への締め付けは強化されないため、移行リスクとしての影響度は小さい。 | 世界規模でのカーボンニュートラルの達成に向けて低炭素化が推進され、世界の平均気温が2℃程度の上昇に抑えられる将来予測。脱炭素化に向けた厳しい法規制や税制が施行され、温室効果ガスの排出量が抑制されることにより、気温上昇が抑制され異常気象等物理的リスクの規模や頻度は4℃シナリオに比べ縮小するものの、脱炭素化に向けた社会構造の変化に伴い、移行リスクは高まる。 |
(参考シナリオ) IPCC(気候変動に関する政府間パネル):RCP8.5 IEA(国際エネルギー機関):STEPS | (参考シナリオ) IPCC(気候変動に関する政府間パネル):RCP2.6 IEA(国際エネルギー機関):SDS/NZE2050 |
重要課題となり得るリスク項目の中で定量的な分析が可能な項目については、2030年時点における財務インパクトを推定し、4℃シナリオにおける「生産工場に対する物理的被害の拡大」および「プラスチック製包装資材の価格上昇」、2℃シナリオにおける「カーボンプライシングの導入によるコスト増加」が特に大きな影響を及ぼす可能性があることを確認しております。
なお、当グループの主原料である米の収量および価格の分析にあたり、外部機関が開示する将来予測パラメータでは、空気中の二酸化炭素濃度の上昇が米の生育に寄与するほか、気温上昇による生産地拡大などにより収量の増加および販売価格が低下すると予測されており、各将来予測シナリオにおける米価格予想、平均収量の推移、消費生産バランス等の要素から試算した結果、仕入れコスト減少の可能性を確認しております。
一方で、水田の水温上昇などに伴い品質低下が見込まれていることから、こうした米を原料にしながらもおいしい米菓を引き続きお客様にお届けできるよう、製品開発や社会貢献の可能性を模索するのが当グループの役割であり、既存の取り組みを継続・加速するとともに、新たな対応策の検討も推進していきます。
また、リスクのみならず、当グループで展開するプラントベースドフード(植物性代替肉)やECOパッケージ化の推進は、気候変動が進む世界観においてもエシカル消費をはじめとするお客様の新たなニーズに応える製品群として事業機会の可能性を確認しております。リスクへの対応策をはじめとする具体的な既存の取り組みについては、統合報告書や当社ホームページで開示しているほか、今回のシナリオ分析を踏まえ、さらなる具体的な対応策を各事業で検討・立案し、不確実な将来世界に対するあらゆる可能性について備えていきます。
b.具体的な取り組み
・CO2排出量・エネルギー使用量の削減
新潟県内の4工場すべてにおいて、基幹設備のA重油・LPガスから都市ガスへのエネルギー転換を実施したことに加え、2022年8月より東北電力株式会社が提供する水力発電所で100%発電されたCO2フリーの再生可能エネルギー電気「よりそう、再エネ電気」を亀田工場に導入しました。
また、熱効率の高い焼成設備への更新や排熱の再利用など、米菓製造工程におけるエネルギー使用量の削減に向けて取り組みを進めております。
・プラスチック使用量の削減
当グループが持続的に事業活動を行う上で、プラスチック使用量の削減は優先的に取り組むべき重要課題として認識しております。具体的には、包装技術の向上に取り組むことで、製品の破損を防止するために使用していたプラスチックトレーを廃止するとともに、製品パッケージをスリムにすることで、従来に比べ約3割プラスチック使用量を抑制するECOパッケージ化を推進しております。 加えて、ECOパッケージ化の推進により、配送時の積載効率の改善にもつながっております。 |
ECOパッケージ化前 ECOパッケージ化後 |
・お客様の嗜好変化への対応
食生活が生み出す環境負荷に対するお客様の意識は確実に変化しております。更には、自然災害の増加や新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、お客様の防災意識・健康意識の高まりに対して、当グループが扱う長期保存食やプラントベースドフード、アレルゲン28品目不使用の米粉パン、植物性乳酸菌などは、そうしたお客様のニーズに対応する製品であり、社会課題の解決に寄与するものと考えております。
2030年度には“あられ、おせんべいの製菓業”から“Better For Youの食品業”への進化を目指し、食品事業を国内米菓事業、海外事業と並ぶ三本目の柱とするべく、長期視点でシーズの獲得や育成を進め、早期の事業拡大に取り組んでまいります。
② 指標と目標
当社は、気候変動課題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(CO2)総排出量を指標とし、当社における2030年度の温室効果ガスの総排出量を40%削減(2017年度比)する目標を設定しております。
また、当グループで進めるプラスチック使用量の削減はScope3における温室効果ガス排出量の削減のみならず、消費財を扱うメーカーとして優先的に取り組むべき重要課題として認識しており、製品のプラスチックトレーの廃止、およびパッケージをスリムにするECOパッケージ化を図ることでプラスチック使用量の削減を進めております。2030年度までには当社の全製品をECOパッケージ化するとともに、プラスチック使用量を30%削減(2017年度比)することを目標に掲げております。
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