乾汽船 【東証スタンダード:9308】「海運業」 へ投稿
企業概要
当社は、2023年4月に新中期経営計画「不易流行」(計画期間:2023年4月~2026年3月)を策定しております。計画の詳細は、当社ホームページをご参照ください。
(https://www.inui.co.jp/ir/library/managementplan.html)
本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.経営の基本方針
当社の経営の基本方針については、①資産の力を事業の力に、②FUN to WORK、③「らしさ」の追求、という3つを定めております。
① 資産の力を事業の力に
未来に向かって進化を続ける勝どき・月島は施設賃貸業の適地であり、当社の収益と財務基盤を支えます。この優良な資産がさらに成長する機会が到来します。再開発の期間は事業が資産を支えます。強化される資産の力は更なる基盤の強化となります。
② FUN to WORK
やりがい×いきがい=FUN、としました。そもそも小さい会社です。人と人とが支え合って、助け合って此処まで来ました。新しい働き方や、Digitalの力もうまく使っていきますが、ひとり一人のニンゲン力、これからも大切にしていきます。
③ 「らしさ」の追求
われらの「らしさ」は、実業に向き合い、地道な努力を練り込みながら生まれます。「らしさ」は差別化の源泉です。他と違うことを恐れず、素直に独自性を追求する、それがわれらの不易流行です。
2.経営環境
当連結会計年度における我が国経済は、インバウンド需要の拡大や商品価格の見直しによる堅調な企業業績により、景気は緩やかながらも持ち直し傾向が見られました。一方で、中東情勢の緊迫化、資源価格や原材料価格の高騰、円安基調の長期化など、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
外航海運事業においては、当社の業容であるハンディ船の輸送能力は、今後も続く大型環境規制への技術的・経済的な対応の難しさから船腹の緩やかな減少が予想されることや、船舶燃費規制下での省エネ運航により、減少もしくは停滞していくことが予想されます。世界に遍在しており、世界人口の増加と強い相関を持つバルク資源材は、世界の平和を前提とした場合には緩やかに需要が増加します。ハンディ船輸送能力の停滞・減少と、バルクハンディ需要の緩やかな増加から、当社の外航海運事業における事業環境は長期的には明るいと考えております。一方で短期的には、世界経済の動向、地政学的な要因や、自然災害など、さまざまな要因の影響を受けます。パナマ運河の通航制限などの市況引き締め要因もありますが、中東情勢の緊迫化、中国経済の減速停滞、インフレや金融引き締めによる投資抑制など世界的な経済活動の低迷が懸念されます。
倉庫・運送事業においては、当社事業は一般倉庫、文書倉庫、引越事業の3領域で構成されており、一般倉庫においては売上高の約1/3を紙の荷主に依存している状況です。こうした事業構成に対し、一般倉庫・文書倉庫においては急激なペーパーレス化により取扱量は減少しており、電子帳簿保存法、インボイス制度等により、こうした潮流は今後更に加速していくと考えております。また、引越事業においてもコロナ禍での働き方の変化により需要が減少しており、今後もコロナ前の水準に戻ることはないと予測していることから、核となってきた一般倉庫の紙、文書倉庫、引越の何れもが、厳しい将来に直面するものと想定しております。
不動産事業においては、当社主要施設の立地する勝どきエリアと隅田川対岸に位置する築地市場跡地再開発計画が始動することや、都心部・臨海地域地下鉄構想による交通インフラの進化、また勝どき・月島エリアには今後新たに約13,000戸の住宅供給計画があることから、当社主要施設の立地するエリアは都心にある水辺のResidence Zoneとして継続発展し、ますます便利で魅力的な住む街へ進化していくと想定しております。
3.中長期的な会社の経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 中長期的な会社の経営戦略
乾汽船の祖業は、海運業であり、倉庫業です。当社グループの仕事は、人の営みに欠かすことのないモノを運ぶ実業の一端を担っており、産業や社会を支えている自負と共にあり、この想いは不易です。
不易であるために、地球環境問題を考え、より良い社会の実現を願い、よく制御された統治の中で、より良い物流、より良い経営を目指します。
世界の海で「よくはこぶ」外航海運セグメント、日本の「よくはこぶ」を支える倉庫・運送セグメント、当社グループの「よくはこぶ」を支える不動産セグメントという、「よくはこぶ」が礎にある3つの事業を通じて社会に貢献する、その実践が当社グループの存在理由です。
Sustainableな実業に向かい実現可能な提案と実践を重ねることで「よくはこぶ」を実現するため、多種多様な要求から、如何に持続的価値を導き出すかという挑戦を続けていく、こうした思いから長期ビジョンとして「よくはこぶ」を掲げ、2023年4月に新中期経営計画「不易流行」(計画期間:2023年4月~2026年3月)を策定しております。
配当方針については、「事業特性」、「中長期的成長を重視した経営資源の配分」、「財務基盤」の3つのバランスがとれた株主還元策であることを基本とし(株式市場環境等を踏まえ自己株式取得する場合を含む)、以下に記載の従来の方針を継続します。
・従来どおり「良いときは笑い、悪いときにも泣かない」方針とします。
・業績に応じて、良いとき、悪いときの判断基準および最低配当額を定め、「悪いとき」にも無配を前提にはしません。
・また、「良いとき」には配当性向の累進による増配を提案してまいりたいと考えます。
② 中長期的な会社の経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
1)外航海運事業
・事業方針
ご長寿お達者
航行のムダ排除と安心安全
徹底した効率配船
・施策
地球環境を考えると新造船の発注は難しくなりました。しかし、船稼業には船舶が必要です。船隊整備の要諦は、勇気と資金と長期目線と心得ます。
そして、世界の変異に激しく振り回されるのが外航海運業です。予測不能の事態が、しばしば勃発しますが、鍛え続ける地力で対応します。
当社外航海運事業の事業領域であるハンディ船においては、今後も船腹の供給が難しい状況が継続すると考えております。そうした状況下で、船価動向や環境規制対応をにらみながらフレキシブルに船隊を整備すること、既存スクラバー搭載船を延命し、既存燃料でも「よくはこぶ」力を維持することにより船隊規模を確保することで効率航行にも寄与することは、温暖化ガス排出量/輸送量の削減へつながります。環境にも配慮しつつ、「よくはこぶ」力を削がずに更に強化し、Handy市場での存在感を増していきながら、長期的に「よくはこぶ」Handy船隊を運営してまいります。短期的な見通しの難しさに対しては、変事には予測力より対応力を重視してまいります。
2)倉庫・運送事業
・事業方針
自動化・ロボ化が入りにくいニッチな実需に対応
足・手・倉の進化⇒2027年、新たな「業」へ
・施策
核となってきた紙製品、文書保管業、引越の何れもが、厳しい未来に直面しようとしています。縮みゆく消費は、弱者の敗退を加速させます。
FUN to WORKを実践する現場のためにも、新しい「よくはこぶ」をつくり上げねばなりません。
当社の倉庫・運送事業の事業領域は、多様な小口荷主が主体で、標準化が難しいニッチな領域であるため、大型投資を前提とした自動化、ロボ化は適しません。また倉庫の多くが人を集めやすい市街地に立地していることも特性です。こうした特性の中、①カイゼン+FUN to WORKの更なる追求により現場力、働きやすさを更に向上させること、②これまでも取り組んできたSOS(倉庫オペレーションシステム)をデジタル化への導管として更に進化させること、③Advanceへの実証実験を行うことで実業実務の効率化検証をおこなうことと業務設計力を強化させること、の3つを「Basic」と定義し、更に進化しながら、自動化・ロボ化が入りにくいニッチな実需に引き続き対応してまいります。
また、①足(配送力):NPO法人が提供する配送マッチングサービスを活用し、求荷求車の新しい仕組みを提案・実践していくこと、②手(現場力):現場の業務要件をアンバンドル/リバンドルすることでギグワーカーなどさまざまな働き方の人材を活用可能にすること、③倉(展開力):既存の倉庫業ネットワークのデジタル結合で境目を低くすることで、倉庫を立地に縛られずもっとムダなく活用するべく試みていくこと、の3つの取組みを「Advance」と定義し、足(配送力)・手(現場力)・倉(展開力)の進化に取り組んでまいります。「Basic」+「Advance」をテーマに、2023年度から5年間(2027年度まで)を目途に新たな業域を開拓していきます。
3)不動産事業
・事業方針
既存物件での実証実験を経て、この街での新しい「住みごこち」を実現
・施策
築地市場跡地の再開発が動き出しました。この対岸、隅田川・勝どき橋を挟んだわれらの既存施設は、この時を待っていました。巨大開発に呼応しながら、構想10年のわれらの再開発がはじまります。
当社不動産事業が長く根差してきた勝どきは、築地市場跡地再開発計画の隅田川対岸に位置しております。築地市場跡地再開発という巨大計画に呼応し、構想10年を要してきた、当社既存物件であるプラザ勝どき再開発計画(Neo Plaza Kachidoki~NPK~)が始動します。既存の物件では安定高稼働に向けた目標設定と実践を行いながら、これまでも居住者と一体になった防災への取り組みなど、様々な取り組みを通して構築してきた当社独自の価値観・ノウハウ・リソースに基づく事業コンセプトに基づいた事業を展開してまいりました。これからもこうした取り組みを続け、「住まう人とつくる住みごこち」を指向し高めてまいります。既存物件での取り組みを「NPK」の実証実験の場ともすることで、NPKにおける事業コンセプトを洗練化し、また広域エリアの進化を見据えた事業計画を詳細化してまいります。
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