中部日本放送 【名証プレミア:9402】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針および経営環境
当社グループは、放送という公共性の高い事業を中核としており、「テレビ、ラジオの放送を通じてすぐれた報道、情報、娯楽番組を提供し、地域社会や文化に貢献する」ことを経営の基本理念としております。
テクノロジーの進展、メディア・デバイスの多様化、広告市場の変化、少子高齢化と人口の減少、新型コロナウイルス感染症の影響などで、当社グループを取り巻く経営環境は大きく変わってきております。これまで、主力である放送事業は、高成長・高収益をもたらしてきましたが、視聴者や聴取者はいまや、時間、空間、デバイスを問わず、コンテンツを取捨選択するようになりました。放送は絶対的に優位なメディアではなくなっていることは事実です。しかし、その一方で、大規模な災害や感染症拡大などの緊急時において、信頼ある情報を発信するメディアの存在価値は改めて見直され、とりわけ地域に根差したローカル放送局が果たす役割の重要性は、ますます高まってきております。こうした環境変化を踏まえ、当社グループはこれからも、地域を代表するメディア、そして報道機関として、地域にとって有益な情報、魅力あるコンテンツ、そして生活者のライフスタイルにふさわしいサービスを提供し続けてまいります。
当社グループの中核をなす放送事業は、広告市場から大きな影響を受けるという特殊性を持っております。ウクライナ情勢や新型コロナウイルス感染症拡大による不安定な経済情勢は、広告市況の悪化をもたらし、当社グループの業績にも影響を及ぼしました。これから先、いかなる状況下にあっても、地域住民の生命、財産を守るという放送事業者としての使命を全うするためには、様々な環境変化に柔軟に対応し、安定した経営基盤を確保し続けていくことが重要であると考えております。
(2)対処すべき課題
中部日本放送は2025年、日本の民放で最初となる「創立75周年」を迎えます。この間、地域の人々と喜びも悲しみも一緒に時間を共有してきました。創世期には、未曽有の災害だった伊勢湾台風をテレビの生中継を交えて伝え、ドラゴンズの優勝時には歓喜を分かち合い、愛知万博ではパビリオンを出展して地域の活性化に努めてきました。私たちは、その喜怒哀楽に寄り添うことで地域の人々と繋がりを持ち続けてきました。テクノロジーの進歩で社会のあり方は変化しても人間の本質である喜怒哀楽に変わりはありません。
スマホの登場で社会は劇的にかつスピーディに変わりました。様々な業界がデジタル化・DXの渦に巻き込まれています。放送もその例外ではありません。スマホが「いつでも」「どこでも」「なんにでも」アクセスできる一方で、放送は決められた時間に決められたコンテンツを決められたデバイスでしか見たり聞いたりできないメディアです。しかし、スマホに代表されるインターネットメディアは「フィルターバブル」「エコーチェンバー」「アテンションエコノミー」などの問題や「フェイク」などにより情報そのものの信頼性の問題が指摘されています。デジタル社会を生き抜くにあたり、私たちも「アテンションエコノミー」における競争に臨む場面が増えてきていますが、アテンションを集めるだけでなく、コンテンツの「質」と「信頼」が問われています。
私たち放送が持つ最大の財産は長い歴史で培った「信頼」です。70年以上にわたって視聴者・リスナーの喜怒哀楽を見つめ共有してきたことから得た「信頼」です。放送法は「放送は表現の自由の確保と民主主義の発達に資すること」と規定していて、この責任を全うするために我々は免許制度で守られてきました。しかし、免許制度に守られてきた放送業界は局間競争ばかりに目を奪われ、独りよがりの送り手論理に陥っている可能性があり、この点を自省しなければ視聴者・リスナー離れを食い止められません。また、「信頼」を失わずに維持していくためには、「フェア」=公正でなければなりません。ルールを守るコンプライアンスだけが「フェア」ではありません。なぜならルールは時代とともに変わるからです。多様性や人権などに対応し、コンプライアンスの先にある「フェア」な姿勢で時代にあった新しい価値を生み出していかなければなりません。我々には公共の電波を預かっている責任があるのです。
「中期経営計画2024-2026」~フェアな姿勢でデジタル化社会に「信頼」を~
「中期経営計画2021-2023」期間中には、2021年にコンテンツ制作力強化のためケイマックスがグループ傘下入りし、2022年に技術とデザインの融合で新たな価値の創造をめざすCBC Dテックを設立し、「地域ナンバーワンのメディアコンテンツグループ」へと向かうグループ機能の再編を行いました。
そして、2024年度には、この最適化がさらに機能を発揮するよう新たに「中期経営計画2024-2026」を策定しました。本計画実行にあたり、大切にしたい3つのキーワードがあります。それは「地域」「コンテンツ」「人財」です。信頼を培い、最重要マーケットである「地域」から、グループ成長のため我々が生み出していくのが「コンテンツ」です。「コンテンツ」はエリアを超えグローバルにも展開できますし、放送や配信で発信されるものだけでなく、グループ各社が提供する商品・サービスもそのひとつと考えています。そして、最も大切なものは成長戦略の原動力であり財産でもある「人財」です。
中部日本放送は、2014年4月に認定放送持株会社体制を敷いてからちょうど10年が経ちました。グループの主力である放送ビジネスは配信プラットフォームの成長により、そのビジネスモデル自体が厳しい環境になっています。グループ成長のため、2030年にあるべき姿を定め、「収益構造改革」と「デジタル推進」を2つの改革の柱とし、戦略の転換により、収益ポートフォリオの最適化を図ることにしました。
デジタル時代における競争力向上のため、各社の自立と協調を促しつつ、グループ全体のトータルマネジメントを行い、すべてのリソースを有効に活用して、地域で最も信頼されるメディアコンテンツグループとして地域社会の経済や文化の発展に寄与し続けられるようCBCグループを発展させていきます。
〈メディアコンテンツ関連〉
メディア環境は、スマホの普及や動画配信サービスの拡大などで競争が激しくなり、テレビのPUT(総個人視聴率)は減少傾向にあります。しかし、多様化によりメディアへの接触時間は増え、動画需要が高まりをみせており、放送各社も配信事業を拡大させています。同時に広告需要も、インターネット広告費がけん引役となり国内の広告需要は年々高まっていますが、放送メディアの広告費は高まる需要を取り込みきれず微減あるいは横ばいとなっています。この状況下、当社は、「中期経営計画2024-2026」に、従来の放送ビジネスの拡大と新たな収益の柱を築く戦略を盛り込み、エリアでのシェア向上やデジタル領域での事業拡大をめざしていきます。計画では、「従来の放送ビジネス」の再価値化(リブランディング)で視聴率の向上と広告価格の適正化をめざす一方、「新たな柱」として、アニメ、ドラマ、映画など「知的財産(IP)事業」や放送枠以外の商品を開発する「ビジネスプロデュース(BP)事業」を成長させ、新たな収益ポートフォリオの構築を進めます。
IP事業の取り組みとして、2024年4月に放送を開始する日曜夜のアニメ放送枠を『アガルアニメ』(日曜23:30~24:00)と称してブランディングし、CBCテレビ発の全国へ向けて放送します。様々な作品の放送や系列局であるTBS、MBSのアニメ枠と連携するなどし、アニメファンだけでなく多くの視聴者の方との接点を増やしていきます。
BP事業は、既存のCM枠収入とは異なるスポンサー由来の新規ビジネスの総称です。CBC資産のIP等を活用したクリエイティブ、デジタル、リアルなどを組み合わせ、複合的にスポンサー向け商品の開発を行っていきます。
現在放送中の番組では、2023年10月に放送開始した『デララバ』(水曜 19:00~20:00放送)が、東海地方のグルメや人気スポット、そして文化を紹介し、幅広い層の方に支持をいただいています。今後も、「東海3県の皆が知っているつもりのド定番」を深掘りするコンセプトに磨きをかけていきます。平日の夕方のワイド番組『チャント!」(月~金曜 15:49~19:00放送)は、メインMCが交代し、「ジモトがもっと好きになる!」をコンセプトに、ニュースや調査報道、そして生活情報を分かりやすく伝えて「信頼」を継承していくほか、視聴率が好調な『ゴゴスマ』(月~金曜 13:55~15:49放送)や『花咲かタイムズ』(土曜 9:25~11:45放送)も新たな企画の開発などにより番組の底上げを図ります。CBCラジオも、2024年4月、朝の情報番組をリニューアルし、『CBCラジオ#プラス!』(月曜~金曜 6:30~9:00放送)がスタートしました。CBCの中堅、若手アナウンサーらがパーソナリティを務め、より幅広い世代の方にお楽しみいただける番組をめざします。
多様化するメディア環境への対応としては、インターネット配信プラットフォームへオリジナルコンテンツを供給する他、Locipoなどで有料のプレミアムコンテンツの配信も行っていきます。さらに、グループ各社において、VR、ARへの展開やAIを活用したコンテンツ制作について研究・開発に取り組み、デジタル推進を加速していきます。
一方で、放送機能の先進化に向けては、テクノロジーの進展に合わせた新たな設備投資も必要です。また、報道機関を持つ当社グループは、いつ、いかなるときも、その役割を果たし続けていく使命があるため、財務基盤を常に強化し続ける必要があります。そして、人材面では、変化する社会に柔軟に対応できるよう、多種多様な人材の採用・育成を行うとともに、DX推進による効率化、競争力の維持・強化にも取り組んでいきます。
〈不動産関連〉
保有資産の「選択と集中」戦略に基づき、新たなポートフォリオの構築を行った不動産関連事業は、安定的な収益をもたらしました。引き続き、保有資産の収益率向上に努め、グループを支える収益基盤の強化に向け、さらなる高度利用の検討を進めていきます。
〈その他〉
その他の各社における事業に関しては、メディアグループの一員として放送事業を支える機能を強化するとともに、CBCのブランド力を活かしたさらなる連携、協業を推進し、グループ外売上の拡大を図ります。
メディアコンテンツグループとしての使命、SDGs達成への貢献
当社は、当地域でいち早く「SDGメディア・コンパクト」に加盟し、テレビやラジオなどを通じて啓蒙活動に注力してきました。CBCグループはSDGs宣言をし、地域に根差したメディアコンテンツグループとして、SDGs達成に貢献していきます。
~CBCグループSDGs宣言~
CBCグループは、国際社会の共通目標として掲げられたSDGsに賛同し、「地域で最も信頼されるメディアコンテンツグループ」を目指して、様々な価値の創造、正確で有益な情報発信を続けていきます。
「未来にワクワクを」をキーワードに、視聴者・リスナーをはじめ、地域の皆さまとともに様々な問題を考え、行動し、全ての人が笑顔で日々を暮らせる未来を目指します。
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