三越伊勢丹ホールディングス 【東証プライム:3099】「小売業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、創業以来一貫して“お客さま第一”の精神を持ち、常に時代の変化や価値観の多様化に合わせ、生活に豊かさを提供することに邁進してまいりました。長期に目指す姿を「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」と定め、その実現に向け、中期経営計画(2022年度~2024年度)に取り組んでおります。今後も、「お客さまのお困りごとを感動的に解決し、関心ごとに対し革新的に提案する」ことを通じ、さらなる企業価値の向上を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、営業利益をはじめとする複数の経営指標を掲げ、将来にわたる企業の持続的成長と企業価値の向上に取り組んでおります。現中期経営計画(2022年度~2024年度)の最終年度となる2024年度には640億円の実現を目指してまいります。
(3)経営環境及び対処すべき課題
①事業構造
当社グループは、持株会社である当社のもと、百貨店事業を中心とした各事業会社により構成されています。
このうち主要事業である国内の百貨店事業では、収支構造を抜本的に見直すことを目的とした「百貨店の科学」の取り組みを首都圏店舗だけでなく地域店舗にまで波及浸透させ、経費コントロールの徹底により収益構造が大幅に改善しております。今後は、デジタルを活用し、要員構造変革期を見据えた業務改革を推進し、個客業へビジネスモデルを転換しながら、生産性向上と高収益化の確立を目指してまいります。
また、不動産事業では全国の保有不動産のバリューアップや、百貨店で培った建装事業・物流事業の外部への販売活動をさらに強化してまいります。金融事業では百貨店と連携したファイナンスや金融サービスを拡大提供することで、より強固な事業ポートフォリオの構築を目指してまいります。
②市場環境
当社グループを取り巻く環境は大きく変化しており、そのスピードも高まっております。足元のマクロ環境においては、ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスクの顕在化、資源・エネルギー価格の高騰や急激な為替変動、大幅な物価上昇等、当社グループに影響を与える不透明な状況が増しております。
中長期における環境の変化として、人口動態においては国内人口の減少や高齢化の進行が見込まれておりますが、世界人口はアジア圏も含め引き続き増加すると予測されております。経済成長においては、1人当たり実質GDP成長率の鈍化が見込まれておりますが、純金融資産1億円以上を保有する世帯数は増加が予測されております。小売市場においては、縮小が見込まれておりますが、一方でこだわり消費市場の拡大が予測されております。当社グループでは、環境が大きく変化する中でも成長が見込まれる要素を機会ととらえて、中長期的な成長を目指してまいります。
③競合他社との比較
主要事業である百貨店事業において、重点戦略である「高感度上質戦略」による、店舗リモデルと外商改革の取り組み等を強化した結果、首都圏店舗の大幅な増収増益につながりました。さらに首都圏店舗と地域店舗による個人外商の連携、拠点ネットワークによる地域百貨店へのMD供給フローの構築により、岩田屋本店(福岡)や丸井今井札幌本店等の地域主要店舗も大幅に増収増益となりました。今後も、高感度上質コンテンツの提供拡大と外商活動等の強化を継続し、百貨店事業の収益拡大を目指してまいります。また、「連邦戦略」により、百貨店事業の法人外商による各事業の外部販売を強化することで、国内関連会社の収益を改善することができました。今後は、デジタルを活用したマーケティング活動を強化しながら個客軸での品揃えや、各事業の連携による連邦事業機会を最大化させて、さらなるグループの収益拡大を目指してまいります。
④顧客動向・顧客基盤
重点戦略に位置づける「個客とつながるCRM戦略」の推進により、「三越伊勢丹・カスタマープログラム」の強化と個客軸のマーケティングを高度化させることで識別顧客の客単価が継続拡大しました。つながる個客数の拡大としては、アプリ会員の新規獲得が大きく伸長し、顧客の識別化が順調に進展しました。
外商顧客施策では、デジタルの活用で顧客分析による商品提案を高度化させ、全国の外商顧客の売上高が継続して拡大しました。インバウンド顧客においては、海外顧客向けの外商機能とSNSによる販売促進を拡充させ、インバウンドによる売上高がコロナウイルス感染症拡大前の2018年度を上回りました。今後も、より一層「個客とつながるCRM戦略」を推進し顧客基盤の拡大を目指してまいります。
(4)中長期的な経営戦略
当社は、長期に目指す姿とする「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」の実現に向けて、昨年制定した「三越伊勢丹グループ 企業理念」により、グループの力を集結させながら、さらなる企業価値の向上を目指してまいります。
「再生」「まち化準備」「結実」の3つのフェーズで長期スパンでの持続的な成長を描き、重点戦略をバックキャストで組み立てております。本年度「再生」フェーズの早期達成が現実的となり、「まち化準備」フェーズとなる次期中期経営計画の策定をスタートいたしました。次期中期経営計画は、まち化の着工と竣工時期を踏まえて2025年度~2030年度の6ヶ年を対象とし、この期間を個客業への変革を進める重要な準備期間として位置づけております。
「まち化準備」フェーズでは、今までの“館”の力だけに頼ったマス向けのビジネスモデルから、「まち」の力を加えることで世界中からお客さまを集め、識別してつながったお客さまに多様な顧客価値を提案する個客業のビジネスモデルへの転換を目指してまいります。これまでの「高感度上質戦略」「個客とつながるCRM戦略」を土台としながら、百貨店事業を各事業が補完する体制から全事業が並列となる体制へ移行していきます。各事業を推進することで生まれるユニークな顧客体験と事業間の連携による「連邦戦略」を組み合わせて、一人ひとりのお客さまに向けた多様な顧客価値を提供してまいります。
■事業別戦略
①百貨店事業
百貨店事業では、「まち化」の中核として圧倒的な独自性で世界から顧客を集める“特別な”百貨店を目指します。世界からの集客に向けて、高感度上質コンテンツの拡充や顧客接点の拡大により、マーチャンダイジング活動を強化していきます。加えて、100%識別顧客化に向けて外国人顧客向けアプリの導入、三越伊勢丹アプリの利便性向上に取り組みます。基幹店舗は、それぞれのコンセプトで独自性を磨き、世界中のお客さまから選ばれる店になるためのリモデル投資を行います。地域百貨店は、地方都市において“高感度上質消費”を最も幅広く支え、グループ力を活かして地域貢献できる唯一無二の存在を目指してまいります。
②海外事業
海外事業では、選択と転換を加速し、“小売”の暖簾価値と“不動産開発”によるバリューアップで新たなビジネスモデルを展開します。エリアコンディションに応じた構造改革や、国内百貨店の事業改革モデルを海外店舗へ展開することで事業構造改革を推進します。また、フィリピン・マニラ、タイ・バンコクではレジデンスやオフィスを小売と掛け合わせた複合不動産開発に参画しております。
③不動産事業
不動産事業では、世界中から顧客を集め、用途をつなぎ合わせ、まちの価値を最大化させる“まち化”の具現化を目指します。まち化における各開発計画と顧客価値設計を本格化させながら、ホテルやレストランなどの高感度上質コンテンツの探索や専門人財の育成に取り組みます。
④金融事業
金融事業では、暖簾の価値とグループ顧客基盤を活かし、“ならではの価値”を提供する金融サービス業を確立します。カード領域では、ファイナンスを強化しながら、アプリ会員などの百貨店ライトユーザーに向けた年会費永年無料のエントリーカードを導入します。金融領域では、百貨店ならではの金融サービスを拡充させるとともに、カード会員以外へのサービス提供に取り組みます。
⑤国内関連事業
国内関連事業では、「BtoB」「BtoC」ビジネスの拡大による、各事業の収益拡大とビジネスモデルの進化を目指します。連邦によるマネタイズを拡大しながら、各事業のユニークポイントを強化し、外部収益をさらに拡大していきます。
- 検索
- 業種別業績ランキング