三菱HCキャピタル 【東証プライム:8593】「その他金融業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社は、経営の基本方針である「経営理念」、「経営ビジョン」および「行動指針」を以下のとおり定めています。
「経営理念」は、長期的な視点でめざす“ありたい姿”、「経営ビジョン」は、この“ありたい姿”を実現するためにめざすべきもの、「行動指針」は、経営理念・経営ビジョンを実現するために社員一人ひとりが持つべき価値観・心構え、取るべき行動です。
◎ 経営理念
わたしたちは、アセットの潜在力を最大限に引き出し社会価値を創出することで、持続可能で豊かな未来に貢献します。 |
◎ 経営ビジョン
・ 地球環境に配慮し、独自性と進取性のある事業を展開することで、社会的課題を解決します。 ・ 世界各地の多様なステークホルダーとの価値共創を通じて、持続可能な成長をめざします。 ・ デジタル技術とデータの活用によりビジネスモデルを進化させ、企業価値の向上を図ります。 ・ 社員一人ひとりが働きがいと誇りを持ち、自由闊達で魅力ある企業文化を醸成します。 ・ 法令等を遵守し、健全な企業経営を実践することで、社会で信頼される企業をめざします。 |
◎ 行動指針
・ チャレンジ : 未来志向で、責任を持って挑戦する。 ・ デジタル : デジタルリテラシーを高め、変革を創り出す。 ・ コミュニケーション : 対話を通じて相互理解を深め、社内外のステークホルダーと信頼関係を築く。 ・ ダイバーシティ : 多様性を受容し、相互に尊重する。 ・ サステナビリティ : 人・社会・地球と共生し、持続可能な世界を実現する。 ・ インテグリティ : 高い倫理観を持ち、絶えず基本に立ち返る。 |
(2)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題
① 経営環境
昨今の外部環境の変化は激しく、「地政学と経済」「気候変動」「テクノロジーの広がり」「人口動態」「富の格差」といった中長期的に内外経済の動向を左右する潮流、メガトレンドを認識する必要性が増しています。
このような外部環境の変化の中で、当社グループに求められる役割は、従来型のリース・ファイナンスに加えて、事業投資・運営などを通じた社会的課題の解決へと変化しています。また、想像以上のスピードで産業レベルでのビジネスモデルチェンジが生じるとみられ、各企業が環境変化に適応していくうえでは、アセットに関する多様な機能を有し、金融機能にとどまらない柔軟なサービスを提供する当社グループの存在意義がさらに高まるものと考えています。
このような状況を踏まえ、当社グループは、2023年度(2024年3月期)からの3年間を対象期間とする中期経営計画(以下、2025中計)を策定、2023年5月に公表しました。
② 当社グループの進むべき方向性と2025中計骨子
当社グループは、10年後のありたい姿として「未踏の未来へ、ともに挑むイノベーター」を掲げました。これを実現するために、データ等、有形・無形のアセットの潜在価値を最大限に活用したサービスや事業経営などを推進することで、「ビジネスモデルの進化・積層化」を進めています。
その推進においては、環境・社会・経済的課題の解決を通じた持続的な成長とともに、成長性・資本収益性・財務健全性の3つのバランスをとり、バランスシートの最適化を実現することで、中長期的な企業価値の向上をめざします。
2025中計は、「10年後のありたい姿」にむけた3次(「ホップ」・「ステップ」・「ジャンプ」)にわたる中期経営計画における「ホップ」として位置づけ、「ステップ」・「ジャンプ」に向けた飛躍につながる「種まき」と「足場固め」をキーワードに取り組んでいます。
③ 事業戦略
ビジネス類型
当社グループのビジネスを以下の5つに分類しており、事業ポートフォリオ変革を実現するために「ビジネスモデルの進化・積層化」を進めます。
ビジネスモデルの進化・積層化のイメージ
「ビジネスモデルの進化・積層化」は、「既存ビジネスの収益力強化と効率化」、「既存ビジネスから高付加価値サービスへのシフト」、「新事業の開発」を同時に行うことにより進めます。
・「既存ビジネスの収益力強化と効率化」
①カスタマーファイナンス、②アセットファイナンスは、強固な顧客基盤からの安定的キャッシュ・フローを創出する収益基盤の位置づけです。一方で、リターンは相対的に低い資産もあるため、収益力を強化していくとともに、低収益資産の圧縮等も着実に進めていきます。
・「既存ビジネスから高付加価値サービスへのシフト」
①カスタマーファイナンス、②アセットファイナンスの顧客基盤を維持・拡大のうえ、これらの既存ビジネスを③ファイナンス+サービス、④データ活用プラットフォームサービスといった高付加価値サービスにシフトし、顧客への提供価値を向上させ、リターンを高めていきます。
・「新事業の開発」
④データ活用プラットフォームサービス、⑤アセット活用事業のような「新事業の開発」を進めていき、③ファイナンス+サービスとともに中長期的な利益成長の柱とすべく注力していきます。
事業戦略の前提
利益成長は、「ビジネスモデルの進化・積層化」を通じて、事業ポートフォリオやアセットの質を中長期的に転換していくことにより実現します。そのためにも、配当後のキャッシュ・フローは中長期的視点で積極的に投資していきます。
その取り組みを下支えするため、バランスシートを最適化することで中長期的な資本収益性と財務健全性を両立し、企業価値を最大化していきます。
セグメント別の事業戦略
セグメント別の事業戦略の方向性は以下のとおりです。
セグメント | 事業戦略の方向性 |
カスタマーソリューション | ・各パートナー企業とPoC※1を積み重ねてきた多くの新サービスを開始し、収益性を向上。 ・顧客への付加価値提供・経営課題解決に繋がるソリューションを創出し、社内連携・横展開の促進により、「ビジネスモデルの進化・積層化」を加速。 ・新たな顧客情報管理システムの構築・活用および人員の配置転換実施により、営業精度向上・効率化など営業プロセスを変革。 |
海外地域 | <欧州> ・脱炭素分野等における新規優良資産の積み上げや、中古車売却益の増加等の収益拡大戦略を推進。 ・資金調達コスト低減等による金利手数料の拡大。 <米州> ・金利環境の落ち着きに加え、プライシング基準の見直し等の施策実現による手数料拡大。 ・商用トラック向け販売金融事業において、第三者評価を踏まえ与信リスクのコントロールモデル・プロセスの見直しを実施。 ・適切なリスクリターンを実現するための事業ポートフォリオの分散・再構築。 |
航空 | ・機体/エンジンリース、エンジンパーツアウト※2、および本邦ビジネス間の連携による収益性向上。 ・M&A等を通じた良質なポートフォリオの安定的拡大。 ・脱炭素社会を見据えた事業・サービスの拡大。 |
ロジスティクス | ・コンテナリース事業における新規投資による案件積み上げ、オペレーションのさらなる高度化による高稼働率を維持。 ・北米貨車リース事業における好採算案件の獲得、資産回転型オペレーションの強化による売却益の継続的な獲得。 |
環境エネルギー | ・国内保有電源量(太陽光・風力等)のさらなる拡大(2024年度中に1,000MW超到達)。 ・国内太陽光・バイオマス発電事業におけるマイノリティ出資の発電事業の売却加速。 ・2024年4月に20%出資を実施したEuropean Energy A/S(再生可能・次世代エネルギー事業会社)を通じた欧州での再生可能エネルギー発電事業の展開。 |
不動産 | ・国内における開発強化・付加価値向上による期中収益の向上、物件売却益の継続的な獲得。 ・国内ファイナンス事業におけるO&D※3およびポートフォリオの再構築。 ・米国問題案件における損失抑制、回収極大化。 |
モビリティ | ・国内外のEV統合型サービスを拡充。 ・国内オートリース会社2社の合併によるコスト圧縮および営業力強化。 |
※1 PoC(Proof of Concept):新しいアイデアや技術の実現可能性を検証すること。
※2 エンジンパーツアウト:中古エンジンを解体し、その各部品を販売する事業。
※3 O&D(Origination & Distribution):不動産ノンリコースローンにつき、優先部分と劣後部分に分けるなど一部の債権を外部に売却等することで収益性を高めるビジネスモデル。
組織横断重要テーマ
組織横断的に当社グループの総力を挙げて取り組んでいくテーマを以下のとおり設定しています。
各テーマは、当社グループだけではなく、パートナー企業とともに社会的課題の解決を通じて社会価値を創造し、持続可能で豊かな未来に貢献していく、当社のありたい姿につながるものとしています。
| 将来のめざす姿 |
水素 | 国内屈指の再生可能エネルギー電源保有者として、 グリーン水素製造を軸とした水素サプライチェーンの構築に貢献。 |
EV関連 | EVを起点にカーボンニュートラル社会の実現に貢献。 |
物流 | 物流サプライチェーン上の社会的課題・顧客ニーズに対し、 有力パートナーとの協働による最適な物流ソリューションの構築・提供を 通じて、物流サービスのフルラインナップ化を実現。 |
脱炭素ソリューション | 脱炭素社会の実現に向けた総合サービス提供者への進化。 |
④ 経営基盤強化戦略
以下の4つの戦略を中心に経営基盤を強化しています。
| 2025中計主要施策 |
人材の育成・確保 | ・ サーベイ等を活用した社員エンゲージメントの向上。 ・ 経営戦略の実現に資する人材ポートフォリオの形成。 ・ 戦略的な人的資本開示。 |
財務基盤・社内基盤の 強靭化 | ・ 安定的かつ良質な資金調達と調達余力の拡大、ALM※体制の高度化。 ・ 事業ポートフォリオ変革に対応した審査、管理態勢の再構築。 ・ 新事業、ビジネスモデルに対応した最適なシステムの構築。 |
コーポレートガバナンス 体制の強化 | ・ 連結経営体制の強化によるグループ一体運営の推進。 ・ ビジネスの進化や変化に対応する統合リスク管理の高度化。 ・ グローバルベースの監査一体運営体制の構築。 |
ステークホルダー エンゲージメントの向上 | ・ 財務、非財務情報の開示内容の拡充、発信手法の多様化。 ・ 外部ステークホルダーとのコミュニケーション強化。 ・ サステナビリティに関する取り組みの推進、強化。 |
※Asset Liability Management:資産、負債の総合的な管理
⑤ 変革を促す仕組み
変革の実現に向けて障害となるものを取り除き、変革に向けた意識改革を実施します。
従来の延長線ではない新たな視点で各種施策においてスピード感を持って推進します。
| 打ち手の方向性 |
1 変革の土壌を「整える」 | 全社員の変革意識の醸成。 |
2 変革を「生み出す」 | 変革に資する取り組みが活発に生み出されるための仕組みを構築。 |
3 変革を「推進する」 | 効率的な意思決定プロセスや権限委譲等を進めることでアジャイル(迅速)な検討態勢を構築し、変革を推進。 |
(3)優先して対処すべき事業上の課題
当社グループは、「10年後のありたい姿」の実現のために、データ等、有形・無形のアセットの潜在価値を最大限に活用したサービスや事業経営などを推進することで、「ビジネスモデルの進化・積層化」を進めています。
この「ビジネスモデルの進化・積層化」を進めていくには、社員一人ひとりの意識改革が必要だと考えています。そのための仕掛けとして、「変革を促す仕組み」を構築します。「変革を促す仕組み」として、「変革の土壌を整える」、「変革を生み出す」、「変革を推進する」の3つの切り口から打ち手を実施し、従来の延長線ではない新たな視点で各種施策を実行しています。
また、2025中計は、「10年後のありたい姿」に向けた3次(「ホップ」・「ステップ」・「ジャンプ」)にわたる中期経営計画における「ホップ」としての位置づけであり、変革に向けた社員の意識改革をはじめとした「ステップ」・「ジャンプ」の飛躍につなげるための「種まき」と「足場固め」に資する戦略に取り組んでいます。
(4)目標とする経営指標
2025中計の対象期間である2023年度から2025年度(2024年3月期から2026年3月期)において、以下の財務目標および非財務目標の達成をめざします。
(財務目標)
項目 | 目標 | |
財務目標 (2026年3月期) | 親会社株主に帰属する 当期純利益 | 1,600億円(2023年3月期実績比 年平均成長率+11.2%) |
ROA | 1.5%程度(2023年3月期実績比 +0.4pt程度) | |
ROE | 10%程度 (2023年3月期実績比 +1.8pt程度) | |
配当方針 (2025中計期間) | 配当性向40%以上 | ・ 株主還元は配当によって行うことを基本とする。 ・ 利益成長を通じて配当総額を高めていく。 |
財務健全性 (2025中計期間) | A格の維持 | ・ 健全な財務基盤と積極的な投資戦略の両立。 ・ 現行スタンドアローン格付※の維持。 |
(注)ROAおよびROEの算定においては、親会社株主に帰属する当期純利益を使用しています。
※当社単独ベースの信用力評価
(非財務目標)
KPI | 目標(2025中計期間) |
経営戦略に合致した人材ポートフォリオの 充足度(単体) | 人材ポートフォリオの枠組みを策定、充足度を可視化。 |
従業員エンゲージメントサーベイ結果 (単体) | サーベイの内容を精緻化し、分析を高度化。 |
DXアセスメント※1「スタンダード」 レベル以上の人材比率(単体) | 80%以上 |
月平均残業時間(業務効率) (単体) | 14時間以下 |
有給休暇取得率(単体) | 70%以上 |
温室効果ガス排出量(Scope3※2) (連結) | 影響度の高いカテゴリーを主に分析し、Scope3※2を可視化。 |
温室効果ガス排出量(Scope1※2,2※2) (連結) | 2030年度:2019年度対比△55% 2050年度:ネットゼロ |
エネルギー使用量(国内) (単体+国内グループ会社) | 前年度比△1%を継続。 |
※1 DXアセスメント:外部業者提供のDXリテラシー水準を測るツールで、結果によって「ビギナー」
「スタンダード」「エキスパート」の3つのレベルに分類
※2 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用にともなう間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
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