三菱HCキャピタル 【東証プライム:8593】「その他金融業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティについての基本的な考え方
当社は、地球環境の保護や人権の尊重、多様性への対応など、サステナビリティへの取り組みは企業が担うべき重要な社会的責任と考えており、今後、企業が存続していくためには、環境・社会・経済の視点で、課題解決に向けた事業活動に取り組み、ステークホルダーからの信頼を獲得しつつ、長期的な成長をめざすことが必要になると考えています。
(2)マテリアリティ(重要課題)
当社は、当社グループが持続的に成長するうえで優先的に取り組むべきテーマとして、以下の6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。
近年における温暖化による気候変動、人口増加、都市化、資源不足といった地球規模のメガトレンドを背景に、私たちの生活や社会環境はグローバルに大きく変化しており、企業には、脱炭素社会の推進や循環型経済の構築など、多くの課題解決に向けた取り組みが求められています。
当社グループにおいては、今回特定したマテリアリティの重要性を認識したうえで、課題解決に向けた実効性のある経営、事業活動に取り組んでいきます。
当社グループのマテリアリティ
マテリアリティ | 重要性が高いと考える背景 | SDGsとの関係 | |||||||||
脱炭素社会の推進 | ・脱炭素社会の実現に向けた取り組みは、喫緊の課題として、世界的に認知されており、再生可能エネルギー投資、EV化の促進などの成長・有力分野における当社グループの貢献の余地は大きい。 ・この社会的課題の解決に逆行する取り組みの峻別などは、事業面における影響も大きく、重要性が高い。 |
| |||||||||
サーキュラー エコノミーの実現 | ・自社ならびに社会における廃棄を減らすこと、アセットの新たな価値を最大限に活用し、循環型社会に貢献することは、リース業界のリーディングカンパニーとして、その重要性が高い。 ・パートナーとの連携を強化することで、持続可能で豊かな社会の実現に貢献できる。 |
| |||||||||
強靭な 社会インフラの構築 | ・修繕期や再構築期を迎えている国内インフラの整備や、さまざまなパートナーと協業する海外のインフラ支援の積極的な展開、スマートシティの構築は、多くの機会を有する領域。 ・企業間の連携を支援する仕組みの構築、サービスの提供により、その事業の多様化や高度化、効率化に貢献できる。 |
| |||||||||
健康で豊かな 生活の実現 | ・当社を取り巻く、多くのステークホルダーの健康および安全・安心・文化的な生活の保全に関わるサービスの創出と提供は、豊かな未来の実現に向けて、その重要性が高い。 ・企業活動における価値と信頼の源泉は人材であり、従業員のモチベーション向上、優秀な人材の獲得なども、その意義は大きい。 |
|
マテリアリティ | 重要性が高いと考える背景 | SDGsとの関係 | |||
最新技術を駆使した 事業の創出 | ・お客さまのDX推進におけるファイナンスニーズを捉え、自社のテクノロジーやデジタル技術の利活用により、その解決を図ることは、新たな事業モデルの開発を促進するもの。 ・代替エネルギーの利活用にともなうサプライチェーンの構築も含めて、多様性と新規性を兼ね備えた事業創出の機会として重要性が高い。 |
| |||
世界各地との共生 | ・国や地域により、抱えている社会的課題は異なることから、地域密着で独自のニーズを捉え、各国・地域のパートナーとの協業などをもって、その解決を図ることの意義は大きい。 ・当社グループの総合力を発揮することで、ともに成長する社会を実現できる。 |
|
※マテリアリティの特定プロセスについては、ウェブサイトをご覧ください。
https://www.mitsubishi-hc-capital.com/sustainability/materiality.html
(3)サステナビリティの基本方針
当社は、グローバルに多くのステークホルダーとのつながりを構築しており、社会的課題の解決に貢献できる、大きなポテンシャルを有しているものと自任しています。そのうえで、お客さまやパートナー企業とともに社会価値を創出することで、持続可能で豊かな未来に貢献していくことを当社のありたい姿として「経営理念」に掲げ、その実現に向けて取り組んでいく姿勢を「経営ビジョン」として定めています。この経営理念、経営ビジョン、さらには、特定されたマテリアリティを一体とした姿勢こそが、当社グループの「サステナビリティの基本方針」となります。
マテリアリティと経営理念・経営ビジョンの関係性
(4)気候変動への取り組み
気候変動問題は、持続可能な社会を実現するために解決すべき重要な課題です。当社グループは、今後、企業が存続していくためには、事業活動を通じてその課題解決に取り組むことが必要になると考えています。また、適切な情報開示により、ステークホルダーからの信頼を獲得することの重要性を認識しており、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同しています。
TCFD提言が推奨する4つの開示項目に沿った情報開示
① ガバナンス
持続可能で豊かな未来社会の実現に貢献する存在となるべく、当社グループでは2021年4月に「サステナビリティ委員会」を設置しました。本委員会は経営会議の諮問委員会の一つに位置付けられ、気候変動問題をはじめとするサステナビリティに関連する重要課題について審議することを目的に開催し、その結果は、経営会議ならびに取締役会にて報告されます。同年12月に公表した「脱炭素社会の推進」を含むマテリアリティについても、サステナビリティ委員会、経営会議、取締役会での議論を経て特定したものです。当社グループは気候変動にともなう事業への影響を把握・管理する取り組みを進め、ガバナンスを強化していきます。
② リスク管理
脱炭素社会への移行にともなう規制変更や技術革新、ビジネスモデルの転換、または地球温暖化にともなう異常気象などは、業績悪化などによる取引先の経営破綻、当社グループが保有するアセットの価値下落など、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、気候変動リスクを全社的なリスク管理における重要なリスクの一つとして認識しており、適切な把握・管理に向けた取り組みを進めていきます。
a. リスクマネジメント態勢の概要
当社グループは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事業などのリスクを「統合リスク管理」の枠組みで総合的に管理しています。
統合リスク管理の枠組みで管理している重要なリスクには、信用リスク、アセットリスク、投資リスク、市場リスク、流動性リスク、オペレーショナルリスクなどがあります。
考えられるリスク要因を管理対象に、各リスクの所管部門が外部環境の変化などによる課題を把握し、定期的にこれらのリスクへの対策を検討のうえ、リスク管理委員会をはじめとした各委員会にて報告・審議しています。また、重要事項は経営会議・取締役会にて報告・審議する管理態勢としています。リスクマネジメント態勢の詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
b. 気候変動リスクの分類、影響事例
気候変動リスクには、気候関連の規制強化・技術革新などにともなう移行リスク、異常気象や気候の変化にともなう物理的リスクがあります。TCFD提言ではそれぞれを政策と法・テクノロジー・市場・評判、急性的・慢性的のサブカテゴリーに分類し、影響事例を示しています。
当社では、気候変動リスクは、信用リスクやアセットリスク、投資リスクなどといった既存のリスクを含む幅広い波及経路を通して、短・中・長期とさまざまな時間軸のなかで影響が発現するものと捉えています。また、当社の事業活動に対する直接的な影響に加えて、当社の顧客を通した間接的な影響の発現も想定されます。
こうしたリスク特性とTCFD提言の内容を踏まえたうえで、当社のリスク管理の枠組みも考慮し、気候変動リスクの影響事例を当社の主要なリスクごとに整理しています。統合リスク管理態勢のもと、気候変動リスクもその他の主要リスクとの関係性を踏まえて、リスクを特定・評価、管理する体制の構築を進めています。
今後、リスク分類や影響事例は、外部環境の変化、気候変動リスクに対する分析・評価の深化に応じて、その見直しを行っていきます。
c. 全体的なリスクマネジメントへの統合状況
気候変動リスクによるその他の主要なリスクへの総合的な影響は、リスク管理委員会にて報告・審議する態勢としています。シナリオ分析を通して判明したリスクも含めて、モニタリング体制を構築するなど、リスク管理全体への反映を進めていきます。また、気候変動に関する目標・計画策定、モニタリング内容は、サステナビリティ委員会にて報告・審議する態勢としています。両委員会の審議内容は取締役会の監督体制のもと、当社の経営戦略全体に反映し、リスクマネジメント全体、個別リスク双方の観点から適切に対応できる態勢としています。
③ 戦略
当社は、将来の気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会を把握し、適切な情報開示、今後の施策の検討を目的に、「移行リスク」および「物理的リスク」に関するシナリオ分析をおこなっています。
なお、シナリオ分析は、現時点で得られる限定的な情報やデータを基に分析したものです。今回得られた分析結果を慎重に解釈し、ステークホルダーとの対話を通じて、今後はより多くの情報と関連データを入手し、分析手法の改良や分析対象事業の拡大を図ることで、適切な開示に反映させることに努めていきます。
a. シナリオ分析の概要
移行リスク分析の概要
対象セクターおよび 主要セグメント | 対象セクター | 主要セグメント |
エネルギー (石油、ガス、石炭、電力会社) | 環境エネルギー・インフラ | |
運輸(航空貨物輸送、航空旅客輸送) | 航空 | |
素材、建築物(不動産管理、開発) | 不動産 | |
シナリオ | 国際エネルギー機関(IEA)が公表しているNet Zero Emissions by 2050 Scenario(NZEシナリオ)およびStated Policies Scenario(STEPSシナリオ) | |
分析方法 | 対象セクターにおける脱炭素社会に向けた機会とリスクを特定し、事業影響を評価(定性分析) |
物理的リスク分析の概要
分析対象 | 環境エネルギー・インフラ事業本部、不動産事業本部、および当社グループの事業所、支店が保有する事業用資産 |
シナリオ | 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表しているShared Socioeconomic Pathways(SSP5-8.5) |
分析方法 | 事業用資産の所在地で起こり得る異常気象、気候の変化が及ぼす事業影響を評価(定性分析) |
b. シナリオ分析結果
シナリオ分析実施対象セグメントである、環境エネルギー・インフラ、航空、不動産、カスタマーソリューションを所管する各本部および全社のリスク管理所管部署であるリスクマネジメント統括部と気候変動が及ぼす当社の事業影響に関する議論を行い、シナリオ分析結果と既存戦略方針との整合性を確認しました。
当社グループは、気候変動に関するリスクと機会について、短期ないし長期にわたる対応策を講じることにより、リスクの最小化および機会の最大化を図っています。移行リスク分析の結果としては、再生可能エネルギーの拡大(環境エネルギー・インフラ)、高燃費航空機・エンジンならびにSAFや水素などの低炭素燃料への移行(航空)、低炭素建物の需要拡大(不動産)などに関連するリスクと機会に適切に対処する必要性が認識されています。また、物理的リスク分析の結果としては、発電所の被災、太陽光パネルなど発電設備の劣化(環境エネルギー・インフラ)、自然災害の激甚化による不動産価値の毀損、建築・運営費用・改修費用の増加(不動産)、当社グループ事業所の被災や運営費用・保険費用の増加などのリスクが想定されています。
気候変動リスクに対しては、適切な対応策を策定する一方、気候変動による機会については、事業機会の獲得を戦略に織り込んでいます。今後、気候変動関連のKPIを中期経営計画の実行の過程で反映し、国内外における関連動向および当社グループの取り組み状況を定期的にモニタリングする体制を整備していきます。
④ 指標および目標
脱炭素社会の実現に向けた取り組みは喫緊の課題との認識から、当社グループの温室効果ガス削減目標をパリ協定に準じて設定し、脱炭素社会への移行を「機会」と捉え積極的に推進していきます。なお、将来的に新規事業の取り組みなどにより温室効果ガス排出量が大幅に増加した場合、あるいは、サプライチェーンを含めたグループ全体の温室効果ガス排出量算定を高度化するなかで数値の変動が生じる場合などにおいては、適宜目標設定を見直す可能性はありますが、いずれも今回設定する目標と同様に、パリ協定の水準に沿うよう設定する予定です。
a. 当社グループの温室効果ガス排出量削減目標
Scope1およびScope2 | 短期(毎年) | 中期(~2030年度) | 長期(~2050年度) |
国内のエネルギー使用量 前年度比 △1% | 2019年度比 △55% | ネットゼロ |
b. 今後の取り組み
当社グループの温室効果ガス排出量の大部分を占めると想定されるScope3カテゴリー11(販売した製品の使用)、カテゴリー13(リース資産(下流))、カテゴリー15(投資)についても計測方法を検討し、開示に向けた議論を行っています。
今後、営業取引に関する温室効果ガス排出状況の見える化、温室効果ガス多排出セクターに対する取り組み方針、および移行計画の策定などを通じて、サプライチェーンを含めたグループ全体の温室効果ガス排出量削減を検討していきます。
(5)人的資本に関する戦略
① 人的資本に関する戦略の方向性
当社は、「人的資本」を蓄積し活用することが、「経営の基本方針」や「経営の中長期的方向性」実現を通じて企業価値を向上させるための重要課題であると認識しています。特に、「経営の中長期的方向性」に示した「SX/DX」と「事業ポートフォリオ変革」を実現し、当社が目標とする経営指標を達成するために、質・量共に必要な「人的資本」を確保・活用してまいります。
2022年度は、「人的資本」の可視化に着手し、「経営の中長期的方向性」に示した「SX/DX」と「事業ポートフォリオ変革」実現に必要な人材と現状の人材のギャップを質・量の観点で検討を開始しました。結果、「経営の中長期的方向性」実現のうえで「人材の質的な転換」「人材の量の確保」の両方が重要であると改めて認識いたしました。
② 成し遂げたいテーマ
「人的資本」の確保・活用(「人材の質的な転換」「人材の量の確保」)にあたって、中長期的に成し遂げたいこととして、2つのテーマを掲げています。
成し遂げたいこと(a) 当社が戦略実現に資する人材(質・量)を育成・確保する(人材ポートフォリオの充足) | 「経営の中長期的方向性」実現に必要な人材の質と量を定義し、人材ポートフォリオを可視化します。 必要な人材と現状の人材のギャップを質・量の観点から把握し、ギャップを埋めるための施策を実施し、必要な人材を充足します。 |
成し遂げたいこと(b) 従業員一丸で価値創造を推進する環境を作る(従業員エンゲージメントの向上) | 当社では、「従業員が仕事に誇りを持ち、自発的に努力して働いている」「自らの能力を活かして働きやすい環境がある」「多様な社員が尊重されている」環境を作ることで、従業員一丸となって価値創造を推進します。 実現にあたっての課題を明確化し、施策を推進することで、従業員エンゲージメントが高い状態を継続的に実現します。 |
③ 取り組み内容
上記の2つの成し遂げたいテーマに対し、2025年度までの中期経営計画期間では、「人材マネジメント基盤の再構築」「エンゲージメント向上の仕組み化」の2つを、当社グループが経営戦略を実現するうえで優先的に取り組んでまいります。「人材マネジメント基盤の再構築」により「人材の質的な転換」を行い、「エンゲージメント向上の仕組み化」により従業員エンゲージメントが高い状態を継続的に実現し、「人材の量の確保」につなげてまいります。
| 取り組み内容 |
人材マネジメント基盤の再構築 | 当社ではこれまで、人材情報を収集・蓄積し、人材活用(配置・育成)に活かしてまいりました。 今後は、「成し遂げたいこと(a) 人材ポートフォリオの充足」のために、人材マネジメント基盤を再構築し、「経営の中長期的方向性」実現のうえで必要な人材像を定義し、人材のさらなる把握と質的な転換に資する育成を行います。 人材の把握では、従業員数をはじめとする量の観点に加え、経験・知識・スキルやコンピテンシー等の質的な要素を扱います。育成(質的な転換)では、人材ポートフォリオ充足のための質的な課題を特定し、能力開発のための施策を行います。 また、人材情報に加えて職務の情報も、体系的に整備することで、人材と職務のマッチングの精度を上げ、適所適材をより一層実現してまいります。 |
エンゲージメント向上の仕組み化 | 当社グループではこれまで、エンゲージメントサーベイを行うことで、足元の課題領域を特定し、改善活動を行ってまいりました。 今後は、エンゲージメントサーベイの指標をKPIとし、結果と原因/プロセスを管理する仕組みを構築・活用することで、能動的な課題設定を行い、施策を推進してまいります。 グループ全体としてエンゲージメントの高い状態を継続的に実現することで、結果として、人材の量の確保にもつなげてまいります。 |
④ 指標および目標
「成し遂げたいテーマ」2点の実現に向けて、2025年度までの中期経営計画期間において、人材ポートフォリオの枠組みを策定し、その充足度を可視化するほか、エンゲージメントサーベイ内容を精緻化したうえで、分析の高度化を図ってまいります。
結果指標KPIと原因/プロセス指標KPIを設定することで、結果指標のモニタリングに加えて、重要な原因/プロセスの特定や効果的な施策の推進を行い、確実な目標達成をめざします。
- 検索
- 業種別業績ランキング