企業三菱製鋼東証プライム:5632】「鉄鋼 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループは、いかなる経営環境の変化にも対応できる企業体質を確立することを重要課題と認識し、競争力ある事業の育成を通じて、持続的かつグローバルに発展することを経営の基本方針としております。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
 

(1)経営環境及び対処すべき課題

①当社グループの対処すべき課題

 当社グループは昨年、2023年度~2025年度の3ヵ年を対象とする「2023中期経営計画」を策定・公表しました。今回の中計では、まず2030年のありたい姿として「人を活かし、技術を活かし、時代の波に乗りつづける企業でありたい」と定め、そこからバックキャストしたこの3年間の実行施策を立案しました。2022年度で終了した「2020中期経営計画」で残された経営課題や非財務課題の解決と、「2030年のありたい姿」に向けた次なる飛躍の助走を同時に行ってまいります。

   2023年度は中計初年度として、前中計より大きな課題となっていた北米ばね事業では、撤退覚悟で顧客との売価アップの交渉を粘り強く行った結果、ほぼすべての顧客と妥結し、大幅な損益改善を果たしました。これは当社の存在意義を認めて貰った結果であり、事業再建にも目途が立ったことで、財務体質を強化するため増資も実施しました。一方、特殊鋼鋼材事業では、主要需要先である建設機械向けは中間在庫調整の影響もあり需要が急減、また産業機械・工作機械向けも需要低迷が継続しています。さらには原材料市況の高止まりと円安進行による調達コスト上昇等の影響もあり、前期に比べ損益が悪化しました。加えてばね事業の海外子会社で減損損失を計上したことにより、当期純利益は大幅に悪化し損失を計上しました。

   こうした業況の中で、当社としては以下を課題と認識し、取り組みを推進することで市場評価を改善させてPBRを向上させることが重要と認識しています。

(当社の対処すべき課題)

   ① 稼ぐ力の徹底的な強化(ROE向上)

  ② 戦略事業の育成

  ③ 非財務関連の取り組み推進(カーボンニュートラル、人材への投資等)

     当社のPBRは1倍を下回る状態が長期に渡って続いておりますが、その最大の要因としては十分なROEを確保できていないことが挙げられます。コスト削減と売価改善によるマージンの維持・拡大に加えて、成長分野である洋上風力等向けの高付加価値製品の開発・市場投入や、採算性による製品ポートフォリオの見直しなど、稼ぐ力の徹底した強化を図っていきます。またROICを用いて資本効率性の点から事業ポートフォリオの最適化を進め、不採算事業の撤退・売却を含めた事業性判断を速やかに行っていきます。これら施策によりROE向上を実現し、安定して利益成長を続けていくことのできる事業構造を構築してまいります。

    また「環境対応」「海外事業」「EVシフト」をキーワードとした5つの戦略事業の育成を進めています。足元では海外鋼材事業において、増産に向けた設備増強投資を行っている他、精密部品事業では2024年度より大型案件が立ち上がることで収益への貢献が期待されます。また特殊合金粉末事業や洋上風力関連でも、設備増強による生産体制強化を進めています。これにより、成熟市場である基盤事業に依存している現在の収益構造から脱却し、将来性が期待できる分野へのシフトを進めてまいります。

    これらの取り組みを進めることで、景気変動や不採算事業の損益悪化の影響を大きく受ける現在の事業ポートフォリオからの変革を果たし、業績のボラティリティを改善させるとともに、時代の変化に対応しながら持続的な成長を実現してまいります。

    非財務関連の取り組みも重視しています。社会からの高まる要請に応えるべく、カーボンニュートラル目標について、特に排出量が多い特殊鋼鋼材部門にて再生エネルギー由来の電力使用を前倒しで進めることで、当社の2030年の排出量削減目標を総排出量30%減(従来は約15%減)に引き上げました。また自社で発生するCO2排出量の削減に留まらず、例えば燃費向上に資する軽量化した自動車用ばねなど、社会全体のCO2削減に貢献する製品の開発・販売を進めることで、2050年カーボンニュートラル実現という社会課題の解決に対して、当社の技術力・製品力を用いて貢献してまいります。

    当社の持続的成長を実現するためには、人的資本経営の推進も必要不可欠と考えています。昨年当社として初めて従業員向けエンゲージメントサーベイを実施し、課題の抽出と組織全体での課題認識、改善策の立案と実行、その評価を踏まえたさらなる改善といったサイクルを進めています。特に、経営層が先頭に立って社員の声を聞くタウンホールミーティングを全国の各拠点にて行うなど、トップ主導で企業文化の変革を推進しております。

    こうした事業活動を支える基盤としてのガバナンス体制の強化としては、執行役員の業績連動における非財務比率を高めること、取締役会の議論活性化、安全・品質保証やハラスメント対策を含むコンプライアンス遵守、サイバーセキュリティ対策といったリスク管理の強化も推進してまいります。

    持続的な成長と経営リスクの低減を進めるとともに、株主・投資家の皆様との対話の深化と認識ギャップの解消を進めていくことで、資本コストの低減を図ってまいります。

    一方、株主還元も重要施策と位置付けており、2024年2月には配当方針を見直し、従来の配当性向30%に加え、今中計期間は1株当たり最低60円配当としました。一定金額の配当をお約束することで、株主の方に安心して当社株式を購入して頂きたいとの思いから、今回の方針修正を行いました。

    こうした当社の課題認識とその対応策を実行することで、「2023中期経営計画」で掲げた目標の達成、さらには2030年のあるべき姿の実現を図ってまいります。

 ② 中長期的な経営計画

 1.2030年のありたい姿

  2.2023中期経営計画(2023年度~2025年度)

  [基本方針]

  ①  稼ぐ力の強化

 マージン維持・拡大とコスト削減で稼ぐ力を徹底して追求し、戦略事業拡大および財務基盤強化の原資とする。

    ②  戦略事業の育成

     2023中計で事業拡大に向けた準備と刈り取りを進め、2030年に向けて大きく伸ばす。

 戦略事業に経営資源を積極的に配分し、事業の育成を進める。

    ③  人材への投資

     「人材への投資」を通じて、生産性向上とイノベーションを実現する。

    ④  サステナビリティ経営

      ESGなど財務項目以外の課題を明確にし、持続的企業価値向上を図る。

 これらの基本方針に基づいた各種施策を進め、実績を出していくことで、中長期的な企業価値向上とPBR1倍以上を目指してまいります。

「2023中期経営計画」の詳細については当社ウェブサイト(https://www.mitsubishisteel.co.jp/ir/mid-plan/)をご覧ください。

(2)各事業における重点施策

[特殊鋼鋼材事業]

 当期後半より低迷した国内鋼材の需要動向は、中間在庫調整の影響は徐々に解消を見込むものの、実需ベースでの回復は不透明であり、回復のスピードによっては損益改善が遅れる可能性があります。こうした中でも、円安の追い風を受けた輸出向け鋼材の拡販等を進めることで、損益の確保を図ってまいります。また中長期的には、今後需要の拡大が期待できる海外鋼材事業の強化やEV・洋上風力向け鋼材への参入等、中長期的な需要構造変化への対応も進めてまいります。

 さらに、円安の進行による輸入原材料価格の高騰や、物流費・労務費等の諸コストの高騰に対しては、引き続き売価改善を進めることで、マージンの維持・改善を図るとともに、工場DXによる製造コスト削減や営業系DXの推進による顧客満足度の向上により、基盤事業として稼ぐ力の強化を進めてまいります。

 また、カーボンニュートラルについては、当社の排出量の大部分を占める鋼材部門の室蘭製作所について、2030年度削減目標の引き上げを行いました。目標達成に向け、引き続き施策を進めるとともに、海外事業では、再生可能エネルギー電力等を活用したカーボンニュートラル鋼製造の検討も進める等、社会課題の解決に向けた取り組みも推進してまいります。

 [ばね事業]

 基盤事業である自動車向けばねについては、さらなる軽量化等による競争力強化に加え、損益悪化の要因となっている低採算事業について、事業ポートフォリオの最適化を進めることで、稼ぐ力の強化を図ってまいります。

 当期のばね事業は、長年の課題であった北米MSSCの損益改善により、6期ぶりの黒字となりました。北米MSSCについては、今後は生産性の改善を加速させ、持続的な利益成長ステージに入っていきます。一方で、需要環境悪化等の影響を受け低採算が続く事業については、撤退・売却も含めた事業ポートフォリオの最適化を進めることで、ばね事業全体としてさらなる利益成長を図ってまいります。 
 また、2024年度では戦略事業の一つである高機能ヒンジの大型案件の量産開始を予定しているほか、インド拠点でも現地自動車需要の高まりに応えるべく、生産増強投資を行っています。これらの立上りと収益貢献を計画どおり進めるとともに、将来的には商用車用板ばねにおいて、鋼材事業とのシナジーが発揮できる新拠点への投資等も検討してまいります。

 [素形材事業]

 不採算製品からの撤退と、タイ子会社における売価改善及び固定費大幅圧縮により、損益改善が進んでいます。

 今後に向けては、自動車内燃機関向け部品中心の製品構成からのシフトを進め、戦略事業として位置付ける特殊合金粉末の事業拡大を進めます。顧客の新製品開発にマッチした高性能粉末製品の開発を継続すると共に、生産能力増強投資の検討を進め、収益貢献に向けた準備を進めてまいります。
  さらに将来に向けて、顧客の脱炭素化ニーズに対応すべく、カーボンニュートラル特殊合金粉末の商品化を目指し、市場調査を進めてまいります。

 [機器装置事業]

 環境課題の解決をテーマに事業拡大を目指します。サーキュラーエコノミーに貢献する磁力選別機については、足元の売上は好調に推移しており、事業拡大に向け引き続き拡販を進めてまいります。
  さらに戦略事業の一つである洋上風力発電関連機器向けでは、次期中計期間中で本格化するプロジェクト案件の受注に向け、当社グループの強みである大型化対応の生産能力をさらに強化すべく、増強投資を進めております。

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