三菱瓦斯化学 【東証プライム:4182】「化学」 へ投稿
企業概要
前中期経営計画Grow UP 2023の開始に合わせて、R&D組織の統合・組織改定による研究推進体制整備を行いました。当社の総力を挙げてイノベーションを創出する研究集団として、研究統括部と知的基盤センターにて活動しています。この新体制の下、全社的な視点から経営資源を配分し、研究開発を一層加速することで、既存事業の収益力強化と新規事業の創出を推進しました。また、3つの研究所に計算化学やデータ科学の解析を専門に実施するDXチームを配置した結果、多くの研究テーマに対してDX技術が活用され、研究開発の加速に大いに役立っています。また、研究員に対してデータ科学解析ソフトを自社開発すると共にデータ科学の教育を推進する事でDX技術の全社への普及が進んでおります。また、知的基盤センター技術情報グループでは知的財産、市場情報等を組み合わせて研究開発戦略などを提案するIPランドスケープを開始し、全社に浸透しています。
研究統括部(次世代戦略グループ、新規事業開発グループ)は、ベンチャー企業との連携及び出資、公的研究機関との共同研究など、社外との連携による研究開発活動によって新規事業領域での事業創出を継続しました。また、自ら生み出した医療包材や固体電解質などの事業化を推進するとともに、オープン・イノベーションによるアレルギー診断薬や核酸医薬などの新規領域の事業開発に取り組みました。福島県白河市における工場生産野菜事業では、安心・安全な野菜を社会に提供しています。
子会社の研究開発部門も含めた当社グループの研究開発スタッフは、グループ全体で1,078名であり、総従業員数の約14%にあたります。また研究費の総額は25,629百万円であります。当連結会計年度における各セグメント別の研究内容、研究成果、及び研究開発費は次のとおりであります。
[基礎化学品事業部門]
基礎化学品事業部門内の6つの事業とその周辺に関わるテーマについて研究開発を進めています。
化成品事業部;原料調達から誘導品まで展開する当社メタノール事業のコアとなる製造技術や合成触媒の開発を行っています。循環型社会、カーボンニュートラルへの動きが加速されている中、新潟工場に有するパイロット装置を活用しつつCO2、廃プラ、消化ガス等、多様な原料からのメタノール製造技術の実証試験を進めています。これら多様な資源を活用し製造されるメタノールを「環境循環型メタノール」と定義し、当社の構想・技術・サービス・製品にCarbopathTMとネーミングした上で、その実現に向けてブランディング活動を推進しています。また、DX、自動運転を取り入れたプラントの運用やメタノール改質水素製造の見直しにより更なる市場展開等の計画も進めております。
ハイパフォーマンスプロダクツ事業部;主製品としてメタキシレンジアミン、芳香族アルデヒドなどのケミカル製品と、MXナイロン、特殊ポリエステルやシアネートなどのポリマー材料製品群があります。メタキシレンジアミンは、誘導体を含めて、硬化剤、イソシアネート、ポリアミド向けに好調に推移しており、各種技術開発やコスト改善、国内外の新たな市場開発を進めております。芳香族アルデヒドは、香料や高機能樹脂添加剤向けの販売が堅調であり、増産を達成しています。更なる拡販と高付加価値製品の開発による収益力の強化を努めています。MXナイロン系製品では、新グレードであるバイオベースポリアミドが自動車・電子部品用途等で販売量を拡大させており、食品向けバリア包材用途向け基本グレード含め、更なる拡大に向けてTS、技術改善を行っております。特殊ポリエステルやシアネートも高耐熱樹脂、高機能熱硬化性樹脂原料として新規開発及び市場展開を進めており、それぞれ哺乳瓶用途や複合材料原料としての採用が進んでいます。また、当社としても複合材料市場に参入すべく研究開発を行っており、US/EU/国内での市場開拓を進めております。その他、半導体関連材料向け原体は開発が進みユーザー評価も良好であり、更なる採用拡大が期待されています。また、透明ポリイミド、熱可塑性ポリイミドについても早期の採用拡大を目指し市場開拓検討を進めております。
基礎化学品第一事業部;メチルアミン・アンモニアやMMA系製品を取り扱っています。国内唯一のメチルアミン製造会社であり、誘導体の引合いも多く、増産を検討しています。MMA系製品は安定生産に向けた技術改善を進めるとともに、独自性のある新規誘導品の開発も行っております。
基礎化学品第二事業部;ホルマリン・ポリオール系とキシレン分離・誘導品の2製品群を扱っています。関連会社との協業、キシレン分離・異性化のプロセスコストダウン、特殊ポリオール製品群の競争力強化等を行っています。市況変動等の外部環境変化の影響を低減すべく、川下の特殊化学製品群への展開を進めています。
エネルギー資源・環境事業部;天然ガスの開発・生産、LNG発電や地熱発電、枯渇油ガス田を活用したCCSの検討も手掛けています。この中でも新潟に賦存する水溶性天然ガスは地産地消が可能な資源であり、貴重な輸出資源であるヨウ素も豊富に含まれることから、ヨウ素誘導体関連技術の開発を進めております。また、エネルギー・資源に関わる研究として、メタノール直接型燃料電池の開発・製造・販売も手掛けております。
ライフサイエンス部;これまでに蓄積した発酵・培養・精製技術を活用し、高齢化社会のニーズに即したアンチエイジング素材であるピロロキノリンキノン(PQQ)、栄養成分を豊富に含むS-アデノシルメチオニン(SAMe)含有乾燥酵母、スペルジミン(SPD)含有乾燥酵母等の新規サプリメント原料として開発・販売しています。これら製品の機能を深堀調査するとともに、新規に機能性乳酸菌の開発も進めており、また収益基盤を更に強化すべく、設備増強を計画中です。抗体医薬事業では、合弁会社として設立した株式会社カルティベクスの1000L・2000Lの培養槽にて、複数の治験薬・原薬製造案件の受託製造を行っております。
当該事業部門に係る研究開発費は10,753百万円であります。
[機能化学品事業部門]
機能化学品事業部門では、5つの事業分野とそれらの周辺分野において、情報通信、医・食、モビリティ、インフラ領域をターゲットとし、以下の研究開発活動に取り組んでいます。
無機化学品事業;過酸化水素とその誘導体については、生産技術のブラッシュアップによるコスト競争力強化を継続的に進めています。また、食品・医療向け新製品として過酸化水素誘導体を開発し、拡販に取り組み採用実績を伸ばしています。電子工業向け薬品は、主力の超純過酸化水素をはじめ、機能性薬液(HBC)や化学研磨液を展開しており、とりわけHBCに代表される高機能電子工業用薬品は、海外各拠点の開発体制強化により、最先端半導体デバイス向け新規グレードの開発と市場投入を促進し、採用実績の拡大に努めています。
電子材料事業;電子材料分野では、情報通信技術の高度化や多様性に応える高周波回路用材料やデータ通信の大容量化に対応するメモリおよびロジック半導体パッケージ基板用積層材料、加えて電子部品の低背化と高機能化を実現できる薄葉積層および微細回路形成材料等の開発を推進しています。
合成樹脂事業;ポリカーボネート樹脂については、素材品質向上のための技術開発や熱成形用ハードコートフィルムや新規光学フィルムなどの機能性フィルム、さらに繊維強化熱可塑プラスチック(FRTP)といった高付加価値製品の開発に取り組んでいます。また、カーボンニュートラル、SDG'sに向けた取り組みとして、二酸化炭素を原料とするポリカーボネート中間体および樹脂素材の開発(NEDOグリーンイノベーション基金に採択)を行っており、プロセス開発、スケールアップ検討に取り組んでいます。その他、バイオマスBPAを用いたポリカーボネートの製造検討やグリーンメタノールを用いたポリアセタールの製造検討にも取り組んでいます。
光学材料事業;光学樹脂ポリマーは、スマートフォン向け小型カメラレンズ用材料を中心にAR/VR、センサー分野への展開を図っており、用途に応じた新規グレードの開発と市場投入を進めています。さらに、リサイクル技術の確立にも取り組んでいます。眼鏡用レンズモノマーは、ユーザーニーズに対応した新製品開発と市場投入を進めていますが、この度バイオマス由来のレンズモノマーを新たに開発し、市場投入を計画しています。また、これまでに培った知見を活かし、次世代デバイス向け新規光学材料の開発にも取り組んでいます。
脱酸素剤事業;脱酸素剤は、今日では食品の鮮度保持にとどまらず、医薬品の保存安定性維持や、錆を防ぎたい金属部品、文化財の保護など身近な生活分野にも展開しています。環境に配慮した製品設計を心掛け、プラスチックを減量した小型化製品の開発や、最新の法規制に対応する製品の開発も進めています。また、培ってきた環境(雰囲気)制御技術を応用することで、精肉や青果などのフードロスを削減できるような技術開発を進めています。
上記以外に、新規材料開発として、各分野の周辺材料や基盤技術を他の市場・用途に展開できる製品開発を精力的に進めています。
当該事業部門に係る研究開発費は14,875百万円であります。
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