三菱商事 【東証プライム:8058】「卸売業」 へ投稿
企業概要
当社の企業理念である「三綱領」には、事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力し、かけがえのない地球環境の維持にも貢献することがうたわれています。近年、さまざまな社会課題解決に対する企業への期待・要請が一層高まっている中、当社は、事業活動を通じて解決していく重要な社会課題である「マテリアリティ」を指針とし、「中期経営戦略2024」で打ち出したMC Shared Value(共創価値)を創出し続けることで、社会と共に成長を続けることを目指しています。マテリアリティの詳細については「サステナビリティ・レポート2022(2023年2月28日時点)」の「マテリアリティ」をご参照ください。
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/esg/
1.ガバナンス
(1)サステナビリティ推進体制
サステナビリティ関連のリスク及び機会に係る戦略の策定及びリスク管理は、コーポレート担当役員(CSEO)が管掌し、サステナビリティ部が方針施策を企画・立案のうえ、サステナビリティ・CSR委員会で討議後、社長室会、取締役会に付議・報告される体制となっています。社長室会を経営意思決定機関とする業務執行体制は、全社のコーポレート・ガバナンス体制のもと、取締役会、監査役会により監督・監査されています。業務執行体制におけるサステナビリティ関連のリスク及び機会の評価並びに管理については、「2. リスク管理」に記載しています。当社のコーポレート・ガバナンスの基本方針及び全社のコーポレート・ガバナンス体制の概要については、第4 提出会社の状況4 コーポレート・ガバナンスの状況等の「(1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載していますが、サステナビリティ推進に係る部分のみを抜粋すると下図のとおりとなります。
(2)ガバナンスの状況
① 取締役会
取締役会は経営上のサステナビリティ関連のリスク及び機会を含む重要事項の決定と、業務執行の監督について責任を負う機関です。取締役会の構成、構成する各個人のスキル、及び監督責任を果たすために適切な取締役を選任するプロセスについては第4 提出会社の状況4 コーポレート・ガバナンスの状況等の「(1) コーポレート・ガバナンスの概要」及び「(2) 役員の状況」をご参照ください。また、取締役の報酬等の決定方針におけるサステナビリティ関連のリスク及び機会に係るパフォーマンス指標の考え方については、同「(4) 役員の報酬等」に記載しています。
なお、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関しては、サステナビリティ関連施策の基本方針(サステナビリティ関連施策活動方針、サステナビリティ開示方針等)が報告事項となっているほか、取締役会又は社長が必要と認める事項が付議・報告されます。また、取締役会に付議される投融資案件が重要なサステナビリティ関連のリスク及び機会を含む場合は、経済的側面だけでなく、環境・社会性面も含めて審議がなされています。
② 監査役会
監査役会は、会社法等諸法令や定款・諸規程等に基づき、サステナビリティに関する取組も含めて、取締役の意思決定の過程や職務執行状況の監査を実施しています。また、重点監査項目の1つとして中期経営戦略2024のフォローアップを設定しており、サステナビリティ施策も含めた主要項目の進捗を確認しています。監査役会の構成、活動状況は第4 提出会社の状況4 コーポレート・ガバナンスの状況等の「(2) 役員の状況」及び「(3) 監査の状況」をご参照ください。
③ 社長室会
社長室会はサステナビリティを含む経営方針、経営目標、全社経営計画等に関する執行側の最高経営意思決定機関です。社長、並びに社長が指名する執行役員及び職員等が委員を構成しています。サステナビリティ・CSR委員会で討議されたサステナビリティ関連のリスク及び機会に係る全社方針が付議・報告されるほか、投融資案件のうち重要性が高い案件についても付議・報告がなされており、経済的側面だけでなく、環境・社会性面からも審議がなされています。
④ サステナビリティ・CSR委員会
サステナビリティ・CSR委員会は、サステナビリティ・CSR及び社会貢献の基本方針や取り組みについて討議する社長室会の下部委員会です。コーポレート担当役員(CSEO)を委員長とし、副社長、他のコーポレート担当役員、全営業グループCEO、次世代エネルギー部門長及び経営企画部長が委員を構成しています。討議においては、地球環境(気候変動・生物多様性等)、地域・社会(先住民・文化遺産等)、人権・労働(児童労働・強制労働・労働安全衛生等)といった観点を踏まえ、具体的には以下のテーマを中心に取り扱っています。
・マテリアリティ
・気候変動対応
・サプライチェーン・マネジメント
・ステークホルダー・エンゲージメント
・社会貢献活動
⑤ サステナビリティアドバイザリーコミッティー
サステナビリティアドバイザリーコミッティーは国際機関、ESG投資分野等の各ステークホルダーの幅広い視点を代表する社外有識者6名によって構成されるコーポレート担当役員の諮問機関として2008年に設置されました。当社のサステナビリティ施策の考え方や各種取り組みに関して、定例のコミッティーを開催の上でコーポレート担当役員(CSEO)に助言・提言をしています。また、コミッティーメンバーの当社事業への理解を深める目的で、事業現場の視察を定期的に実施しています。コミッティーメンバーは下表のとおりです。
足達 英一郎 | ㈱日本総合研究所 常務理事 未来社会価値研究所長 |
ピーター・D・ピーダーセン | 大学院大学至善館 教授 |
荒井 勝 | NPO法人 日本サステナブル投資フォーラム 会長 |
山田 美和 | 独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ) アジア経済研究所新領域研究センター センター長 |
中井 徳太郎 | 日本製鉄㈱ 顧問 |
野口 聡一 | 合同会社未来圏 代表、宇宙飛行士 |
以上の各機関・会議体の開催頻度、及びサステナビリティを取り上げる頻度は以下のとおりです。
取締役会 | 年3回程度、投融資案件は付議の都度 |
監査役会 | 年2回程度 |
社長室会 | 年2回程度(全社方針等)、投融資案件は付議の都度 |
サステナビリティ・CSR委員会 | 年2回程度 |
サステナビリティアドバイザリーコミッティー | 年2回程度 |
2.リスク管理
(1)サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別、評価及び管理するプロセス
当社では部門・営業グループと各リスクに対応したコーポレート専門部局が連携し、適切なリスク対応が可能な管理体制を整備しており、サステナビリティ関連のリスク及び機会についてはコーポレート担当役員(CSEO)のもとサステナビリティ部が管掌しています。当社のリスクマネジメント体制については、「3. 事業等のリスク」の「1. リスク管理体制」をご参照ください。
全社のリスク管理方針や取組方針・戦略については、サステナビリティ推進体制のもと、サステナビリティ・CSR委員会にて討議され、社長室会及び必要に応じて取締役会への付議・報告を経て、全社施策として実行・運営されます。
また、当社では、取締役会や社長室会に付議される全ての投融資案件は、社長室会の諮問に基づき投融資委員会で審議され、社長室会へ意見具申されます。この投融資委員会には各リスクの管掌部局が参加しており、サステナビリティに関連するリスクについても、サステナビリティ部長がメンバーとして参加することで、環境や社会に与える影響も踏まえた総合的な意思決定を行う審議体制を整備しています。新規案件においては事業戦略との整合性やリスクの所在と対応策等を審議し、既存案件についても年に1度、経営計画書に基づき事業投資先の経営状況をモニタリングすることで、事業のライフサイクルなどをモニタリングし、継続的な改善・バリューアップを図っています。さらに、気候変動関連のリスク・機会が大きい一部の新規投資案件に対しては、脱炭素シナリオ下の主要前提を用いた採算指標(社内炭素価格等)に基づく採算評価を参考値として併記し、案件審議に活用しています。
(2)気候変動関連のリスク、機会の管理及びモニタリング
当社は上記のプロセスに基づき、気候変動関連のリスク及び機会を重大なサステナビリティ関連のリスク及び機会として識別しています。これは、異常気象の頻発による水資源への影響や、人口動態・自然界の生物多様性に与える影響、これに伴う食糧資源や自然資源への影響等、気候変動がもたらす影響は、地球環境や人類、企業活動にとり重大であるとともに、当社事業の継続性、並びに当社の経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があるためです。
気候変動に関連して生じるリスクは、カーボンプライシング(炭素税等)や各種規制強化による操業・設備コストの増加、既存技術に依拠する製品・サービスの陳腐化等の移行リスク(政策・法規制リスク、技術リスク、市場リスク等)と、渇水・洪水等による事業の操業への影響等の物理的リスクに大別されます。
当社は、気候変動は重大なリスクであると同時に、イノベーションや新規事業の実現を通じ新たな事業機会をもたらすものと考えており、「脱炭素社会への貢献」をマテリアリティの一つに掲げ、持続可能な成長を目指す上で対処・挑戦すべき重要な経営課題の一つとしています。
これらのリスク及び機会を管理、モニタリングし、ポートフォリオの脱炭素化・強靭化を進めるためのメカニズムの基礎として、“MC Climate Taxonomy”を導入しています。“MC Climate Taxonomy”では、当社の約130の全ビジネスユニットを対象に、気候変動の移行機会が大きいものをグリーン事業、移行リスクが大きいものをトランスフォーム事業、どちらにも該当しないものをホワイト事業と3つに分類しました。この事業分類を踏まえて、グリーン事業・トランスフォーム事業に対して、投融資案件審査時の脱炭素採算評価の実施、投融資計画策定時のGHG削減計画確認を行い、当社事業が個別案件及び全社事業戦略の両面において2050年ネットゼロに向けたシナリオと整合することを確認する適切なリスク管理制度としました。トランスフォーム事業の選定にあたってはGHG排出量(Scope 1/2/3)の多寡とGHG排出量の削減ハードルの両方を考慮しています。具体的な削減ハードルの判別には、当社単独での排出削減が困難であるScope 3カテゴリー11(販売した製品の使用に伴うGHG排出量)と、Scope 1 6.5ガス(事業を行う以上排出が避けられないもの)を座礁資産化回避の観点から指標として使用しています。具体的な分類のプロセスは以下のとおりです。なお、分類については最低でも年度に一度見直しを行っています。
※1 脱炭素シナリオ下での2050年時点の需要がBusiness as usualシナリオ(特段の気候変動への対策を行わない場合のシナリオ)と
比較し、+20%以上であるビジネスを選定。
※2 まずはEU TaxonomyにもとづきGHG排出量が高い業種を特定した上で、これに当てはまらなかった業種についてもScope 1の自社
データ、Scope 3 カテゴリー11の外部データに基づき、他業種と比べ突出して高い場合には、トランスフォーム事業に分類。
※3 Scope 1や、Scope 3カテゴリー11ベースで判定。
その他のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関しては、「サステナビリティ・レポート2022(2023年2月28日時点)」をご参照ください。
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3. 気候変動リスクに対処する戦略
(1)ポートフォリオの脱炭素化と強靭化への取組
「2.リスク管理」で記載したとおり、当社は、気候変動関連のリスク及び機会を当社の事業戦略に重要な影響を与えるサステナビリティ関連のリスク及び機会として特定しています。そのうえで、"MC Climate Taxonomy"による分類に基づきモニタリング対象として特定した一部のグリーン及びトランスフォーム事業に対して、1.5℃シナリオ分析を実施し、これらのリスク及び機会がビジネスモデルとバリューチェーンに与える影響を評価しています。この評価結果を事業戦略へ落とし込むべく、シナリオ分析を実施したトランスフォーム事業については、トランスフォーム・ディスカッション(※)にて事業の方向性を左右する要素につき議論しています。同議論内容も踏まえて、事業戦略会議にて社長、各営業グループCEO、次世代エネルギー部門長及び産業DX部門長がGHG削減目標を踏まえた投資計画を討議します。
以上のような、気候変動に係るリスク管理及び戦略への織り込みに加え、対外開示までを一つのサイクルとしてとらえて、効果的な運用を行っています。
※トランスフォームに分類された事業を対象に、移行リスクとして注視すべき需給の動向や技術革新の動向を特定し、事業への影響
を経営レベルで毎年モニタリングするもの。
(2)気候変動関連のリスク及び機会に係るシナリオ分析
① 気候シナリオの考え方
気候シナリオとは、脱炭素化の速度や程度に影響を及ぼす社会経済・政策・市場・技術等に関する一連の仮定を置き、その結果として将来どの様な社会が実現されうるかを描くものです。1.5℃シナリオを用いてシナリオ分析を行う場合は、産業革命以前に比べた気温上昇が1.5℃に抑えられた世の中が実現しているという仮定のもと、地球温暖化や気候変動そのものの影響や、気候変動に関する長期的な政策動向による事業環境の変化等を予想し、事業戦略への影響を検討することとなります。したがって、財務諸表における会計上の見積りの基礎となる、最新の入手可能な信頼のおける情報に基づく合理的な見積りと、シナリオ分析における一連の仮定は異なるものです。また、シナリオ分析は需給等に関する市場全体の傾向を仮定しますが、当社の保有資産の優位性あるいは劣後性や、売買契約等の特殊性により、市場全体の傾向と当社の事業への影響が一致しない場合もあります。加えて、シナリオ分析が数十年単位の超長期的な影響を分析するのに対し、財務諸表における資産及び負債の測定においては、数年から十年といった中長期的な時間軸の影響が大きく、足元の事業環境がより強く反映されることとなります。以上より、仮にシナリオ分析において、当社の事業に関連する資産の価値毀損等あるいは負債の増加等の影響が示された場合にも、それらが直ちに財務諸表における資産及び負債の測定に影響を及ぼすとは限らないと考えられます。会計上の見積りにおける気候変動の影響の考え方については、第5 経理の状況 連結財務諸表注記2 「(5)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」をご参照ください。
② シナリオ分析に用いた1.5℃シナリオについて
気候シナリオについては、国際エネルギー機関(International Energy Agency (IEA))、 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change(IPCC))、気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(Network for Greening Financial Services (NGFS))等を始めとする機関・団体のほか、気候変動の移行リスク・機会が大きい事業を保有し、同事業の検証・評価に特に関心が高い一部の民間企業も独自に策定、公表しています。
当社は、ポートフォリオの脱炭素化と強靭化の両立に向けては、これら気候シナリオを参照した「シナリオ分析」を行い、各事業について気候変動の移行リスク・機会を適切に把握し、それらも踏まえた事業戦略を策定することが重要と考えています。その観点から、当社は、2019年度より気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿う形で、主にIEAの気候シナリオを用いたシナリオ分析を実施しており、前連結会計年度からは2050年ネットゼロ実現を前提とした1.5℃シナリオを使用した分析を開始しました。当社が前連結会計年度に実施した1.5℃シナリオ分析では、IEAの“Net Zero Emission by 2050 Scenario(IEA NZE)”を参照しましたが、IEA NZEでは分析に必要となる十分な粒度のデータが提供されておらず、当社事業の特性や、地域戦略等を踏まえた定量面も含む詳細な分析を行うことは困難でした。これを踏まえ、当連結会計年度は外部の第三者機関と協働し、可能な限り主要な前提をIEA NZEと整合させた上で、地域別・商材別の需要といった、より細かい粒度のデータを含む独自の1.5℃シナリオ(2022年度1.5℃シナリオ)を策定し、これを参照して分析を行いました。
③ 分析対象事業の抽出
気候変動がもたらしうるリスク・機会の影響が特に大きいと想定される事業をシナリオ分析対象とするべく、下記の方針に沿って選定を行いました。
リスクサイドの事業選定に当たっては、GHG排出量と資産規模の二つの指標を勘案しました。具体的には、“MC Climate Taxonomy”に基づき、GHG排出量が多く、かつ排出量削減の難易度が相対的に高いことから気候変動リスクが大きいトランスフォーム事業に分類された事業のうち、資産規模が特に大きい「天然ガス・LNG」、「原料炭」、「発電(化石燃料)」事業(これら3事業はトランスフォーム事業における当社の投融資残高の約7割を占める)を分析対象候補とした上で、既に「新規の石炭火力発電事業には取り組まずに段階的に撤退、2050年までに非化石比率100%」という明確な事業方針を掲げている「発電(化石燃料)」事業は例外的に対象外とし、最終的に「天然ガス・LNG」、「原料炭」事業を2022年度1.5℃シナリオ分析の対象として選定しました。
機会サイドについては、“MC Climate Taxonomy”に基づいて気候変動機会が大きいグリーン事業に分類されたもののうち、当社の主力事業であり既に具体的な案件が複数存在する「再生可能エネルギー」事業を2022年度1.5℃シナリオ分析の対象として選定しました。
④ 分析の結果及び結果を踏まえた事業方針
(天然ガス・LNG事業)
天然ガス・LNGは移行期において重要な役割を担うエネルギー源であり、今回分析に用いた2022年度1.5℃シナリオ下においては、長期的には天然ガス・LNGの需要減が見込まれるものの、当社LNG事業の戦略地域であるアジア地域では長期に亘り一定程度の需要が想定されています。 掛かる事業環境認識に基づき、「中期経営戦略2024」のとおり、当社はエネルギー・資源の安定供給と社会・経済活動の低・脱炭素化の両立を目指し、以下のとおり「LNG事業の強靭化」と同時に「LNGバリューチェーンの低・脱炭素化」にも注力いたします。より中長期的には、技術イノベーションや各国政府による政策動向等を含めた事業環境を見極めた上で、LNG事業の更なる低・脱炭素化の取り組みを進めるとともに、LNGポートフォリオの最適化及び次世代エネルギー分野への投資を本格化していきます。
「LNG事業の強靭化」と「LNGバリューチェーンの低・脱炭素化」に関するより詳細な取組みは以下のとおりです。
<LNG事業の強靭化>
既存のLNG事業については、生産量の大部分が長期契約に基づいて販売されていますが、生産効率の向上やコスト削減等による競争力強化を図ると同時に、継続的にポートフォリオの最適化を検討していきます。
新規のLNG案件については、脱炭素化が急速に進展した場合の座礁資産化のリスクも念頭に置き、2022年度1.5℃シナリオ下における投資採算も考慮して新規投資判断を行います。
<LNGバリューチェーンの低・脱炭素化>
「LNG事業の強靭化」と並行して、本邦最大級のLNG事業者の立場・強みを活かし、LNGバリューチェーン自体の低・脱炭素化に資するCCUS等の推進、ブルー水素やe-methane(合成メタン)等の次世代エネルギーの製造・供給等に関する取り組みを進めることで事業機会を取り込みつつ、脱炭素社会への移行の一翼を担っていきます。
これらは、過去50年超に亘る当社の天然ガス・LNG事業への取り組みから得られた経験・知見・ネットワークが活用可能な領域であり、既に具体的な検討を進めています。
(原料炭)
鉄鋼業は今後長期にわたる移行期間に入ると想定されますが、BMA事業の主要商品である高品位原料炭は高炉製鉄プロセスの低炭素化に貢献することから、低品位の原料炭との比較において必要性が相対的に高まる見通しです。一方、許認可の取得難化等、開発難易度が高まることから、新規炭鉱投資が一段と減速し供給の減少が想定されます。BMA事業は、高品位の原料炭の安定供給を継続します。
また、当社はGHG排出削減を積極的に推進しており、BMA事業においても、再生可能エネルギー調達、メタンガス処理やディーゼル代替等に関する取り組みを検討・推進しています。一例として、2020年にBMAは炭鉱の電力需要の半分を再生可能エネルギー由来の電力に切り替える契約を締結しました。2020年代半ばまでにScope 2排出量を半減させる計画です。
また、パートナーであるBHP社、製鉄大手及び大手エンジニアリング会社と共同で、製鉄所でのCO2回収技術の実証試験等を共同で実施する旨の協業契約を締結する等、製鉄バリューチェーン全体でのGHG排出削減に取り組んでいます。
当社は金属資源事業においても、「脱炭素」・「電化」・「循環型社会」の三つの切り口でEX戦略を推進していきます。製鉄バリューチェーンでの脱炭素化に加え、電化に不可欠な銅・電池原料等や、リサイクル事業への取り組みを強化していきます。
(再生可能エネルギー)
再生可能エネルギーの導入や蓄電池の普及、及びこれに伴う電力供給システムの分散化傾向は、政策・規制、技術革新等の状況により国・地域による差異があり、発現するタイミングが大きく異なる可能性があります。当社は、再生可能エネルギーを「つくる(発電)」、天候により変動する電気を「整える(需給調整)」、整えた電気と付加価値の高いサービスを「届ける」、といったこれら電力バリューチェーン上の各機能の強化を通じて、洋上風力の成長が見込まれる日本や、N.V. Enecoをプラットフォームに持つ欧州を中心に、米州・アジア等でも再生可能エネルギーを起点とする事業拡大を目指します。具体的な目標として、「2030年度までに再生可能エネルギー発電容量を2019年度比倍増(3.3 GW → 6.6 GW)」を掲げており、これの達成に向けて取り組んでいきます。
2022年度1.5℃シナリオにおける主要な前提、及びIEA NZEとの比較、事業環境分析、並びに事業環境を踏まえた方針・取組等の詳細は「サステナビリティ・レポート2022(2023年2月28日時点)」の「環境-気候変動」内の「1.5℃シナリオ分析」、「1.5℃シナリオ分析の結果、及び分析から得られる示唆」に掲載しています。また、同レポート、同章の「物理的リスク」に物理的リスク分析についても掲載しています。
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4. 気候変動リスクに関連する指標及び目標
(1)目標
当社は、パリ協定と整合する2050年ネットゼロ/1.5℃目標に基づき、ポートフォリオの脱炭素化と強靭化の両立を図り、MC Shared Value(共創価値)の創出を推進していきます。そのために、脱炭素社会の実現に向けた以下3つの目標を掲げています。
① GHG排出量(Scope 1及びScope 2)の削減目標
2050年GHG排出量ネットゼロを前提とし、2030年度時点での中間目標として2020年度比GHG排出量半減を掲げています。この目標達成に向けて、火力発電資産のダイベストメントを中心としたポートフォリオ入替を含む具体的な削減計画を策定しています。また、2050年度においてなお残存する排出量については、炭素除去を含めた国際的に認められる方法でオフセットを行う前提です。
なお、当社は、収益基盤としても重要性の高い関連会社のGHG排出量を含む削減目標とすることが適切と考え、本目標の前提となるGHG排出量の算定には、関連会社分のGHG排出量も対象に含むGHGプロトコルに基づく出資比率基準を採用しています。
② 発電事業における非化石比率
既存火力発電容量の削減、及びゼロエミッション火力への切り替えで、2050年までに当社発電事業における非化石比率100%化を目指します。なお、石炭火力発電事業については、受注済みのベトナム/ブンアン2案件を最後として今後新規事業は手掛けず、段階的に撤退することで、2030年度までに2020年度比で持分容量を3分の1程度まで削減し、2050年までに完全撤退する方針です。
③ 再生可能エネルギー発電容量
2030年度までに再生可能エネルギー発電容量2019年度比倍増を目指します。
(2)目標に対する進捗
2030年度までに基準年度(2020年度、2,530万トン-CO2e)比でGHG排出量(Scope 1及びScope 2)を半減させるという目標に対して、当連結会計年度の実績値は以下のとおりであり、確実な進捗が見られます。
| 前連結会計年度 (10万トン-CO2e) | 当連結会計年度 (10万トン-CO2e) |
Scope1(6.5ガス含む) | 211 | 195 |
Scope2 | 18 | 18 |
合計 | 229 | 213 |
当連結会計年度におけるセグメント別の排出量(Scope1及びScope2の合計)の実績は以下のとおりです。
| 前連結会計年度 (10万トン-CO2e) | 当連結会計年度 (10万トン-CO2e) |
天然ガス | 32 | 32 |
総合素材 | 4 | 4 |
石油・化学ソリューション | 12 | 11 |
金属資源 | 32 | 32 |
産業インフラ | 1 | 1 |
自動車・モビリティ | 1 | 1 |
食品産業 | 14 | 14 |
コンシューマー産業 | 2 | 2 |
電力ソリューション | 129 | 114 |
複合都市開発 | 0 | 0 |
その他・調整 | 2 | 2 |
合計 | 229 | 213 |
上記の数値は第5 経理の状況の連結財務諸表における連結子会社、共同支配事業、関連会社、共同支配企業を対象として集計しており、報告日についても第5 経理の状況 連結財務諸表注記3「(1)連結の基礎⑥報告日」と同様の方針としています。なお、実務上の負荷等を勘案し、一部の会社について収集を省略するなど、連結財務諸表の報告範囲との差異が生じていますが、当該差異が上記の数値に与える影響には重要性がないと判断しています。出資比率基準でのGHG排出量算出にあたっては、連結財務諸表で用いる持分比率を適用しています。
また、Scope 1/2とScope 3の区分にあたって、GHG Protocol等の基準を参照していますが、一部当社としての判断を行使している場合もあります。例えばリース契約においては契約形態に応じた会計上の取扱いを参照し区分することが可能ですが、業界慣習や排出量の情報取得の難易度等も勘案し、事業ごとに異なる整理をしている場合があります。将来的に集計に係る基準の明確化等により当該整理に変更が必要な場合、かつ当該変更に関連する排出量に重要性がある場合は、当年度以前の数値についても遡及的に修正する可能性があります。
なお、Scope 3については重要性が高く、かつ高い精度での集計が可能となったカテゴリーを開示する方針としており、現在開示しているカテゴリー11の2021年度実績については、サステナビリティ・レポート2022(2023年2月28日時点)」の「環境-気候変動」内の「主要GHG関連指数等の開示」をご参照ください。
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5. 人的資本に関連する戦略、指標及び目標
MC Shared Value(共創価値)創出の源泉は、経済価値・社会価値・環境価値の三価値同時実現の原動力となる人材です。多彩・多才な人材がつながり、やりがいと誇りをもって主体的に責任を果たす「イキイキ・ワクワク、活気あふれる」組織であり続けるために、人的資本の価値最大化を目指した人事施策を展開しています。
なお、人的資本に関連する戦略については、コーポレート担当役員(CAO)のもと人事部が管掌しています。人事制度、人事施策、人材開発、人員政策に関する重要事項及び経営幹部人材の育成活用に関する事項については、HRD委員会(委員長:コーポレート担当役員(CAO))にて討議され、所定の基準に基づき社長室会及び取締役会への付議・報告を経て、全社施策として実行・運営されます。
(1)「中期経営戦略2024」における人事施策
① 人材戦略
変化の激しい事業環境において、経営戦略に即応し全ての人材が力を発揮できる適材適所の推進と、環境変化への対応力を強化すべく、各種施策を推進しています。
a. ダイナミックな人材シフト・登用
循環型成長モデルの進展やEX・DX一体推進等の経営戦略に即応して組織を柔軟に組成すると共に、組織を超えてダイナミックに人材をシフトし、登用を進めています。組織を超える異動は、全社横断の食品流通DX/電力・リテイルDXタスクフォース等の組成により、大幅に増加しました。さらに2022年7月1日付で新設した産業DX部門、2023年4月1日付で新設した次世代エネルギー部門をはじめ、様々なグループの人材を全社横断的に配置・登用し、横連携を促進しています。
b. 事業環境の変化への対応力強化
事業環境の変化に応じた能力のアップデートは重要であり、特に中期経営戦略2024で打ち出した成長戦略を実行できるよう、人材や組織の事業環境変化への対応力強化に向けたリスキリングに注力しています。
具体的には、各種リーダーシップ研修を通じたマネジメント層のリーダーシップスタイルのアップデート、EX関連をテーマにした研修プログラム整備による、EXを通じて企業価値向上に貢献できる人材育成、各種DX関連研修の充実化を通じたDX人材の育成を進めています。
また、グローバルベースで人的ネットワークやパートナーとの信頼関係を構築し、「生きた」インテリジェンスを獲得していく人材として、各地域に精通する「地域の匠」の育成は当社の競争優位性のベースとなります。
② エンゲージメント強化
人材戦略を実行していくための基盤として、社員のエンゲージメントは最も重要な経営課題であると認識しており、社員一人ひとりが「イキイキ・ワクワク」を感じながら業務に取り組めるよう、人・組織の両面で環境整備を進めています。
a. つながり促進
多様性を活かす企業風土を促進するため、組織・世代・役職等を超えたつながりを醸成していくことを目指し、経営陣と社員の活発なコミュニケーションや、社員間のつながり促進に向けた、対話の機会を拡充しています。
社長によるタウンホールミーティングの開催など、社員一人ひとりが経営戦略に対する理解を深めるとともに、風通しの良い組織風土を醸成するための施策を展開し、エンゲージメントの向上を図っています。
b. ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)
多様性は、当社の総合力の源泉です。「多彩・多才」な人材の多様な価値観を受容し、一人ひとりが最大限に能力を発揮できる環境整備を進めていきます。この取組みを加速するため、2023年3月に社長直掌のワーキンググループを組成し、多様な意見を施策に反映していきます。
女性の活躍促進については、出産・育児などのライフイベントを経ても自律的にキャリアを形成し、能力を最大限発揮できるよう、法定以上の両立支援策の拡充を進めています。また、女性の管理職を増やし、さらに重要職務への登用を加速させるため、管理職女性へのメンター制度などの女性キャリア施策を進めるほか、男性の育児関連制度利用率についても100%を目指し、取り組みに注力しています。
c. ウェルビーイング(労働安全衛生、健康経営)
「イキイキ・ワクワク」働くためには、職場の安全確保はもとより、社員が健康でいることが重要です。2022年8月に「健康経営宣言」を発表し、社員の健康状態の維持・改善にとどまらず、予防・健康支援へとさらに踏み込んで施策を展開していきます。
d. キャリア自律
多彩・多才な人材がやりがいと誇りをもって仕事に取組み、能力を最大限に発揮しながら継続的に成長・活躍できるよう、多様な個の就業観・価値観を尊重し、キャリア自律を後押しする施策を拡充しています。
公募型異動制度「Career Choice制度」の拡充に加え、社内他部署における複業制度「Dual Career制度」や、国内外での学位取得を目的とした「サバティカル休職制度」を新設しました。このように社員自ら意志を表明し、キャリアを切り開いていく土壌を整備していくことで、仕事へのエンゲージメントを更に高め、当社の持続的な成長につなげていきます。
(2)指標及び目標
「人的資本の価値最大化」に向けた施策の進捗状況に関する主な指標及び目標は以下のとおりです。
人材戦略 | |||
変化の激しい事業環境においても、経営戦略に即応し全ての人材が力を発揮できる適材適所と、リスキル等を通じた、環境変化への対応力の強化が実現されている状態を目指します。 | |||
施策区分 | 指標名 | 指標内容 | 実績 |
ダイナミックな人材シフト・登用 | 経営戦略に即応し、組織を超えてダイナミックに異動した人員数
| ・産業DX部門への人材シフト数 ・次世代エネルギー部門への人材シフト数
(※当該組織組成時の人員シフト数) | ・148名 (※22年7月組成時) ・246名 (※23年4月組成時) (※何れも兼務者含む) |
適材適所の実現 | 重要職務数 | 当社役職員の就任している職務のうち、重要度・難易度が高いと判定された職務の数 | 約700ポスト |
重要職務就任者面談者数 | 重要職務への就任者の経験や特性を可視化するために実施した、累計面談者数 | 約350件/累計 | |
リーダーシップの開発 | リーダーシップ開発関連研修受講者数 | 当該年度において、資格・職務グレードに応じた、リーダーシップスタイルのアップデート・ダイバーシティマネジメント・成長支援スキル強化に向けた各種研修への参加者数 | ・MC経営塾(部長・事業会社経営幹部向け) :29名 ・組織リーダー研修(チームリーダー・事業会社部長向け):122名 ・新任管理職研修(マネージャー・事業会社課長向け):140名 ・インストラクター研修(新人教育担当向け):141名 |
DX人材の育成 | 全役職員受講必須DX研修修了率 | 「MC DX Advancement Program」 「MC DX Gateway」修了率 | 98.70% (※目標値:100%) |
DX人材育成研修受講者数 | DX・新規事業立ち上げを行う担当者向け、プログラミング・プロダクトマネジメント研修「MC Innovation Lab」の累計受講者数 | 91名/累計 |
エンゲージメント強化 | |||
社員が「イキイキ・ワクワク」を感じながら、エンゲージメント高く、組織や仕事に愛着を持ち安心して業務に取り組める環境が実現されている状態を目指します。 | |||
施策区分 | 指標名 | 指標内容 | 実績 |
組織風土調査 | 社員エンゲージメント度数 | 「社員エンゲージメント」の設問に対して、肯定的な回答をしている職員の割合 (※同調査において、肯定的回答率65%以上は、「強み」として認識されます。) | 74% |
社員を活かす環境度数 | 「社員を活かす環境」の設問に対して、肯定的な回答をしている職員の割合 (※同調査において、肯定的回答率65%以上は、「強み」として認識されます。) | 69% | |
つながり促進 | 社長と社員の対話実施状況
| 社長によるタウンホールミーティング参加者(※)を対象としたアンケートにおける肯定的回答率 (※累計6回実施・計237名参加) | ・会社や仕事に対するエンゲージメント向上:96% ・中期経営戦略・経営への理解度向上:96% |
ウェルビーイング(労働安全衛生、健康経営) | 定期健康診断受診・実施率 | 当社における、国内在勤者の法定定期健康診断受診率 (※当社の従業員のうち、会社が実施している労働安全衛生法に基づく定期健診を受診している者の割合を指す。) | 100% (※21年度数値) (※目標値:100%)
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当社グループ企業(国内)(※)における法定定期健診実施率 (※2022年度実績サステナビリティ調査対象の当社グループ企業(国内)のうち、労働安全衛生法に基づく定期健診受診の機会を提供している企業の割合を指す。) | 100% (※目標値:100%) | ||
有給休暇取得率 | 当社従業員における年次有給休暇取得率 | 66.8% (※目標値:70%) | |
労働災害度数率 | 当社(※1)における労働災害度数率(※2)
(※1 本社及び国内支社) (※2 自社従業員及び、それ以外の労働者(派遣社員)を含む) | 0.15 (※21年度数値) (※目標値:前年度比で低減) (※前年度0.16のため21年度は達成) | |
連結(※1)労働災害度数率(※2)
(※1 生産現場を有する主要な事業会社(子会社、共同支配事業(Unincorporated)、関連会社等)が対象) (※2 自社従業員、自社従業員以外の労働者(コントラクター従業員)の総計数値) | 2.03 (※21年度数値) (※目標値:前年度比で低減) (※前年度2.73のため21年度は達成) |
エンゲージメント強化 | |||
社員が「イキイキ・ワクワク」を感じながら、エンゲージメント高く、組織や仕事に愛着を持ち安心して業務に取り組める環境が実現されている状態を目指します。 | |||
施策区分 | 指標名 | 指標内容 | 実績 |
DE&I | 女性管理職比率 | (※第1 企業の概況 5 従業員の状況の「3 多様性に関する指標」をご参照ください) | 同左
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男性育児休業取得率 | |||
男性の育児関連制度利用率 | |||
男女賃金差異 | |||
キャリア自律 | 成長対話(※)満足度
(※社員の自律的成長の実効性を高めるための、年に1度の、能力開発・キャリア開発にフォーカスした上司との対話機会) | 成長対話後に実施するアンケートにおける、「上司との成長対話を通じた意欲向上度合」への肯定的回答率 | 72.5% |
キャリア自律施策における、公募案件数・応募者数 | 公募型異動制度「Career Choice制度」における、公募案件数・応募者数 | ・公募案件:73件 ・応募者数:53名
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社内複業制度「Dual Career制度」における、公募案件数・応募者数 | ・公募案件:24件 ・応募者数:17名 |
※特段の注記がない場合、当社の従業員(子会社等への出向者含む)を対象とした数値
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