三菱マテリアル 【東証プライム:5711】「非鉄金属」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において判断したものであります。
<中期経営戦略>
今後の世界経済は、その先行きや中東地域をはじめとする地政学リスクに対する注視が必要であるものの、概ね回復基調が続くことが予想されます。日本経済についても、海外景気の動向に影響を受けるリスクはあるものの、緩やかな回復基調の継続が期待されます。当社グループを取り巻く事業環境は、需要動向に不透明感が残るものの、自動車及び半導体関連の需要の増加が見込まれます。
こうしたなか、当社グループは、企業価値の向上に向けて、2023年度から2030年度までを対象とする中期経営戦略(以下「中経2030」といいます。)に基づく諸施策を実施してまいります。中経2030においては、「人と社会と地球のために」という企業理念のもと、「循環をデザインする」というビジョンを掲げ、「持続可能な社会(豊かな社会、循環型社会、脱炭素社会)を実現する」ことをミッションとしております。中経2030の概要は以下のとおりです。
①目指す姿
(イ)私たちの目指す姿
当社グループは、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを私たちの目指す姿とし、自社の持つ強みをもとに金属資源の循環を強化し、対象範囲、展開地域、規模の拡大によりバリューチェーン全体での成長実現に取り組んでまいります。
(ロ)戦略ロードマップ
中経2030においては、2023年度から2025年度までの3年間をPhase1、2026年度から2030年度までの5年間をPhase2とし、私たちの目指す姿の実現を図ります。Phase1においては、プロダクト型事業を中心にコスト競争力強化に基づく利益成長・収益性改善を進めるとともに、資源循環などの中長期の成長領域への投資を実行します。Phase2においては、対象領域の拡大や海外を含む地域展開により事業拡大を図ってまいります。
(ハ)財務目標
Phase1の最終年度である2025年度では、売上高1兆9,400億円、営業利益700億円、経常利益870億円、ROIC 5.5%、ROE 10.0%、EBITDA 1,500億円、ネットD/Eレシオ 0.7倍、ネット有利子負債/EBITDA倍率 3.5倍を計画しています。
Phase2の最終年度である2030年度では、売上高2兆円、営業利益1,300億円、経常利益1,800億円、ROIC 9.0%、ROE 13.6%、EBITDA 2,600億円、ネットD/Eレシオ 0.5倍以下、ネット有利子負債/EBITDA倍率 2.0倍以下を目標としています。
(ニ)キャピタルアロケーション
Phase1においては、対象期間累計キャッシュイン4,200億円に対して、成長投資2,300億円、維持更新投資1,300億円、配当など600億円のキャッシュアウトを計画しております。Phase2においては、対象期間累計キャッシュイン7,900億円に対して、成長投資3,300億円、維持更新投資2,100億円、配当など1,800億円、有利子負債削減700億円のキャッシュアウトを計画しています。
(ホ)株主還元
当社は、株主に対する利益還元が経営の最重要目的の一つであるという認識のもと、利益配分については、期間収益、内部留保、財務体質等の経営全般にわたる諸要素を総合的に判断の上、決定する方針としております。
中経2030期間中の利益配分については、Phase1の2023年度から2025年度の期間において、配当性向30%を目途に利益還元を行います。また、Phase2の2026年度から2030年度の期間においても株主還元の充実を図ります。なお、自己株式取得については、キャッシュ・フローの状況、株価、及びネットD/Eレシオ等の財務規律を踏まえ、引き続き、機動的に行うことを検討してまいります。
②企業価値向上に向けた取り組み
(イ)事業ポートフォリオ経営
Phase1ではコスト削減・プロセス最適化などの施策を実施し、ROIC改善による収益性の向上を目指してまいります。Phase2では長期の先行投資を要する資源事業も含め全事業でROICと事業別WACCの差となるROICスプレッドがプラスとなり、投下資本を乗じたエコノミックプロフィット(=ROICスプレッド×投下資本、以下「EP」といいます。)の最大化を目指してまいります。
事業ポートフォリオ経営の方針は次のとおりです。
・成長性と収益性の2軸で事業ポートフォリオを管理、経営資源の配分を最適化
・事業の成長性をEBITDA成長率で評価し、市場の成長率で補完
・企業価値向上に向け、ROICスプレッドの維持・向上を図りつつ、EPの増加を目指す
・金属事業カンパニーと環境リサイクル事業の統合(製錬・資源循環)による効率化を図り、事業価値向上を加速
(ロ)投資配分と利益貢献
2030年度までの成長投資総額5,600億円のうち、鉱山投資やタングステン事業への投資など循環型社会貢献に2,500億円、高機能製品カンパニー及び加工事業カンパニーの競争力強化に2,800億円、地熱発電事業強化など脱炭素社会への貢献に300億円の投資を計画しています。投資配分の考え方は次のとおりです。
・ミッションへの適合及び維持更新と成長投資のバランスを考慮し投資対象を選定
・事業特性に応じたリターンを評価し、事業間で適正に配分
・事業毎の財務健全性を保ちつつ、全体のネットD/Eレシオ1倍以下の財務規律を維持
(ハ)コスト競争力強化
中経2030では、コスト競争力強化にも取り組み、総額約240億円(Phase1:約90億円、Phase2:約150億円)のコスト削減をいたします。
営業利益に対するコスト削減累計額の比率は、2025年度で約13%、2030年度で約19%を見込んでいます。
③事業戦略
中経2030における事業別の目標及び事業戦略は次のとおりです。
・金属事業カンパニー
目標:非鉄金属の資源循環におけるリーダー
事業戦略 | 資源事業 | ●銅鉱床に含まれる希少資源の確保・回収に向けた技術開発の推進 ●継続的な鉱山投資による権益の獲得と銅精鉱の安定確保 ●銅鉱山でのSX-EW(※)による銅供給量の拡大 |
製錬・資源循環 事業 | ●資源循環の推進に向けたネットワーク強化・規模拡大 ●電気銅生産能力の拡大 ●E-Scrap類の処理拡大によるリサイクル率アップ ●レアアース、レアメタルリサイクル事業の創出 ●国内及び海外展開の加速(E-Scrap、家電、自動車リサイクル) |
※SX-EW:Solvent extraction and electrowinning 溶媒抽出と電解採取の2段階からなる
湿式製錬プロセス
・高機能製品カンパニー
目標:グローバル・ファースト・サプライヤー
事業戦略 | 銅加工 事業 | ●伸銅品リサイクル率を向上し、スクラップのプラットフォーム基盤を確立 ●海外(ルバタ社):成長市場(xEV、医療、環境)への迅速な参入 ●国内工場をマザー工場と位置づけ、海外に新たな川下工場を検討し、海外顧客への拡販、サービスを強化 |
電子材料 事業 | ●事業ポートフォリオの継続的な組み換えによる高資本効率経営 ●成長領域の注力製品への戦略投資 ●新規事業創出や事業提携の推進及びそのための人材育成と確保 ●ものづくり力とDXの強化による生産高度化、稼ぐ力の追求 ●カーボンニュートラルに向けた事業、社会的価値(SDGs)の提供 |
・加工事業カンパニー
目標:グローバルで顧客が認めるタングステン製品のリーディングカンパニー
事業戦略 | 加工事業 | 戦略市場で自律した事業展開を目指し、真のグローバル企業へ変革する <超硬工具事業> ●素材とコーティング技術の強みを活かした高効率製品を世界No.1品質で安定的に提供 <タングステン事業> ●超硬工具向けに加え、二次電池向け等に事業規模を拡大 ●環境対応力の強化 <ソリューション事業> ●ものづくり現場へのコト売りを事業化 |
・再生可能エネルギー事業
目標:再エネ電力自給率100%に向けた再エネ発電の拡大
事業戦略 | 再生可能 エネルギー 事業 | 再生可能エネルギー事業を全社的な取り組みとして戦略本社に集約し、長期的な視野で事業の拡大を推進 ●地熱事業の拡大に向け、3年に1箇所のペースで新規開発を実施 ●将来的に発電コスト低下が見込まれる風力発電への新規参入 ●新規バイオガスプラントのさらなる拠点の展開 |
④カーボンニュートラル(※1)
当社グループの温室効果ガス排出量のうち、事業者自らによる直接排出であるScope1及び供給されたエネルギー利用に伴う間接排出であるScope2を2030年度に45%以上(2020年度比)削減し、2045年度までにカーボンニュートラル実現を目指します。また、Scope1とScope2以外の事業者の活動に関連する他社の排出であるScope3のうちカテゴリ1、3、15(※2)についても、2030年度に22%以上(2020年度比)削減します。さらに、2050年度までに当社の再生可能エネルギー由来の電力自給率100%を目指します。
※1 2023年7月に温室効果ガス排出量削減目標を見直ししており、見直し後の目標を基に記載しています。
※2 当社グループのScope3排出量のうち8割以上を占めるカテゴリ
カテゴリ1:購入した製品・サービス
カテゴリ3:Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー活動
カテゴリ15:投資
⑤経営基盤強化
次のとおり、グループ共通の課題に対する取り組みを強化するとともに、経営基盤の強化も引き続き行い、企業価値向上を図ってまいります。
ものづくり戦略 | ●中経2030に基づく工場ビジョンの策定、及び工場実力評価と課題設定・解決を追求 ●ボトムアップ活動、ものづくり基盤強化、技術開発・改善による「ものづくり力の別格化」 |
研究開発戦略 | ●新製品・新技術・新事業創出を通して、持続的な企業価値向上を実現 |
人事戦略 | ●人材の価値最大化と「勝ち」にこだわる組織づくり ●共創と成長を生み出す基盤の構築 |
DX戦略 | ●データとデジタル技術を活用し、ビジネス付加価値向上、オペレーション競争力向上、経営スピード向上の3本柱を推進 ●開始から2年以上が経過する中で、ものづくりの強化と従来テーマの着実な実行を行うべく、テーマ再編成、体制強化等を行い、「MMDX2.0」として新たなフェーズへ |
IT戦略 | ●MMCグループIT WAYを実現するため、データ活用・働き方・セキュリティの観点から事業を支えるITモダナイゼーションの推進 ●100億円規模の投資を行い、2030年度におけるITコストは売上高比率1.0%以下 |
<重要課題(マテリアリティ)>
当社グループは、社会全体の持続可能性(サステナビリティ)が企業活動の将来に重大な影響を与えるとの認識に立ち、企業活動を通じて解決していく重要な社会課題及び当社グループが持続可能な事業運営を行うための課題の中から、特に重要度の高いものをサステナビリティ課題(マテリアリティ)として特定しています。
中経2030の策定に際して、当社は、さまざまな観点から課題要素を抽出し、それぞれのステークホルダーにとっての重要度と当社グループの「私たちの目指す姿」に照らした重要度の2軸からマテリアリティを整理し、マテリアリティごとの重点テーマ、重点テーマに対する取り組み内容及び目標を再設定しました。
また、当社では、経営環境等の変化を適時適切に捉えて必要な対応を図るべく、マテリアリティ等については、毎年見直すこととしております。今般の見直しにおいては、従来別々に整理・検討していた「マテリアリティ」と「サステナビリティ課題」を一つにまとめることとしました。加えて、「情報セキュリティの強化」、「地政学・地経学リスク」及び「財務リスク」について、昨今重要度が高まりつつある状況を踏まえ、新たにマテリアリティとして追加しました。
●情報セキュリティの強化
サイバー攻撃による情報漏洩等は、当社グループの競争力や事業継続に支障をきたすリスクとなります。グローバルスタンダードなIT基盤構築のために、ITガバナンスの強化、情報漏洩防止などに取り組みます。
●地政学・地経学リスク
国際的な紛争や戦争・テロ、経済制裁や貿易障壁、各国の政策変更などは、事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。グローバルビジネスを展開していくために、カントリーリスクを踏まえた海外投資戦略の見直しやBCPの策定、安定的な海外調達ポートフォリオの形成に取り組みます。
●財務リスク
企業の運転資金の調達や投資による損失、市場変動、信用リスクなどにより、企業の財務に大きな影響を及ぼす可能性があります。財務の健全性のために、キャッシュマネジメントの強化や関連会社の経営・財務状況のモニタリング、適切な年金資産運用に取り組みます。
有価証券報告書提出日時点のマテリアリティ及び重点テーマは次のとおりです。
マテリアリティ | 重点テーマ |
資源循環の推進 | 高度なリサイクル技術による資源循環のデザイン推進 |
リサイクル可能な製品の開発・提供 | |
地球環境問題対応の強化 | カーボンニュートラル実現に向けた取り組み強化 |
生物多様性の確保/環境負荷低減 | |
再生可能エネルギーの開発・利用促進 | |
人的資本の強化 | 労働力不足への対応 |
人材確保と育成の強化 | |
DE&I推進 | |
柔軟な働き方の推進 | |
個の尊厳と基本的人権の尊重 | |
コミュニケーションの活性化 | ステークホルダーとのエンゲージメント強化 |
顧客満足度の向上 | |
地域社会との対話、共生の推進 | |
情報セキュリティの強化 | ITグローバルガバナンスの強化 |
情報漏洩防止 | |
IT資産管理の強化 | |
SCQ(※)課題への対応強化
※Safety & Health(安全・健康最優先)、 Compliance & Environment(法令遵守、公正な活動、環境保全)、Quality(『顧客』に提供する製品・サービス等の品質) | 労働災害の未然防止 |
心身ともに働きやすい職場づくり | |
感染症予防 | |
コンプライアンスの徹底 | |
グループガバナンスによる内部統制の拡充 | |
コーポレート・ガバナンスの強化 | |
有害物質の敷地外漏洩防止、環境法令違反撲滅 | |
重大な品質不適合の撲滅 | |
持続可能なサプライチェーンマネジメントの強化 | 原材料の調達多様化 |
サプライチェーンにおける人権への配慮 | |
DXの深化 | 業務プロセスの変革 |
オペレーション強化 | |
顧客接点高度化、ビジネスモデル変革 | |
価値創造の追求 | 新規事業創出プロセスの構築と実行 |
ものづくり力の強化 | |
地政学・地経学リスク | 投資戦略の定期的な見直し |
海外拠点との連携によるカントリーリスクを含む海外リスクに関する情報収集・共有 | |
海外事業におけるリスク低減・回避策やBCPの策定・定期的な見直し | |
銅精鉱、E-Scrap、その他原材料の調達ポートフォリオの形成 | |
財務リスク | グループ最適なキャッシュマネジメントシステムの導入・運用 |
保有資産の時価の把握及び固定資産減損の兆候の有無の確認 | |
債務保証引き受け関連会社等の経営・財務状態のモニタリング | |
年金資産運用における安全性・収益性を考慮した投資配分 |
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