三愛オブリ 【東証プライム:8097】「卸売業」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組の状況は、次のとおりである。
(1)サステナビリティ基本方針
当社グループは、経営理念である三愛精神「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」とコーポレートブランド「Obbli」のもと、社会インフラの一端を担う企業としてエネルギーの供給責任を果たすとともに、低炭素・循環型社会に対応した事業ポートフォリオに進化させ、人々の生活と産業を支えるパートナーとなることを目指している。
当社グループの役員および社員は、以下の5項目を基本姿勢とし、健全かつ透明性の高い経営を通じて環境や社会の課題解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していく。
私たちは誠実・正直に行動します。
私たちは法令、ルールを順守します。
私たちは自然環境・地域社会との関係を大切にします。
私たちは顧客の満足を追求します。
私たちは、自ら学び、自ら考え、自ら行動します。
(2) サステナビリティ全般にかかわるガバナンスおよびリスク管理
① ガバナンス
当社グループでは 2022 年4月三愛オブリグループサステナビリティ委員会を設置した。同委員会はサステナビリティ推進活動を主導しモニタリングをおこなうことを目的としており、代表取締役社長を委員長、人事総務部担当役員を副委員長、常勤取締役および執行役員を委員、常勤監査役をオブザーバーとして構成されている。
サステナビリティにかかわるリスクおよび機会の抽出・評価は同委員会にて審議をおこない、審議結果は取締役会に報告する。取締役会は同委員会の報告内容に基づき管理・監督をおこなう。
② リスク管理
当社グループのサステナビリティに関するリスクおよび機会については、サステナビリティ推進部および経営企画部が事務局となり、サステナビリティ委員会で年1回以上リスクおよび機会の評価、影響度、対応策など PDCA サイクルにて見直しをおこなう。
(3) 気候変動に関連した戦略ならびに指標および目標
① 気候変動のシナリオと対応戦略
当社グループは、エネルギーを取扱う企業の責務として気候変動を喫緊の重要課題と認識し、気候変動が当社グループの事業活動に与える影響の分析をおこなった。
イ.想定するシナリオ
当社グループは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表している第6次評価報告書第1作業部会報告書のシナリオをベースに2030年から2040年までのシナリオ分析を実施した。
<4℃シナリオ(SSP5-8.5)>
各国のGHG (温室効果ガス)削減が進まず、世界の平均気温が今世紀末ごろに4℃程度上昇する。平均気温が上がることで大型台風や集中豪雨による災害が頻発するとともに、新たな感染症が発生し猛威を振るっている。世界的に暖冬が続き、暖房需要が減退する。
GHG排出については、一部の先進国で厳しい法規制が敷かれるものの、発展途上国では経済活動が優先され消極的な規制にとどまる。再生可能エネルギーの普及は進むが、化石燃料への依存が続く。
<2℃シナリオ(SSP2-4.5)>
各国において低炭素社会実現にむけた取組みが開始され、炭素税を含む各種規制・税制が施行される。これによりGHG排出量は横ばいで推移し、世界の気温上昇速度は緩やかになる反面、税負担の増加により企業の収益性が悪化する。
また、大型台風や集中豪雨は現在(2022年度)と同程度の頻度で発生している。新型コロナウイルス感染症は収束し、経済活動は2019年度と同様の状態が続いている。
電力供給は再生可能エネルギーの割合が大きく増加するものの、再生可能エネルギーのみの電力供給は不安定であることから化石燃料による発電も依然として続いている。
ロ.シナリオ分析
・リスク
<4℃シナリオ>
種類 | 影響 | リスク | 影響度 | 発生 時期 | 対応戦略 | |
物理的 | 急性 | 異常気象による集中豪雨や河川氾濫 | ・大型台風などの影響により航空機給油施設や石油製品油槽所の一部が水没 | 小 | 短期 | ・BCP(事業継続計画)の整備 |
慢性 | 気象パターンの変化による気温上昇 | ・海面上昇により石油製品油槽所の一部が機能不全 ・航空機給油施設内の地下水上昇 | 大 | 長期 | ・他油槽所の代替利用 ・高潮対策(嵩上) ・排水機能強化 | |
移行 | 法規制 | ガソリン車の規制強化 | ・ガソリン車の規制強化 ・炭素税導入によりガソリン車の利用が減少 | 大 | 短期 | ・効率化事業(石油)はローコスト体制へ ・経営資源を再配分 |
技術 | 航空燃料SAF(※1)の普及 | ・航空燃料はSAFの割合が増 加 | 小 | 短期 | ・SAFの貯蔵、サービス | |
市場 | EV(電気自動車)普及率増加 | ・EVが普及するもライフラインとしてのSS需要は残る | 大 | 短期~ 中期 | ・ガソリン車への対応は継続しEV等への対応 | |
評判 | 投資家による石油関連銘柄敬遠 | ・ダイベストメントによる株価下落 | 小 | 短期 | ・事業ポートフォリオの進化 |
<2℃シナリオ>
種類 | 影響 | リスク | 影響度 | 発生 時期 | 対応戦略 | |
物理的 | 急性 | 大雨による被害 | ・大雨の影響により航空機給油施設や石油製品油槽所の一部が浸水 | 小 | 短期 | ・BCP(事業継続計画)の整備 |
移行 | 法規制 | ガソリン車の新車販売禁止 | ・2030年代にはガソリン車の新車販売が禁止 ・2030年以降、急激にガソリン販売量が減少 | 大 | 中期 | ・SS新業態への転換 |
技術 | 航空燃料はSAFが主流 | ・航空燃料はSAFが主流に | 小 | 中期~ 長期 | ・航空機給油施設の整備・運用 | |
技術 | 小型航空機では一部水素を燃料にした航空機が就航 | ・水素を動力とした小型航空機の就航が開始 | 小 | 中期~ 長期 | ・水素燃料への供給対応 | |
市場 | EVおよび水素自動車の普及率増加 | ・EV、水素自動車へのシフトが進みガソリン車シェアが大きく減少 | 大 | 短期~ 中期 | ・成長事業への投資拡大 ・EVへの対応を含むSS新業態への転換 | |
評判 | 投資家による石油関連銘柄敬遠 | ・ダイベストメントによる株価下落 | 小 | 短期 | ・事業ポートフォリオの進化 |
・機会
<4℃シナリオ>
種類 | 影響 | 機会 | 影響度 | 発生 時期 | 対応戦略 |
資源の 効率化 | 灯油・重油からの燃転が進む | ・オンサイトエネルギーサービス(※2)の需要が増加 | 小 | 短期 | ・灯油・重油よりGHG排出量が少ないLNGを用いたエネルギーサービスを展開 |
資源の 効率化 | 再生可能エネルギーの普及 | ・再生可能エネルギーのオペレーション&メンテナンス部門へ進出しビジネス機会が増加 | 中 | 中期 | ・風力発電などのオペレーション&メンテナンスをおこなう会社への出資 |
製品・ サービス | 感染症蔓延により衛生分野の化学品メーカーにおける需要が増加 | ・衛生分野の化学品メーカーを買収 | 中 | 短期~ 中期 | ・化学品メーカーの買収 |
製品・ サービス | 空港での水素供給 | ・水素を動力とした空港内特殊車両への水素供給ビジネスを展開 | 小 | 短期~ 中期 | ・水素貯蔵施設の建設・運営 |
<2℃シナリオ>
種類 | 影響 | 機会 | 影響度 | 発生 時期 | 対応戦略 |
製品・ サービス | 水素ステーション建設 | ・エンジニアリング部門において水素ステーション建設増加 | 大 | 中期 | ・水素ステーションの建設 |
製品・ サービス | 水素自動車の普及 | ・水素ステーション運営へと転換を図る | 大 | 中期 | ・水素ステーションの運営 |
製品・ サービス | 空港での水素供給 | ・水素を動力としたプライベート航空機や空港内特殊車両への水素供給ビジネスを展開 | 小 | 中期 | ・水素貯蔵施設の建設・運営 |
<4℃・2℃シナリオ>
種類 | 影響 | 機会 | 影響度 | 発生 時期 | 対応戦略 |
エネルギー源 | メタネーション技術(※3)の確立 | ・合成メタン製造の技術が確立され、天然ガスから合成メタンへの切り替えが進む | 中 | 長期 | ・新たな仕入先、販売先の確保 |
エネルギー源 | プロパネーション技術(※4)の確立 | ・合成プロパンガス製造の技術が確立され、切り替えが進む | 中 | 長期 | ・グリーンLPガスの販売へ切り替えていく |
エネルギー源 | e-fuel技術の確立 | ・合成燃料の製造技術が確立され化石燃料からの切り替えが進む | 大 | 長期 | ・新たな仕入先、販売先の確保 |
製品・ サービス | 半導体需要増 | ・金属表面処理業(CT事業)の拡大 | 小 | 短期~ 中期 | ・旺盛な半導体需要への対応として新たなCT事業所を建設する |
(発生時期の基準)
発生時期の定義は以下のとおりである。
区分 | 期間 |
短期 | 2030年まで |
中期 | 2030年から2050年まで |
長期 | 2050年以降 |
(用語説明)
※1 SAF
廃食油や動植物性油脂などを原料とした航空燃料。Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)の略。
※2 オンサイトエネルギーサービス
需要家の敷地内に燃料供給設備、ボイラ設備等を設置し、必要なエネルギーを安定供給するサービス。
※3 メタネーション技術
水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を反応させ、メタン(CH4)を合成する技術。ガスの脱炭素化技術として注目されている。
※4 プロパネーション技術
メタネーションと同様に水素と二酸化炭素を反応させ、プロパン(C3H8)を合成する技術。現時点で技術体系は確立されていない。
② 指標および目標
当社グループでは石油精製等の事業をおこなっておらず、本社・各事業所・SS等における電力消費がCO2排出の大半を占めている。こうしたなか、石油小売販売会社の直営SSにおいて再生可能エネルギー由来の電力導入を順次進めるとともに、当社グループの事業所に太陽光発電設備を設置することで電力から生じるCO2の削減に取り組んでいる。
当社グループでは、2019年度を基準として、2030年度にはCO2排出量30%削減、2050年度にはカーボンニュートラルを目標とする。なお、CO2排出量はScope1およびScope2の合計となっている。
項目 | 指標 2019年度 | 実績 2021年度 | 目標 | |
2030年度 | 2050年度 | |||
Scope1・Scope2の合計 | 16,760t-CO2 | 15,423t-CO2 | △30% | カーボン ニュートラル |
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
(4)人的資本・多様性の確保に向けた取組
① 多様性の確保についての考え方および人材育成・社内環境整備の方針
当社グループは、三愛精神「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」を経営理念としており、人材の多様性を尊重し、個々の力を結集することが企業の成長につながると考えている。そのため、人材の多様性を確保すべく、採用における女性割合の増加、障がい者雇用の促進、キャリア採用を推進している。
また、社員の属性、価値観、働き方は多様化しており、互いの価値観の違いを認め、その能力を十分に発揮するための人材育成と社内環境整備に努めている。
② 中期経営計画に基づく施策
当社グループは、2030年度に向けて低炭素・循環型社会に対応した事業ポートフォリオへの進化を目指し、成長事業・安定基盤事業を中心に人的資本の強化を図っている。
2021年度から2023年度の中期経営計画において変革を生む挑戦的な組織風土を醸成するため、人材活用基盤の整備を重要課題とし、次の施策を実施した。
イ.人材活性化に向けた研修・教育体制強化
・職種や職域を制限しないジョブローテーションの実施
・階層別研修/選抜型研修/資格取得研修の実施
・国内留学制度/英会話選抜ビジネスクラスの実施
・DX研修の実施
・自社研修センターを活用した集合研修の実施
ロ.専門人材のキャリア採用強化
・通年でのキャリア採用実施
・キャリア採用研修の実施
ハ.ダイバーシティの推進
・ダイバーシティ・マネジメント研修の実施
・障がい者雇用の促進
・キャリアアップ支援制度(女性社員向け通塾型セミナー「立志塾」)
③ 指標および目標
当社グループは、多様性の確保についての考え方および人材育成・社内環境整備の方針に基づき、研修・教育体制を強化することで個々の能力開発を図っている。また、キャリア採用や女性採用の割合を増加させ積極的に管理職に登用するなど、さまざまな属性の人々が活躍できる組織作りを目指している。
当社グループの人的資本・多様性の確保に向けた指標および目標は以下のとおりである。
項目 | 指標 2022年度実績 | 目標 2023年度 |
従業員1人あたりの教育費 | 101千円 | 120千円 |
採用に占めるキャリア採用割合 | 63.2% | -(注) |
新卒採用人数に占める女性割合 | 10.3% | 30%以上 |
女性管理職割合 | 4.9% | 6%以上 |
(注)採用に占めるキャリア採用割合については、今後も同水準を維持していく。
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