三井海洋開発 【東証プライム:6269】「機械」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、2024年度からの中期経営計画に先立ち、当社を取り巻く事業環境の変化や世界的な脱炭素社会実現への流れを汲み、10年後、20年後、更にその先の将来、どのような企業でありたいかを見据え、ビジョン・ミッション及びコア・バリューを刷新いたしました。フロンティア精神を忘れることなく、可能性に満ち溢れた海洋と人との持続可能な未来を切り拓いてまいります。
■ビジョン
海洋と人が調和しながら共生共栄できる世界を切り拓きます
■ミッション
持続可能な未来の実現に向けて、独創的なフローティング・ソリューションを通じ、海洋が持つその可能性を解き放ちます
■コア・バリュー
~我々は“OCEAN”にコミットします~
One team | | | 寛容、平等、相互信頼に基づいたオープンな対話を実践することで、多様性に富んだ我々の組織を一つにし、真の価値を創造します |
Care | | | 常に安全を最優先事項とし、これまで大切にしてきた、我々の仲間、アセット、環境を育てていきます |
Empowered | | | 先駆者の精神を忘れず、オーナーシップを持って判断し、仲間を信頼し、共に成長し続けます |
Agile | | | 結果に直結させる意識を高く持ち、変化に俊敏に対応し、継続的な改善を追い求めます |
iNtegrity | | | 人権の擁護、プロフェッショナルとしての行動、並びにコンプライアンスと倫理を尊ぶ文化を以て、常に正しく適切に業務を遂行します |
(2) 経営環境等
当連結会計年度におけるわが国経済は経済社会活動の正常化が続き、回復基調を維持しましたが、世界経済については地政学上のリスクもあり不透明感が高い状態が続いております。原油価格については、サウジアラビアによる自主的な追加減産が延長されたことなどを受け一時高騰したものの、中国経済の減速などにより、2023年末には前年と同等の価格に落ち着きました。
安定したエネルギー供給を維持することは依然重要な課題であり、石油会社による深海油田開発プロジェクトは継続して進められています。当社グループの主要事業である浮体式海洋石油・ガス生産設備に関する事業、特に当社グループが強みを持つ超大水深大型プロジェクトに対する需要も堅調に推移しております。
しかしながら、当社グループを取り巻く事業環境は、脱炭素化、再生可能エネルギーの更なる普及、デジタル技術の進化など大きく変化しております。こうした事業環境の変化を確実に捉え、既存事業で確実に収益を確保しつつ、浮体式洋上風力発電、環境に配慮したFPSOの開発、デジタル・ソリューション事業など、将来の新たな収益源の開拓を着実に進めてまいります。
(3) 経営戦略等
2021-2023 前中期経営計画の総括
2021年にスタートした3カ年の中期経営計画においては、重要テーマとして①アセット・インテグリティの改善、②デジタライゼーション戦略推進、③研究開発:FPSOに次ぐ将来の収益源の育成、④環境・社会的要請への取組み、の4項目を掲げて、必要なリソースを確保し推進してまいりました。前中期経営計画期間中は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、建造工事の費用負担増加や、ブラジルで操業するFPSO等に対する追加の修繕費等が発生したことにより、当初設定した数値目標を下回る結果となりましたが、2022年以降は、当社の取組み並びに好調な市況を背景に、安定成長軌道に回復いたしました。
中期経営計画 2024-2026
2024年よりスタートした「中期経営計画 2024-2026」の策定に先立ち、まずは重要なサステナビリティ課題として6つのマテリアリティを特定いたしました。更にはビジョン・ミッション及びコア・バリューを刷新し、これを礎とした長期戦略『ビジョン2034』では、10年後のあり姿を「海洋と人をつなぐグローバル・リーディング・プレイヤー」と定めました。
当該新中期経営計画においては、スローガンとして「イノベーションで持続可能な未来を拓く」を掲げ、重点項目として、①収益力の強化、②戦略的な経営資源配分と獲得、事業推進のための③FPSO脱炭素化の推進及び④新事業具現化への布石、また事業基盤となる⑤グループコラボレーションとシナジーの深化及び⑥サステナビリティ・グループガバナンスの向上、を設定いたしました。
①収益力の強化:
大規模深海油田を中心とした新規プロジェクトも見込まれる中、受注済みのEPCI(設計、調達、建造、据付)、長期の操業並びにチャーター案件をベースに、FPSOのトッププレイヤーとしての卓越した事業運営により、安定した利益と資金を創出してまいります。
②戦略的な経営資源配分と獲得:
FPSO事業の脱炭素化推進や安全性の向上などの「FPSO事業の価値向上」、浮体式洋上風力発電や代替エネルギー生産システムを含む「新事業」、そして次世代リーダーの育成やDE&I(多様性、公平性、包括性)の促進などにより「人的資本」を強化すべく、上記の①で得た収益を、将来のために積極的に投じてまいります。
③FPSO脱炭素化の推進:
継続的なFPSOの炭素排出原単位削減の取組みに加えて、発電機排ガスからの二酸化炭素の回収・貯蔵技術や省エネのための機器運転の最適化を可能にするデジタルツール等の開発により、温室効果ガスの排出量を最小化した“Target Zero” FPSOの実現を目指し、温室効果ガスの抜本的な削減に向けた取組みを加速してまいります。
④新事業具現化への布石:
これまでFPSOを中心とする事業で培ってきた技術や知見を土台とし、「浮体式洋上風力」、「デジタル」そして「代替エネルギー」の分野での事業化に向けた取組みを推進してまいります。また、イノベーションの文化を浸透させ、浮体技術及びデジタル・ソリューションを活用した新事業の開拓・育成にもより一層注力いたします。
⑤グループコラボレーションとシナジーの深化:
ビジネスプロセスの標準化やデジタルを活用したマネジメントシステムの導入促進と、企業の礎となる人財の強化を図る人的資本経営の推進を軸に、グローバルに展開するグループでの相乗効果を拡大してまいります。
⑥サステナビリティ・グループガバナンスの向上:
新設したサステナビリティ委員会を通じてグループ横断でサステナビリティ課題に取り組むとともに、従前より企業責任として特に力を入れて組織的に取り組んできた「安全と人権」への更なる取組みを強化してまいります。
これらの活動の成果として、「2026年に達成すべき数値目標」は親会社の所有者に帰属する当期利益175百万米ドル等を掲げております。
親会社の所有者に帰属する当期利益 | 自己資本利益率(ROE) | 株価純資産倍率(PBR) | 調整後EBITDA(注) |
175百万米ドル | 12.0% | 1.0倍超 | 300百万米ドル |
(注) 一過性損益調整前
(4) 対処すべき課題
①操業中のFPSOに関し、新型コロナ感染症流行の期間中は十分な保守・修繕作業が行うことができなかったため、2000年代前半に受注した初期のFPSOの経年劣化が急速に進み安全性の確保を最優先で対応した結果、想定外の稼働率の低下やアセット・インテグリティの維持・強化費用の負担を余儀なくされておりました。その後これらの初期のFPSOの状況も改善し、また、順次チャーター期間の終了を迎えていくことから、こうした課題は徐々に解決しつつあります。しかしながら石油・ガスの安定かつ安全な生産とその操業は、引き続き当社グループの最重要課題の一つであり、一層のアセット・マネジメントの強化に努めてまいります。
②近年FPSOの大型化・複雑化が進んでおり、このような状況に対応するため、当社グループはプロジェクト・マネジメント力及びエンジニアリング力の強化、人材育成に注力してまいりました。一昨年設立した東洋エンジニアリング株式会社との合弁会社も順調に稼働を開始し、建造工事の遂行能力は着実に強化されてきております。建造、操業、リースというFPSO事業全体の管理体制を一層強化するとともに、より強固な内部統制を確立し、適切に対応してまいります。
③原油・天然ガスの安定的な確保に向けてFPSO等の浮体生産設備への潜在需要は底堅く、新規案件の開発も温室効果ガス排出量の削減等環境に配慮しながら着実に進むものと予想しております。一方で、脱炭素化に向けた世界的な取組みも地域・業界ごとに温度差があるものの加速していくものと考えております。当社としては、主力事業であるFPSOのコスト競争力強化だけではなく、浮体式洋上風力事業などの新規事業開拓にも注力し、脱炭素化の流れにも真摯に取り組み、社会からの要求に応えられる企業となることを目指します。
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