企業兼大株主三井住友フィナンシャルグループ東証プライム:8316】「銀行業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

(1)サステナビリティに対する考え方及び当社グループのマテリアリティ

 当社グループは、「社会課題の解決を通じ、持続可能な社会の実現に貢献する」ことを経営理念に掲げるとともに、サステナビリティ宣言において、サステナビリティを「現在の世代の誰もが経済的繁栄と幸福を享受できる社会を作り、将来の世代にその社会を受け渡すこと」と定め、その実現に向けて、時代の変化に対応しつつ、社会課題の解決に幅広く貢献してまいりました。

 しかし、地球の温暖化、人権の侵害、貧困・格差の拡大等、世界が直面する社会課題は拡大・深刻化の一途を辿っております。わが国においても、「失われた30年」とも呼ばれる長期の低成長に陥り、少子高齢化・人口減少は一段と加速しております。社会とは、事業を営む上での礎であり、社会の発展なくして企業の持続的成長はあり得ません。

 以上の認識の下、当社グループは、2023年度に開始した新中期経営計画「Plan for Fulfilled Growth」において、「社会的価値の創造」を基本方針の一つと定め、時代の変化を先取りし、短期的には経済的価値に直結しない領域にも積極的に取り組んでいくことといたしました。

 そして、特に解決を目指すべき喫緊の社会課題として、「環境」「DE&I・人権」「貧困・格差」「少子高齢化」「日本の再成長」の5つを、当社グループの新たな「重点課題(マテリアリティ)」に定め、その解決に向けたゴールを設定し、事業戦略に落とし込みました。

 当社グループは、社会的価値の創造を通じ、経済の成長とともに社会課題が解決に向かい、そこで生きる人々が幸福を感じられること、すなわち「幸せな成長」に貢献することを目指してまいります。

<当社グループの理念体系>


<新たな重点課題の考え方と「10のゴール」>


(2)ガバナンス

① サステナビリティ経営の全体像

 当社グループにおけるサステナビリティ経営は、グループCEO(Chief Executive Officer)を含むグループCxOの責任で推進され、取締役会の監督を受け、強固なガバナンス体制の下で運営されております。サステナビリティを推進するために必要な諸施策に関しては、取締役会のほかサステナビリティ委員会を含む内部委員会が監督を行い、各委員会で審議が行われております。また、サステナビリティに関する具体的な業務戦略は、経営会議等での審議・決定を踏まえて実行されております。


<当社グループのサステナビリティ経営体制>


② 監督体制

 イ.取締役会

 当社グループの取締役会は、経営の基本方針等、法令上取締役会の専決事項として定められた事項の決定及び執行役・取締役の職務執行に対する監督を主な役割としております。また、取締役会の監督機能の強化及び業務執行の迅速化等を目的として、専決事項として定められている事項以外の業務執行の決定を、原則として執行役に委任しております。

 取締役会は、サステナビリティに関する知見・経験を含む、多様性を備えた取締役で構成されております。取締役会ではサステナビリティ経営の最終的な監督が行われ、サステナビリティに関するリスク及び機会への対応の観点から審議が行われております。

 ロ.サステナビリティ委員会

 サステナビリティ委員会は、社外取締役2名、社内取締役2名、社内外の有識者2名の合計6名で構成されております。サステナビリティ委員会は、サステナビリティ推進施策の進捗に関する事項、サステナビリティを取り巻く国内外の情勢に関する事項、その他サステナビリティに関する重要な事項等について審議し、原則半期に一度、取締役会に報告・助言しております。

 グループCSuO(Chief Sustainability Officer)が、サステナビリティを取り巻く国内外の情勢に関する事項と共に、当社グループにおけるサステナビリティ関連施策の進捗報告やサステナビリティ関連の取組方針付議を行い、取締役並びに外部有識者によって監督・審議が行われております。

③ 執行体制

 イ.経営会議・サステナビリティ推進委員会

 サステナビリティへの取組は、グループ経営会議・サステナビリティ推進委員会での決定を踏まえて当社グループの戦略に反映されております。また、当社グループは、グループ全体の業務執行及び経営管理に関する最高意思決定機関として、グループ経営会議を設置しております。グループ全体のサステナビリティ実現に向けた施策はグループ経営会議で協議されるほか、具体的な内容については、サステナビリティ推進委員会においても審議・決定がなされております。サステナビリティ推進委員会はグループCEOを委員長とし、トップのコミットメントのもとで執行の立場からサステナビリティを実現していくことを目的として設立しております。

 ロ.グループCxO

 グループCEOは、グループ経営会議等において、サステナビリティの実現に向けた施策の承認を行っております。これらの施策の強化を図るべく、グループCSuOを設置し、サステナビリティ全般の取組を統括・推進する等、グループCSuOは、サステナビリティに関する施策立案・進捗管理について責任を有しております。なお、取組を着実に実行するため、施策ごとにグループ内横断的なワーキンググループをグループCSuOの下に設置しております。

 グループCRO(Chief Risk Officer)は、サステナビリティの観点を踏まえたリスク管理に係る責任を有しております。リスク管理体制の強化のため、グループCROの下、リスク管理部門内に環境社会リスク管理室を設置しております。また、グループCHRO(Chief Human Resource Officer)は、グループベースの人員・人件費計画や人事戦略の策定・管理に係る責任を有しております。
 

 ハ.サステナビリティ本部

 当社グループは、2022年度より、グループCSuOの下にサステナビリティ本部を設置しております。サステナビリティ本部は、サステナビリティに関する機能・知見をグループベースで集約し、リソースを増強しつつ環境・社会課題への対応力を強化することを目的としており、グループ全体戦略の統括や中期的目線での事業開発を行うサステナビリティ企画部と、サステナブルビジネス推進やお客さまとのエンゲージメント推進を行うサステナブルソリューション部で構成されております。サステナビリティに関する課題に対して、グループCSuOのもと、企画から推進まで一気通貫で対応しております。

(参考)ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)推進体制

 当社グループは、DE&Iを「グループの成長戦略そのもの」と位置付け、社内外に発信しております。具体的には、グループ一体での推進に向け、ダイバーシティ推進室を設置し、取締役会・経営会議で定期的に議論を行っているほか、社長を委員長、主要グループ各社の頭取・社長を委員とするダイバーシティ推進委員会を開催する等、経営トップ自らがコミットし、推進体制を整備しております。また、管理職に対して、マネジメントの重要性や役割期待、アンコンシャス・バイアスやDE&Iの推進意義等を伝える研修を実施しております。

 
<DE&I推進体制>


④ 役員報酬制度

 当社グループは、2020年度より中期業績連動報酬における定性項目の一つとして「ESGへの取組」を組み入れ、サステナビリティ関連の長期目標の達成度等を役員報酬に反映させたほか、2022年度には単年度業績連動報酬にもESG評価を拡大いたしました。具体的には、単年度のESGへの取組について、社内目標の単年度の達成度及び主要な外部評価機関の評価結果に応じて、社外取締役が過半数を占める報酬委員会で評価を決定し、最大±10%の範囲で単年度業績連動報酬に反映される形に変更いたしました。

 また、2023年4月には、役員報酬制度の中期業績連動型報酬にポートフォリオGHG(温室効果ガス)排出量や従業員エンゲージメントスコアなどのESG定量指標や、環境、従業員、人権などに関する取組への定性評価を組み入れております。

<役員報酬制度の概要>


(3)戦略

① 気候変動への対応

 気候変動への対応は、世界が喫緊に取り組むべき課題の一つです。気候変動問題の解決に向けた世界の取組が加速していくなか、当社グループを取り巻く環境は、政策・規制面の強化や、お客さま・投資家の方々を含むステークホルダーの行動変容、技術革新の進捗等によって大きな変化が見込まれております。このような不確実性を伴う環境下では、2050年GHG排出量ネットゼロ(以下、「ネットゼロ」という)の実現に向けたフォワードルッキングな戦略の下、外部動向を見極めながら段階的に気候変動対策を進めていくことが重要となります。

 イ.気候変動に伴うリスク・機会の認識

a) 物理的リスク・移行リスク

 当社グループでは、気候変動問題の顕在化に伴う外部環境や業務環境の変化をあらかじめ想定し、様々な波及経路に基づいてリスク事象を洗い出すことで、当社グループへの財務的影響を特定しております。当社グループが想定するリスク事象の概要と主な影響は以下のとおりであります。


(物理的リスク)

〇 急性的な気象現象と慢性的な気候変化

 地球温暖化の進行は、台風・洪水等の急性的な自然災害の増加や、平均気温上昇に伴う降水量増加等の慢性的な気候変化をもたらす可能性があります。これらの事象に起因し、本支店被災により事業が継続できないリスク、対策・復旧によるコスト増加、自然災害によるお客さまの業績悪化や担保毀損に伴う当社グループの与信関係費用の増加・預金の減少等のリスクが想定されます。

 
(移行リスク)
〇 政策及び法規制の強化や技術・市場の変化

 脱炭素社会への移行は、炭素排出目標の厳格化や炭素税の引き上げを始めとする各国の規制強化を伴う可能性があるほか、新たな技術・エネルギー源の導入や消費者嗜好の変化により産業構造の変化を促進する可能性があります。産業構造の変化により、一部のお客さまについて収益減少や既存資産などの減損による業績悪化、当社グループの与信関係費用の増加等のリスクが想定されます。

 
〇 企業の取組に対するレピュテーション

 企業は脱炭素社会に適合したビジネスモデル変革や炭素排出量抑制等の取組を求められております。ステークホルダーからの開示要請も高まっており、気候変動問題への取組が企業評価基準の一つになりつつあります。これらの取組不足や情報開示要請への対応の遅れは、当社グループのレピュテーション悪化に繋がり、資金調達環境が悪化する等のリスクを引き起こすことが想定されます。
 

b) カテゴリー別リスク分類

 当社グループは、気候変動リスクをカテゴリー別に整理しております。気候変動リスクは広範な波及経路が想定され、かつ様々な時間軸で顕在化する可能性があります。当社グループにおいては下表のような事例が想定されます。

<気候変動に関するカテゴリー別リスク事象例>


c) 気候変動に伴う機会に対する認識

 ネットゼロ実現に向けては、大幅なGHG排出量削減のためのビジネスモデルの転換、そのための技術革新や大規模な設備投資が必須となります。IEA(International Energy Agency)の「持続可能な開発シナリオ」(SDSシナリオ/Sustainable Development Scenario)においては、2021年から2023年にかけて、エネルギー関連を中心に世界で年100兆円以上にもおよぶ追加投資が発生するとの可能性が示唆されております。

 また日本においても、国が掲げる2030年目標の達成に向け、例えば電力セクターでは再生可能エネルギー発電関連で約30兆円、運輸セクターではゼロエミッション車関連で1兆円超の投資が必要になることが見込まれます。こうした中、金融機関においては、資金需要の拡大や事業再編、新たな金融商品・サービス、脱炭素関連設備リース等のニーズが生じるほか、気候関連情報開示の高度化対応や、気候変動戦略・ビジョンの策定、事業開発、リスクマネジメントの高度化への対応など、経営課題に対するコンサルティングニーズが生じると認識しております。

 当社グループにおいても様々な金融サービスの提供機会が増大し、グループ内の事業領域におけるノウハウを有機的に結び付けた多面的なソリューションが重要になると考えております。
 

<当社グループ事業領域とネットゼロへの移行に伴う成長機会>


 ロ.ネットゼロ実現に向けた移行計画

 当社グループは、2021年に「気候変動対策ロードマップ」及び「気候変動対策アクションプラン」を定め、気候変動に対する強靭性の確保・成長機会の獲得に向けた取組を加速させております。「気候変動対策ロードマップ」では、特に前中期経営計画期間中に取り組んだ施策を「アクションプラン STEP1」と位置付けており、本施策はネットゼロを進めるための軸となる戦略的取組です。
  今般、「気候変動対策ロードマップ」を「移行計画」としてアップデートし、ネットゼロ実現に向けた当社グループの一連の目標と行動を体系化しました。なお、2023年度から開始した「アクションプラン STEP2」における施策は、移行計画に包含されております。移行計画の遂行により、移行リスクの低減と脱炭素化に伴う成長機会の拡大に努め、ネットゼロ実現を目指してまいります。


<ネットゼロ実現に向けた移行計画>


 ハ.気候変動に関するシナリオ分析

 当社グループでは、グループの中核企業である株式会社三井住友銀行において、物理的リスク・移行リスクに関するシナリオ分析を実施しており、想定されるリスク量を試算しております。なお、このシナリオ分析では、各企業において今後想定される事業モデルの転換や、技術革新といった要素は必ずしも勘案されておらず、試算結果は一定の仮定に基づくものであります。
 2021年度のTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)レポート公表以降、物理的リスクのうち国内の分析においては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次報告書で用いられているSSPシナリオによる分析を実施したほか、各地域別の想定リスク量を明確化いたしました。移行リスクにおいては、脱炭素化に向けた世界観で示されるような、気候変動関連の政策や、脱炭素化に向けた規制の厳格化の動向などに基づき、従来のエネルギー・電力に加えて自動車(OEM)・鉄鋼を分析対象に追加し、4セクターへと拡大いたしました。なお、分析手法の詳細や分析結果の実績値については、「SMBCグループ TCFDレポート 2022」をご参照ください。
 

 ニ.脱炭素社会の実現に向けたビジネス推進戦略

 前記「イ.気候変動に伴うリスク・機会の認識 c) 気候変動に伴う機会に対する認識」に記載のとおり、脱炭素社会の実現に向けては当社グループにとってさまざまなビジネス機会が想定されます。

 こうした中、当社グループは、再生可能エネルギー向けのプロジェクトファイナンスをはじめ、グリーンボンドの引受、太陽光発電設備の信託やリース、TCFD対応コンサルティング等、グループを挙げて環境ビジネスに取り組んでまいります。また、グループ全体のサステナビリティに関するノウハウ、情報を集約し、他業種とも協業しながら、非金融を含めた高度なサービス開発・提供にも注力してまいります。

 これらのソリューションをグループ各社が連携しながら提供することで、お客さまの環境に対する取組を総合的に支援し、経済的価値・社会的価値の両面を伴った環境ビジネスを展開してまいります。

a) サステナブルファイナンスの拡充

 脱炭素社会の実現に向けては、大幅なGHG排出量削減を前提としたイノベーションや大規模な設備投資が必須となり、エネルギー関連を中心に多くの追加投資が見込まれ、資金需要の拡大や新たな金融商品・サービスの発生など、金融機関にとっての成長機会となり得ます。

 こうした中、当社グループでは、2020年度から2029年度のサステナブルファイナンス実行額50兆円(うちグリーンファイナンス20兆円)を目標として設定しております。マーケットにおける高いプレゼンスなどを背景として、グリーンファイナンスを中心として順調に実績を積み重ねております。

 当事業年度までの実績値は、後記「(5) 指標及び目標 ① 気候変動に関する指標と目標 ニ.サステナブルファイナンス取組額」に記載しております。

b)デジタル技術を駆使した脱炭素化支援ツールの提供

 当社グループは、デジタル技術を活用した非金融ソリューションをお客さまに提供することで、金融面以外の切り口からも脱炭素社会への移行を支援しております。
 例えば、株式会社三井住友銀行は、サプライチェーン全体のCO2排出量の算定から削減施策の立案・実行まで一連の業務をクラウド上で管理できるサービスである“Sustana”を提供しております。お客さまの活動に関するデータから排出量を推計し、削減施策の実行に向けた支援を行っております。

<GHG排出量算定・削減支援クラウドツール“Sustana”>


② 自然資本の保全・回復

 自然資本とは、植物や動物、大気や水や土壌などの天然資源を意味しております。当社グループのお客さまの事業活動の多くは自然資本によって下支えされており、自然資本の喪失は、金融グループとしての幅広い事業活動に潜在的なリスクとなる可能性があります。一方で、自然資本の適切な保全・回復は、社会の基盤を強固にすることで、人間の生活を豊かにし、健康を促進することにつながります。

 このような認識のもと、当社グループではお客さまの企業活動と自然資本との関係を依存・影響の観点から分析し、それを踏まえて自社の事業におけるリスクと機会を認識しております。

 また、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)における優先セクターの自然資本への依存度・影響度のヒートマップを作成し、とくに重視すべき自然資本・生態系サービスの特定に努めております。

 
<自然資本との「依存」と「影響」>


 イ.自然資本に関するリスクの認識

 当社グループは、企業活動と自然資本の接点を依存・影響の両面で整理したうえで、一般的にお客さまに想定されるリスクと機会を整理しております。

a) 依存の観点からのリスク

 気候変動や、企業活動・社会活動における自然資本の利用方法の変化・過度な利用を通して、特定の自然資本が毀損する可能性があります。

(物理的リスク)

 水や植物といった自然資本が枯渇し価値が劣化すると、それらが生み出す生態系サービスに依存して事業展開を行っているお客さまは、原材料調達コストの増加や自然災害の激甚化・頻発化などを通して、業績が悪化する可能性があります。

 
(移行リスク)

 自然資本の劣化は、お客さまの生産プロセスの変化を促します。こうした環境変化は、お客さまに対し、新たな技術導入に伴う追加的なコストのほか、事業の中断をもたらす可能性があります。

b) 影響の観点からのリスク

 自然資本に負の影響を与える企業にとって、法規制や政策面が不利になるような形で変更される可能性があります。また、サステナビリティ開示に係る国際的なガイドラインの策定が進む中、ステークホルダーからの自然関連情報の開示要請が今後より高まる可能性があります。

(物理的リスク)

 お客さまの事業が自然資本に負の影響を与える結果として自然資本が毀損する場合、当社グループのレピュテーション悪化につながる可能性があります。

 
 (移行リスク)

 自然資本保全を目的とする各国の規制強化や政策変更などに伴い、環境負荷軽減のための費用負担が企業に求められる場合、一部のお客さまにおいては対応コストが増加する可能性があります。また、自然資本保全に向けた取組や配慮が不十分である場合や対応が不十分とステークホルダーから見做される場合、当社グループのレピュテーション悪化につながる可能性があります。

<自然資本に関する主なカテゴリー別リスク事象例>


 ロ.自然関連の機会に対する認識

 2022年に開催された生物多様性条約第15 回締約国会議(COP15)第二回会合では、「2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せること(ネイチャーポジティブの達成)、2050年に自然と共生する世界を実現する」という世界目標が定められました。本目標の達成に向けては、金融機関には、アライアンスやリスク高度化対応へのサポートなど、お客さまの様々なニーズに対するサービス提供の機会が発生いたします。

 当社グループは、世界経済フォーラムが2020年に発表した報告書において言及されている「食料・土地・海の利用」「インフラ・建築環境」「エネルギー・採掘活動」の3分野で特に大きなビジネス機会が生じうると考え、様々な取り組みを進めてまいります。

 
<ネイチャーポジティブビジネス推進に関する当社グループの取組事例>


③ 人的資本経営の実践

 イ.「SMBCグループ人財ポリシー」の制定と浸透

 経営やビジネスの環境変化に加え、ビジネスの担い手の世代交代や女性活躍推進、キャリア採用の拡大等により従業員の価値観は多様化してきました。これに伴い企業と従業員の関係も「互いに依存する関係」から「選び、選ばれる関係」へと変化しております。

 長きにわたり「人の三井」「事業は人なり」と形容され「人」を重視してきた三井と住友の事業精神と文化を受け継ぎ、多様な従業員が集い、育ち、活躍する場であり続けるため、当社グループが「従業員に求めるもの」と「従業員に提供する価値」を「SMBCグループ人財ポリシー」として明文化しました。

 従業員には、社会に大きな責任を持つグローバル金融グループの一員としての自覚と、自分と異なる価値観を積極的に受け容れるDE&Iの精神を前提に、「プロフェッショナルとして責任を果たすこと」「お互いを認め合いチームで最高の成果を追求すること」「困難に立ち向かい挑戦し続けること」を求めております。

 一方、その実現に向けて取り組む従業員に対しては、「自分らしさを表現できる環境」「事業基盤を活かしたお客さま・社会へ貢献できる機会」「キャリア形成と成長のサポート」を提供し、自らの夢の実現を後押してまいります。

 このポリシーを浸透させ実行に移すためにも、人事評価の基準・項目を「SMBCグループ人財ポリシー」に沿った内容にアップデートするとともに、昇進・昇格については、年次・年齢よりも実力を一層重視してまいります。
 

 ロ.当社グループ版人的資本経営モデル

「SMBCグループ人財ポリシー」に基づき、グループ・グローバルでの人的資本経営による人材力の最大化に向けて、「戦略に応じた人材ポートフォリオの構築」と、全従業員を対象とした「従業員の成長とウェルビーイング支援」「チームのパフォーマンス最大化」に資する施策を推進してまいります。
 


a) 戦略を支える人材ポートフォリオの構築

〇 経営戦略を支える人材ポートフォリオ

 当社グループは、経営戦略の実現に必要となる人材確保・戦略領域への人材シフトを実現するための枠組として人材ポートフォリオ管理を高度化いたします。

 具体的には、ビジネスをよく知る事業部門と人材をよく知る人事部が連携し、必要となる経験・スキル等の人材要件を重点戦略領域ごとに明確化いたします。目指すべき人材ポートフォリオと所属する従業員の状況とのギャップを事業年度ごとに特定し、キャリア採用・新卒コース別採用を行います。また、経験・スキルを基に全従業員を人材タイプ毎に把握し、育成や機動的な人材の最適配置に取り組んでまいります。
 

〇 注力分野への先行投入

 当社グループは、経営戦略の一つである「経営基盤の格段の強化」を確実なものとするために、特に「法務・コンプライアンス」「リスク管理」「IT」等の分野における人材の確保を進めてまいります。

 また、「国内ビジネスモデル改革」を推進するための「DX」「アナリティクス」に精通した人材や海外事業展開を支える「グローバル」等のスキル・ノウハウを持ち合わせた人材確保に向け、国内では、具体的な人材要件をビジネスごとに特定し、キャリア採用や社内シフトにより3年間で計1,400人の投入を計画しております。
 

b) 従業員の成長とウェルビーイング支援

〇 グループの発展を支える人材の確保

 当社グループでは、全従業員に対して、それぞれの持ち場で責任感を持ち、付加価値の高いサービスを提供できる「プロフェッショナル」であることを求めております。
 2022年度の新卒採用においては、2,000名を超える従業員が採用広報イベントに参加し、学生に対して業務や企業文化の理解を促しました。キャリア採用についても、グループ各社で増加を計画しており、リファラル採用・カムバック採用・ダイレクトリクルーティング等の採用手法の拡充を進めております。
 OJT、研修、自己啓発を通じた人材育成の体制整備に加え、従業員一人ひとりが自身のキャリア希望や目標を設定し、上司との面談におけるフィードバックや1on1の機会を通じて、自律的なキャリア形成に取り組んでまいります。
 

〇 働き方改革

 当社グループは、従業員一人ひとりのライフスタイルや価値観が多様化する中、時間や場所にとらわれず柔軟に働くことができる環境を整備しております。従業員が自身のライフスタイルに合った働き方を選択できるようにすることで、勤務以外の活動も含めた従業員の自己実現をサポートいたします。

 また、仕事と育児を両立しながら活躍できる職場環境の整備に向け、男性従業員に対して30日以上の育児休業の取得を推奨しております。


〇 従業員のウェルビーイング

 当社グループにおいて「健康経営宣言」を制定し、最高健康責任者(Chief Health Officer)の下、企業・健康保険組合・健康サポートセンターの三位一体で、従業員が健康で活き活きと働くことができる環境を整備しております。

 また、従業員が業務に専念できる環境整備の一環として、従業員の資産形成に対する取組(Financial Wellness)も行っております。国内においては、財形制度や持株会制度に加え、寮・社宅制度、団体保険制度、退職金制度、確定給付年金制度(DB)、確定拠出年金制度(企業型DC)を整備しております。また、宿泊施設、飲食店、スポーツ施設、資格取得、育児等、幅広いサービスを優待価格で利用可能な外部サービス等も導入しております。
 

c) チームのパフォーマンス最大化

〇 人材管理の強化

 当社グループでは、経営上重要なポジションについて後継者候補を特定し、計画的に育成しております。たとえばグループの経営を担うポストに対しては、即時に継承可能な候補者の特定に加え、準備状況に応じて不足する経験を補う育成プランを作成しております。また、異なる事業や組織、風土に対する理解を深めることを目的に、候補者がグループ各社間で異動する「経営人材交流プログラム」も毎年20名規模で実施しております。

〇 DE&I推進

 当社グループにとって、DE&I推進は、お客さまにより大きな価値を提供し、ステークホルダーとともに持続的に成長するための成長戦略そのものです。

2023年度は、「ダイバーシティ&インクルージョンステートメント」を変更し、従業員の状況に応じた公正な機会提供を重んじる「エクイティ(公正)」という概念を取り入れ、「多様な視点を持つ革新的な組織」を目指す点を明確化しております。
 

〇 従業員エンゲージメント

 当社グループでは、従業員のエンゲージメントを可視化するツールとしてエンゲージメントサーベイを活用し、各組織において組織改善が行われているほか、毎月の1on1ミーティング等によって上司と部下の信頼関係の構築、双方の成長が促されております。

④ 人権の尊重

 イ.人権尊重の考え方

 当社グループは、人権尊重責任は企業が果たすべき責務と認識しております。当社グループでは、「『ビジネスと人権』に関する行動計画」や「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」などの指導原則に沿って、当社グループが人権の権利主体に対し与えうる負の影響と、多岐にわたるステークホルダーから当社グループ自身が被る影響の双方向の人権に関するリスクを踏まえたアプローチにより、当社グループは社会に対する「正の影響(ポジティブインパクト)」を極大化し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

<人権尊重の考え方>


 ロ.重要な人権リスクの特定・評価

 当社グループは、事業活動を通じて関与し得る人権への負の影響について、お客さまとの取引、サプライヤー取引、従業員の3つの観点で分析し、想定されるリスクについて深刻度・発生可能性の観点から重要度の高いものを特定しております。
 2022年度に特定した重要な人権リスクについては、今後も定期的な見直しを行いながら、これらの人権への負の影響の防止・軽減に重点的に取り組んでまいります。
 

<重要な人権リスク事例>


(4)リスク管理

① リスクアペタイト・フレームワーク/トップリスク

 当社グループは、収益拡大のために取る、あるいは許容するリスクの種類と量(リスクアペタイト)を明確にし、グループ全体のリスクをコントロールする枠組みとして、「リスクアペタイト・フレームワーク」を導入しております。
 当社グループのリスクアペタイト・フレームワークは、業務戦略とともに経営管理の両輪と位置付けられており、経営陣がグループを取り巻く環境やリスク認識を共有した上で、適切なリスクテイクを行う経営管理の枠組みです。このフレームワークに則り、業務戦略・業務運営方針の策定にあたって、経営上特に重大なリスクを「トップリスク」として選定しております。そのうえで、リスクシナリオに基づくストレステストによるリスク分析を実施することで、リスクが顕在化した場合の影響も踏まえながら、リスクアペタイトを決定しております。

 当社グループでは、気候変動や自然資本、人権に関するリスクをトップリスクとして位置付けております。特に、気候変動に係るリスクについては、業務計画を達成するためのリスクテイクやリスク管理に係る姿勢を示したリスクアペタイト・ステートメントにおいて、ネットゼロ目標の達成に向け、エンゲージメント促進やポートフォリオコントロール等を通じ気候変動リスクの増加を抑制していく旨を記載しております。
 

<リスクアペタイト・フレームワーク>


② デューデリジェンス

 当社グループは、グループ与信業務の普遍的かつ基本的な理念・指針・規範等を明示した「グループクレジットポリシー」に、公共性・社会性の観点から問題となる与信を行わないという基本原則とともに、地球環境に著しく悪影響を与える懸念のある与信を行わないことを謳っております。

 グループの与信業務の中核を担う株式会社三井住友銀行では、以下のとおり、お客さまの非財務情報の把握による与信への定性的な活用、また個別案件に対する環境社会リスク評価等を通じて、環境・社会リスクを適切に把握し、定期的なモニタリングによる管理を実施しております。

 また、サプライヤーとの取引に関して、「持続可能な調達方針」(サプライヤー行動指針)を制定し、サプライヤーに対し、事業を行う各国において適用される法令諸規則の遵守はもとより、当社グループが考える適切な基準への理解と協力を求めております。
 

 イ.非財務情報の把握

 株式会社三井住友銀行では、お客さまとの対話を通して、財務情報に加え、ESGに代表される非財務情報を把握することにより、お客さまの事業活動による環境や社会への影響を認識しております。環境・社会リスクに影響を与える可能性が高いセクター・事業を対象として、温室効果ガスの排出量や気候変動リスクなどの環境社会リスクへの対応状況を把握し、与信における定性的な判断要素として活用しております。これらの非財務情報は、モニタリングを通して定期的に更新しております。
 この取組を、「エクエーター原則」に基づく環境社会リスク評価とともに実施することで、より高度かつ広範なデューデリジェンスを実施しております。

 非財務情報の収集を通して、ESGリスクに関するお客さまとのエンゲージメントの質を深め、環境・社会への配慮に向けた取組を積極的に支援しつつ、懸念されるリスクについてはお客さまとともに改善に努めてまいります。

 ロ.環境社会リスク評価

 株式会社三井住友銀行では、環境・社会に多大な影響を与える可能性がある大規模プロジェクトへの融資においては、民間金融機関の環境・社会配慮基準である「エクエーター原則」を採択し、サステナビリティ企画部において、デューデリジェンスを通した環境社会リスク評価を実施しております。

 また、プロジェクト事業者に対して、TCFD提言への対応や、地域住民等へのFPIC(Free, Prior and Informed Consent/自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意)の尊重など、気候変動や人権をはじめとする環境社会配慮への取組を求めてまいります。

 ハ.人権デューデリジェンス

 株式会社三井住友銀行では、融資などの事業活動を通じた人権侵害の助長や人権侵害への直接的な関与を防止・軽減する観点で、発生可能性の観点からリスクの高い事業活動について、定期的なモニタリングを実施しております。
 モニタリング対象先について、人権侵害に関する情報の有無を確認し、人権侵害を行っている事実、またそれにより制裁を受けていることが判明した場合、新規の取引を行いません。既に融資取引のあるお客さまも、人権侵害の影響の軽減を促し、改善が見られない場合、与信を減退していく慎重な方針をとっております。その他の先に対しても、日々の取引の中で人権侵害に関する情報を入手した場合、同様の対応を行っております。

 また、当社グループでは、サプライチェーン上で労働問題など、様々な人権に関する負の影響が発生することを防止・軽減するため「持続可能な調達方針」への理解と協力を求めるほか、サプライヤーの人権も含めた取組状況を定期的に確認しております。当社グループは、「持続可能な調達方針」の策定に伴い、2022年11月、外部業者取引管理の枠組みにて、外部業者における従業員からの人権侵害等の各種相談を受け付ける社内相談窓口の設置状況の確認を導入しております。

 加えて、外部業者に対して「持続可能な調達方針」を案内し、当社グループが考える適切な基準への理解と協力を求めております。その他にも、当社グループは、外部業者取引管理において、人権課題への取組をめぐる会社方針や人権侵害に関するネガティブ情報の有無を定期的に確認しており、サプライチェーン全体での人権配慮に取り組んでおります。
 

③ セクター方針

 当社グループは、以下に示した、環境・社会に影響を与える可能性が高いセクター・事業に対する方針をそれぞれ明確化しております。この方針は、株式会社三井住友銀行、株式会社SMBC信託銀行、三井住友ファイナンス&リース株式会社、SMBC日興証券株式会社において、それぞれのビジネスに沿う形で導入し、更なるリスク管理体制の強化を図っております。


(5)指標及び目標

① 気候変動に関する指標と目標

 当社グループは、気候変動に係るリスク並びに機会を測定・管理するため、またパリ協定への整合/ネットゼロ実現に向けた道筋を示すため、GHG排出量やエクスポージャーなどに関する様々な指標を用いております。なお、本項目における指標の実績値については、2023年5月時点の速報値を掲載しております。正式値については今後「SMBCグループ TCFDレポート2023」にて公表予定です。

 イ.自社グループにおけるGHG排出量

 当社グループは、自社GHG排出量(Scope1,2)における2030年ネットゼロの目標を掲げており、当社及び当社連結子会社の国内外拠点を対象に、GHGプロトコルに沿った精緻な排出量把握と削減に向けた取り組みを進めております。


 ロ.ポートフォリオGHG排出量

 当社グループでは、パリ協定への整合と移行リスクの削減に向け、現在は高排出セクターである電力、石油ガス、石炭セクターを対象に、ポートフォリオGHG排出量の中期削減目標を策定しております。これらの削減目標は2℃目標を十分に下回り、1.5℃目標と整合的である水準として、IEAのSDSシナリオ、NZEシナリオに基づき、レンジで策定しております。また、2024年10月までにNZBA(Net-Zero Banking Alliance)ガイドラインで推奨される9セクターにおけるGHG削減目標を設定することを目指し、現在は鉄鋼・自動車セクターにおける中間削減目標の設定を検討しております。


 ハ.石炭火力発電/一般炭採掘向けエクスポージャー

 当社グループは、石炭火力発電並びに一般炭採掘に対するフェーズアウト戦略を掲げており、2040年までにこれらに係る貸出金残高をゼロにする目標を掲げております。


 ニ.サステナブルファイナンス取組額

 当社グループは、環境配慮事業、社会関連事業、脱炭素社会への移行に関するファイナンスに積極的に取り組んでおります。2020年度から2029年度までの10年間での「グリーンファイナンス及びサステナビリティに資するファイナンス実行50兆円」という目標を設定し、お客さまとともに気候変動問題を始めとする社会課題解決に取り組んでまいります。


② 人的資本に関する指標と目標

 当社グループは、前記「(3) 戦略 ③ 人的資本経営の実践」に記載している人的資本に関する取組について、目標達成に向けた進捗を管理するため、様々な指標を用いております。

 イ.注力分野への人材投入に関する指標

 当社グループは、経営基盤の強化を目的として、「法務・コンプライアンス」「リスク管理」「IT」「DX」「アナリティクス」「グローバル」人材の3か年投入計画をKPIとして掲げております。


 ロ.注力分野への人材投入に関する指標

 当社グループは、従業員一人ひとりが、心身ともに健康で、その能力を最大限発揮できる環境づくりを目指し、エンゲージメントサーベイスコア70以上を維持することをKPIとして掲げております。


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