㈱ティムス 【東証グロース:4891】「医薬品」 へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針・経営環境・経営戦略等
当社は、新規の作用機序に基づいた医薬品候補物質を開発し、アンメット・メディカル・ニーズの改善を実現する画期的な医薬品を患者さんに送り届けることを目的としております。
医薬品開発企業が新たな医薬品を上市するまでに必要とされる研究開発費の額は年々増加しており、これに伴って開発費の回収がより困難になっております。医薬品の効果には人種間や民族間の差があまり見られないため、同一製品で世界市場に対応することが可能であり、このような環境下では世界の主要市場に対して同時にアプローチすることが有利となります。また、医薬品規制調和国際会議(ICH)の定着により先進国での同時開発が容易になったこともあり、グローバルに医薬品開発を行うことが一般的になりつつあります。
当社は、オリジナルの作用機序に基づく新規化合物を単独で臨床試験に持ち上げ、海外大手製薬会社との提携に結び付けた実績を有しております。日本のバイオベンチャー企業で、このような実績を持った企業は非常に限られていると考えております。このノウハウを活用し、全く新しい医薬品を世の中に送り出し続けていくことを目指します。
当面は、現在取り組んでいる可溶性エポキシドハイドロラーゼ(sEH)阻害による抗炎症作用に基づく医薬品開発に重心を置きつつ、それ以外の新規作用機序に基づく研究開発プロジェクトも順次手掛けてまいります。特に、大手製薬会社が注目するような標的分子をターゲットにするのではなく、独自性の高い作用機序に取り組んでいきます。また、当社のリードパイプラインであるTMS-007の開発において経験したように、天然由来化合物を手掛けることで得られる新たな知見を研究開発にフィードバックする仕組み作りに取り組んでまいります。
当社は、日本の大学で創出されたシーズについて、研究段階・前臨床段階・臨床試験段階と開発を進め、ヒトPOC取得まで至ることができました。またその過程でグローバルに展開する海外製薬会社との提携を実現した実績を有しています。当社の経営陣は、これらの実績・経験を有するメンバーがコアとなっています。当社では、このような実績・経験を活かして、①SMTP化合物、特に急性期脳梗塞患者を対象とした臨床試験で良好な成績を収め、後期臨床開発段階にあるTMS-007を中心に、急性腎障害等を対象疾患として開発を進めるTMS-008、JIXINGとの提携により新たに日本国内における事業化の権利を獲得したJX09を加えた、臨床開発段階にある各パイプラインを基盤として上場企業としての基礎固めを行い、②日本を中心としたアカデミアの創薬シーズを積極的に導入してパイプラインを拡充し、グローバルの医薬品市場への展開を図り、日本のアカデミアにおける科学的ブレイクスルーとグローバル医薬品産業の橋渡しを行うことで、今後の成長を実現していくこと、を成長戦略として描いています。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
一日も早い治療薬の上市を目指す当社は、研究開発から上市までのプロセス管理を行っていくことが、当面、最も重要な経営管理と考えております。また、パイプラインの充実を図っていくことも、経営の安定化及び企業価値の増大に不可欠であります。従いまして、現在研究開発段階にある当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の設定はしておりません。しかしながら、これら開発プロセス及びパイプラインの充実を重要な目標として事業活動を推進しております。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①TMS-007の開発支援
当社のリードパイプラインであるTMS-007は、バイオジェン社の戦略変更により、オプション契約における同社の地位がJIXINGに譲渡され、今後の開発及び各国での承認取得は、日本を除いてはJIXINGが行うことになります。
当社は、TMS-007の日本における事業化の権利を有しており、JIXINGによるグローバルでの開発と連携した日本国内での開発に向け取組を進めるとともに、Joint Development and Commercialization Committee(共同開発商業化委員会)の活動を通じて、JIXINGによるTMS-007の開発に関して積極的に関与し、開発の加速を目指してまいります。
②JX09の開発推進
治療抵抗性又は制御不能な高血圧を適応としてJIXINGが開発中のJX09について、当社は、同社との提携により日本国内における事業化の権利を獲得いたしました。
JX09はオーストラリアにおいて第Ⅰ相臨床試験が開始されており、当社は、Joint Development and Commercialization Committee(共同開発商業化委員会)等を活用してJIXINGとの連携を強め、JIXINGによるグローバルでの開発と連携する日本国内での開発を適切な時期に開始できるよう準備を進めます。
③TMS-008の開発推進
sEH阻害を主たる作用機序とするTMS-008は、多様な炎症性疾患に対する治療薬となり得る可能性を秘めております。TMS-008は急性腎障害を適応に第Ⅰ相臨床試験を開始するための治験計画届出書を提出して臨床開発段階に移行しており、当社は、関係機関と緊密に連携して臨床試験を着実に進めてまいります。
④パイプラインの拡充
TMS-007、TMS-008及びTMS-009は、同じSMTP化合物ファミリーに属しており、類似した作用機序を有しております。当社は、ポートフォリオの幅を広げることを目的に、SMTP化合物以外のパイプラインの拡充に努めております。当社は、JIXINGとの提携によりJX09の日本における事業化の権利を獲得してパイプラインに加えた他、SMTP化合物の開発を通じて得られた知見に基づき、新たなsEH阻害剤の候補となる化合物の探索を進めるとともに、外部アセットの導入に向けて、アカデミアや研究機関等の早期研究段階の創薬シーズ等を導入することでSMTP化合物ファミリー以外のパイプラインの拡充を目指しており、複数のシーズの探索を行い、絞り込んだ候補の評価を進めております。
⑤事業開発活動の推進
当社は、製薬会社との提携により、開発リスクを低減しつつ、契約一時金・マイルストーン収益を得ながら開発を進め、上市後にはロイヤリティを受領することを基本的な事業モデルとしております。
当社は、TMS-007及びJX09について日本国内の事業化の権利を獲得した他、TMS-008も臨床段階に移行しており、今後の収益化を見据えて事業開発活動の重要性が増しております。パイプラインそれぞれについて価値を最大化できるよう、適切な戦略を立てて事業開発活動を推進できる体制を構築します。
⑥人材の確保と組織体制強化
新規作用機序に基づく医薬品開発は、誰も歩んだことがない道を進むようなものであり、医薬品の研究開発の中でも特に高度な能力と経験を要するミッションであると考えられます。このため、優秀な人材確保と、優秀な人材がその能力をいかんなく発揮できる組織体制作りが必須となります。当社では、特に、専門分野ごとの縦割り型ではなく、研究・製造・薬事・開発等に専門性を有する人材が自由闊達に議論を交わせるような組織作りを目指すとともに、優秀な人材の採用を積極的に行ってまいります。
⑦財務基盤の拡充
創薬ベンチャー企業においては、研究段階からパイプラインの開発の進展に伴って多額の資金が必要となります。当社においては、パイプライン育成・獲得のための研究開発投資推進の他、臨床開発段階のパイプラインの増加に伴い、資金需要のより一層の増加が予想されます。当社はこのような中でも積極的な研究開発活動を続けていくため、マイルストーン収入等の収益、金融機関等からの借り入れや株式市場からの資金調達、補助金の活用などを通じて、資金調達の多様性を確保しつつ必要に応じて適切な時期に資金調達を実施し、財務的基盤の拡充・安定化を図ります。
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