リケンNPR 【東証プライム:6209】「機械」 へ投稿
企業概要
2023年10月に経営統合したリケンNPRグループでは、両社の強みを生かしながら研究開発を進めております。ICE製品の開発においては、社会の目指す「カーボンニュートラル」達成に向けて燃費低減技術や水素エンジン、バイオフューエル等の代替燃料に対応する主要製品の開発を進めております。新規事業創出活動は、両社の保有技術を活かした新分野(モータ、樹脂製品、磁性製品、医療機器等)の開発を行っており、中長期の主力となる製品を生み出すべく活動を推進させております。
なお、当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は2,910百万円であり、各セグメントの研究開発活動は次のとおりであります。
(1) 自動車関連製品事業
当連結会計年度における自動車関連製品事業に係る研究開発費は1,940百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。
① 次世代低燃費エンジン用ピストンリング
今後のカーボンニュートラルに向け、エンジンにはより一層の高熱効率化、クリーン化、カーボンニュートラル燃料への対応が求められており、カーボンニュートラルへの対応のため、エンジンの比出力、燃焼圧力は上昇し、摩擦損失の低減、粒子状物質(PM)の低減への取り組みが行われております。これらのエンジン開発動向に対し、ピストンリングでは低摩擦で高耐久性を実現する厚膜DLC皮膜や、過給エンジンのノック環境に対応した高靱性CrN皮膜を市場に投入しており、また新たにカーボンニュートラル燃料に対応したピストンリングの提案も行っております。
一方で、エンジンシステムの高機能化に伴う製品コストのバランス配分や効率的な製品開発への対応として、機能予測ツールの開発とそれを活用したモデルベース設計、ものづくり革新として低コストで高精度なピストンリングの開発にも取り組んでおります。また、産学連携強化も進めており、AICEのエンジン研究活動に直接参加し、日系企業の技術開発強化にも取り組んでおります。
② 次世代ディーゼルエンジン用ピストンリング
商用ディーゼルエンジンにおいても燃費基準に適合したエンジン開発が行われており、これまで以上の低燃費技術が求められております。燃費基準に適合したエンジン開発においては、新たにフリクションを低減させるCrN改良皮膜、DLC皮膜、及び低摩擦、低張力で高い潤滑油調整機能を持つ新形状のオイルリングの開発が完了し、クリーンな排ガスと低燃費、耐久性を両立させる製品を市場展開しております。また、生産性向上の取組みとして素材形状の最適化に加え、加工精度の向上による生産性の改善を実現しております。
③ バルブシート
ハイブリッド専用機関等の環境に対応した内燃機関の熱効率を向上するために、熱マネージメントを考慮した開発や、高い耐摩耗性が要求される希薄燃焼ガソリンエンジン、EURO7対応ディーゼルエンジン、代替燃料(ガス、エタノール)エンジン、カーボンニュートラル燃料対応エンジンに対応可能な高機能製品の開発に取り組んでおります。また、機能面だけでなくコスト及びコンフリクトミネラル低減を意識し、お客様にとって満足して頂ける最適仕様の製品開発にも取り組んでおり、あらゆる地域の顧客ニーズに対応することを目指し、グローバルな技術提案を行っております。
④ 組立式焼結カムシャフト
環境対応内燃機関の熱効率向上に寄与する軸部薄肉化による軽量化や、低燃費・高出力に対応する高面圧対応が可能な材料技術を有しており、お客様へ提案を行っております。また、お客様での加工取り代削減と、加工後の材料不良を削減させるため、素材精度向上と素材内在不良低減の開発も継続して行っております。
⑤ メタモ―ルド(金属粉末射出成形部品)
CASE領域の中、加速していく自動車の電動化に伴い、操舵系や駆動系関連の部品及び産業機械向け部品について多数の引き合いを受けております。複雑形状をした部品の引き合いは継続して増えており、拡販活動に取り組んでおります。また昨年、外科用インプラントの標準規格ASTM-F2885に準拠したTi-6Al-4V合金材料の開発に成功し、インプラント関連製品への展開を図っております。
⑥ 新規焼結製品
高機能多孔質金属に関するマーケティング活動においては、具体的に様々なニーズも出てきており、そのニーズに応えるべく、一部製品化開発に着手しております。
現在開発中の3D金属積層造形法は金型不要でありかつ、当社保有のバインダージェット方式はメタモールドと同等の材料特性が得られるため、試作リードタイム短縮、顧客への試作金型費用削減などの利点を生かして量産獲得に向けた展開を図っております。
整形インプラント等の医療関連製品においては、複雑形状且つ生産数量が少ないことから3D金属積層造形法が有用であり、新規参入に向けて材料ラインナップの拡充を図っております。
(2)配管・建設機材事業
当連結会計年度における配管・建設機材事業の製品に係る研究開発費は189百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。
① ガス配管用継手
ガス配管用継手は、特に安全性と品質保証能力の向上が求められており、各都市ガス会社との共同研究を中心に開発を行っております。近年は、安全性・品質と同様に環境に配慮した製品設計や、配管施工者の人手不足に対応した省力化に注力した製品開発要請が強まっており、都市ガス、LPG向けにこれらに対応した高品質な製品の開発に取り組んでおります。
② 建築設備配管用継手
建築設備配管用継手もガス配管用継手同様に、安全性・品質はもとより、環境に配慮した製品設計や省力化に注力した製品開発要請が強まっております。同時に、消火・給水・給湯用の配管においては、近年、鋼管からステンレス管や樹脂管への材質代替が進んでおり、これらに対応した製品開発に注力しております。今期は、給水・給湯用の樹脂管用省力化製品であるポリブテン管用配管ユニットの開発が完了し、販売を開始しております。
③ 高強度ダクタイル製品
高強度ダクタイル製品は、独自の化学成分管理と製造ノウハウにより、FCD800・FCD900相当の高強度鋳鉄製品の大量安定生産が可能となっております。また、これら鋳造技術に加え素材のみならず、加工から表面処理まで一貫した生産対応で、鉄筋用継手や各種歯車等の開発に取り組んでおり、多様な顧客要望に対応しております。
(3) その他の製品
当連結会計年度におけるその他の製品に係る研究開発費は781百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。
① 新製品開発部関連製品
1)モーター・減速機製品
小型産業用ロボット向けの小型軽量化、高精度化に貢献する波動減速機の開発を行っております。特徴としては、剛性と角度伝達精度に優れた新機構(3ローブ波動減速機)の適用や軽量化を実現する樹脂材料の採用(軽負荷用途向け)があります。展示会等に出展し、お客様の声をお聞きしながら、お客様の製造工程のロボットに組み込まれる部品(製品)としての引き合いなど多数受けており、お客様でご評価いただいております。
また、電動化要求の強まり、少子高齢化による労働力不足などの社会現象に鑑みて、小型搬送装置やパーソナルモビリティ、屋外用小型移動体(ロボット)への適用を目指したモーター及び減速機の開発を行っております。リケンでは取り付けスペースや軽量化に特徴を持たせた薄型(扁平)アキシャルギャップ型モーターと3K遊星減速機の設計開発を行っています。これらも展示会に出展し、お客様の開発システムや搬送装置に組み込むギヤードモーターとしての引き合いを受け、試作品を提供し、ご評価いただいております。NPRでは独自の圧粉コアを利用したアキシャルギャップ型オリジナルモーターを製作しており、扁平形状且つ高トルクを生かした小型移動体の駆動ユニットへの適用で量産化に向け進捗しております。
リケン及びNPRがこれまでに培ってきた設計技術、固有の要素技術を融合し、更に差別化されたモーター及び減速機、ギヤードモーターを開発し、製品化を図ってまいります。
2)樹脂関連製品
モビリティ用部品の分野で軽量化、静音化などに貢献する製品を開発しております。リケンのシールリング製品で培ったスーパーエンプラの射出成形技術を元に高強度樹脂ギアの開発を行っており、高強度樹脂材料の開発とオリジナルギア設計技術、それらの組み合わせにより高強度樹脂ギア製品を提案・提供し、超小型モビリティのドライブユニット向けでPEEK材を用いたギアを量産化いたしました。
また、電動化の流れの中で、金属から樹脂への置き換えによる軽量化検討が様々検討されており、電磁波対策を付与した樹脂成形品が求められております。当社ではEMC機能を付加したEV向けケース製品の開発を行っており、また併せて金属と樹脂を接合する技術を用いて、それぞれの特性・性能・機能を持ち合わせた製品の提案も行っております。(※異種材料接合技術のパイオニア企業である大成プラス㈱との資本業務提携による共同開発)
3)EMC関連製品
自動車関連ではCASEの領域拡大が見込まれ、通信関係でも基地局、通信機器や測定機器などで電磁波ノイズ対策が求められております。車載電装機器、ADASなどの次世代通信技術に貢献する電磁波対策部材を開発・提供しております。
通信技術の高速大容量化や電子機器の小型・薄型化に対応できる高周波ノイズ抑制シート(GHz、MHz)、車載用レーダーや5G通信機器の電波干渉対策・検知感度を向上させた電波吸収シートを開発しております。
またEVやHEV向けのワイヤハーネスからのノイズに対して高い抑制効果を確立させたノイズ抑制コア製品も開発しております。このコア製品は、軽量・省スペース化を狙った連結型や施工済みのワイヤハーネスに後付け可能な分割型など形状・設計のご要望にもお応えできる製品となっております。
4)医療関連製品
生体適合性に優れたチタンタンタル合金(NiFreeT)を使用した長期体内留置部材を医療機器メーカーと協業して製品化開発を進捗させております。NiFreeTはチタン合金でありながら優れたX線視認性を持つことから、プラチナ合金の代替部材としての開発も行っております。NiFreeTは骨に近い剛性であること、弾性率を変化させることができることから、整形インプラントへの適用を狙い、継続的に大学と共同研究をしております。
また、表面処理ではこれまでピストンリングで培ってきたPVD、DLCを医療機器に適用すべく生体適合性の評価も行っております。今後、生体毒性から規制が懸念されるコバルト合金や、フッ素樹脂の代替技術の候補になりえる可能性があることから、医療機器メーカーと共同で開発を行うとともに、大学との共同研究も開始しております。さらに、大学病院のドクターにアドバイスを頂きながらニーズをリアルタイムでキャッチし、QOL(Quality of Life)を向上させる医療機器の開発も進めております。
歯科インプラントの開発・改良では、顧客要望から特殊領域へのインプラント埋入手術用術具の開発を完了させ販売を開始しましたところ、国内外の歯科医師から高い評価を得ております。今後もデジタル化が進む歯科業界のニーズに応えた製品展開や顧客要望を基にした商品開発・改良により顧客満足度の向上を図ってまいります。
② 熱エンジニアリング応用製品
当社の熱エンジニアリング事業は、独自電熱材材料PYROMAX®とそれを活用した省エネ電気炉PYRORIK®の製造販売を手掛けており、60年を超える歴史があります。昨今のカーボンニュートラルの潮流をうけて、産業分野では熱エネルギーを化石燃料の燃焼加熱からヒータによる電気加熱への転換が加速度的に進むものと予想され、需要はさらに拡大するものと期待されます。さらなる環境性能を追求した製品・製造技術の研究開発に取り組み、事業の拡大を目指してまいります。
③ 水素・新エネ関連製品
当社は、カーボンニュートラルを実現する新世代燃料である水素、合成燃料、バイオ燃料などを使用する次世代エンジンに関連した新製品・新事業の創出を目指しております。評価設備拡充や車両による実証試験も進め、次世代を担う事業を模索してまいります。また、地域のカーボンニュートラルに貢献できる研究開発にも取り組んでまいります。
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