ヤシマキザイ 【東証スタンダード:7677】「卸売業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営理念
当社グループの経営理念は「ヤシマキザイは、鉄道・交通ビジネスに強い専門商社として、限りの無い成長を目指します」、「ヤシマキザイは、人材育成を通して、会社の成長を社員と分かち合います」、「ヤシマキザイは、法令を遵守し、良き企業市民として社会に貢献します」としております。
(2) 基本方針
当社グループは、2024年度から2026年度の3ヶ年中期経営計画を策定し、基本方針として以下を定めております。
「既存事業の基盤強化と付加価値向上を図る。」
「成長発展が期待できる分野の選定と、人員配置の見直しにより、次世代を担う新事業を開拓する。」
「一般セグメントの収益性を向上させ、投下リソースに見合う採算を確保できる体制を構築する。」
「ODA鉄道インフラ整備案件への参画を通して、グローバル市場を開拓する。」
「長期的な社会課題と向き合い、人的資本への投資を通じてヤシマキザイグループの成長力を強化する。」
「ヤシマキザイグループとしての連携を強化し、信頼回復・向上を図る。」
これらの方針に基づき、当社グループの事業環境を踏まえて対処すべき課題等に取り組んでまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2024年度から2026年度の3ヶ年中期経営計画の最終年度(2027年3月期)における売上高、営業利益等の数値目標を次のように設定し、自己資本利益率(ROE)につきましては、5%超を確保することを目標としております。
| 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に帰属 |
2027年3月期 | 32,000 | 600 | 710 | 460 |
また、上記の目標達成に向けた取組みの進捗及び成果を適時に測定するため、以下の指標をKPIとしました。
営業人員1人当たり売上総利益 (目標値:20百万円/人)
営業人員比率 (目標値:66.6%)
(4) 経営環境
コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類に引き下げられて以降、社会経済活動の正常化が進み、企業の業績回復や雇用情勢の変化による賃金上昇、インバウンド需要の増加等もあって景気は緩やかな回復基調を維持することが期待されるものの、原材料等の価格高騰や物流コストの上昇、急激な為替変動等に加え、海外経済においても地政学的ショックや中国経済の減速等の下振れリスクを抱えており、景気の先行きは不透明な状況で推移するものと予想されます。
当社グループの主要顧客である鉄道事業者においては、新型コロナウイルス感染症の影響によって落ち込んでいた運輸収入が回復基調に入り、業績の回復とともに設備投資にも意欲を見せる一方で、ポストコロナ社会における人々の行動や価値観の変容に加え、少子高齢化による定期旅客の減少傾向もあって旅客輸送量は以前の水準には戻らないと考えられ、引き続き厳しい経営環境が続くと予想されます。
また、一般事業では、産業機器業界等で過年度の供給不安時に過剰手配された電子部品等の在庫調整局面が継続しており、先行きに不透明感はありながらも、在庫調整の一巡とともに持ち直してくるものと予想しております。
(5) 対処すべき課題等
第79期有価証券報告書「(5)対処すべき課題等」に記載のとおり、不適切な会計処理に関連して下記の課題が識別されていました。
① 当社における課題
当社の複数の拠点で営業担当者による原価の付け替えと売上の先行計上という2つの類型からなる不適切な会計処理が複数事業年度にわたり行われていたことが確認されました。
これらの不適切な会計処理は、営業担当者が赤字案件の売上計上回避や業績目標・予算達成意識を動機に行われていたことや、営業部門や調達部門における上場企業としての会計知識やコンプライアンス意識の浸透不足により行われておりました。
その他、当社の内部統制における業務プロセスにおいて、管理職と営業担当者の立場が同一となった場合の受注処理や一部仕入先への発注に係る処理が、同一の人物だけで可能となる承認経路が看過されておりました。そのため営業部門内での点検と監視、調達部門における牽制が不十分となり、かつ形骸化していたことが確認されました。さらに、内部監査において不適切な事案の一部が検出されていたものの、金額が少額であったことから軽微な指摘事項であると判断され、経営陣への情報伝達が適時に行われなかった点や全社的に再発防止のサイクルが形成されず改善が図られていなかった点も確認されました。
② 連結子会社における課題
当社の中国における連結子会社であるヤシマ上海において、仕入債務の計上遅延、棚卸資産の計上範囲の誤り、売上の先行計上及び仕入先と得意先が実質的に一体である取引を行っていたことが判明しました。なお、売上の先行計上については、総経理の指示によるものでありました。また、仕入先と得意先が実質的に一体である取引については、得意先の協力が十分得られず、取引の実在性を十分に確認することができませんでした。
これらの不適切な会計処理は、総経理の経営成績改善が必要である意識が動機となり、上場企業としての会計知識やコンプライアンス意識の浸透不足により行われていたことが確認されました。
また、ヤシマ上海の内部統制において売上計上や仕入計上に係る業務プロセスが整備されていなかったことや、グループ会計方針の整備が不十分であったことが確認されました。
上記の課題において、当社の経営陣は上場企業として財務報告に係る内部統制の整備及び運用に責任を有しており、内部監査によって検出された不適切な事案に対して、当該事案に対する個別対応に留まらず、類似事案の発生可能性を踏まえたリスク評価及び当該評価を踏まえたリスク対応として再発防止策の検討等を行っていくべき立場にあり、また、子会社固有の事由を踏まえたグループ全体でのリスク評価を実施し、グループ方針の策定と周知並びに継続的なモニタリングを行っていくべき立場にもあります。
根本的な原因は、当社の経営陣がこうした責任と立場を十分に自覚できていなかったことにあります。そのため報告された不適切な事案の対処だけに留まり、再発防止サイクルを形成するという本来取るべき対応ができておりませんでした。また、グループ全体でのリスクマネジメントも実施できておりませんでした。
当社は、当連結会計年度において以下の16項目の再発防止策を実行することで適切な内部統制の整備・運用を図ってまいりました。
1. 行動規範、コンプライアンスガイドラインの周知の再徹底
2. 遵守すべき法令やルールの教育
3. 営業担当者(課長職含む)の教育の徹底
4. 内部監査の監査内容改善と結果の情報共有、社内周知の仕組みの構築
5. 内部監査結果に対する評価基準の厳格化
6. 人事評価制度面からの内部統制の強化とコンプライアンス意識向上の支援
7. 受発注登録の承認プロセスの見直し
(購買プロセスにおける開示すべき重要な不備への対応)
8. 売上計上に関する防止的・発見的統制の強化
(販売プロセスにおける開示すべき重要な不備への対応)
9. 内部通報制度の実効性確保
10. コンプライアンス・リスク管理委員会によるリスク評価と周知
11. ヤシマ上海総経理の決裁事項に対する統制強化
12. 当社によるヤシマ上海向けのモニタリング強化
13. グループ会計方針の整備
14. ヤシマ上海における業務プロセスに係る内部統制強化
15. ヤシマ上海の単体決算プロセスにおける債権管理強化
16. 新規取引のリスク管理強化
前連結会計年度の内部統制の開示すべき重要な不備を是正するために、上記の再発防止策を実行してまいりました。
しかしながら、内部統制報告書に記載の通り、一部の再発防止策について適切な水準で整備・運用することができず、継続して開示すべき重要な不備を識別するに至りました。この点について真摯に反省しております。
当社といたしましては、次連結会計年度(2025年3月期)において当連結会計年度に継続して識別した開示すべき重要な不備に対応する再発防止策を早期に整備し、運用を徹底してまいります。
また、今後も長期的な視点を持ち、内部統制及びコンプライアンス意識の更なる向上に努め、信頼性ある財務報告を継続する経営管理基盤を強化してまいります。
なお、当社グループは、新たな3ヶ年中期経営計画を策定し2024年度よりスタートしております。当連結会計年度を最終年度とする中期経営計画は、基本目標・基本方針・基本戦略に基づき、各施策を着実に実行しましたが、コロナ禍による活動制限による鉄道事業者の業績低迷とそれに伴う鉄道車両や設備品の更新や修繕計画の後倒し、半導体など電子部材の供給不足が当社取り扱い商材の販売にまで影響を及ぼしたこと、当社グループ内での不適切な会計処理の発覚と再発防止に係る対応コストの増大等の要因によって、目標を達成することがかないませんでした。そのため、新たな中期経営計画においても道半ばに終わった目標を引き継ぎ、安定成長軌道への回帰や、新たな企業価値の創出を目指します。また資本コストを意識し、ROE5%超の達成に向けて、以下のことを基本方針として、当社グループの発展と業績の向上に取り組んでまいります。
① 既存事業の基盤強化と付加価値向上を図る。
当社グループは鉄道専門商社として、鉄道分野への販売を事業基盤としており、この事業基盤をさらに強化するため、既存仕入先との関係強化及び新規仕入先の開拓による商権・商材の拡充を行い、持続的な成長に努めます。
② 成長発展が期待できる分野の選定と、人員配置の見直しにより、次世代を担う新事業を開拓する。
鉄道分野における事業領域の拡大を図るため、市場の動向を把握し、付加価値の高いサービスの提供や、JR各社以外の公営・民間鉄道事業者への営業活動に注力するとともに、検修設備・保線等車両周辺領域への深耕や、新たなビジネスモデルの創出により、車両周辺分野に並ぶ新たな収益源の開拓に努めます。
③ 一般セグメントの収益性を向上させ、投下リソースに見合う採算を確保できる体制を構築する。
鉄道分野以外の事業領域の拡大を図るため、人的リソースの適正配置と、新たな販売先や新たな商材の開拓・開発を進めるとともに、専任グループによる全国横断的な営業展開により、業務効率化・生産性の向上を図ります。
④ ODA鉄道インフラ整備案件への参画を通して、グローバル市場を開拓する。
ODAによる鉄道インフラ整備案件に注力し、海外パートナーとの連携や、従来海外の案件対応を行っていた部門に限らず、グループ内の各部門が連携して知見の向上や体制を強化するとともに、リスク管理を図りながら中長期的に商圏の拡大を目指します。
⑤ 長期的な社会課題と向き合い、人的資本への投資を通じてヤシマキザイグループの成長力を強化する。
鉄道を主とした社会インフラに関わる企業として、社会の持続可能性に配慮した経営を実践いたします。環境に配慮した製品やサービス提供をはじめとして環境問題に取り組み、同時に持続可能な成長のために不可欠な、人的資本への投資を行います。当社グループは事業の中核となる経営資源を「人」と考えております。そのため、生産性の向上に寄与するエンゲージメント強化に主眼をおいた、働きやすい制度及び環境の整備を実行することで成長力の強化を図ります。
⑥ ヤシマキザイグループとしての連携を強化し、信頼回復・向上を図る。
不適切な会計処理が発生したことに対する反省も込めて、改めて経営の公正性・透明性、迅速な意思決定の維持・向上を目的に、コーポレートガバナンスの強化を図るとともに、コンプライアンスを徹底し、果たすべき役割と社会的責任を常に自覚して、企業活動を推進することで信頼回復と信頼向上に努めます。
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