メルカリ 【東証プライム:4385】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
メルカリはCtoCマーケットプレイス「メルカリ」から始まり、「あんしんで頼れる」「誰でもカンタン」「使うほどワクワク」「ちょっといいことしてる気分の良さ」をお客さま体験として追求してきました。そこから生まれたお客さま同士の強固なネットワークを基盤として、物理的なモノだけでなく、信用やデジタルアセット、時間やスキルなど価値循環の対象を拡大し、お客さま体験を進化させ続けております。
よりサステナブルな社会への移行が求められる中、メルカリの事業が社会にもたらすポジティブインパクトは定量的にも示されております。メルカリが事業成長することがそのまま、サーキュラーエコノミーの体現であるともいえます。
私たちはこれからも、世界中のモノやコト、そして人の「まだ見出されていない価値」を引き出し、その価値を必要としている人へつなげていきます。有形・無形に限らずあらゆる価値が循環する「エコシステム」を通じて、世界中の人々の可能性を広げる(=Unleashする)存在でありたいと考えております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、日本及び米国で事業展開をしており、各地域によって成長ステージが異なりますが、GMV(流通取引総額)及び売上収益の成長、また、コア営業利益(注)などの指標を通じて、企業価値の向上を図って参ります。
(注)営業利益からその他の収益/その他の費用等を控除した利益
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、以下の強みを背景に中長期的な経営戦略を立案しております。
当社グループの強み
① 中古品市場の拡大をけん引するCtoCマーケットプレイスのパイオニア
当社グループは、使いやすく楽しく、かつ安心・安全なCtoCマーケットプレイスの提供を通じて、フリマアプリ市場を作り上げ、オフライン店舗やインターネットオークションに限定されない日本の中古品市場全体の拡大をけん引して参りました。2023年に実施した当社調査によると、フリマアプリ及びオークションサイトの利用経験者のうち当社サービスの利用者数が最も多く、他社のサービスを上回る支持を獲得しております。当社グループは、CtoCマーケットプレイスのパイオニアとしての圧倒的なポジショニングを活用することで、上記の中古品市場の高い市場成長を享受できる立場にあると自負しております。
更に、米国をはじめとする海外においても、個人による中古品売買のニーズは高く、「メルカリ」を通じて中古品市場の成長に貢献して参ります。
② エンゲージメントの高いユーザ基盤及びこれを通じて得られる高付加価値のデータ活用
出品者・購入者双方にとって簡単で使いやすく、楽しく夢中になれるユーザ体験を提供することで、「メルカリ」は高いユーザエンゲージメントを実現しております。「メルカリ」のMAUは2024年6月期第4四半期において約2,200万人であり、ユーザの取引情報やユーザ間における取引評価情報等、利用価値の高いデータを大量に収集することができます。これらのデータと当社が注力して取り組むAIをはじめとするテクノロジーの活用により、購入者の嗜好にあわせた商品提案等による購入転換率の向上や、売れやすい出品価格提案等による出品転換率の向上、カスタマーサポートの効率化等に取り組んでいます。
また、スマホ決済サービス「メルペイ」で提供するCreditサービスにおいて、「メルカリ」の利用実績に基づいた与信を提供するなど、既存のサービスにおけるユーザ体験の向上に加え、グループとしての成長に資する新規サービスの開発にもつなげております。
③ CtoC特有のネットワーク効果による高いロイヤルティの獲得
CtoCマーケットプレイスである「メルカリ」は、ネットワーク効果が強く働くサービスです。出品者・出品数の増加に伴い、購入したい商品が増えることで購入者・購入数が増加し、これにより商品の流動性が高まり、更に出品者・出品数が増加していきます。更に多くの出品者・購入者が高い頻度で「メルカリ」を利用しており、ネットワーク効果による自走的成長が促進されております。このようなネットワーク効果による出品者や購入者からの高いロイヤルティ獲得につながり、リピートユーザによる継続的な取引への参加が流通取引総額の成長に大きく貢献しております。また、ユーザの過去の取引評価の蓄積により、他のユーザが安心して取引を行うことができるとともに、ユーザ獲得競争において他の競合サービスへの流出を抑制する効果を有しております。更に、クレジットカード機能を有する「メルカード」の利用に伴うロイヤルティプログラムを開始するなど、ユーザ体験の向上に伴う高いロイヤルティの獲得に注力しております。
④ 高い収益性を実現するビジネスモデル
当社グループは、Marketplaceにおいて既に高い収益性を実現しております。この背景は、一定の事業規模に達するとその後の更なる事業規模拡大に際してコストを適切に管理できるというビジネスモデルにあります。具体的には、当社のコスト構造の相当の割合は広告宣伝費により構成されていますが、一般的にモバイルアプリの初期成長段階では売上高に占める広告宣伝費の割合は高くなるものの、ユーザ基盤が拡大し安定するにつれて広告宣伝費の比率を抑えることが可能になります。その結果高い収益性を実現することが可能となります。
更に、FintechにおいてCreditサービスの成長に伴い収益基盤が強化されるなど、メルカリグループにおける第2の収益の柱としての確立に向けた取り組みも進捗しております。
⑤ 価値創造を支える組織・企業文化
当社グループが掲げるミッション「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」の達成に向けて、世界中の多様なタレントが活躍できるボーダーレスな組織づくりを重要視しております。様々なバックグラウンドを持つ多様な人材が価値創造の源泉であると考え、「世界中の多様なタレントの可能性を解き放つ組織を体現」を大方針に据え、I&Dを推進しております。2024年6月末時点において、約55ヶ国の優秀なメンバーが在籍し、特にエンジニア組織では約50%以上が外国籍であり、多様なタレントが活躍しております。
また、ミッションを達成するための行動指針として「Go Bold」、「All for One」、「Be a Pro」の3つを策定しており、経営判断から日々の業務まで、メルカリに関わるすべての意思決定を、本バリューに基づき行っております。
当社の具体的な経営戦略
2024年6月期は、成長と収益のバランスを意識した経営を推進しながら、次の10年を見据えた既存事業の成長加速と新規事業創出に取り組んで参りました。その結果、連結で過去最高の売上収益とコア営業利益を達成するとともに、新規事業では、2024年3月に空き時間おしごとサービス「メルカリ ハロ」を開始、2022年11月に提供を開始した「メルカード」発行枚数が340万枚を突破するなど、各々のサービスが大きく成長いたしました。組織面においても、指名委員会等設置会社への移行に伴い、モニタリング型取締役会として実効性が一層向上し、また、指名委員会を通じたサクセッションプランの策定にも取り組むなど、グローバルな組織基盤の構築やガバナンス強化が進捗した一年となりました。
2025年6月期は、原則として、増益を伴うトップラインの成長を実現することを掲げ、グループシナジーを中心とした事業拡大を推進して参ります。各事業の成長に伴い、連結売上収益2,000-2,100億円、連結コア営業利益220-250億円の達成を目指します。
① Marketplace:CtoCの安定成長に加え、越境取引やBtoC等の高い成長により、GMV成長率 YoY +10%前後に挑戦し、調整後コア営業利益率は37-42%を目指す
・主な施策
MarketplaceのGMVは1兆円を超える規模に到達しておりますが、潜在的な市場規模は大きく、更なる事業拡大が可能と考えております。2025年6月期は、目標の達成に向けて、AI/LLMの実装を通じたUI/UXの改善を推進するとともに、高価格帯カテゴリーの強化を通じた取引活性化に取り組んで参ります。また、高成長が期待できる越境取引やBtoCを一層強化することで、MarketplaceのGMV貢献を加速して参ります。
2024年3月より提供開始したスポットワーク事業においては、求人情報を提供する事業者の獲得や、「メルカリ」のユーザ基盤を活かしたワーカー獲得を推進して参ります。これにより、全国で利用できる環境を構築するとともに、UI/UXの継続的な改善を通じたサービスの利用拡大を目指します。
② Fintech:債権残高の着実な積み上がりを通じた継続的な「増益」フェーズへ移行し、コア営業利益30億円以上を目指す
・主な施策
「メルカード」ユーザ獲得を推進しつつ、支払い手段やロイヤルティプログラムの拡充等のUX向上によって利用を促すことで、Fintechの柱であるCreditの更なる成長を目指します。利用拡大に伴う債権残高の積み上がりと、高い債権回収率の維持・向上を両立することで、健全な事業成長を実現して参ります。
また、暗号資産取引における積立機能追加を行う等、資産形成をより身近なものとする取り組みも推進して参ります。
③ US:ブレイクイーブンにコミットしつつ、成長軌道への復帰を目指す
・主な施策
2024年6月期第4四半期に行った人員削減を含む組織再編に伴い、より筋肉質な経営基盤を整えて参りました。2025年6月期は、長引くインフレをはじめとする厳しい外部環境の中、ユーザによる購入機会を創出すべく、日本「メルカリ」との越境取引を開始し、取引活性化を推進して参ります。更に、2024年3月より開始した新たな手数料モデルにおける、AI/機械学習を活用した継続的な精度向上を通じて、ブレイクイーブンにコミットしながら、成長軌道への復帰を目指して参ります。
また、中期においても、原則として、増益を伴うトップラインの成長に取り組んで参ります。MarketplaceにおけるCtoCの安定成長と高い収益性の継続に加え、高成長が期待できる越境取引やBtoC、Fintech、USにおいて規律のある投資を行うことで、2027年6月期に向けた連結目標として、売上収益CAGR2桁成長、コア営業利益CAGR+25%以上の達成を目指します。事業成長を通じたミッションの達成に向けて、「メルカリ」の事業基盤を活用したグループシナジーの創出を強化することで、非連続な成長を実現して参ります。
(4)会社の課題
① サービスの安全性及び健全性の確保
Eコマースサービスやソーシャルメディア等の普及と、それに伴う不正利用の巧妙化の流れを受け、インターネット上のサービスの安全性維持に対する社会的要請は一層高まりを見せております。当社グループは、安心・安全な取引の場を提供するため、サービスの安全性・健全性確保を最重要課題として、個人情報保護や知的財産権侵害品対策等に継続的に取り組んで参ります。
② 人材の育成
企業として持続的成長を続けるために、多様な視点とスキルを持つ人材が共に働きやすい環境を整え、イノベーションを生み出す基盤を強化し続ける必要があると考えております。「I&D Statement」として当社グループの考えを社外に公開、管理職に占める女性比率を改善するなどI&Dの推進に取り組んでおります。今後も、積極的な人材の抜擢・登用を通じて、当社グループの成長を牽引する新しいリーダーの輩出に取り組んで参ります。
③ 技術力の強化
当社グループはインターネット上でサービスを提供しており、サービス提供に係るシステムを安定的に稼働させることが事業運営上重要であると認識しております。出品数の増加に伴うアクセス数の増加を考慮したサーバー設備の強化、並列処理システムの導入等による負荷分散等、継続的にシステムの安定性確保に取り組んで参ります。
また、先進技術への投資に注力し、更なるユーザ体験の向上に取り組んで参ります。例えば、過去の取引履歴や評価情報等の膨大なデータを元にしたAI/LLMや機械学習技術の活用により、サービスの利便性向上や、安全性及び健全性の維持・強化を推進して参ります。
④ 海外展開への対応
当社グループは、2014年に米国へ進出し、2019年には日本における「メルカリ」に出品された商品を海外から購入できる越境販売を開始するなど、海外展開にも着手して参りました。米国事業においては、コスト構造と事業戦略の見直しを実施し、成長軌道への復帰を目指しております。越境販売に関しては、順調に拡大を続けており、連携する越境EC事業者も拡大し、世界110ヶ国以上の国・地域のお客さまに越境販売を展開しております。今後も市場の機会を見極めながら、グローバルでの事業拡大を目指して参ります。
⑤ コーポレートガバナンスの強化
当社グループは、経営の監督機能及び内部統制機能の充実、コンプライアンス経営の徹底を通じて、企業価値の向上に努めることをコーポレートガバナンスの基本方針として定め、ステークホルダーのみなさまの信頼に応えるべく、経営の効率性、透明性を高め、企業価値の最大化と持続的な成長、発展に努めて参ります。
当社は、2023年9月28日開催の第11回定時株主総会における承認をもって指名委員会等設置会社へ移行いたしました。移行により、監督機能と執行機能の分離をより一層明確にすることによって、取締役会の監督機能の強化を実現しながら、執行機能の迅速かつ果断な意思決定と事業推進を実現する体制を構築いたします。
⑥ 内部管理体制の拡充並びにコンプライアンスの徹底
当社グループは今後もより一層の事業拡大を目指しており、社会的責任を果たし、持続的な成長と企業価値向上を図るために、当社グループの成長に見合った人材の確保、育成及びコンプライアンスの徹底を重要な課題と考えております。内部監査、法務、財務、経理、情報セキュリティ等、それぞれの分野で高い専門性や豊富な経験を有している人材を採用することに加え、社員に対する継続的な啓蒙活動及び研修活動を行うことで、更なる内部管理体制の強化を図るとともに、コンプライアンスの徹底に努めて参ります。
⑦ 財務規律の強化
当社グループが継続的に成長・拡大していくにあたっては、更なる収益基盤の強化・拡大と、それをレバレッジさせた資金調達力が必要になります。Marketplace・Fintech・USの主力3事業を、優先順位を意識した規律ある投資等の成長と収益のバランスをとった経営を行うことで、その基盤を整えて参ります。
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