マイクロアド 【東証グロース:9553】「サービス業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「Redesigning The Future Life」というビジョンのもと、データとテクノロジーの力によって、マーケティングを変革し、人々の生活をより良いものに、より充実したものにすることを目指して事業を展開しております。スマートフォン等の個人携帯デバイスの進化や、IoT(Internet of Things)などによるセンシングデバイス(注1)の日常生活への浸透、5Gを始めとした通信インフラの劇的な能力の向上によって、人々の生活のデジタル化は急速に進んでおります。そのようなデジタル社会の到来によって、消費者の消費購買行動は常に変化・多様化しており、マーケティング施策においてもその変化に対応する様々なソリューションが日々新しく生み出され、急速に発展し続けております。これら多様化し分断されている各種マーケティング施策を、様々なデータとAIによる独自の分析基盤によって集約・統合することで、多様な消費行動やその変化を常に把握し、的確に企業の製品・サービスの情報を消費者に届け、人々の生活をより良いものに、より充実したものにすることが当社グループの使命であると考えております。
また、デジタルマーケティングの世界は、インターネットの誕生をきっかけに、様々な環境変化を経て進化してまいりました。特にその進化の過程において消費者の行動データをマーケティングに活用する動きが活発化しております。一方で、昨今、それらのデータ活用における消費者のプライバシー保護が社会問題化しております。当社グループでは創業来、独自に開発したテクノロジーによって、さまざまなデジタルマーケティングの環境変化に対応してまいりました。健全なデータ活用によるプライバシーの保護という社会問題に対しても、当社の積み上げたテクノロジーアセットを活用することで適切に対応し、様々な産業にデータドリブンなソリューションを提供したいと考えております。
(注)1.センシングデバイス:スマートフォンのGPSによる位置情報計測や、スマートウォッチなどによるラ
イフログの計測など、IoT(Internet of Things)と呼ばれるインターネットに接続された様々なデ
バイス及び、そのデバイスに内蔵される計測装置。
(2)経営戦略
当社グループの事業はデータプラットフォーム事業の単一セグメントでありますが、セグメントを構成する主要なサービスとして、①データプロダクトサービス、②コンサルティングサービスの2つのサービスによって事業展開しております。
「データプロダクトサービス」は、自社開発したプロダクト販売による収穫逓増型のビジネスモデルの事業にあたり、「コンサルティングサービス」は、主に他社の広告サービスの代理販売を軸とした労働集約的なビジネスモデルの事業になります。それぞれのビジネスモデルと、提供する事業の関係は下図のとおりです。特に当社では収益性の高い「データプロダクトサービス」のビジネスモデルに属する「UNIVERSE」へ注力しており、当該領域のプロダクト開発への投資を積極的に行うことで、データプラットフォーム事業の拡大を目指してまいります。
これらビジネスモデル毎の売上総利益率は「コンサルティングサービス」が約20%程度なのに対して、「データプロダクトサービス」は約40%の高い水準を維持しております。(2023年9月期の平均実績)。「コンサルティングサービス」は、労働集約型の広告代理店型ビジネスモデルであるため、人的リソースが豊富な競合他社の大手広告代理店との競争環境の中では、売上高の拡大や収益性の向上が相対的に困難であるのに対し、「データプロダクト」は当社の強みであるデータと分析力を生かし、業界業種に特化した多種多様なプロダクト展開によって、収穫逓増型の高い収益性のビジネスモデルを構築しております。このような収益性の違いから、当社は「データプロダクトサービス」の拡大に注力しております。「データプロダクトサービス」の2023年9月期第4四半期における、グループ連結売上高に占める割合は46%となっており、2023年9月期第4四半期における、グループ連結売上総利益に占める「データプロダクト」の割合は52%まで拡大しております。
以上から、当社グループでは、特に「データプロダクトサービス」に属する「UNIVERSE」へ注力しており、当該領域のプロダクト開発や人的リソースへの投資を積極的に行うことで、データプラットフォーム事業全体の拡大を目指してまいります。
(3)経営上目標とする客観的な指標
当社グループの継続的な企業価値向上を達成するために、経営指標としては売上高、営業利益の成長を重視しております。データプラットフォーム事業の普及・拡大による売上高の拡大と、データとAI技術を活用したサービス性能や効率性の向上によって、高収益な事業を展開していく方針です。
経営指標を達成する為に「(2)経営戦略」に記載の二つのサービスにおける、データプロダクトの「UNIVERSE」の売上高拡大に注力しており、特にその売上高を構成する要素として、UNIVERSEの「稼働アカウント数(発注件数)」を重視しております。「UNIVERSE」を利用する企業は、一般的に当該企業が提供する製品ブランドやサービス毎に広告宣伝費を設定しているケースが多いため、単一企業であっても製品ブランドやサービス毎に複数のアカウントを開設・利用いたします。アカウント開設後、実際に製品のマーケティングを行う月ごとに発注申し込みを行うことで、当該アカウントによる広告配信が可能になります。この際の月ごとの発注~利用の件数を「稼働アカウント数(発注件数)」として経営指標を達成する為に重視する指標としております。
また、当社サービスの「UNIVERSE」は、消費行動データを蓄積・分析することで、様々な業界業種に特化したマーケティングプロダクトを提供しております。外部企業から提供される消費行動データの拡大によって、新たな業界業種へ向けたプロダクトを開発することで、取引企業数の拡大を実現してまいりました。
そのような背景から、データ契約数の拡大により新たな業界業種に特化したプロダクト開発を推進することで、取引企業数の拡大を行いながら、同時にその企業内の取引ブランド数の横展開を戦略的に実現していくことで、アカウント数の拡大を図ってまいります。
これらのUNIVERSEにおける、業界業種に特化したプロダクトの稼働アカウント数の推移は、以下の通りです。
2023年9月期においては、前年比25%増の拡大となっております。
(4)経営環境
・当社グループのターゲットとする市場
当社グループが対象とする主要なマーケットとしては、インターネット広告市場になります。インターネット広告市場においては、2022年の広告費が前年度比で14.3%増の3兆912億円と順調に拡大しております。
(出典:株式会社電通「2022年 日本の広告費」)
当社グループにおいては、インターネット広告市場の中でも、特に「ディスプレイ広告市場(注1)」が中期的なターゲット市場と判断しております。ディスプレイ広告の市場規模は2022年に7,372億円となり、前年比7.5%増の成長となっております。(出典:株式会社電通「2022年日本の広告費」)加えて、マスコミ四媒体広告費(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ広告費)においてもデジタルマーケティングへのシフトが進んでおり、当社では、今後5年で2,640億円程度の規模になると予測しております。(注2)
また、屋外広告、交通広告、POP広告(注3)、折り込みチラシ、ダイレクトメールなどの、プロモーションメディアと呼ばれる広告市場は、2022年で1兆6,124億円の規模(出典:株式会社電通「2022年日本の広告費」)となっておりますが、この領域も今後デジタル化が進行していくと判断しております。その中でも特に、屋外広告、交通広告、POP広告などが当社のデジタルサイネージサービスにおけるターゲット市場と考えておりその規模は、2023年で5,698億円となっております。
以上を総計し、1兆5,710億円が当社グループのターゲット市場であると考えております。
・当社のポジショニング
当社グループは、広告・マーケティング市場における様々な事業を展開しておりますが、当社はその市場における企業の中でも、様々な消費購買データを活用した、プロダクト化による事業展開に特徴があると考えております。
専門人材の人的リソースによって、個々の企業の課題を解決する労働集約型の事業モデルに対して、当社は、それらの課題解決に向けたソリューションを自社のシステム開発によってプロダクト化することで、収穫逓増型のビジネスモデルを実現しております。
また、消費者の生活のデジタル化に伴って、広告・マーケティング領域においても、マスコミ四媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ広告)などをはじめとする、旧来型の広告モデルのデジタル化が進んでおります。特にデータを活用した、データドリブンなソリューションを開発することで、旧来型のマーケティングプロダクトでは実現が難しかった、消費者一人一人に適したマーケティング製品の提供を実現しております。
・新型コロナウイルス感染症の影響に関して
当社グループが事業を展開する広告市場においては、新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する経済活動の停滞から、企業の広告出稿の出し控えの影響によって、提供するサービス毎に、一定の影響を及ぼす可能性があります。
データプロダクトサービスにおいては、2020年4月に発令された初めての緊急事態宣言直後は、広告出稿の出し控えによって業績への影響が発生いたしましたが、2021年下半期にかけて新型コロナウイルス感染症の影響は減少し、2022年~2023年においてはその影響はほぼ確認できない状況まで回復いたしました。新型コロナウイルス感染症による広告出稿の出し控えの影響は、物理的移動を伴う、旅行業やイベント関連の広告などが直接的に影響を受ける一方で、各種インターネットサービスや、ゲーム関連などの広告出稿は増加する傾向にあり、様々な業界業種へのサービス提供を継続することで、新型コロナウイルス感染症の影響を最小限に止めるよう努めてまいります。
コンサルティングサービスにおいては、2020年以降、中国、ベトナムでの事業が、新型コロナウイルスの影響を受け業績が低迷しておりましたが、これら新型コロナウイルス感染症によって業績影響を受けやすい収益基盤の脆弱な海外拠点に関しては、2022年度時点で法人及び事業売却による撤退を致しました。
(注)1.ディスプレイ広告:インターネット広告の中でもバナー(画像)型の広告で、広告効果に
応じて配信設定や条件などを変更することで、広告効果を最大化させる運用が可能な運用型を含む
2.電通発表の『日本の広告費』におけるマスコミ四媒体の新型コロナウイルスの影響を受けていない2017
年~2019年の平均成長率をもとに、向こう5年間でデジタル化される市場規模を独自に算定
3.POP広告:小売店舗の店頭や商品棚などに設置された製品広告
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 自社サービスの継続的な強化
当社グループのデータプラットフォーム事業における各種サービスは、自社開発による当社 グループでしか提供できない独自の価値創造に注力してまいりました。特に顧客企業の業界・ 業種に特化したサービス展開を重視しており、業界・業種に最適な消費行動データの拡充、業 界・業種に特化したAIによるデータ分析モデルの構築、様々なデータ活用手段の開発など、 顧客企業の業界・業種毎に最適なサービスを提供できるよう努めております。今後も継続的な サービスの拡大を実現するために、それぞれの業界・業種の課題を的確に把握し、消費行動に 対する深い洞察と仮説設計を行い、AIによる分析モデルの構築につなげ、最適なマーケティ ングソリューションを開発し続け、競争力の強化と企業価値向上に努めてまいります。
② 新サービス等の継続的な事業創出
当社グループのデータプラットフォーム事業においては、業界・業種に特化したサービス開 発を推進していくことを事業戦略の中心に据えておりますが、より多くの顧客企業のマーケティングニーズに応え、事業を拡大していく上では、常に新しい業界・業種のサービス開発を行 っていく必要があると考えております。また、人々の生活のデジタル化が促進され、インター ネットがより身近になっていく環境において、時代に即した新しいデータの獲得手法の開発 と、スマートフォンやPCに限らず、新しいデバイスを活用した情報伝達手法の開発も重要で あると考えております。絶えず消費者の生活の変化、行動の変化を捉え、新しい事業・サービ スの創出に努めてまいります。
③ プライバシー保護に配慮したデータの利活用
当社グループでは、データプロダクトサービスを中心に、外部の提携企業から消費者の行動 データの提供をうけ、独自の分析を行うことで様々なサービス提供を行っております。データ の受領や利活用にあたっては、プライバシーに配慮した細心の注意を払って取り組む必要があると考えております。インターネット上のプライバシー保護にあたっては、継続的に様々な議 論が行われており、その動向は将来にわたって変化していく状態にあります。当社グループと しては、「個人情報の保護に関する法律」に基づく規制をはじめとして、諸外国の関連法制の 動向把握を積極的に行っていくことで、その変化に迅速に対応してまいります。また、そのような規制に基づいた、社内のデータ利活用及び情報セキュリティに関する規律の強化、社員教 育の徹底、プライバシー・バイ・デザインによるシステム設計を推進することで、プライバシー保護を前提としたサービス開発を推進してまいります。
④ 3rd Party Cookieの規制に向けた対応
当社グループでは、データプロダクトサービスにおいて、外部の提携企業から消費者の行動 データの提供をうける際に、主にWEBブラウザの3rd Party Cookieという技術を活用しております。現在、各WEBブラウザ提供企業において、プライバシー保護の目的の下、この3rd Party Cookieの利用を規制する動きがあります。具体的には、Google社が提供するChrome ブラウザにおいて、2024年後半から段階的に3rd Party Cookieの利用が停止される旨が公表 されています。一方で、Google社からは、当社のような広告事業を行っている企業向けに、 従来のビジネスモデルを継続するための代替技術が提供されます。すでに当社としては、その 代替技術への対応を順次進めており、一部の機能においては代替技術の利用が可能になっております。また、3rd Party Cookieに依存しない、新しいデータ活用技術や、広告配信技術の 開発や提供も開始しております。当社のようなインターネット広告に関連する事業を行っている企業は、全世界で等しく同様の影響を受けるため、いち早く対応することで市場における優 位性が確保できると見込んでおります。
⑤ アドフラウド、ブランドセーフティへの対策
デジタル広告市場の急速な拡大に伴って、近年はアドフラウド(広告不正)問題や、不適切なメディアへの広告掲載による広告主企業のブランド毀損問題など、デジタル広告特有の問題が指摘されています。当社はこれらの問題を深刻に受け止めており、一般社団法人デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)のガイドラインに準拠し、第三者による検証プロセスを経て、JICDAQのアドフラウド認証及びブランドセーフティ認証を取得しております。当社グループでは、引き続き迅速かつ継続的に適切な対策を講じる事で、安心安全なデジタルマーケティングサービスの実現を目指してまいります。
⑥ 人材の獲得及び、育成による生産性の向上
当社グループは、更なる事業拡大を実現していく上で、優秀な人材の採用と、継続的な人材育成、及び組織への長期的な定着が必要不可欠であると考えております。引き続き、中途入社・新卒入社合わせて、積極的な採用活動による優秀な人材確保を推進してまいります。また、従業員の心理的安全性を重視した社内コミュニケーションの制度設計、教育制度の充実、 個々人の能力開発の強化に取り組み、高い生産性を発揮できる組織体制の構築に努めてまいります。
⑦ 内部管理体制の強化
当社グループの更なる企業価値向上や事業拡大を実現する上で、各種業務プロセスの効率化や、適切なリスク管理を行うために、業容の拡大に応じた内部管理体制の強化が必要であると考えております。継続的な採用活動による管理部門の組織力強化を推進し、コーポレート・ガバナンスの充実に努めてまいります。
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