ポピンズ 【東証スタンダード:7358】「サービス業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
ミッション :働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。
サービスポリシー:「寄り添うように」 お客さまのこころの声を感じ、そのご要望に丁寧に応えるサービス
「慈しむように」 愛情と敬意に満ち、優しく包み込むようなサービス
「信頼に足るように」 他に換えることのできない確かなサービス
「妥協しないように」 果てしなき質の向上に挑み続けるサービス
当社グループは上記のミッションの下、創業以来、35年以上前から働く女性の支援を続けてまいりました。
昨今、国連が定める「持続可能な開発目標(SDGs)」に代表されるように、社会課題の解決が企業にも求められる時代となり、当社グループの経営方針及び提供するサービスが社会において重要な価値をもたらすものである事を改めて認識しております。
そこで、当社グループでは、2020年11月に株式会社日本総合研究所からセカンドパーティ・オピニオンを取得し、当社グループの社会課題解決に向けた対応状況を第三者の目から客観的に評価いただくとともに、今後の(経済的価値のみならず社会的価値を含めた)企業価値向上の契機としております。
また、SDGsは当社のミッションにも通ずる目標であると考えており、当社グループの提供するサービスにより、以下のそれぞれの目標達成に貢献してまいります。
目標 | ターゲット | 左記ターゲットに貢献する 当社グループのサービス・施策 |
5.5「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する」 | ・働く女性を支援することにより、女性の社会参画を増大 ・子育て経験をキャリアとして評価し、女性とシニアをナニー及びベビーシッターやケアスタッフとして活用。その他、年齢・性別・国籍・ハンディキャップにかかわらず多様な就業の場を提供 ・自社においても、全社員の89.0%、管理職の74.8%、取締役(子会社取締役を含む。)の32.3%を女性が占める(2023年12月末時点)など、女性活躍を自ら実践 | |
4.2「すべての女児及び男児が、質の高い乳幼児の発達支援、ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする」 | ・「保育」から「エデュケア」へ保育理論、非認知能力の向上ノウハウを深化・体系化 ・将来グローバル社会で生きる子どもたちのために「0歳からのエデュケア」を実践 ・「最高水準」のサービス提供に向け、乳幼児教育において、ハーバード大学、スタンフォード大学、ノーランドカレッジ、東京大学、お茶の水女子大学など国内外の教育機関やその研究者との共同研究や研修を実施し、世界最先端の教育科学を保育に取り入れる ・国や自治体からの委託を受け、保育士再就職支援事業(厚生労働省)や、サービス産業生産性向上調査事業(経済産業省)、子育て支援方策に関する調査研究(文部科学省)等の調査やコンサルティング、研修事業(年間110,000人以上参加(2023年度))を実施 |
8.1「各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる」
8.5「2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する」
| ・保育/学童施設339ヵ所(2023年12月31日時点)の運営、ナニー及びベビーシッターサービス提供を通じ女性の社会参画を支援 ・お茶の水女子大学大学院に「ポピンズ保育マネジメント講座」を開設(2021年4月開講)し、保育士の地位向上を図る ・地方採用も積極化し、地方から三大都市圏(東京都・大阪・名古屋)に転居して働く人に向けて借上げ社宅などのサポート施策を準備(2023年12月末現在310件) ・保育士の処遇改善(大卒保育士の初任給業界最高水準)や福利厚生(自社サービスの割引利用他)の充実 ・残業時間の軽減(目標月平均7時間、2023年度実績5.6時間) ・人材育成を重要な経営課題と捉え様々な教育機会を提供(海外研修に自社社員派遣含めのべ約550名参加(英ノーランドカレッジ海外研修(1994年~)、米スタンフォード海外研修(2006年~)、米ハーバード海外研修(2007年~)の累計参加者数)、オンライン開催となった2020年度~2022年度分を除く。) |
(2)目標とする経営指標
当社グループは、事業の収益性を評価し、グループ全体の経済価値向上に寄与することから、経営指標として売上高と営業利益率を重視して経営しております。
(3)経営環境
日本では、少子高齢化に伴い労働者不足の加速化が予想されるとともに、産業構造の変化により多様な人材を活用していくことが必要不可欠となったことから、女性の活躍促進が一層求められております。
安倍政権が「女性が輝く社会」政策を打ち出した2013年時点で2,411万人だった女性の雇用者数は、以降拡大を続け、2023年には2,793万人まで382万人も増加しております。(注1)
こうしたなか、我が国は成長戦略の1つとして女性が輝く日本を念頭に「待機児童の解消」「職場復帰・再就職の支援」「介護離職ゼロ」に向けた対策が進められていることもあり、当社グループの展開する事業領域の各市場は以下のように拡大していくものと認識しております。
①子育て支援
ⅰ)チャイルドケアサービス(ナニーサービス・ベビーシッターサービス)
欧米等の海外では、ナニーやベビーシッターは一般的なサービスであります。日本においても、待機児童対策として保育施設の整備が急ピッチで進められる一方、女性の社会進出やベビーシッター利用への社会的認知度の向上を追い風として、個別保育の長所を活かした様々なサービスとともに、保育所や学童施設では対応できない、送迎や病児・病後児保育、産前・産後ケアなどの個別支援ニーズへの対応が可能であることから、子育て市場の成長とともにベビーシッター市場は急速に伸長しております。
ベビーシッター市場の年間売上高は、当社独自の推計(注2)によれば、2020年の320億円から2030年には1,000億円規模に到達するものと推定しております。
当社グループのベビーシッターサービスの2023年12月期の年間売上高が、前期比1.7倍に増加するなど、利用拡大が急速に進んでおりますが、海外事情の浸透やベビーシッターの認知度の向上、マッチングサービスの発展等による使い勝手の向上等により、今後も日本におけるベビーシッター市場のさらなる拡大が期待されると考えております。
ⅱ)エデュケア事業(保育所)
待機児童対策のため保育所の新規開設が拡大してきており、保育所定員が前年2022年時点の304万人から、2023年時点で305万人と増加する一方で、新型コロナウイルス感染症の影響も含めた少子化・出生数減少の影響を受け、保育所利用者数は前年2022年時点の273万人から、2023年時点で272万人と減少に転じております(注3)。また、2023年時点の待機児童数も2,680人(前年比264人減)と、前年に引き続きやや減少しました。待機児童数が前年から減少した理由については、こども家庭庁が自治体に実施したアンケートに拠れば、受け皿の拡大が進んだ一方で、申込者数が見込みをした下回ったことが多くあげられ、また、申込者数が見込みを下回った理由としては、就学前人口の想定以上の減少のほか、育児休業の長期取得が挙げられた一方、新型コロナウイルス感染症の影響による利用減は、大きく減少しております。今後については、引き続き女性の就労率の上昇や、非正規雇用者の正規雇用化が進むことが想定されるため、保育所の整備が進んでも潜在的な待機児童数の高止まりは継続すると、当社グループとして見込んでおります。
待機児童解消と職場復帰支援に向けては、政府は2020年12月21日に「新子育て安心プラン」により、2021年度から2024年度末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備することを発表しました。
矢野経済研究所によれば、保育施設等の市場規模は2016年の3.0兆円から2023年の3.7兆円台半ばまで拡大しており、2024年も3.8兆円弱の微増となることが見込まれております(注4)。「新子育て安心プラン」に沿って、政府が掲げる25歳~44歳の女性就業率の目標値が82%(2025年)まで引き上げられていることも踏まえ、当面の間、同市場は緩やかな拡大が継続するものと考えております。
保育の受け皿不足が解消した後もしばらくは保育需要が同程度続くとの意見はありますが、少子化の影響を受け、また、コロナ禍の影響にも加速され、その減少が顕在化しております。既に保育需要の拡大はピークアウトしており、競合間での競争・淘汰の時代に突入しておりますが、保護者向けのアンケートでも、保育所を選ぶ際に最も重視する点は保育の質という結果が出ており、当社の最大の差別化ポイントである質の高さが一層の強みになっております。当社グループはミッションに掲げるように、創業からサービスのクオリティを常に意識し、研修・教育により日々研鑽を重ねてきたことやフルラインナップで働く女性を支えるサービスを提供している事業安定性から、保育所が選ばれる時代の到来は、当社グループにとって好機であると捉えております。
②シルバーケアサービス(高齢者在宅ケア)
国内介護市場規模は、2014年の8.6兆円から2025年には18.7兆円程度まで拡大すると見込まれており、財政問題を背景に社会保障費を少しでも抑えるため、在宅サービスの充実が求められていることから、介護保険と介護保険外を含む在宅介護も大きく伸びると予測されております(注5)。
また、総務省「就業構造基本調査」によれば、働きながら介護をしている人の数は約365万人にのぼり、企業で働く従業員の約10%が介護をしていることになります(注6)。一方、厚生労働省「雇用動向調査」によれば、介護・看護を理由に離職している人は年間約10万人とされております。2025年には総人口に65歳以上が占める割合である高齢化率は30%を超え、現役世代の介護問題がさらに深刻化することで、経営パフォーマンスに大きな影響が出ると予想されており、介護サービスの拡充は日本経済においても喫緊の課題であると言えます。なかでも社会保障費の伸びを抑制する潮流のなかで、当社グループが行う介護保険外の在宅介護や介護予防となるアクティブシニア向けの生活支援への期待は一層高まっていくものと考えられます(注7)。
さらに、年間250万人が生まれた団塊の世代が、現在70歳代半ばに差しかかっていることから、シルバーケアサービス市場の一層の拡大を見込んでおります。
(注)1 総務省「労働力調査(2024年1月30日)」
2 国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(平成29年推計)」、厚生労働省「2021年国民生活基礎調査」、全国保育サービス協会「ベビーシッターNOW2022」、リンナイ「世界5カ国の「ワーキングママの育児事情」に関する意識調査(2019年)」、ほかに基づき当社独自推計
3 厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(2023年9月1日)」
4 矢野経済研究所「2024 年版 ベビー関連市場マーケティング年鑑(2023年12月28日)」
5 デロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー「ライフサイエンス・ヘルスケア 第5回 国内介護市場の動向について(2017年1月25日)」
6 総務省「就業構造基本調査(2022年)」
7 厚生労働省「雇用動向調査(2021年)」
(4)経営戦略の基本方針
当社グループでは、ミッションの貫徹、および今後の成長を目指して以下の3点を経営戦略の基本方針として事業を進めております。
①働く女性のサポート(ライフステージに応じた切れ目のないサービスラインナップ)
当社グループは、ナニーサービスにより事業を開始して以降、ミッションである『働く女性の支援』を具体的なサービスに落とし込み、ワンオペ育児・お受験・小1の壁、親の介護など、働く女性のライフイベントにおいて直面する離職の危機に対して、子育て・介護・家事支援・不妊予防(妊活)・ペットケアまで、一貫して女性の生涯をサポートするソリューションを提供しております。
②クオリティ(最高水準のエデュケアと介護サービスの品質維持向上)
当社グループは、ミッションとして「働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。」を掲げており、常に最高水準のサービスをお客様に提供することを意識し、これまで様々な施策を実行してまいりました。その結果として、あらゆる場面で評価を頂いてまいりました。
当社グループの具体的な品質維持向上施策は以下のとおりであります。
・1999年に育児・介護サービス業界では全国初となる国際品質規格ISO9001(品質マネジメントシステム)の認証を取得いたしました。その過程で品質目標設定・実行・評価・改善というPDCAサイクルによる品質マネジメント体制が整備され、顧客満足度の視点からサービス品質の向上を実現する事に繋がりました。その結果、2023年度に実施した当社グループの保育施設のご利用者による満足度アンケートでは、全施設平均で98.6%の方から満足との評価をいただき、また全施設のうち6割において全員満足と回答されました。
・当社グループでは、お客様の緊急性・利便性・安心感にお応えするナニーサービスを提供するため以下4点の実現を心掛けております。
A) ICT(PC/スマホ)を活用した24時間365日対応の実現
B) 当日オーダー100%に応える最適なナニーとのマッチング
C) コーディネーターによる入会訪問
D) お子様が病気の時でも対応
・運営施設数が増加する状況でも、優秀な人材の採用や育成の強化、および、諸施策を通じた長期雇用の促進により、保育士、ナニー及びベビーシッター、介護スタッフ、家事支援スタッフの質の維持・向上を図っております。具体的な施策としては、ジョブディスクリプションによる各職位における職務内容や人事評価制度の精緻化、処遇改善等を行っております。
上記諸施策の結果、2016年6月には、約30年、働く女性の支援のために高品質のナニーサービスを提供し続けてきた功績が認められ、第一回日本サービス大賞(注8)厚生労働大臣賞を受賞いたしました。
また、スマートシッター株式会社(現 株式会社ポピンズシッター)は、2017年12月、日経DUAL「マッチング型ベビーシッターサービス」ランキングにおいて「質・信頼性」や「料金」等が評価され、1位に選ばれました。2018年にはキッズデザイン賞(子ども達を産み育てやすいデザイン部門)を受賞しました。
子どもたちにとっての創造的な空間づくり(環境設定の質)等が評価され、2020年にはポピンズナーサリースクール恵比寿南、2021年にはポピンズナーサリースクール代々木上原がキッズデザイン賞(子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門)を受賞、2022年にはポピンズナーサリースクール阿佐ヶ谷が、キッズデザイン賞(同部門)及びグッドデザイン賞をダブル受賞いたしました。さらに、2023年にはポピンズナーサリースクール上大崎及びポピンズナーサリースクール軽井沢風越の2園がグッドデザイン賞を同時受賞しております。
2021年4月からは、お茶の水女子大学の大学院に国内初の産学連携による保育マネジメント講座を開設し、主に現場で働く保育士が経営学を含む専門的な理論や知識なども学べるようにして、女性の社会進出に伴い、需要が高まるとともに保護者からの求めが多様化している保育サービスの質を底上げしてまいります。
国も資格や一定の研修受講などの基準をつくり、受講状況などを確認できるシステムを開発するとしておりましたが、当社グループとしても30年間の経験を活かし、ナニー及びベビーシッターに必要な知識や技能の見える化を実現するため「ポピンズナニースクール(教育ベビーシッター養成講座)」と、その修了者を認定する「ポピンズナニー検定」を2019年4月よりスタートしております。
また、2021年8月には、東京都より、当社グループのナニー/ベビーシッター向け自社研修が、民間企業として初めて国認定研修(注9)として認定を受けました。さらに、2022年9月には、東京都ベビーシッター利用支援事業の指定研修としても追加認定されたことにより、当社グループの自社研修がナニー・ベビーシッター関連の二大助成金事業の指定研修として国及び東京都に認められました。
これにより、当社グループの自社研修を受講すれば、いち早く「認定ナニー/ベビーシッター」として活躍いただけるようになりました。さらに、当該自社研修の、当社グループ外のベビーシッターへの外販も進めることで、ベビーシッター業界全体のクオリティの向上にも貢献してまいります。
これからも、当社グループの最高水準のサービス品質をさらに向上させてまいります。
(注)8 日本サービス大賞とは、日本生産性本部が主催し、総務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省が後援する「革新的な優れたサービス」を表彰する日本初の制度です。最優秀賞である内閣総理大臣賞をはじめ、サービスを管轄する各省の大臣賞、地方創生大臣賞などの各賞により、日本国内の”きらり”と光る優れたサービスを幅広く表彰します。ナニーサービスの授賞理由としては、「30年近く、働く女性の支援のため高品質のシッターサービスを提供し続けており、女性の活躍に大きく貢献するサービス。ナニー(教育ベビーシッター)の採用、教育、動機づけ、顧客との関係づくりなど、高品質サービスをつくりとどける工夫に加え、ICTを利活用した24時間365日の受付、最適なシッターとのマッチングなど利用者の利便性向上を追求している。顧客の状況に応じてサービスを提案するなど、個別ニーズにも応える高信頼のサービスである。」とされています。
9 こども家庭庁ベビーシッター割引券などの国の助成に対応するベビーシッターは、保育士または看護師の資格を保有しているか、または厚生労働省が指定する研修を修了することが必須とされています。
③利益成長
ⅰ)事業シナジーを活かしたポートフォリオ経営
当社グループは、子育て支援と介護支援という働く女性にとり必要不可欠なサービスを提供してきたことにより、創業から継続して売上高成長を実現し、特に、新型コロナウイルスの影響を受けた2020年12月期を含む直近5年間においてもCAGR(年平均成長率)7.6%成長を果たしてまいりました。
当社グループの事業は、下図に示すような事業ポートフォリオで構成されており、安定的な成長が見込めるエデュケア事業を「事業基盤」として、社会的ニーズが高いファミリーケア事業を「成長ドライバー」、グループ内の知見を集め、実践的な教育研修を行うプロフェッショナル事業を「育成事業」とし、新規事業である不妊予防事業、ペットケア事業などを展開することで、事業シナジーを生かしたポートフォリオ経営を実践し、当社グループ全体で高い利益成長を目指してまいります。
新規事業への取り組みは、当社グループにとって継続的に重要な取り組みであり、これまで働く女性をフルラインでサポートするため、スマートシッター株式会社(現 株式会社ポピンズシッター)の買収によるベビーシッターとお客様との直接オンラインマッチングサービスの導入や、株式会社ウィッシュの買収による学童事業・人材派遣業への進出等、事業領域の拡大とポストマージャ―インテグレーション(PMI:買収後の事業統合)により、収益性向上と利益拡大を図ってまいりました。
加えて、「ポピンズプラス」というこれまでより付加価値の高いプログラムも2020年7月より提供を開始致しました。具体的には、オンラインも活用した元オリンピック選手やダンサー等のアスリートによる運動・ダンスプログラムやネイティブによる英語レッスン、そして、当社保育施設等で行っている多文化教育をヒントにオンラインで世界各国を訪ねるワールドツアーズ等を有料のオプションサービスとして提供しております。
さらに、2021年6月には不妊予防に関するポータルサイトと企業研修サービスを提供する不妊予防事業を、2022年9月には、ペットケアサービスを、新規事業として開始しております。
これら取り組みによりライフステージに応じて変化する、働く・働きたい女性の課題に切れ目なく対応する当社グループの事業形態の一層の充実について、オーガニック成長(自社内に蓄積された商品やサービス、人材、技術など、既存事業の内部資源をいかした収益拡大)に加えて、M&Aの活用を図り、他社のサービススコープには見られないユニークなビジネスモデルを追及してまいります。
ⅱ)デジタルトランスフォーメーション(注10)(ICT、AIの活用による生産性向上とビジネスの拡大)
当社グループではQRコードによる入退室管理、園と保護者をつなぐ連絡帳の電子化といったICTによる保育現場の生産性向上の取り組みも2015年からスタートしております。
2019年3月には、ベビーシッターをWebから予約できるオンライン型派遣サービス「ポピンズシステム」のアプリ対応版「ポピンズアプリ」を自社開発いたしました。「ポピンズアプリ」は当社グループが提供するサービス全体の窓口となる機能を有しており、保育・育児・介護サービスをワンストップサービスでご利用いただけます。さらに、豊富な顧客データベースを活用することにより、育児や介護をしながら働く女性のために、ライフステージにより変化するご利用ニーズに応じたご提案やマーケティングを行うことでシナジー効果を創出しております。
将来的には自社システムを拡張していくほか、さまざまな情報を集約し、データ分析による予測サービスなどを提供していくなど、デジタルトランスフォーメーションによる生産性向上に取り組む方針であり、この活動を全社的かつ戦略的に推進し、ビジネス拡大に繋げる目的で2020年1月にはデジタルトランスフォーメーション部(DX部)を新設致しました。
同部の推進により、以前から準備を進めていたオンライン保育のスタートが、新型コロナウイルスの影響で休園や登園自粛となった施設の利用者からのニーズにより早まり、2020年3月よりオンラインによる読み聞かせやダンス等の通常の保育サービスだけでなく、英会話や運動クラス等の有料プログラムも随時提供を開始しており、オンライン保育とリアルな保育の組み合わせによるハイブリッド型保育をいち早く導入し、いつでもどこでもポピンズのエデュケアを提供することが可能です。これらに加えて、今後、新技術にも積極的に投資してまいります。まずIoTの活用策として、保育施設において午睡チェックシステムや検温システムを導入して業務効率化を推進しております。
また、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みとして、自動マッチングAIの開発により、ナニー・ベビーシッターのマッチング精度を向上させるとともに、音声自動予約による生産性向上を目指します。その次のステップとしては、情報共有AIの導入により、AIが情報解析のうえコーディネーターや保育士に当社のエデュケアノウハウに基づく推薦案を提示することで専門的かつ臨機応変な対応を可能とし、近い将来には、お客様とコンシェルジュの双方向のコミュニケーションを支援するAIコンシェルジェの開発を目指すことで、お客様の期待を超えるサービスを提供してまいります。
(注)10 “デジタルトランスフォーメーション”は2018年経済産業省で以下のように定義されております。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
(5)中期経営計画
当社グループでは、2023年12月期~2027年12月期に係る中期経営計画を策定しております。
利益率の高いファミリーケア事業が成長ドライバーとなって、全社の売上高及び利益成長をけん引し、オーガニック成長(自社内に蓄積された商品やサービス、人材、技術など、既存事業の内部資源をいかした収益拡大)で2027年12月期の業績目標を売上高350億円・営業利益率10%としております。また、厳選したM&Aを含め売上高500億円以上を目指してまいります。
(6)気候変動への取り組みとTCFDへの対応
当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に賛同するとともに、気候変動関連リスク及び機会が当社グループの事業に及ぼす影響の把握、および分析を行い、気候関連の適切な情報開示を行ってまいります。
当社グループは未来を創り、グローバルに羽ばたくお子様や、日本の礎を築き走り抜けた方々、そして、働く女性の皆様が健やかに生活できる世界を維持するために、気候変動に対しても何が出来るのかを考え、その抑制に寄与してまいります。
(TCFDの提言に基づく4項目についての情報開示)
①ガバナンス
当社グループでは、気候変動を含むサステナビリティ課題について、全社横断的な対応を推進するため、経営企画担当取締役を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。サステナビリティ委員会は原則年3~4回開催され、サステナビリティ課題に対する基本方針や重要事項について審議・検討を行います。
また、審議された内容は、原則年に1回取締役会へ報告し、事業活動や財務に重大な影響を与えると判断された事項については、取締役会にて、その対応方針や施策を審議・決議いたします。
また、当社グループは「ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会」を設置しており、『働く女性の支援』という社会課題の解決をリードする企業を目指し、誰もが自分らしく活躍できる組織の実現に取り組んでおります。
今後は「サステナビリティ委員会」と「ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会」が連携しながら、社会の変化に対応した持続的な企業価値の向上を実現してまいります。
当社グループのサステナビリティ推進体制
②戦略
TCFD提言では、気候変動に起因する事業への影響を考察するため、複数の気候関連シナリオに基づき検討を行う「シナリオ分析」を行うことが推奨されており、当社グループでも不確実な将来に対応した戦略立案・検討を行うために分析を実施いたしました。
また、自社への影響のみならず、ターゲットとする「働く女性」にどのような影響が起こるのかまで包括的に考察を行うことで、気候変動によって起こる「働く女性」への影響に対して、当社グループがどのように対応・寄与していくべきかを考え、下記のようにシナリオ分析を実施しております。
今回のシナリオ分析では、脱炭素に向けてより野心的な気候変動対策の実施が想定される「1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)」と、現状を上回る気候変動対策が行われず、異常気象の激甚化が想定される「4℃シナリオ」を参考に、定性・定量の両面から考察を行いました。なお、当社のカーボンニュートラルの目標達成年度である2050年に加え、SDGsの目標である2030年時点における影響を分析しております。
(シナリオ分析)
シナリオ分析の結果、1.5℃シナリオと4℃シナリオの両シナリオにおいて、異常気象の激甚化による自社事業活動拠点への被害が大きなリスクであると想定されました。ただし、当社グループでは、従来よりハザードマップを参考にし、物理的な被害が抑えられるような事業所作りを進めていたため、想定される被害についても最小限に留められており、自社の経営に大きな影響を与えるものではないと判断いたしました。今後もBCPを意識した事業所設営を進めるとともに、環境に配慮した設備や部材を用いた環境にやさしい事業所作りを行ってまいります。
また、脱炭素社会への移行に伴い、「働く女性」の働き方や就業形態に変化が起こることが想定されました。
当社グループは「働く女性」の活躍を支援するためのサービスを手厚く展開しており、社会貢献性の向上とともに収益機会の増加が見込めました。
今後も当社グループは事業活動を通じて気候変動抑制に寄与するとともに、『働く女性の支援』という社会課題の解決をリードする企業を目指してまいります。
(特定した主なリスク・機会とその対応)
区分 | 項目 | 発生時期 | 考察 | 自社への影響度 | 当社対応方針 | |
1.5℃ | 4℃ | |||||
自社 への影響 | カーボンプライシングの導入 | 中期~長期 | 炭素税や排出権取引などのカーボンプライシング導入により、操業コストが増加する。 | ↓↓ | ― | ■再生可能エネルギーの使用 例:再エネ使用施設への事業所展開など
■換気設備に換気によって失われる空調エネルギーの全熱を交換回収する省エネルギー装置(全熱交換器)の採用 |
エネルギー | 中期~長期 | エネルギー費用の上昇が取引先の事業運営費用(原材料費・物流など)の上昇を招き、当社の操業コストを上昇させる。 | ↓ | ↑ | ■オフィス含む事業所の省エネ化 ■環境に配慮した事業所作り(内外装・設備) | |
人口の変化 | 中期~長期 | 少子高齢化や人口の減少により、育児・保育サービスの需要が低下する。一方、シルバーケア事業や家事支援サービスについては需要が増加する。 | ↓↑ | ↓↓ | ■サービスを通した「働く女性への支援」 | |
異常気象の | 短期~長期 | 台風や高潮などの異常気象の発生頻度や強度が強まることで、オフィスや物理的損害による操業不能や従業員に対する人的被害が発生し、業績悪化のリスクが発生する。 ※一方で、気候変動リスクへの備え(開設立地、施設堅牢性、備蓄)、BCPによる被災園・事業の早期復旧により、社会的信頼・評価が向上し、入園者が増加する。 | ↓↓ | ↓↓↓ | ■「子どものためのSDGs」教育の推進 ■災害発生時を想定した従業員向けの訓練・研修の実施 ■物理的リスクに対して脆弱な資産(事業所など)の把握と災害対策対応 ■ネット上で需給をマッチングし、お客様の自宅でサービスを提供するナニー・シッター事業、シルバーケア事業を伸ばし、物理的な事業拠点やエネルギー消費量を増やさずに事業規模を拡大 | |
社会 への影響 | 低炭素技術 | 中期~長期 | 環境技術分野における女性参画が増加。 働き方・就労形態が変化するに伴い、育児・保育サービスへの期待・需要がこれまでとは異なる方向へ変化。 | ↑↑ | ↑ | ■サービスを通した働く女性への活躍支援 ■在宅や近隣シェアオフィスで働く労働者が増える就労形態の変化に適応した、サービスの展開やサービス提供方法を開発 |
人口の変化 | 中期~長期 | 異常気象の激甚化や気象パターンの変化により、健やかな生活が危ぶまれ、少子高齢化の進行とともに人口が減少する。 | ↓↓ | ↓↓↓ | ■サービスを通した「働く女性への支援」 |
評価基準 - 想定される発生時期 - |
| 評価基準 - 財務影響評価 – | ||
|
|
| ↑:機会 ↓:リスク ↑↓:リスク機会の両面 | |
記載項目 | 項目の定義 |
| 記載項目 | 項目の定義 |
長期 | 11年~30年後に発生が想定されるもの |
| ↑↑↑ | 1億円超の影響が想定されるもの |
中期 | 4年~10年後に発生が想定されるもの |
| ↑↑ | 1000万円以上~1億円未満の影響が想定されるもの |
短期 | 0年~3年後に発生が想定されるもの |
| ↑ | 1000万円未満の影響が想定されるもの |
(主なリスクにより想定される当社への財務的インパクト(2050年時点))
③リスク管理
(リスクに対する管理と対応)
当社グループでは、気候変動関連リスクについて「サステナビリティ委員会」にて管理を行います。
サステナビリティ委員会では、各グループ会社から気候変動関連リスクを抽出し、発生可能性や財務的影響の大小から定性・定量の両面で評価を行います。また、当社では新たな取り組みに伴い発生するリスクや重大な外部環境の変化などのリスクを、「重要リスク」として設定しています。「重要リスク」であると判別されたものについては、取締役会にてその対応方針や施策を審議・決定することといたします。
また、その他リスクもしくは、短期的かつ緊急対応を要する事項(気候変動関連リスクを含む。)もしくはその他リスクに関しては、「危機管理委員会」にてその対応を審議し、関連会社・部署への指示を行います。
気候変動関連リスクに関して緊急対応を要するため、危機管理委員会で指示された対応については、その対応の進捗や、当社方針に沿った指示が適切に行われたのか等、サステナビリティ委員会で定期的なモニタリングを行います。
サステナビリティ委員会及び危機管理委員会にて、識別・評価されたリスクについては、原則年に1回、取締役会に報告を行うことで全社的なリスクマネジメントとしております。
④指標と目標
当社グループは、気候変動対応への進捗を管理するための指標として、GHG(温室効果ガス)排出量の削減目標を採用しております。
持続可能な社会の実現のために、パリ協定で掲げられた1.5℃目標に沿って、2050年カーボンニュートラルを目指し、中長期的な戦略及び施策の検討を行ってまいります。
<当社事業活動におけるGHG排出量と削減目標>
区分 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
Scope 1,2合計 (t-co2) | 1534.25 | 1548.82 | 1715.17 | 1739.52 | |
内訳 Scope 1 (t-co2) | 390.86 | 425.51 | 474.01 | 503.17 | |
Scope 2 (t-co2) | 1143.39 | 1123.31 | 1241.16 | 1236.35 | |
延べ床面積あたり(t-co2/㎡) | 0.060 | 0.056 | 0.059 | 0.056 |
※算定対象:グループ会社含むオフィス及び事業所 ※テナント入居している拠点を除く
Scope1 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
(7)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループとして、上記のほか、保育・学童施設運営やナニーサービス・ベビーシッターサービス等の子育て支援事業や介護事業に対する国や社会の関心が高まる中で、さらなる事業拡大に向けた重要課題として以下の点に取り組んでまいります。
①人材の確保
i)子育て支援事業(ファミリーケア事業(チャイルドケアサービス)・エデュケア事業)
子育て支援業界では、昨今の保育施設の増加やアフターコロナにおける人材獲得競争の激化により人材不足状態が続いております。しかしながら、子育て支援業界のパイオニアを自負する当社グループとしては、高品質なサービスを維持し、子育て支援事業を引き続き拡大させるために優秀な人材の確保が必要であります。
チャイルドケアサービス(ナニーサービス・ベビーシッターサービス)においては、子育て経験をキャリアとして評価し、女性とシニアの活用に積極的に取り組んでおり、当社グループが、株式会社として唯一、こども家庭庁ベビーシッター割引券及び東京都ベビーシッター利用支援事業という二大助成金の適用を受けるための指定研修として認定を受けております。当社グループのベビーシッター自社研修を通して、新たなナニー、ベビーシッターを養成しております。2023年12月現在、約1,300名が当社のナニー基礎研修を受講し、当社グループのナニー(教育ベビーシッター)として登録しております。また、直近1年間で約700名の新たなナニーを養成しております。
エデュケア事業においては運営する保育施設数の増加に伴い、保育士やスタッフの確保が急務となるため、新卒採用及び中途採用の強化に取り組んでおります。
2023年度は年間を通して約750人の保育スタッフ(約500人の保育士を含む。)を採用いたしました。保育士確保は依然厳しい状況が続いておりますが、就職フェアの出展などを通じて就職希望者との接点を増やしているほか、地方採用も積極的に行っており、地方から首都圏に上京して働く人に向けて借上げ社宅などのサポート施策を準備する等、様々な方法を駆使し、保育施設運営上の必要数を充足しております。
保育士の処遇改善については、2013年度の「安心こども基金」を活用した「保育士等処遇改善」以降、国からの補助金は年々増えており、2017年度には「保育士等処遇改善Ⅱ」によりキャリアアップによる給与改善の財源が確保されてきております。加えて、当社グループでは独自での処遇改善として2019年4月以降入社の新入社員(大学卒、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の認可・認証保育所に配属)の初任給を26万円に引き上げ、それに合わせ、現状の保育士の処遇改善にも取り組んでおります。また、保育士の給与については、岸田政権が、2022年2月から教育・保育の現場で働く方々の収入の引上げを目的として開始した「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業(現在の処遇改善等加算III)」等も活用して、改善に取り組んでおります。
ⅱ)ファミリーケア事業(シルバーケアサービス)
介護業界ではホームヘルパー2級保有者など有資格者に対する需要が高く、今後高齢者在宅ケアサービスを拡張するうえで、人材の確保が何よりも重要になります。なかでも当社グループのVIPケアサービスはオーダーメイドの在宅ケアサービスであるため、介護だけではなく家事支援、調理、茶道・華道等、幅広いサービスを提供していくため、そのサービスを提供するにふさわしい、素養のある人材の確保に力を入れております。
②人材の育成
人材サービス業である当社グループは、人材こそが宝であり、お客様に最高水準のサービスを約束するオンリーワン企業となる事を目指して、人材育成が重要な経営課題であると捉えております。そのため、下記のような様々な人材育成システムを通じて教育の機会を提供しております。
社員には、社内講師や専門家による階層別研修、専門研修、任意研修、eラーニング研修のほか、ポピンズ蓼科研修センターでの合宿研修や海外研修を通じ、常に質の高いサービスを提供するために、人材への継続的な教育投資を実施しております。また、ナニー及びベビーシッターやケアスタッフ向けには採用時及び更新時の研修を定期的に実施しております。
さらに、ナニー及びベビーシッター向けにナニー検定やナニースクールによるキャリア開発支援を行うとともに、ケアスタッフ向けに高齢者の健康に配慮しつつも満足していただける食事のレシピについての講習会を定期開催するなど、その人材の養成とサービスレベルの強化に努めております。
③コーポレート・ガバナンスの強化
当社は、経営の効率化および透明性の向上、並びに企業価値の向上のためには、コーポレ ート・ガバナンスの確立が不可欠であると認識しております。
そのため、東京証券取引所が公表しているコーポレートガバナンス・コードへの対応を含め、社外取締役を中心とした任意の指名・報酬委員会の設置など社外取締役による監督・牽制機能の強化、内部統制の強化、「ポピンズグループ人権方針」に基づく人権尊重の企業体質確立などの取り組みを推進してまいります。
④コンプライアンスへの取り組み
児童福祉法や介護保険法及び労働者派遣法や職業安定法をはじめとする各種関連法令の遵守を厳格に実施しております。また、お客様の個人情報についても、法律に則った取扱いを徹底しております。そのために、内部監査、法務、財務経理、人事等、それぞれの分野で高い専門性や豊富な経験を有している人材を採用することに加え、社内規程の拡充整備に取り組んでおります。加えて、社員研修等により日常的にコンプライアンスへの意識を高めることで、さらなる内部管理体制の強化を図るとともに、コンプライアンスの徹底に努めてまいります。
⑤安定的な資金調達の確保と財務基盤の強化
引き続き保育施設の開設を進めるとともに、DX(デジタル・トランスフォーメーション)への投資や新規事業及びM&Aによる事業拡大を図っていくためには、必要な資金を安定的に調達することが重要となります。当社グループでは、複数の金融機関と緊密な取引関係を維持し、資金調達の安定性と財務基盤の安全性を高めるよう努めております。
⑥グローバル対応力の強化
アジアには日本の企業が数多く進出しており、そこに事業所内保育所のニーズがあると考えております。
現在、ハワイで託児施設を一か所運営しておりますが、今後は海外の事業者との戦略的提携によるグローバル展開や、海外での保育施設運営を目指してまいります。
⑦多様な人材の活用(外国人材、アクティブシニア等)
少子高齢化による人材不足の解消は、女性とシニア、そして外国人材にいかに活躍いただくかにかかっております。
当社グループには、2023年12月現在、65歳を越えて働く人材が保育園で300名以上、ナニーでは200名以上おります。当社グループの事業分野においては、年齢、性別、国籍を問わず多様な人材が持てる技能・経験・語学を活かして貢献いただけると考えております。
⑧新規事業への取り組み
当社グループでは、全国の保育事業者等に向けた経営支援コンサルティング事業の拡大に注力してまいります。認可保育所だけでなく様々な形態の施設の運営実績が多くノウハウがあるのは当社グループならではの強みであり、このような強みを活かせるコンサルティング事業を拡大してまいります。今後保育所は、自治体、企業、利用者から選ばれる時代になっていき、いずれは供給過多になると見ており、そのような中、「選ばれる」保育サービスに成長するために、既存の保育施設運営事業やベビーシッター事業に加え、こうした新しい事業も積極的に広げていきたいと考えております。
また2021年6月には、不妊予防事業をスタートしております。これまで当社グループは、出産後の女性のライフステージに寄り添ってまいりました。しかし日本では、不妊治療とキャリアを両立できず悩んでいる女性が数多くいるという現実があります。この現実を踏まえ、出産前の女性が抱える「不妊」という問題に向き合い、働く女性が切れ目なく活躍できるように、支援の領域を広げ、当社グループ独自の不妊予防ポータルサイトの機能拡充や、企業研修の提供等を通じて、不妊予防におけるプラットフォームサービスを提供してまいります。また、実用化されると簡単な質問項目に答えるだけで、月経異常症や卵巣機能不全のリスクを知ることができる『不妊予防のための早期診断チェックシート』の開発に向けて順天堂大学との間で臨床研究を推進中であり、福利厚生として導入していただけるよう、行政・企業への働きかけを進めてまいります。
2022年9月には、ペットケアサービスをスタートしております。当社グループが展開するファミリーケア領域(ベビーシッター、家事代行、介護)において、安心のポピンズブランドで「家族の一員」であるペットの健康と幸せをサポートするペットシッターを派遣し、ペットもご家族の一員としたワンストップのサービス提供を目指します。ペットケアサービスの立ち上げにより、さらに切れ目のないサポートで働く女性やご家族を支援してまいります。
⑨SDGsの当社グループ経営へのさらなる取り入れ
2020年12月21日に東京証券取引所市場第一部に上場した際に、調達資金の使途に関し、当社グループのこれまでの取り組みによるSDGsへの貢献についてセカンドパーティ・オピニオンによる第三者評価を取得いたしました。当社グループがおかれている経営環境や当社グループの経営戦略を踏まえ、社会課題対応に向けた取り組み状況の開示や、当社グループの経営目標への組入れ等により、引き続きSDGsを当社グループの経営の中核に位置付けてまいります。
具体的には、待機児童のさらなる解消やベビーシッターサービスの浸透による保育の受け皿の確保、介護離職回避やアクティブシニアの活用、DXの活用による保育士等の労働環境のさらなる改善等、経営戦略として達成すべき事項をSDGsの観点を交えて設定してまいります。
⑩事業成長戦略とDX戦略の推進
「規模及び範囲」の拡大、つまり当社グループの事業成長戦略としては、1つめに既存事業であるファミリーケア事業、エデュケア事業、プロフェッショナル事業の拡大、2つめに新規事業である、ペットケアサービス、不妊予防、外部向けコンサルティング事業などの育成に取り組んでまいります。そのいずれについてもM&A及び戦略的提携を掛け算することにより、更なる成長を目指します。
そして当社グループが一番の強みとする「クオリティ」を向上させる事業戦略としては、これまで35年以上にわたり当社グループが培ってきた有形無形の資産を活用した、人材確保・育成、R&D、SDGsの推進に取り組んでまいります。
そのうえで「生産性」を向上させるため業務改革、働き方改革、ICTやIoTの活用により業務効率化及び付加価値向上に注力してまいります。
それら全てに対して、常に、当社グループの「DX戦略」が掛け算となります。「顧客DB」「人財DB」の活用に加え、今後はAIの活用やプラットフォーム化を通じ、「人のぬくもりや優しさに価値を置くDX戦略」を実現してまいります。
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