企業兼大株主フジクラ東証プライム:5803】「非鉄金属 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社は、グループ経営理念である「ミッション・ビジョン・基本的価値」を指針とし、“つなぐ”テクノロジーを通じて「顧客価値創造型」事業へ積極的に展開し、収益性重視のスピード感ある積極経営で豊かな社会づくりに貢献してまいります。

(2) 経営環境

 当社グループを取り巻く外部環境は、国内外において、主要先進国におけるインフレ抑制を目的とした金融引き締めの継続、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢といった地政学的リスク、中国経済の回復の鈍化など、今後の状況に注視が必要な状況です。

 情報通信事業分野においては、2023年度後半からの生成AIの普及・拡大を背景にデータセンタへの設備投資が2024年度も加速すると見込まれる一方、欧米においては金利高や補助金政策などの経済的・政治的要因により通信事業者の設備投資が先送り傾向にあり、需要回復は第4四半期頃になると見込んでおります。通信インフラ投資は中長期的には成長軌道に戻ることが期待され、将来の需要回復を見据えて生産体制の整備や拡販活動を継続して進めてまいります。

 エレクトロニクス分野においては、当社FPC(フレキシブルプリント配線板)、コネクタが多く使用されている主要顧客のスマートフォンの需要は堅調に推移すると見られます。ただし、主要顧客向け製品における競争環境の激化や、一部の電子部品の在庫調整の長期化には注意が必要です。

 自動車分野は、グローバル生産台数が回復した前年度に続き、全体としては堅調に推移すると見られます。また、CASE(Connected:コネクテッド、Autonomous:自動運転、Shared & Service:シェアリング&サービス、Electric:電動化)が主要なテーマとなるなど、自動車は100年に一度の変革期にあり、新エネルギー車の需要拡大、自動車の電子化・情報化への取り組みが一層進展するものと見込まれます。

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

・2025年中期経営計画

①概要

 当社は、当社グループの持続的な成長を図り、更なる企業価値の向上を実現するために、2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「2025年中期経営計画」(以下、「25中期」と言います。)を策定し、昨年5月に公表いたしました。

 25中期では、当社が培ってきた“つなぐ”テクノロジーを軸に、基盤技術やコア技術を存分に活かせる「情報インフラ」「情報ストレージ」「情報端末」の3つを、核心的事業領域として位置付け、経営資源を集中的に投入し、高収益な企業グループを目指してまいります。

 また、SDGs(持続可能な開発目標)に示された社会課題の一つである「カーボンニュートラル」は、新たなビジネス創出の好機であると捉えており、核融合発電への利用が見込まれている超電導線材を始め、ファイバレーザやEV(電気自動車)などの分野において、当社の技術力を活かし技術開発・製品開発を進めてまいります。

②情報インフラ

 情報インフラの分野では、革新的な光技術をベースとした光配線ソリューションと将来の高速無線通信技術によって、高度情報化社会実現のためのインフラ基盤の構築に貢献します。

[新規市場・新規顧客の開拓]

 当社の戦略商品である「Spider Web Ribbon®/Wrapping Tube Cable®」(以下、「SWR®/WTC®」といいます。)を始めとする光配線ソリューションを基軸に、北米でのビジネス深耕を図るとともに、新規市場として、欧州大陸や中東・アジア・オセアニア地域でのビジネス拡大に注力してまいります。

 米国では、金利上昇等を背景に、2023年度下期以降、通信会社の投資抑制傾向が続いております。しかし、今後、連邦政府の主導のもと、デジタルデバイドの解消を目的とした超高速ブロードバンド基盤の整備・拡大が進められる見込みです。この動きは2024年度後半以降に本格化すると見込まれており、当社では、米国内でのSWR®/WTC®の生産体制構築と、米国企業との戦略的提携等による拡販を推進いたします。

 新規市場開拓では、中東の大手通信会社のブロードバンドネットワークに当社のSWR®/WTC®が採用されることが決定しました。また、市場における競争力向上の観点から台湾での現地ケーブルメーカーとの技術提携によるWTC®多心化を推進しております。2024年度以降も、技術開発や生産性改善により、顧客のニーズに合致した競争力のある製品を創出し、ビジネス拡大につなげてまいります。

[新たなビジネスモデルへの挑戦]

 当社は、光ファイバ・光ケーブル・光部品・光融着接続機の製造から、ネットワーク設計・施工までをワンストップで提供できる強みを活かし、北米での新規ビジネスモデルに取り組んでおります。

 具体的には、カナダにおいて、過去10年間で延べ85万回線のファイバ網を構築した実績をもとに、ダークファイバ・プロバイダ事業*1の開始を決定いたしました。カナダにおいてもデジタルデバイドの解消は喫緊の課題であり、本事業は、当社と現地の有力な通信事業者が共同で広く投資家の出資を募って立ち上げた事業体によって光ネットワークを構築し、通信事業者にネットワークを貸し出すことを含む事業であり、当地での課題の解消と超高速ブロードバンド普及に貢献します。また、米国では、スタジアムや屋内スポーツ会場、空港など大勢の人が集まることが想定されている限られたエリア内での高速・高品質のデータ通信を可能とするDAS*2-Local5Gビジネスを推進します。

*1 敷設されたまま活用の進んでいない光ファイバ網を貸し出すこと等により活用を進める事業を指します。

*2 Distributed Antenna System(分散型アンテナシステム)の略で、基地局から届く電波を光ケーブルによって分配してより広いエリアを通信対象に含めることができるシステムです。

③情報ストレージ

 情報ストレージの分野は、近年、生成AIの普及・拡大により、設備投資が活況である「データセンタ市場」を対象とした事業領域となります。当社は、データセンタの高度化・大型化により、対策が急務となっているデータセンタ内のスペースやエネルギーの効率化に対して、当社が保有する超高密度光配線技術やユニークな電子部品技術で課題解決に貢献してまいります。

 まず、データセンタでは、サーバやストレージの増加に伴い、小型多心光コネクタを始めとする光部品の需要が拡大しております。当社は、そうした需要増加に対応すべく、生産体制を強化してまいります。具体的には、メキシコのモントレーにある工場を拡張したほか、欧州のデータセンタ市場の需要を取り込むべく、ポーランドに光配線部品の生産工場を立ち上げ、2024年初旬から稼働を開始いたしました。また、日本国内においても生産能力向上を目的とした投資を行ってまいります。

 次に、データセンタにおける省電力・大容量の記憶媒体として注目が集まるHDD製品に関しては、「熱アシスト磁気記録方式」や「マイクロ波アシスト磁気記録方式」等、新たな磁気記録方式を用いたHDDに対応する技術開発を推進いたします。加えて、データセンタの発熱量の増加に伴う効率的かつ高性能な冷却システムの需要増加に対しては、新型の積層型コールドプレートの開発を進めるなど、当社の技術を活用したソリューション提案を強化し、当社のシェア拡大につなげてまいります。

④情報端末

 情報端末の分野は、スマートフォンやPCを始め、AR(Augmented Reality:拡張現実)やVR(Virtual Reality:仮想現実)、ドローンなどを対象とした事業領域となります。また、「走る情報端末」と言われ、高度な自動運転の社会実装を視野に様々な技術革新が進む自動車も、当分野に含めております。

 当社は、基盤技術やコア技術となる配線・実装技術を有しており、これらを活かした付加価値の高いコネクタ、電子ワイヤ、各種センサ類などの高精細な電子部品を取り扱っております。これらはPC・ウェアラブル機器、産業機械や医療機器など幅広い分野で使用されております。

 情報端末は、今後、さらに高密度・高精細・多機能化へのニーズが高まると考えており、当社の高度な製造技術によりこれらのニーズに対応してまいります。

 また、自動車業界では、CASEと言われる100年に一度の変革期を迎えております。当社は、これまで培ってきた優良な顧客基盤と世界に広がる生産拠点を有効に活かしながら、CASEによる次世代車を新たなビジネスプラットフォームとして位置づけ、「技術のフジクラ」による新規事業の創出に挑戦してまいります。

⑤Beyond2025

 当社は、25中期の先を見据え、超電導・ファイバレーザ・EVの3つのテーマにおいて、新たな事業の創出に取り組んでおります。特に超電導の分野では以下の取組みを進めております。

 当社は、レアアース系高温超電導線材において世界トップレベルの性能と量産技術を保有しています。超電導線材を用いたコイルは、次世代のクリーンエネルギーとして各国で実用化に向けた取り組みが進む核融合発電における重要な部材であり、当社は、核融合発電の実現に貢献すべく、この分野において様々な取組みを推進しております。具体的には、京都大学発のスタートアップ企業「京都フュージョニアリング株式会社」に資本参加いたしました。同社と共同して核融合発電の技術実現に取り組み、英国原子力公社(UKAEA)から受注した「核融合炉用高温超電導マグネット領域の研究推進」において、当社がマグネットの設計・製造を担当するなど、同社との協働を進めております。また、内閣府主導で発足した産官学の連携組織「一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会(通称:J-Fusion)」に発起人として参画いたしました。

 今後は、核融合発電の取組みが進むにつれ、超伝導線材の需要が増加すると見込まれることから、生産能力の増強を進めてまいります。

⑥新事業創生・研究開発部門

 当社が持続的に成長していくためには、経営戦略・事業戦略に沿って常に事業や製品・技術の新陳代謝を続けていくことが不可欠です。この部門では、革新的な情報通信ネットワークの構築や環境負荷低減などにより社会に貢献することを目指して、当社事業と親和性が高い「次世代光通信」、「ミリ波応用」及び「次世代エネルギー」を中心とした技術分野で研究開発を進めています。

 次世代光通信の分野では、生成AIに代表されるデジタル技術の革新によりデータ通信量が指数関数的に増大しているため、情報ネットワークの更なる高速化及び大容量化が求められています。加えて、データセンタ等での消費電力増大への対応も必要です。これらの課題を解決するためにIOWN®構想*3 に代表される次世代通信技術が求められており、当社でも、マルチコアファイバ(Multi-Core Fiber;MCF)とその接続技術の開発やデータセンタ等での消費電力低減に貢献できる光電融合領域での研究開発に取り組んでおります。

 ミリ波応用の分野では、高速・大容量・低遅延の無線通信技術として、5Gモバイル基地局や固定無線アクセス(FWA)向けに使用される28GHzミリ波ICとモジュールの開発を、また鉄道、高速道路、空港、港湾、工場、工事現場などの事業者向けに使用される60GHzミリ波通信モジュールの開発を進め、顧客への試作品の提供を開始しております。ミリ波は通信以外の用途でも有望な技術であり、その応用技術の開発にも幅広く取り組んでおります。

 次世代エネルギーの分野では、ファイバレーザのさらなる高性能化・高出力化を推し進めるとともに、エネルギー伝送や情報伝送に応用する研究開発も行っております。

*3 Innovative Optical and Wireless Network構想の略であり、日本電信電話株式会社(NTT)が提唱する光を中心とした革新的技術を活用した大容量・低遅延・低消費電力を兼ね備えたネットワーク基盤・情報処理基盤の構想です。当社は2021年より、同構想の実現と普及を目指すIOWN® Global Forumに参加しています。

⑦資本政策

 25中期では、今後の財務戦略の核となる中期キャピタルアロケーションポリシーを策定いたしました。

 当ポリシーに基づき、将来の成長に向けた事業投資・戦略投資の実行、財務の健全性確保、並びに株主還元のバランスを図り、資本効率を意識した経営を実行してまいります。

<キャピタルアロケーションポリシー>

・成長投資:核心的事業領域3分野を中心に1,050億円

・戦略投資:300億円を目途に新規事業などに機動的に投資

・株主還元:連結配当性向30%を目安

・財務の健全性確保:自己資本比率50%以上を目標

⑧2025年中期経営計画の定量目標

 25中期最終年度(2026年3月期)の定量目標は、売上高8,250億円、営業利益850億円、営業利益率10.3%、株主資本利益率(ROE) 16.5%、投下資本利益率(ROIC) 12.8%、自己資本比率51.7%を定めております。

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