企業兼大株主フジクラ東証プライム:5803】「非鉄金属 twitterでつぶやくへ投稿

  • 早わかり
  • 主な指標
  • 決算書
  • 株価
  • 企業概要
  • 企業配信情報
  • ニュース
  • ブログ
  • 大株主
  • 役員
  • EDINET
  • 順位
  • 就職・採用情報

企業概要

 当社グループでは、環境問題やエネルギー問題など社会課題解決を通じた事業の持続的発展を目指し、情報通信事業部門、エレクトロニクス事業部門、自動車事業部門を中心に新技術並びに新商品の開発を積極的に推進しています。当社グループの研究開発活動は、新事業創生・研究開発部門、及び各事業部門内の開発部にて実施しています。

[新事業創生・研究開発部門]

 生成AIに代表されるデジタル技術の革新により、通信データ量は指数関数的に増大しており、情報ネットワークの高速化、大容量化、低遅延化だけでなく、データセンタを含めた通信ネットワークの消費電力増加は社会問題になりつつあります。

 次世代光通信の分野では、高密度・大容量伝送が可能なマルチコアファイバ(Multi-Core Fiber;MCF)とコネクタを含む接続技術の実用化に向けた開発を進めています。2023年度は、標準クラッド外径でコアが4つあるMCFの融着接続技術や検査技術の開発を行いました。また、MCFケーブルの製造や敷設の際の極性管理の課題を解決する技術や、MCFのクラッドや被覆を細径化し高密度化する技術も進展いたしました。これらの成果は2023年10月のECOC*(英国)や2024年3月のOFC*(米国)、国内の学会や研究会に報告しています。既存の一般的な光ファイバとの接続技術も重要であり、その入出力デバイス、コネクタ接続技術など周辺技術も含めて実用化を加速させます。

*ECOC:The European Conference on Optical Communication、OFC : Optical Fiber Communication Conference。いずれも光通信に関する最大規模の主要国際学会。

 ミリ波の分野では、5G(第5世代移動通信システム)や、その発展形である5G-Advancedによる大容量高速無線通信サービスの本格普及に向け、5G基地局向けミリ波帯通信デバイスの開発を進めています。米国IBM社よりライセンスを受けた技術を基に、当社独自の高度化設計を加えたミリ波高周波ICとアンテナなどを組み合わせ、世界トップクラスのビーム制御性能(校正不要で緻密に電波の送受信方向を制御)を有する28GHz帯アンテナ一体型高周波モジュールが完成しました。2023年度には、送信出力が従来比2倍となる高出力版モジュールのサンプル出荷も開始しています。今後もミリ波帯無線デバイスのさらなる高性能化・低コスト化を進め、5G時代に求められる高速・大容量無線通信網の構築に貢献します。また、産業用無線映像伝送システムへの導入を目指し、60GHz帯無線通信モジュールの開発も進めています。2Gbps超の通信スピードや500m超の長距離伝送、ミリ秒オーダーの超低遅延など、世界トップクラスの性能を有する本モジュールは、高リアリティ・高レスポンスな遠隔監視や遠隔制御を無線ネットワーク経由で実現するデバイスとして高い評価を得ています。当社は、ミリ波帯無線を応用したこのような省人化システムの実現に寄与することで、少子高齢化に伴う社会課題の解決に貢献します。ミリ波技術は様々な場面で活用されることが期待されており、将来に向けて応用製品を幅広く検討しております。

 次世代エネルギーの分野では、すでに事業化を推進しているファイバレーザの高性能化・高出力化をさらに推し進めるとともに、光のエネルギー伝送や情報伝送に応用する研究開発も行っております。

 以上のような当社既存事業との親和性の高い「次世代光通信」、「ミリ波応用」、「次世代エネルギー」の3分野を中心とした研究開発を進め、革新的な情報通信ネットワークの構築や、環境負荷低減などの社会貢献につなげてまいります。

[Beyond2025] ~持続可能な社会に向けた取り組み~

(高温超電導線材)

 レアアース系高温超電導線材は、液体ヘリウムを使用しない次世代の高温超電導機器を実現する製品としてエネルギー分野、医療や分析、産業機器などへの応用・展開が期待されています。当社はレアアース系高温超電導線材の開発および量産技術開発を精力的に進め、世界トップレベルの性能を実現しています。最近ではカーボンニュートラル実現のために欧米を中心に高温超電導線材を用いた核融合発電の開発が精力的に行われています。高温超電導線材は核融合発電に必要なプラズマを閉じ込め、制御するための高温超電導マグネットに用いられ、当社製品を採用したお客様より高い評価を得ています。また、当社は「京都フュージョニアリング株式会社」と共に、英国原子力公社(UKAEA)向けの核融合発電炉用高温超電導マグネット領域の研究推進プロジェクトにおける協業を発表しています。今後も環境負荷の低減と持続可能なエネルギー供給の実現に向け、さらなるイノベーションを追求し、高温超電導の技術開発、事業化を通じて社会の発展に貢献して参ります。

(ファイバレーザ)

 金属のマーキング、溶接、切断で使用されるレーザ加工機の市場では、従来の固体レーザから、ビーム品質が良く、かつ小型で電力変換効率が高いファイバレーザへの置き換えが進み、加工用途も拡大しています。固体レーザでは、レーザ光は空間を伝搬させていましたが、ファイバレーザではファイバで導光することによって、レーザ光の扱いが飛躍的に容易かつ安全となり、様々な加工機やバイオ分析、医療分野などへの応用が可能となりました。当社は、光通信用ファイバや光部品で培ったコア技術をベースにファイバレーザの研究開発に注力してきました。2023年度は金属切断加工分野における厚板対応や高速化といった要望に応えるため、レーザの高出力化を進め20kW超高出力レーザを上市しました。また成長を続けている半導体市場において、半導体製造装置メーカと共に各工程用途に最適化したパルスファイバレーザの開発を継続しています。今後も低消費電力かつ長寿命なファイバレーザ製品により、環境負荷低減および持続可能な社会の実現に貢献していきます。

(急速充電)

 政府が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」により、今後拡大が見込まれる電気自動車の充電インフラの領域においては、急速充電ケーブルコネクタの開発を推進しています。電気自動車の台数増加や搭載されるバッテリの大容量化に伴い、充電時間短縮や充電渋滞解消を目的に、高出力急速充電コネクタ規格の整備が進められています。当社では、国内初となる液冷方式のケーブルコネクタを開発し、2023年から150kW連続充電に対応した急速充電器への搭載を開始しました。更なる高出力化のニーズに対応するため、最大出力900kWに適合した液冷方式のケーブルコネクタの開発にも取り組み、国内の実証プロジェクトに参画しています。

 セグメント別の研究開発活動及びその成果は次のとおりで、当連結会計年度の連結研究開発費は171億円であります。

[情報通信事業部門]

 5G(第5世代移動通信システム)やIoT(Internet of Things)、近年では生成AIの活況など多様な情報通信サービスの普及にともない、光ファイバケーブルの需要が世界的に拡大しています。フジクラでは、既存設備を有効利用しながら経済的に光ファイバ網を構築する技術として、世界トップレベルの細径・高密度な光ファイバケーブル「SWR®/WTC®」技術を用いた様々な新製品を開発し、上市しています。2023年度は、データセンタで要求される高難燃特性と低発煙特性を有した、空気圧送タイプの光ケーブルである難燃AirBlown WTC®を開発し、リリースしました。今後もSWR®/WTC®の技術をもとに革新的な光ファイバケーブルを開発し、世界各国の通信ネットワークの発展に貢献していきます。

 また、光ケーブルの接続点に使用される光コネクタについても、高性能化・小型化の開発を進めており、2023年度は、既存製品のSWR®/WTC®の片端末または両端末に牽引端を取り付けた牽引端付きMulti-Fiber Push On (MPO) 成端ケーブルを更に細径化することで、より細径の管路に対応できるようにしました。多心コネクタの主力製品であるMPOコネクタについては、従来の1/3のフットプリントで実装可能なミニ多心コネクタ(MMC)の16心タイプをリリースし、更に24心タイプの開発も進めています。また、接続作業の際に端面を清掃するMMC用光コネクタクリーナも開発いたしました。今後も、高密度・大容量伝送のニーズに応えられるよう、小型・高密度収容の光コネクタ開発を積極的に進めていきます。

 通信用の光ファイバでは、データセンタおよび長距離通信市場において必要とされるITU-T G.654.Eに準拠した光ファイバFutureGuide®HSC-110およびFutureGuide®HSC-125について、生産性向上および低コスト化に注力いたしました。また光通信機器等で使用されるPANDA*(偏波面保持機能)ファイバに関し、次世代の高速通信で使用される小型光通信機器での収納に適した曲げ半径2mmに対応したPANDAファイバを、国際学会Photonics West2024にて発表いたしました。今後も通信、及び通信機器メーカの要望に応じたファイバを開発していきます。

*PANDA:Polarization-maintaining AND Absorption-reducing

 光ファイバケーブルの敷設工事等で使用される光ファイバ融着接続機や、光部品の製造等で使用される特殊光ファイバ用融着接続機を開発しています。特殊光ファイバ用融着接続機は、細径から大口径までの光ファイバを接続可能であり、2023年度はこの用途で使用される特殊光ファイバストリッパと高性能光ファイバカッタを上市しました。これらは光ファイバを融着接続する前の光ファイバの被覆除去・切断に使用される工具です。両工具とも、RFIDを用いた自動条件変更機能を搭載し作業効率を向上させており、また被覆除去の品質安定のための引き抜き速度制御や、切断品質安定のためのテンション自動制御を採用しております。今後も引き続き光ファイバ融着接続の品質向上に貢献する製品を開発し、光ファイバの敷設や光部品製造の品質向上・効率向上に貢献していきます。

 なお、当セグメントに係る研究開発費は119億円であります。

[エレクトロニクス事業部門]

 民生及び産業用の電子機器に使われるフレキシブル・プリント配線板(FPC)、コネクタ、メンブレン*、電子ワイヤ、センサ、ハードディスク、サーマル製品の開発を行っています。スマートフォンに代表されるモバイル機器は、情報通信速度の高速化や高機能化が進み、周辺機器との連携が強く要求されています。また、自動車の電動化、情報化、知能化が加速する中で、近年需要が増えている自動車用電子部品は、各種環境下での高い信頼性が要求されています。

*メンブレン:銀などの金属インクを樹脂基板に印刷することにより形成した電子回路基板

(FPC事業)

 FPCについては、スマートフォンを中心とした電子機器の高密度化や高速伝送に対応するため、高精細回路、電気特性を向上させた多層基板の開発を進めています。また、車載用途として、バッテリ監視用途などの車両の電動化や、先端運転支援システム(ADAS)に対応する製品群の技術開発を進めています。加えて、医療、ウェアラブル用途などの特殊構造の製品開発にも取り組んでおります。

(コネクタ事業)

 コネクタについては、「小型・低背」「堅牢」「高速伝送」「作業性」「防水」をキーワードに、高機能化(高操作性、高強度、大電流、複合化など)した製品開発を推進しています。モバイル機器用途では、Board to Boardコネクタの小型・堅牢化や、バッテリ用コネクタ等の製品バラエティ拡充を進めています。産業機器用途では、NC工作機やロボット、半導体製造装置に対応した小型・防水・多芯の製品ラインナップ拡充を進めています。また5G関連の通信用途向けコネクタの開発や、自動車用途における自動車の情報化・知能化に対応すべく、高速通信用コネクタの開発に注力しています。

(電子部品事業)

 メンブレンについては、印刷回路の細線化や新規機能性ペーストの商品化を進め、従来のパソコン、車載市場に加え、医療、ヘルスケアといった新しい市場を開拓しています。その中でも特に、ストレッチャブルメンブレン(伸縮性印刷回路)を応用した立体配線基板の開発、銀印刷回路に電解銅めっきを付与した環境に優しい低抵抗なフレキシブル基板の開発に注力しています。

 電子ワイヤについては、エレクトロニクス市場での更なる高速、高容量データ伝送やモバイル機器、ウェアラブル機器で求められる高屈曲耐久を実現する機器内配線用極細同軸ケーブルアセンブリの開発を進めています。また極細同軸によるケーブルの細径化により、内視鏡用途など医療市場の開拓に取り組んでいます。

 センサについては、空圧機器市場や医療市場の要求に応え、また製品ラインナップを強化するため、高分解能デジタル出力圧力センサは量産フェーズに移行し、小型圧力センサは量産化に向けた開発を継続しています。

 サーマル製品については、スーパーコンピュータやハイエンドサーバ、ハイパースケールデータセンタ用の次世代CPU/GPUの発熱量の増加に対応するため、独自構造を持つ新型高性能コールドプレートの開発、及び空冷式ヒートパイプモジュールの高性能化に向けた開発を進めています。また、IGBT等パワー半導体向けに、大容量に対応したベーパーチャンバやヒートパイプ製品の高性能化に向けた開発を進めています。

 なお、当セグメントに係る研究開発費は18億円であります。

[自動車事業部門]

 自動車の高機能化に伴う電装品への小型軽量化のニーズに対応した細径・軽量電線や、半導体ヒューズや半導体リレーを内蔵した小型電源分配ボックス、CASEに代表される分野の技術革新に対応した新商品・新技術の開発を推進しています。

 また、車載LANの高速化ニーズに対応した1G~10Gbpsの高速通信ハーネスや、10Gbps以上の超高速通信ハーネスの開発を推進しています。さらに、車両の電動化ニーズに対応した、高屈曲細径ケーブルや高電圧電源分配ボックスなどの開発、カーメーカーの車両開発期間短縮を実現するハーネス製造シミュレーションシステムの開発、BCPの一環として生産自動化システムの構築を推進しています。

 なお、当セグメントに係る研究開発費は19億円であります。

PR
検索