ピー・ビーシステムズ 【東証グロース:4447】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
一般的な業務効率化を目的としたシステムは、手軽でリスクが少ない方法として汎用パッケージシステムをクラウド上で利用する形態に進んでいきます。一方、個々の企業における「競争力の源泉の一つ」である独自の経営ノウハウ、独自の技術、独自の文化(生産方法や営業手法、経営管理方法、顧客サービス手法等)をシステムとして組上げ、最新技術を咀嚼しながらシステムを構築し運用していくことは簡単ではありません。当社は、顧客企業の「競争力の源泉の一つ」となる顧客独自の情報システム構築を実現すること、そして、その道がたとえ困難であっても一歩踏み出す勇気を持つこと、をポリシーとし、以下の経営理念として定めております。
「勇者たらんと。」 小さな僕等が持ち得るものは、一人一人の知恵と勇気と諦めない強い心だけだ。
どんな時でも、「その一歩」が踏み出せるように。
勇者たらんと。
(2)目標とする経営指標
当社は主力事業であるセキュアクラウドシステム事業を継続的に成長させ、エモーショナルシステム事業の収益力を確立することにより、持続的な企業価値の向上を目指しております。
2022年10月6日の東証グロース市場への上場を機に「営業利益率」を重要な経営指標に加え、「売上高」「営業利益」「営業利益率」を重要な経営指標に位置づけております。下記「(4) 経営環境及び優先的に対処すべき課題」を解決することにより、これらの経営指標の向上を図ってまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社は、事業のコアである仮想化技術をベースとしつつ、顧客企業に差し迫っているリアルなニーズ(障害からの回復性、強靭性の確保:必須のレジリエンス、2025年の崖対策、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応等)に対応した高品質な技術サービスを提供するとともに、技術サービスに付随する高付加価値な製品・商品を顧客へ販売することで、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の継続的な成長を目指しております。
また、エモーショナルシステム事業においては、「体験共有型VR装置」であるMetaWalkersⓇを市場に広めるため、販売パートナーの確保及び育成を進めております。新たな成長分野であるメタバース市場において、メタバースの構築サービスを企業向けに特化した形で提供し、MetaWalkersⓇと企業向けメタバースの2つのサービスを軸にエモーショナルシステム事業の拡大を目指しております。
(4)経営環境及び優先的に対処すべき課題
わが国経済は、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行きなど懸念材料はあるものの、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果により今後緩やかな回復基調が続くことが期待されます。
情報通信業界は、規模や業種に関わらず企業のIT投資意欲は一段と高まり、需要の拡大傾向が続くものと思われます。人財不足による一層の業務効率化需要や、企業の事業拡大に伴う情報システムの拡張需要、競争力を高めるためのDX(デジタルトランスフォーメーション)関連需要などが旺盛です。2023年9月調査の日銀短観によると、2023年度のソフトウェア投資計画(全規模全産業)は前年比15.3%増と、高い伸びを示しています。
経済産業省が「2025年の崖」と表現して警告してきた、老朽化した基幹システムの刷新問題は喫緊の課題となっています。クラウド化していない従来型の古い基幹システムを運用している企業は未だに多く、潜在的な基幹システムのクラウド化需要は潤沢と見ています。
また、警察庁の9月21日の発表資料「令和5年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、ランサムウェア感染などのサイバー攻撃被害は高水準で推移しています。サイバーセキュリティの問題は金融機関や港湾施設といった社会経済インフラの停止に加え、企業の大規模個人情報漏洩など国民生活に直結する大きな社会問題となりました。情報システムのレジリエンス(防御と回復の仕組み)を高める取り組みが、製造業界や医療業界などの各業界で始まっています。
当社はこの状況に対応し、強みであるシステム仮想化技術力を活かした事業展開を積極的に推進していきます。
セキュアクラウドシステム事業は、旺盛な需要に対応するため、本社近郊にエンジニア及びセールスエンジニアを集約する新オフィス「エンジニアハビタット」(総床面積480㎡)を開設し、採用活動を一層加速するとともに、中長期を見据えた技術教育の充実を図ります。「エンジニアハビタット」は2024年2月に稼働開始し、2026年9月期までに当社全体の従業員数を100名超の体制にする計画です。
首都圏においては、SaaS事業者やAI事業者などサービスプロバイダのクラウド基盤構築需要が拡大しているため、東京営業部の増員を行い、2024年1月より東京都内に営業拠点を設置して体制を強化していきます。
企業や公共団体のサイバーセキュリティ需要については、EDR(情報システムの不審挙動検知と対処を迅速化する仕組み)や、クラウド技術を利用して情報システムをダメージから早期に回復するBCP(事業継続計画)などレジリエンスソリューションの販売拡大に取り組みます。
そして、当事業年度に収束した特定案件(製造業向けのVDI構築案件)のような不採算プロジェクトの再発防止策を早急に実行し、採算性の改善に取り組みます。
エモーショナルシステム事業は、MetaWalkersⓇと企業向けメタバースの2本柱で売上と営業利益の拡大を図ります。
MetaWalkersⓇは、国内レジャー需要の回復に対応するため、販売代理店との協業を拡大し、遊園地や博物館への販売や、新規コンテンツの制作受託を積極的に推進します。大手通信事業者との協業では、イベント案件を通じた新規顧客開拓と通信ネットワークによるMetaWalkersⓇのサービス拡充に取り組みます。国策の国土強靭化計画に伴うVR需要については、防災関連の業界団体加盟やイベントなどを通じて販路やコンテンツ等を持つ企業との協業体制構築を進め、MetaWalkersⓇを活用した防災教育や災害シミュレーション分野の受注に取り組みます。
メタバースについては、当事業年度の企業向けメタバース初号機の導入実績を基に顧客ニーズを見極め、企業向けメタバース構築サービスを更に洗練させ、企業や自治体などの新規顧客開拓に繋げる方針です。
加えて、2023年12月にオープンした企業向けメタバースのデモンストレーション用Webサイトを潜在顧客と当社の接点として活用し、企業向けメタバースの受注を更に加速する予定です。
当社の対処すべき課題として以下の施策に取り組んでまいります。
①セキュアクラウドシステム事業の営業利益率の向上
当社は2022年10月6日の東証グロース市場への上場を機に、「強い会社」を目指すため、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の営業利益率16%(※1)を2027年9月期までに達成するというKGI(経営目標達成指標)と、2つのKPI(重要業績評価指標)を設定しました。国内のシステムインテグレーター企業131社における営業利益率の平均値は7.3%(※2)であり、当社がKGIに設定した16%は、その上位5位に入る優良な利益水準です。
KGIを達成するためには、ハードウエアやソフトウエア、クラウドサービスや当社の自社製品などのうち、付加価値の高いカテゴリの販売を増やしていくことが重要となります。そのため、当社は第一のKPI(重要業績評価指標)を「売上総利益率が25%以上の高付加価値製商品の売上高」と設定しています。製商品販売の高付加価化を図る戦略として、専門技術を要するVDI構築や基幹システムのクラウド化、レジリエンス構築(システム障害やサイバー攻撃に対する防御と回復の仕組み)に積極的に取り組みます。それらに付随する高付加価値製商品の販売を拡大することで営業利益率の向上を図ります。
次いで、提案営業や受注後の構築に技術力が必要な高付加価値分野の商品の受注力、構築力を高めることが重要であるため、第二のKPIとして「セキュアクラウドシステム事業のエンジニア・セールスエンジニア数」を設定しています。このKPIを実現するための人財採用・育成戦略として、エンジニアとセールスエンジニアを集約する新オフィス「エンジニアハビタット」を2024年第2四半期に開設する予定です。「エンジニアハビタット」ではエンジニアとセールスエンジニアが集い、新たな技と知恵を生み出す、いわばエンジニアの生態系を構築します。2022年11月に設置した人財開発部は「エンジニアハビタット」における人財育成の推進役として、中長期的な人事・教育制度の整備を推進し、技術力とビジネス感覚を兼ね備えた次世代の人財の育成に取り組む予定です。
(※1)営業利益率は事業計画に基づき、全社費用配賦後の営業利益率を算定・記載しています。
(※2)売上高10億円以上のシステムインテグレーター131社の2019年8月以降の最新期決算
(変則決算を除く)の営業利益率。2022年9月上旬時点の民間調査会社による当社調べ。
②「必須のレジリエンス」 事業コンセプトの推進
DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や、コロナ禍を契機としたテレワークの普及により、社会のデジタル依存度が急速に高まっています。情報システムを構成するネットワークやデータベースサーバー類の障害等により、一部でもシステムが停止した場合には、想像以上に甚大な影響を生じ、ひいては社会問題にまで発展しかねません。ランサムウェアなどのサイバー攻撃により復旧困難な障害に陥ることも、近年多発しています。サイバー攻撃や人為的ミスなどによるデータの棄損や改竄に対して、100%防御することは不可能であり、インシデントの発生都度、多くの労力を使い緊急対処せざるを得ない現実があります。こうした中、企業経営者に求められていることは、前向きなデジタル化の推進と同時に、障害発生時に極力短時間でシステムを回復する「レジリエンス」の重要性を意識したシステムを構築することです。単に止まらない前提のシステムではなく、万が一止まっても速やかに回復できるシステム、つまり、回復のための選択肢を準備しておくことが必須です。これこそ事業の強靭化であり、その実現には、システム設計の熟慮とともに人的な運用体制まで含めた、高度なノウハウが必要となります。
当社は独立系システム構築会社として様々なシステム障害対応の経験を有しており、それらのノウハウの蓄積と、メーカーを問わず優れた製品やサービスをいち早く検証し、組み合わせることで「レジリエンス」を更に発展させるよう活動しています。
回復力と強靭化を意味する「レジリエンス」の重要性をすべての企業、自治体に向けて発信し、従来からの「基幹システムのクラウド化」と新しい「必須のレジリエンス」というコンセプトを二本柱として関連するサービスを拡張させることにより、セキュアクラウドシステム事業を発展させていくことは当社の重要課題です。
「レジリエンス」は、喫緊に迫った2025年の崖を乗り越え、様々なDXを外連味なく実行可能にし、持続可能な企業成長を促すことになり、SDGsに対しても必須のキーワードとなります。
③優良顧客の獲得のための営業力の強化
顧客のビジネス進展に応じて、システムに関する様々なご相談を当社に継続して行っていただけるロイヤルカスタマーの数を増加させることが、当社の安定的成長に欠かせない経営課題です。そのために、九州地場優良企業の開拓だけでなく、国内でも経済規模の大きい首都圏のロイヤルカスタマーの増加に対する営業力の強化に努めていきます。
④ストック型売上の拡大
当社は、クラウド基盤構築の受託業務を主体とする会社であり、それらはフロー型の売上となりますが、保守などのストック型売上についても拡大を図っていきます。当社が構築したシステムの保守だけでなく、他社が構築したシステムについても当社が保守サービスを提供できるよう、他社構築システムのアセスメントと保守提供の体制を整備していきます。また、サブスクリプション型(月額料徴収型)のソフトウエア、クラウドサービスを組み合わせたハイブリッドクラウドシステムの構築・販売を推進することで、ストック売上高の拡大に努めます。
⑤セキュアクラウドシステム事業の不採算案件の予防
不採算となった当期の特定案件(製造業向けVDI構築案件)の経験から得た知見を活かし、早急にプロジェクト管理の強化を図ります。特に大型案件については受注活動から納品に至るプロセスを見直して、重点的に不採算案件の予防に取り組みます。更に、エンジニア・セールスエンジニアの人財の採用と協力会社の開拓を推進し、大型案件を円滑に遂行する体制構築に努めます。
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