ビジネスコーチ 【東証グロース:9562】「サービス業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1)経営方針
より良い社会を創造していくには、その構成要素となる人と組織の生産性を高め、より良い組織を一つでも多く創っていくことが地道でありながら最も確実な方法であると考えます。そして、一人ひとりの多様な能力発揮を支援し、ビジネスと社会の持続的発展を可能にするために当社が考えるテーマは次の通りです。
それは、すべてのビジネスパーソンに「客観的な立場からコミュニケーションできる、経験豊富でスキルもあり信頼できる、あなたの能力発揮をお手伝いする」役割を持ったコーチを活用して頂くことです。
当社は、ビジネス経験・マネジメント経験の豊富な方をパートナーコーチとして迎えています。
当社はパートナーコーチと連携して、エグゼクティブや次世代のエグゼクティブのみならずビジネスの世界で活躍するすべての人の個人の成功、ひいては組織の成功をサポートしていきたいと考えております。
1対1型サービスでは、ハイレベルなエグゼクティブコーチング、ビジネスリーダーコーチング、ビジネスパーソンコーチング等、一人ひとりの課題と状況に対応した幅広いビジネスコーチングを提供するとともに、1対n型サービスでは、組織に対しては1on1の導入・定着・継続を支援するビジネスコーチングプログラムにより間接的にコーチングの素晴らしさを体感頂ける機会を、プロフェッショナルチームとテクノロジーの活用により皆様にご提供することで、コーチングの普及を実現したいと考えています。
これらを実現する企業となるため、当社は次の通り、パーパス・ミッション・ビジョンを定めております。
<パーパス>
一人ひとりの多様な魅力、想い、能力の発揮を支援し、働く人が幸せを感じられる社会の持続的発展を可能にする。
<ビジョン>
一人ひとりにビジネスコーチがついている社会を実現する。
<ミッション>
プロフェッショナルチームとテクノロジーの力で、一人ひとりに最適なビジネスコーチングを提供する。
(2)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、ビジネスコーチングを1対1型と1対n型で提供しており、現在は1対n型が収益の過半を占めていますが、一人ひとりにビジネスコーチがついている社会を実現するためには、コーチングを受けているコーチング対象者(クライアント)数を増加させる必要があるため、1対1型サービスのクライアント数及び1対1型サービスの売上構成比を重視しております。また、経営の効率性を確保するため、売上高、売上総利益率、営業利益率並びに従業員一人当たり売上高を重要指標として活用することで、健全な収益力の向上と経営基盤の強化を進めて参ります。
(3)経営環境
当社は、「働き方改革関連法」による生産性向上・長時間労働是正・ワークライフバランス実現等を目的とした人材開発関連投資が拡大してきたと考えており、また、コロナ禍により始まったテレワークの実施により組織内コミュニケーションの課題が顕在化して、これを解決するためのコミュニケーションを改善するための人材開発投資も活発化していると考えております。
一方で、企業向け法人研修市場は約5,370億円(※1)で前年度比3%程度で増加傾向にありますが、ビジネスコーチング市場は、その中の小さなカテゴリーで310億円程度(約6%)(※2)と考えられ、適切なマーケットデータは存在しません。
当社では、これらの状況から企業向け法人研修市場の中で支出カテゴリーの変化が起きているものと考えています。
米国においては、法人研修市場のうち、ビジネスコーチングが占める割合は約36%(※3)と、日本の構成比の5倍以上です。この差は、米国のジョブ型雇用制度と能力給型報酬制度に対して、日本のメンバーシップ型雇用制度と年功序列型報酬制度の違いによりもたらされているものと考えております。
国内においてもジョブ型雇用制度が話題になる等、米国型制度への転換が模索されており、これにより人材開発投資の内容が変化していると考えております。
また、「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書 ~人材版伊藤レポート~」(経済産業省)にあるとおり、企業における人的資本への投資状況の開示が望まれる状況となっており、実効性のある人材開発投資が求められる状況になっています。
これらのニーズに対して、一人ひとりの能力を最大限に引き出すビジネスコーチングをという、単なる研修ではないサービスの有効性を訴求して、成果を測定できる形でサービス提供することが重要と考えています。
(※1)出典:矢野経済研究所「企業向け研修サービス市場の実態と展望2023」
(※2)出典:矢野経済研究所「企業向け研修サービス市場の実態と展望2023」から当社にてカテゴリー区分の上集計。
(※3)出典:IBISWorld刊「61143 Business Coaching in the US Industry Report」から当社にてカテゴリー区分の上集計。
(4)経営戦略等
当社は、現状は1対n型コーチングが収益の柱になっていますが、今後は、1対1型コーチングを伸長させてより多くの顧客の生産性向上に寄与したいと考えています。
人材開発投資の投資効果測定は非常に難しい課題です。1対n型で人材開発投資をしても、プログラム参加者の学習理解度、習得内容の利用機会の有無、習得内容を利用するための支援の有無等により、参加者の成果は一律ではなく、客観的な成果を把握するためには情報の収集と分析に多大な労力を必要とします。
一方で、1対1型コーチングでは、コーチがコーチング対象者(クライアント)に1対1で対応し、行動変容の定着化までフォローアップするので、成果につながりやすく、また成果の把握も容易になります。
米国型の雇用制度・報酬制度に向かって人材開発のニーズが全員一律のインプットから個人別成果実現の支援に向かって変化し、人的資本投資の開示が求められる時代においては、1対1型の人的資本投資がより重視されるようになると考えており、1対1型コーチングの伸長を想定した戦略を準備・実行することで顧客価値の最大化と収益の増加を実現することが可能になります。
① 高品質なコーチの確保・育成・維持
第一は、高品質のコーチを確保し、育成し、維持することが重要です。コーチの品質は「コーチ個人の実践知」×「コーチングスキルの習熟度」で決定すると考えています。コーチングスキルが有ってもコーチ個人の実践知が低いと、クライアントに対して適切な「気づき」をもたらすことが出来ません。コーチが実践知を持っていてもコーチングスキルが無いとティーチングとなってしまい、クライアントはコーチから指示された行動変容を行うことになって継続は難しくなります。これらを解決するための仕組みや環境を整えて高品質のコーチを確保することで、1対1型の成長を目指します。
②フォローアップの特化したサービスの開発と提供
1対n型コーチングにおいても、フォローアップを出来るだけ容易にするサービスを開発して提供することで、安定的な成長を目指します。
③コーチングのAI分析
コーチングや1on1ミーティングは1対1で実施されるために当事者以外にはブラックボックスとなっています。そのため、最適なコーチングになっているかどうかが感覚的にしか判断できないため、会話音声AI解析により、効果的なコーチングとなるように支援するサービスも開発・販売を開始しており、これらの有効性を高めて成果につながるコーチングや1on1ミーティングの実現を目指していきます。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社の優先的に対処すべき事業上の課題は以下の通りであります。なお、優先的に対処すべき財務上の課題につきましては、長期借入金及び社債の約定返済・償還も順調に進み、営業キャッシュ・フローにより実質無借金状態となっていますので、現時点ではございません。
人材を管理の対象とみなす「人的資源」ではなく、適切な「環境」を整備・提供すると価値の創造・増殖が起きる「人的資本」と捉えることが日本企業において強く求められつつあると考えております。
2021年6月に行われたコーポレートガバナンス・コード改訂のポイントは「人的資本に対する投資の開示」でありますが、その本質は、「開示すること」それ自体にあるのではなく、個の自律・活性化に対して企業が本気で投資していくことで、個々人の総和である企業価値を大きく高めることにあると認識しております。
無形資産の中核をなす人的資本の価値を高めるためには、従来型の「十把一絡げ」の一律教育では限界をきたしており、社員のエンゲージメント向上や一人ひとりの魅力・想いを引き出したうえでの能力発揮が不可欠となっていると考えております。
そのためのもっとも効果的なアプローチがビジネスコーチングであり、個々の自発性を高め、生産性向上を加速させることで、大企業を中心とした顧客企業の企業価値向上に貢献してまいります。
(6)ハイパフォーマンスモデルの確立による営業展開の強化
当事業年度では、2023年5月にコーポレートコーチング本部と人材マネジメント本部を統合して新・コーポレートコーチング本部を発足し、法人顧客を主たるステークホルダーとし、「ハイパフォーマンスモデル」の明確化と高度化を促進してまいりました。顧客に寄り添い、人的資本に関する課題解決を行う場合、顧客と当社の十分な相互理解と信頼関係の確立が不可欠であるため、法人営業を担うコーポレートコーチ職の人員増強が必要であります。当事業年度においては採用による社員数増加が計画未達となり、十分な営業活動量を確保することができませんでした。そのため、採用方法や採用募集チャネル等の見直しを行い、計画通りの採用を実現することで人的資本を確保し、営業展開を強化してまいります。同時に、社内教育によるコーポレートコーチ職の専門知識レベルの向上、パートナーコーチとの連携の緊密化、サービス提供を支えるオペレーション担当者の効率化等を図り、より多くの顧客にライフタイムバリュー(顧客生涯価値)を最大化する体系的サービス提供を実現してまいります。
(7)1対1型サービスの普及推進
当事業年度では、エグゼクティブコーチング及びビジネスリーダー・ビジネスパーソンコーチングで構成される1対1型サービスのクライアント(コーチング対象者)数が前年同期比14%増の1,254名となりました。当社では、マネジメント層の経営力強化や次世代経営者を選抜・育成するプロセスにはエグゼクティブコーチングが有効であると考えており、ミドル層以下のクライアントには個人の課題に合わせた人材育成手段としてのビジネスリーダー・ビジネスパーソンコーチングが、エンゲージメント向上に有効であることが認識され始めた結果であると考えております。
今後も、クライアントのニーズに合わせて1対1型サービスの普及に尽力してまいります。
(8)1対n型サービスの成長性回復
1対n型サービスに関しては、2023年9月期の売上は前年同期比で約14%の減少となりました。新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴った行動制限の解除等により、2023年4月からのクライアント企業の人材教育における主眼が対面による新入社員教育・若手社員教育に置かれたため、当社が得意とするマネジメント層に対する1対n型サービスの実施時期が後ろ倒しになったこと、及び過年度より当社事業の成長を牽引してきた1on1導入支援のニーズが一巡した状況に対し、クライアント企業の課題が、定着し始めた1on1の活性化や有効化を実現する施策に進化してまいりましたが、その課題に対応するコンテンツの標準化が遅れたことも要因の一つと考えております。
クライアント企業と対話を重ねていく中で、1on1によりチームメンバーとのコミュニケーションを活性化した管理職がプロフェッショナルマネージャーとして飛躍するために必要な考え方を習得し、それに対応した言動を自発的に実現するためのプログラムに対するニーズが明確になってきましたので、このプログラムを標準化し、これを中核として1対n型サービスの復活を実現してまいります。
(9)サービス提供力の増強と生産管理の強化
コーチ等の増員によるサービス提供力の増強は、質と量の両面において当社の課題であります。当事業年度においてもサービス提供力の増強を実施し170名のパートナーコーチと契約をしております。今後もコンスタントにパートナーコーチを増員してサービス提供力を量と質の両面から増強を図ってまいります。
(10)ガバナンス体制の強化推進
当社は2022年10月に東京証券取引所グロース市場に上場し、コーポレート・ガバナンス報告書を提出しております。現状ではコーポレートガバナンス・コードの5つの基本原則にコンプライしている状況ですが、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて、全原則への対応を推進してまいります。
また、当社は7月に株式会社購買Designの子会社化を決定し、第19期終了後の10月2日に株式取得により子会社化を完了しております。
これに関連して2023年10月16日の当社の取締役会で、内部統制システムの基本方針を改訂し、企業集団における業務の適正性の確保に関する方針を定めましたので、これに則って株式会社購買Designにおいてもコーポレート・ガバナンスへの対応を推進してまいります。
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