ヒューマンテクノロジーズ 【東証グロース:5621】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは「オペレーションから解放し、創造的業務への後押し」をミッションに掲げ、給与計算までの自動化を実現するサービスと人時生産性向上に役立つデータ分析機能の開発をしております。
上記のミッションの実現に向け、優秀な人材の確保、育成や組織体制の整備にも注力しております。
(2)経営環境
我が国は、少子高齢化の影響により労働人口は減少傾向にあり、また、労働生産性はOECD加盟国38カ国のうち27位となるなど社会的課題に直面しております。当社グループの属する市場は、働き方改革関連法施行によりきめ細やかな労務管理が求められ、また、労働環境の変化により企業がDX化を加速させ、労務管理のシステム化が進んでおります。その状況下で、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された建設業・運輸業・医療分野などを中心により高度な勤怠管理システムへの乗り換えニーズが発生するなど、依然として勤怠管理システムの導入ニーズは高いと考えております。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 組織体制の整備
当社グループの継続的な事業成長の実現に向けて、多様なバックグラウンドをもった優秀な人材を採用し、強い組織体制を整備することが重要であると認識しております。積極的な採用活動を推進していく一方で、従業員が中長期にわたって活躍しやすい環境の整備、人事制度の構築やカルチャーの推進等を進めてまいります。また、コロナ禍を機に組織を大幅に変革し、部・課制のような機能別組織ではなく、顧客への価値提供など事業目的に応じたプロジェクトに細分化する当社独自のプロジェクト制を導入しその運営を軌道に乗せ、更なる成長を促進してまいります。
② 情報管理体制の強化
当社グループは、提供するサービスに関連して多くのユーザー企業の機密情報や個人情報を取扱っております。これらの情報資産を保護するため、専任の情報セキュリティチームを設置しております。また情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しております。今後も社内教育・研修の実施のほか、システムの強化・整備を実施してまいります。
③ 新規事業の展開
現在、当社グループの収益の大半が「KING OF TIME」のSaaSサービスから成り立っております。今後も継続的な事業成長の実現に向けて、既存サービスの伸長に加えて、有償のプレミアムサポート、パートナーサービスの販売、給与計算のBPOサービス、「KING OF TIME電子契約」等の新規事業の展開を積極的に行っていきます。こうした新規事業の展開に伴い当社の中期経営計画(2023年度~2027年度)の前半は「KING OF TIME電子契約」等のシステム開発投資が先行するものの、2025年度以降は先行投資が一巡し、新規事業による収益を取り込める見通しです。
④ 課金方法の変更
当社グループは、「KING OF TIME」のSaaSサービスについて、現在打刻ベース(サービスの利用に応じた課金)にて請求しておりますが、人事労務と給与の機能拡張に伴い、2024年3月期から登録ベース(契約に基づいた課金)へ段階的に変更させて頂く予定です。この変更に伴い、既存顧客の平均的な課金ID数は約2割増加すると見込んでおります。
(変更予定時期)
2023年10月 直販の新規顧客(変更実施済)
2024年4月 販売店の新規顧客(変更実施済)
2025年4月 直販と販売店の既存顧客
2025年10月頃 OEMの既存・新規顧客
⑤ ソフトウエアの資産計上
当社グループは、2024年3月期から将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた支出「KING OF TIME電子契約」をソフトウエアとして資産計上しております。このため該当する開発プロジェクトの運営管理のルールを定め、定期的に取締役会へ報告するなどの管理体制を強化しております。
⑥ サステナビリティへの取組
当社グループは、お客様・株主・取引先・従業員などのステークホルダーとともに企業活動や事業を通じた社会課題の解決やサステナブルな社会の構築に積極的な役割を果たすことが重要と考えております。しかしながら、サステナビリティに関する重要な指標の目標値については、社内における各指標の評価データが整うことに並行して段階的に設定していく方針です。
(4)今後の成長戦略
当社グループは、継続して成長し続けるために、「KING OF TIME」にて勤怠管理から給与計算までを1ユーザー300円の「ワンプライス戦略」により市場競争力のある価格にてシェア拡大を行ってまいります。
「KING OF TIME」の価格面の特徴は、「月額1人300円」のワンプライスで、全ての機能が利用できることです。勤怠管理以外にも人事管理やデータ分析、給与計算なども、全てワンプライスの中でご利用頂けます。ワンプライス300円は、リリース当時から守り続けており、お客様が求める機能・品質を安価な価格にて提供し続けることがお客様への価値提供に繋がると考えております。
また、当社グループにおいては、事業拡大の根幹をなす“TOP3 コンセプト”を定めております。具体的には、①TOPコストパフォーマンス、②TOPセールスチャネル、③TOPパートナーシップであり、企業の生産性改善をもとにした「お客様の飛躍的な労働生産性向上」を目指しております。
当社グループの成長戦略は、顧客当たり売上高の向上を図ることです。具体的な内容としては、以下のとおりであります。
① 顧客基盤の更なる拡大
当社では、有力パートナーとの関係構築により導入企業数の増加、網羅的なサービスの提供を継続し、顧客基盤を盤石なものとするための施策を行ってまいります。
a.新規顧客獲得
2023年9月分の労働力調査によれば日本の就業者数は6,787万人いるものの、勤怠管理SaaS(注1)の販売数量は1,090万IDに留まっており(注2)、また当社の利用ID数は4%程度に過ぎません。これはアナログな勤怠管理を行っている理由もあると考えられるため、市場の成長余地は依然として大きく見込まれます。
注1)SaaSとは「Software as a Service」の略称で、サービスとしてのソフトウェアをインターネットを経由して提供するクラウドサービスのことを指します。
注2)㈱富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2023年版」による推計値
b.KOTサービス営業強化施策
販売パートナー及びOEMパートナーの開拓と育成することに加え社会保険労務士や税理士などの士業ネットワークの構築
c.パートナーサービスの連携強化
パートナーサービス(当社サービスと親和性のある人事管理システムや給与システム等の他社SaaSサービス)との密連携による顧客への付加価値提供。PKG連携ツール(他社SaaSサービスを「KING OF TIME」に連携させるために必要となるデータ変換ツール)の充実
② 顧客体験の更なる向上
当社グループでは、導入企業の生産性向上に貢献するサービスとして優位性を確立してまいります。具体的には、勤怠管理だけではなく人事労務・給与計算など提供するサービスの範囲を広げていくこと、勤怠管理から給与計算までのプロセスを自動化すること、サービスで蓄積されたデータを利活用してのデータ分析等により、日々のオペレーションからの解放を通じて、創造的業務に時間を割けるよう支援する体制を整備してまいります。
③ 新しい付加価値の提供
顧客満足度を最大限に引き出すため、蓄積された勤怠管理データを活用し、顧客毎に最適な付加価値を提供していきます。各サービスの概要は、以下のとおりであります。
[給与計算BPOサービス]
給与計算関連の集計作業をアウトソーサーとして受託。「KING OF TIME」シリーズでは集計機能の自動化・標準化が進んでいるため、従来のアウトソーサーよりもローコストでサービス提供可能
[パートナーサービス]
「KING OF TIME」シリーズとシナジーのある外部サービスを当社が販売代理店となりシームレスに提供。全従業員が毎日利用する勤怠管理システムの特性を活かし、「KING OF TIME」がポータルとなり、パートナーサービスと連携
[KING OF TIME電子契約]
入社手続きに必要となる雇用契約書の電子化を提供する有償オプションサービス。全ての帳票にタイムスタンプが押し放題。契約書を紙での取り扱いから電子への取り扱いへ切り替えることを後押し
[プレミアムサポート]
「KING OF TIME」導入済の顧客に対して提供する有償サービス。個社ごとの複雑な要望や、継続的なコンサルティングニーズへ対応。同時に、上記パートナーサービス、給与計算BPOへの足掛かり
④ グローバル基準のクラウドサービスを東南アジア圏へ展開
グローバル基準の勤怠管理を中心としたHRクラウドサービスを、現地においても高コストパフォーマンスで提供することにより、東南アジア圏のHR市場へ展開してまいります。なお、2022年8月においてタイに現地法人を立ち上げ、日系企業への導入を足がかりにKOTサービスを順次展開しております。新市場の開拓となるため投資が先行しますが、長期的には日本と同等、もしくは同等以上のビジネスになることを目標としております。
上記を前提として、当社グループでは「KING OF TIME」を企業の人時生産性向上を実現するマルチソリューションベンダーへと進化させてまいります。
KOTサービスは、
・全従業員が
・毎日使うサービスであり、
・SaaS利用、DX化(注3)の入口として適しているサービスです。
この優位性を活かし、顧客とパートナーをつなぐプラットフォームになりたいと考えます。
このプラットフォームを広めることにより、HR領域全般にまたがる、マルチソリューションベンダーになります。
このプラットフォームを「サブスクリプションマネジメントプラットフォーム」、通称SMPと名付け、「KING OF TIME」を入口として顧客に必要なサービスを販売・サポートしていきます。
顧客が利用中のサービスからも、厚みを増したデータを収集・分析し、人時生産性向上に繋がる気付きも提供していきます。
注3)DXとは、「Digital Transformation」の略称で、デジタル技術の活用によって企業のビジネスモデルを変革し、新たなデジタル時代にも十分に勝ち残れるように自社の競争力を高めていくことを指します。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、基幹サービスであるKING OF TIMEの経営成績を把握することを目的として、単体ベースの売上高、KOT SaaS売上(「KING OF TIME」による月額利用料)、営業利益、人件費、外注費、販売促進費を重要な客観的な指標と捉えております。
また、2024年3月期の当社連結売上高の87.6%が単体のKOT SaaS売上であるため、経営上の目標の達成状況を判断するための指標として、ARR、月次換算解約率、利用社数、利用ID数、課金ID数を重要な経営指標と捉えております。これらの指標につきましては今後も継続的に増加させるよう努めてまいります。
(単体の年度ベース)
| 2020年 3月期 | 2021年 3月期 | 2022年 3月期 | 2023年 3月期 | 2024年 3月期 |
売上高(百万円) | 2,473 | 2,914 | 3,498 | 4,160 | 5,016 |
KOT SaaS売上(百万円) | 1,998 | 2,526 | 3,111 | 3,684 | 4,411 |
営業利益(百万円) | 572 | 767 | 572 | 362 | 576 |
人件費(百万円) | 753 | 1,010 | 1,324 | 1,615 | 1,882 |
外注費(百万円) | 300 | 337 | 607 | 965 | 915 |
販売促進費(百万円) | 115 | 80 | 128 | 173 | 310 |
(単体の四半期ベース)
| 2023年3月期 | 2024年3月期 | ||||||
| 第1四半期 | 第2四半期 | 第3四半期 | 第4四半期 | 第1四半期 | 第2四半期 | 第3四半期 | 第4四半期 |
KOTSaaS売上高(百万円) | 872 | 902 | 938 | 970 | 1,032 | 1,076 | 1,127 | 1,174 |
(単体のKPI)
| 2020年 3月期 | 2021年 3月期 | 2022年 3月期 | 2023年 3月期 | 2024年 3月期 |
ARR(百万円) | 2,257 | 2,784 | 3,343 | 3,950 | 4,792 |
月次換算解約率(%) | 0.18 | 0.24 | 0.22 | 0.25 | 0.27 |
利用社数 | 23,567 | 29,254 | 39,616 | 46,666 | 54,596 |
利用ID数(千個) | 1,730 | 2,038 | 2,330 | 2,767 | 3,309 |
課金ID数(千個) | 1,196 | 1,446 | 1,709 | 2,024 | 2,440 |
※1 ARR(Annual Recurring Revenue):毎年安定的に得ることができる1年分の収益額
(対象決算期の期末月のKOTSaaS売上高を12倍することにより算出)
※2 月次換算解約率:年次解約率の月次換算値。年次解約率は、調査対象月の1年前に請求があり、調査対象月に請求のない企業を調査対象月までの1年間に解約した企業とみなし、“解約企業の調査対象月の1年前の請求ID数”÷“調査対象月の1年前の全企業の請求ID数”により算出。
※3 利用社数:調査対象月において直近1年間に打刻履歴のある企業数。
※4 利用ID数:調査対象月において直近1年間に打刻履歴のあるID数。
※5 課金ID数:調査対象月において請求対象となる打刻履歴のあるID数。
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