バリュエンスホールディングス 【東証グロース:9270】「卸売業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)経営方針
当社グループは、事業だけではなく地球環境も含めた持続可能性を高め、中長期的な競争優位性を確立するため、「Circular Design for the Earth and Us」をパーパスに定め、「Circular Design Company」の実現を目指しております。顧客とパートナーとの関係を通じて当社グループを中心にモノが循環する世界を実現するため、顧客やパートナーに対して様々な選択肢を提供することで、当社が保有するモノだけではなく、顧客やパートナーが保有するモノの循環を促進し、新たな収益機会を創出してまいります。
(2)経営環境
当社グループが属するリユース業界においては、フリマアプリの拡大・浸透をはじめとして市場が活性化しており、サステナビリティへの関心もあってリユースの注目度は更に高まっております。また、今後も継続的な成長が見込まれており、2023年のリユース市場規模は前年比7.8%増の3兆1,227億円となり、2030年にはその市場規模は4兆円に到達すると見込まれております。(出所:株式会社リフォーム産業新聞社「リユース業界の市場規模推計2024(2023年版)」(2024年9月))
このような状況の中、一般消費者からの買取は依然として競争が激しく、販売面においても、小規模なものも含めると数多くの事業者向けオークションが乱立しております。今後も、新規参入やM&Aなどによる企業再編の動きが加速するものと予想されます。
一方で、海外においては組織的にCtoBtoBのビジネスモデル(一般消費者から買取を行い、リユース事業者に販売するモデル)を展開する事業者は不在であると認識しております。また、世界のラグジュアリーリユース市場規模は2023年に361億ドルであり、2030年には500億ドル以上に拡大すると見込まれております。(出所:BlueWeave Consulting)
上記の認識に基づき、当社グループは、オークションプラットフォームの機能拡充による付加価値向上・他社との差別化により利用を促進していくことに加え、小売販売の強化や不動産・自動車をはじめとした取扱領域の拡大など、当社グループと顧客とのエンゲージメントを高め長期的な関係を築くことで、継続的な収益を生むリカーリング型のビジネスモデルに注力してまいります。また、グローバル展開を加速していくことで、更なる成長を図ってまいります。
(3)経営戦略及び優先的に対処すべき事業上の課題
当社グループは、2027年8月期を最終年度とする3か年の中期経営計画「To the Next Stage : For 2030 Revival Vision」を策定、2024年10月に公表いたしました。「変革期」と定めていた2021年8月期からの4年間で、事業拡大を見据え、積極的に全事業領域において投資を実施してきた結果、今後の成長に向け必要な機能の実装・充実に取り組めたと評価しております。この結果を踏まえ、本中期経営計画においては、収益性向上に向け構造改革を進めるとともに、重点領域と定める小売拡大や海外仕入拡大に資する投資に厳選して対応することを基本方針とし事業拡大に努めてまいります。
[中期経営計画の位置づけ]
本中期経営計画の策定にあたりマテリアリティを再定義し、新たに設定した重点テーマ及びマテリアリティを解決すべく、仕入・オークション・小売・海外・領域拡大・サステナビリティの取組の6つを基本戦略として、2030年の「Circular Design Company」実現に向け、企業価値向上を目指してまいります。
[中期経営計画の概要]
事業戦略は次のとおりであります。
戦略1.仕入
これまでの積極的な出店やM&Aにより拡大した店舗網を基盤に、今後は効率化を重視し、国内直営店の出店は年間5店舗程度といたします。なお、海外パートナー店舗と同形態での出店検討により直営店出店以外での店舗網拡大を図るほか、リピーター施策に注力することでリピーター比率をより高め効率的な国内店舗仕入の拡大を図ってまいります。
また、国内店舗仕入以外にも、リソース配分の最適化により出張買取・宅配買取・オンライン買取に注力するとともに、三越伊勢丹との取組「i’m green」や金融機関等からの顧客紹介などの他業種とのアライアンスの取組により、新規出店に依存しない仕入体制の構築を目指してまいります。
海外においては、これまでの海外展開の経験を踏まえ、店舗出店コストや人件費の高い欧米ではなく、アジアや中東地域においてパートナー店舗を中心に出店を加速するとともに、国内で培ったWEBマーケティングのノウハウを海外でも最大限活用することで、海外における仕入拡大を図ってまいります。
戦略2.オークション
当社グループ最大の強みであるオークションプラットフォームの更なる強化に向け、機能拡充を継続いたします。
パートナー開拓に引き続き注力するとともに、オークション開催回数の増加や時差を考慮した開催時刻の再設定、リペアサービス等の付随サービス拡充により他社オークションとの差別化を図るなど、国内外パートナーの参加拡大に努めてまいります。
オークション委託については、SBAサイト内でパートナー企業名義でのオークション開催ができるSaaS型新機能の提供が貢献し、2024年8月期のオークション委託比率は29.0%となりました。引き続き利用企業の獲得に注力することにより、2027年8月期のオークション委託比率は40%以上を目指してまいります。
また、フルフィルメントサービスの提供によりプラットフォームの付加価値向上に引き続き注力いたします。フルフィルメントサービスは、パートナーがオークションで落札した商品が自動で当社グループのECサイトに出品され、パートナー自身がリソースを割くことなく小売販売を行うことができるサービスであり、当社としては小売委託拡大や手数料収入拡大が期待できることから、収益性の向上につながる取組として推進してまいります。
戦略3.小売
顧客との関係をこれまでの買取のみの一方通行のものから、買い取ったうえで販売もするという循環を描く双方向的なものに変え、顧客のLTV向上を図ってまいります。
小売強化に向け、これまでオークション優先だった商品の振り向けを小売優先に変えることで、小売での販売機会を拡大いたします。具体的には、オークション出品予定の商品についても、出品までのリードタイムを活用し、短期間に限定して当社グループのECサイトに掲載することで、在庫回転期間を長期化することなく小売での販売機会の拡大を図ってまいります。本施策により、当社グループのECサイトへの商品掲載数も増加するため、WEBマーケティングによる集客効果の最大化も期待できると考えております。
また、小売店舗については2024年10月にオープンした「ALLU SHINJUKU」を含む5店舗展開により、従来のリユース店舗と一線を画す店舗設計や商品ラインナップを意識し、他社との差別化を図りながら、国内富裕者層やインバウンド顧客へのアプローチを継続してまいります。当社グループのECサイトにおいては、店舗への商品取り寄せや店舗にご来店いただいた顧客のリピーター化を促進するなど、リアルとオンラインの相乗効果を企図しております。今後は、当社グループのECサイトに加えインバウンド顧客のリピーター化も見据え、越境ECサイトの新たな立ち上げも検討してまいります。さらに、店舗や当社グループのECサイトで販売した商品は「ALLU Fashion Market」上に自動出品された後においても、当社プラットフォーム上で商品がストックされ、循環し、売買のたびに手数料収入を得られるモデルの実現を目指してまいります。
戦略4.海外
海外においては、引き続き買取店舗の店舗網拡大により、仕入拡大に注力してまいります。2024年8月期末時点で海外14か国に展開しておりますが、これまでの海外展開の経験を踏まえ、本中期経営計画においては店舗投資コストや人件費が低いアジア地域や、中東地域での拡大に注力いたします。パートナー店舗を中心に出店を加速することで効率的に店舗網拡大を図るとともに、国内で培ったWEBマーケティングのノウハウを海外でも最大限活用することで、海外における仕入拡大を図ってまいります。2027年8月期末に90店舗、2030年8月期末に150店舗を目標に海外店舗を出店してまいります。
販売においては、富裕者層の多い地域を中心に、パートナーのオークション参加誘致に引き続き注力し、年率10%程度のペースでパートナー開拓を継続してまいります。また、越境ECを活用した小売販売も強化することで、国内小売店舗に来店いただいたインバウンド顧客のリピーター化も企図してまいります。
戦略5.領域拡大
当社グループの中心事業である、ブランド品等とのシナジーが見込める実物資産へと取扱を拡大し、顧客のLTV向上、リピーター化促進を図ってまいります。
取扱ジャンルの拡充のみならず、リペア事業への注力など周辺サービスの拡充も進めており、持続可能な消費を促進しながらも、サービス利用からの顧客流入を図ってまいります。
また、自動車事業にも注力する計画であり、なんぼややALLUからの送客による買取・販売を継続しつつ、整備事業及び「TWISTED※」事業を拡大させてまいります。自動車領域におけるサーキュラーエコノミー実現を目指すとともに、富裕者層との接点拡大及び既存事業とのシナジー創出に努めてまいります。
※TWISTED:JAGUAR LAND ROVER LIMITED社のDEFENDER車両を独自に修復・カスタマイズした車両。国内ではバリュエンスジャパン株式会社が独占販売を行う。
戦略6.サステナビリティ
当社グループの持続的な成長を支える取組として、事業とサステナビリティの更なる統合を図ってまいります。
社会的な課題であり当社グループのマテリアリティの一つでもある気候変動への取組をはじめ、人的資本への取組、取締役会の実効性向上・サステナビリティ経営体制の強化に向けた取組など、E、S、Gそれぞれにおいて施策を推し進めてまいります。
また、スポーツ事業についても、当社が設定した4つの重点テーマを横断して解決する重要な取組の1つであると認識しており、モノや思いをつなぐ新たな循環型経済圏をつくる非財務価値向上への取組として推進し、企業価値向上を図ってまいります。
詳細につきましては、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(対処すべき課題)
① 仕入の効率化
当社グループは、創業時よりWEBマーケティングを中心に集客を行っております。一方で、競争環境の激化により顧客獲得コストが上昇していることから、CRM施策によるリピーター顧客の獲得や集客の効率化が必要であると認識しております。
今後もWEBマーケティングを中心に、潜在顧客・顕在顧客の双方にアプローチしつつ、認知向上によって指名検索を増加させることによる顧客獲得単価の低減や、取扱領域の拡大など顧客とのエンゲージメント強化によるグループ内送客の体制構築と顧客のリピーター化により、効率的な集客を実現できるものと考えております。
また、店舗の繁閑に応じたリソース配分により効率的な店舗運営を行っていくことや、百貨店など他業種とのアライアンスによる買取強化にも注力することなど自社での買取以外の仕入も拡大することで、効率的な仕入成長を目指してまいります。加えて、国内で培ったノウハウを活かし海外でもWEBマーケティングを行うことにより、海外仕入を拡大することにも取り組んでまいります。
② 査定能力の標準化
リユース品は新品と異なり決まった価格が存在せず、相場も一定ではないことから、値付けが非常に難しいという特徴を持っております。当社グループにおいては、研修体制の整備や現場でのOJTを進めることで買取スタッフの能力向上に努めておりますが、これに加え、査定能力の標準化や真贋を判定するための仕組みの構築が重要であると認識しております。
そのため、社内システムの機能改善やデータベースの整備、本部による店舗サポート体制の強化を継続することで、更なる能力標準化と買取の効率化に努めてまいります。
③ オークションプラットフォームの拡大
当社グループの主力販路である「STAR BUYERS AUCTION(以下「SBA」という。)」は、オンラインで開催しており、海外の事業者も数多く参加するグローバルなブランドリユースオークションプラットフォームとして規模を拡大しております。
今後も更に多くの国内外パートナーが参加するプラットフォームとして魅力を高めるとともに、委託拡大に向けた取組も展開することで、GMV(流通取引総額)の拡大を図ってまいります。また、SBAサイト内でパートナー企業名義でのオークション開催ができるSaaS型新機能の提供や、パートナーが落札した商品の保管・小売販売までをワンストップで請け負うフルフィルメントサービスの構築により、更なる収益力向上を目指してまいります。
④ 小売販売の強化
当社グループは2024年8月末現在、実店舗4店舗とECサイトにて、一般消費者に向けた小売販売を行っております。なお、2024年10月に5店舗目となる「ALLU SHINJUKU」を出店いたしました。
今後は、toBの強みを活かしたシームレス出品に加え、海外でのEC販売などグローバルも含めた小売強化に注力してまいります。小売販売の強化はビジネスモデルをリカーリング型に転換するための重要施策と位置付けております。顧客との接点を拡大し、買取をはじめとした当社グループサービスの利用につなげることでエンゲージメント強化を図るほか、ALLUブランド強化によりフルフィルメントサービスにおける小売委託をより多く獲得できるようになり、パートナーとのエンゲージメント強化にも貢献すると考えております。
⑤ 顧客とのエンゲージメント強化
当社グループの事業は、顧客からの買取がビジネスモデルの起点にあるため、より多くの顧客と接点を持つことが事業を拡大する上で重要と考えております。
今後は、買取のみならず、小売販売をはじめとするtoCサービスの拡大、不動産・自動車・リペアなど取扱領域の拡充やグループ内送客の体制強化などにより、顧客とのエンゲージメントを高めてまいります。これによりグループ全体で顧客との長期的な関係を築くことで、継続的な収益を生むリカーリング型のビジネスモデルへと転換していく方針です。
⑥ グローバル展開の加速
当社グループは、香港をはじめ欧米、東南アジア、中東等に子会社を設け、現地におけるSBAパートナーの開拓と、買取店舗の展開を進めております。買取においては直営のみならず、パートナーとの協業による出店に注力し、当社グループとしてリスクを最小限にした店舗展開を行っております。国内リユース市場における競争が依然として激しい現状において、リユース市場が成長しており、かつ競合が比較的少ない海外へとビジネスを拡大していくことが重要であると認識しております。
国内で培ったWEBマーケティングのノウハウを海外でも活かすことにより、CtoBtoBのビジネスモデルのグローバル展開と、グローバルも含めた小売強化を行うことで、更なる規模拡大を図ってまいります。
⑦ サステナビリティの取組強化
当社グループのメイン事業であるリユースは、循環型社会における重要な取組の一つであり、リユース事業をグローバルに展開していくことが、持続可能な社会の実現、ひいては当社グループの持続的な成長につながると考えております。TCFD提言に基づく情報開示をはじめ、リユースによる環境フットプリントの削減貢献量を可視化したResale Impactの事業ブランドへの展開や、カーボンニュートラル達成に向けた国際的イニシアチブの認証取得などの取組を行っております。
また、コーポレート・ガバナンスの実践・強化により経営の透明性・公正性・迅速性の維持・向上を図り、全てのステークホルダーとの対話を通じて、持続的な成長と中長期的な企業価値及び株主価値の向上に取り組んでおります。
今後も循環型社会の実現を牽引する存在として、サステナビリティを経営戦略の中核に据え、環境や社会、ガバナンスに配慮した取組を積極的に行っていくことで、持続的な社会の実現と企業価値向上を目指してまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2027年8月期を最終年度とする3か年の中期経営計画「To the Next Stage : For 2030 Revival Vision」の戦略におけるKPIとその目標値は以下のとおりであります。
<中期経営計画におけるKPI及び目標値>
戦略1.仕入 | 2024年8月期実績 | 2027年8月期目標 | |
| なんぼや以外(海外含む)の仕入比率 | 16.1% | 25%以上 |
| 国内買取店舗数 | 140店舗 | 240店舗 (注)1 |
| 買取顧客リピーター比率 (注)2 | 46.8% | 50%以上 |
戦略2.オークション | 2024年8月期実績 | 2027年8月期目標 | |
| オークション委託比率 | 29.0% | 40%以上 |
戦略3.小売 | 2024年8月期実績 | 2027年8月期目標 | |
| 小売売上高比率 | 16.7% | 25%以上 |
戦略4.海外 | 2024年8月期実績 | 2027年8月期目標 | |
| 海外買取店舗数 | 46店舗 | 90店舗 (注)3 |
| 海外仕入高成長率 | ― | CAGR 25%以上 |
| 海外パートナー増加率 | ― | 年率10%以上 |
戦略5.領域拡大 | 2024年8月期実績 | 2027年8月期目標 | |
| リペアサービス提供件数 | 約4万件 | 5万件以上 |
(注)1.国内買取店舗数の目標値につきましては、2030年8月期の出店店舗数であります。
2.2回目以降買取成立顧客ユニークユーザー数÷買取成立顧客ユニークユーザー数
3.2030年8月期の海外買取店舗数の目標値は150店舗であります。
詳細は、当社コーポレートサイト(https://www.valuence.inc/ir/investor/plan/)をご覧ください。
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