企業ハルメクホールディングス東証グロース:7119】「小売業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、「50代からの女性がよりよく生きることを応援します」を経営理念とし、シニア女性に「これからのために生きてきた」と感じて頂けるよう、以下のビジョンを掲げ、経営を行っております。

① シニア女性がよりよく生きるために必要な、さまざまなコンテンツを厳選して提供します。
② バリューチェーンのすべてを自社で行い、個々のお客様に最適なコンテンツを提供します。
③ 単にコンテンツを届けるだけでなく、シニア女性が安心・信頼できるコミュニティを作ります。
④ 当社グループのプラットフォームを活用して、自社コンテンツのみならず、他社の優れたコンテンツを厳選して提案し提供します。
⑤ グループ社員には、仕事の楽しさ・やりがいと生活の安定を提供します。

 経営理念の実現のために、既存事業領域である「情報コンテンツ」「物販」「コミュニティ」の一層の強化に加え、終活を始めとした「サービス分野」への進出を開始しています。また、SDGsの社会課題の中でも、シニア女性を心身ともに健康にするための商品・サービスづくり、気候変動等の環境への配慮のためのリサイクルや環境にやさしい商品・サービスづくりに積極的に取り組んで参りたいと存じます。こうした取組みを実現するためにイノベーションを生み出す組織能力をより強化し、持続的な成長を可能にする事業ポートフォリオを構築していきます。

(2) 目標とする経営指標

 当社グループは、シニア女性が人生のさまざまな場面で信頼し頼りにしてくださる、シニア女性向けビジネスNo.1企業を目指しております。そのため、現時点で当社グループが重視する経営指標は読者数(注1)と顧客数(注2)であります。

(注) 1.雑誌「ハルメク」の購読者数

2.当社グループのサービスを1年間で1回以上利用したことのある顧客数

(3) 経営環境、経営戦略等

① 経営環境

 当社グループが対象としている50歳以上の女性人口は2020年の32百万人から2030年34百万人とゆるやかに増加していくことが見込まれています。(出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年)」)

 また、当社主要顧客である50歳以上の金融資産は約1,600兆円であると推計しており、50歳未満の金融資産約400兆円を大きく上回り、負債も少ないという特徴もあります(出所:日本銀行「資金循環統計」(2023年3月末)、内閣府「令和5年版高齢者白書」から当社推計)。

 当社グループの情報コンテンツが属する紙の書籍・雑誌市場は2023年の市場規模では1.0兆円(前年比6.0%減)、紙の雑誌は前年比7.9%減と下げ止まっておらず、紙を前提にしたコンテンツ提供は厳しい状況が続いています。(出所:出版科学研究所「出版指標」)

 また、当社グループの物販が属する通販の市場規模は2022年度は12兆7,100億円(前年比10.9%増)と増加傾向が続いています。(出所:日本通信販売協会「2022年度通販市場売上高調査」)


 シニアビジネスとして、ケアシニアサービスは増えつつありますが、ハルメクの事業領域は市場ポテンシャルが大きい「プレシニア~アクティブシニア市場」です。


② 顧客基盤

 ハルメク事業顧客の平均年齢は73歳ですが、その顧客年齢分布は以下のとおりです。

(ハルメク事業における顧客年齢分布)


(注) ハルメクは2024年3月期に一度でもハルメク事業のサービスを利用したことがある顧客の年齢

 ハルメク365は2024年3月末のMAU年齢別構成比を適用して推計したもの

 ハルメク事業では、これらのシニア女性の生の声を聴きつつ、そのニーズを充足するサービスの提供に努めてまいりました。その結果として、顧客数(注)は2020年3月期の44万人から2024年3月期の93万人と4期にわたって年平均成長率+20%成長を実現しております。


(注) ハルメク事業のサービスを1年間で1回以上利用したことのある顧客数(ユニークユーザー数)

 雑誌「ハルメク」の新規顧客獲得チャネルも従来の新聞・折込等の紙媒体からTVやWeb等への多様化も進んできています。


(注) 各事業年度において新規に契約した顧客につき、契約時に得た認知媒体の回答を集計

 また、ハルメク事業の顧客の金融資産は、非顧客と比較して多いという特徴があります。これは、ハルメク事業が提供する商品やサービスの質が支持され、中高価格帯のものでも販売力があることを表していると考えられます。このため、ハルメク事業の顧客数を増加させることは、収益性の向上につながることを意味しており、当社グループとしては如何にハルメク事業を強化するかが事業展開上の要点となります。

(ハルメク事業の顧客の金融資産)


(出所) 2023年8月に郵送・Webにて50歳~79歳の全国の女性の顧客929名・非顧客6,048名に対して実施した「ハルメクブランド調査2023」より抜粋

 ハルメク事業の強みは、「情報コンテンツ」、「物販」及び「コミュニティ」の3つの事業の相乗効果によるものですが、顧客数の継続的な増加に向けてこの長所をさらに強化する必要があると考えております。

③ 経営戦略
(ア) 顧客エンゲージメントの更なる向上

 当社グループの事業の基盤は、「思い込みを捨てる」「わかった気にならない」というポリシーに立脚してお客様の生の声を収集し、それらを活用することにあります。このポリシーに至った経緯として、シニア女性に対する以下のような「思い込み」を排除したことで当社グループの事業が成長軌道に乗ったという実体験が存在します。

・ 時間やゆとりがある

・ おしゃれや美容への関心が薄い

・ 和食が好き

・ 恋愛しない

・ 割引やお得になびきやすい

・ 孫が大好き

 過去には事業を進めるにあたりこのような思い込みに基づき当社グループの一方的な方針で顧客へサービスを提供していた時代がありました。しかしながら、例えば雑誌「ハルメク」の購読部数の伸び悩み等が見られるようになり、お客様の生の声の重要性に気付くに至りました。それ以降は「思い込みを捨てる」「わかった気にならない」のポリシーのもと、顧客エンゲージメントを重視した事業を推進しております。お客様の生の声を収集するための具体的な施策には以下のようなものがあります。

・ お客様からのはがき(雑誌によるもの:月平均約2,000枚、商品によるもの:月平均約1,000枚)

・ お客様センターへ寄せられる声(月平均約25,000件)

・ アンケート調査(紙面調査15回、インターネット調査56回)

・ ワークショップ等のインタビュー(70回)

・ モニターによる試作品の使用

・ 顧客宅の訪問調査

・ 当社グループの社員によるイベントへの参加

(注) 2024年3月期実績

 さらに、「ハルトモ」と呼ばれる雑誌「ハルメク」の企画や商品開発等をサポートするハルメクファンの関与も当社グループの事業の質を高めるものとなっております。

 これに加え、顧客理解を徹底するために「生きかた上手研究所」を設置し、その品質を担保しております。「生きかた上手研究所」では、PDCAの段階毎にハルトモを活用した調査やテストを実施し、事業部門がお客様の信頼を裏切らない・期待を超える商品・サービスの提供ができるよう、調査支援をはじめとしたシンクタンク活動を行っております。具体的には、「ハルトモ」約4,600名(2024年3月末時点)を活用し、以下のPDCAサイクルを実行しています。

企画

・グループインタビュー(生活調査等)

・コンセプト受容性調査(注)

制作・開発

・独自の厳しい品質基準への適合性の確認

・サンプルテスト

販売

・テストマーケティング

評価

・お客様の声ハガキ

・満足度調査アンケート

・クレームゼロ会議

改善

・顧客インサイトを組織知として共有・蓄積

(注) コンセプト受容性調査とは、新商品やサービスのアイディアが複数存在する際に、どの案が顧客に一番受け入れられるかを検証する調査方法のことをいいます。

 これらの施策により当社グループの顧客エンゲージメントは高水準で維持できていると認識しております。

 現実として、当社グループのサービスを利用したお客様の満足度に関するアンケートでは、以下のような 結果を得られています(出所はいずれも当社アンケート)。

(満足度推移)

 雑誌                            通信販売

(注) 1.当社が2023年8月に郵送・Webにて50歳~79歳の全国の女性の顧客929名・非顧客6,048名に対して実施した「ハルメクブランド調査2023」より抜粋しております。

2.5段階評価で「大変よかった」及び「よかった」の比率の平均値の推移を記載しております。

 講座や旅行

(注) 開催の都度調査を実施しており、5段階評価の平均値の推移を記載しております。

 これらの施策の継続及び強化を図ることにより、顧客エンゲージメントをより強固なものとする必要があると考えており、ひいてはそれが当社グループの継続的な成長に寄与することとなります。

(イ) クロスセル及びLife Time Value(LTV)の強化

 前述のとおり、当社グループの強みは、「情報コンテンツ」、「物販」及び「コミュニティ」の3つの事業が連動し相乗効果を生んでいることにあります。これを裏付けるものとして、クロスセル率及びLTVの状況にも着目しております。

 クロスセル率(注1)及びLTV(注2)は以下のようになっており、各数値は良好であると評価しております。他方で、これらの数値は引き上げの余地があるとも考えており、顧客エンゲージメントの強化により、これらの数値の更なる上昇を目指します。

(注) 1.雑誌購読者が購読開始月から通販を一度でも利用した割合の月次累計(2023年3月期に獲得した12冊コース新規読者)

2.雑誌購読者の月次LTV(CFベース)=雑誌購読料(年)-雑誌費用(年)-初回獲得コスト+月次売上(雑誌除く)-原価(雑誌除く)-受注・物流・決済手数料-カタログコスト(印刷・配送)の累計(2023年3月期に獲得した12冊コース新規読者)

(クロスセル率、雑誌読者が購読開始月から通販を利用する率)


(LTV、雑誌購読者のキャッシュ・フローベースの月次LTV)


(ウ) 3つの事業の進化及びサービス領域の強化

「情報コンテンツ」、「物販」及び「コミュニティ」の3つの事業については、現状に満足することなく強化を図ってまいります。「情報コンテンツ」については、リッチコンテンツ(注1)化を企図しサブスクリプション型のサービス「ハルメク365」を立ち上げました。「物販」については、現在のオリジナル商品やナショナル・ブランドの取り扱いに加え、他社又は他ブランドとのコラボレーション商品の取り扱いを強化するほか、シェアリングサービスにも着手しています。加えて、当社ブランドの靴、インナーのような特定商品の事業展開も進めてまいります。「コミュニティ」については、例えば習い事のマルチレイヤー組織のような自律成長するコミュニティの仕組みを開発しております。

 これらに加え、ヘルスケア・終活分野の強化を含むシニア女性のニーズにより広く応えるサービスの導入を進めてまいります。例えば、相続、金融、保険、住宅、不動産、お見合い、婚活等のサービスを想定しております。これらのサービスは、自社開発によるだけでなく、他社又は他ブランドとのコラボレーションも含みます。

(注) 1.リッチコンテンツとは、複数の事業が連動し相乗効果を生み出すコンテンツのことです。情報コンテンツをリアルやオンラインで体験する場を設ける事例などがあります。


(エ) 新規事業(ハルメク365)

2022年8月より、サブスクリプション型の動画及び音声サービスをローンチし、情報コンテンツを強化いたしました。本サービスの目的としては、お客様のデジタルシフトに対応、プレシニア層(注)の獲得強化、より魅力的なコンテンツの提供、ハルメクで扱っている全ての商品・サービスの入口であるポータルサイト化、情報コンテンツビジネス単体の収益性強化等が挙げられます。サービス内容は以下のとおりです。


(注) 当社グループでは50~64歳をプレシニア層と定義づけております。

(オ) 既存ビジネスの更なる拡大とB2Bビジネスの強化

2022年8月に開始したハルメク365では、様々な顧客データを収集しています。ここで蓄積した顧客データを活用し、お客様の理解をより深化させ自社サービスの拡大と㈱ハルメク・エイジマーケティングで事業展開しているB2Bビジネスを他社とのアライアンスを含め、強化してまいります。ここでのデータとは基本属性、興味関心分野・テーマ、購読・購入履歴、接点履歴、価値観・趣味等を指します。これにより、情報コンテンツの強化、物販及びサービスの拡充、お客様の興味ないし関心別のアプローチ強化が当社の既存ビジネスで可能となり、コミュニティの多層化及び充実等によって得られる興味ないし関心がある記事のデータ、商品及びサービスの利用データ並びにロイヤリティの向上が期待できます。シニア向けの事業展開を希望する企業に対しては、エンゲージメントの強いシニア女性へのアクセス、顧客ニーズ及びインサイト並びにお客様の声に基づく継続的な改善についてのデータを提供し、当該企業に対するコンサルティングサービスの提供だけでなく、シニア向け新規事業の共同企画、商品及びサービスの共同開発並びに顧客接点又は販売チャネルの提供を受けることが可能となります。


(カ) 既存事業の収益性の強化及び先行投資事業の利益の創出

 ハルメク事業のうち、「情報コンテンツ」、「物販」及び「コミュニティ」については既存事業と位置付けております。また、店舗、靴、新聞単品外販、ハルメク365、終活、株式会社ハルメク・エイジマーケティングについては先行投資事業として位置付けております。既存事業及び先行投資事業の収益性は以下の状況です。


(注) 1.上記の収益性の情報はハルメク事業の内訳を表示したものであり、売上高合計額、EBITDA及びEBITDA率並びにこれらの内訳額については、PwC Japan有限責任監査法人による監査を受けておりません。なお、従来、当社が監査証明を受けているPwCあらた有限責任監査法人は、2023年12月1日付でPwC京都監査法人と合併し、名称をPwC Japan有限責任監査法人に変更しております。

2.21/3期については、4月1日から8月3日までの(旧)株式会社ハルメクホールディングスを含む当社グループの数値と8月4日から3月31日まで(第2期)の数値を合算し、12ヶ月数値になるよう調整したものを記載しております。

3.18/3期から20/3期までの各数値は、(旧)株式会社ハルメクホールディングスの連結指標を記載しております。

4.当社ではEBITDA=営業利益+償却費と定義しており、各事業から生み出されるキャッシュ・フローの規模をより適切に把握することができるため、各事業の収益性を測るための指標として記載しております。

 現在は「情報コンテンツ」及び「物販」の利益をもって先行投資事業の費用を賄っている状況です。このため、先行投資事業の早期の利益の創出はもちろんのこと、既存事業の収益性を高めることにより、当社グループの利益成長を推進してまいります。

(キ) セグメント別の業績

 当社グループのセグメント別の業績については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.事業セグメント」に記載のとおりです。2024年3月期において、ハルメク事業及び全国通販事業は共に増収減益となっており、ハルメク事業については増収を維持しつつ、広告効率の低下に伴う収益力の回復を図ること、全国通販事業においては新規顧客獲得による成長の基盤づくりを行うことがそれぞれ課題となっております。

 ハルメク事業においては、現時点の収益源は物販です。雑誌「ハルメク」により獲得した読者の方々に雑誌の世界観を実体験して頂けるような商品を販売することで売上を伸ばしております。2024年3月期における収益性の低下に対しては、広告戦略の見直しと、効率的なカタログ配布手法の確立を通じ収益性の改善を図ります。変わらず重視していることは「シニア世代の信頼を裏切らない」ことです。品質管理を最重要視し、過剰表現は避け、一時的ではなく長く売れるものを中心にオリジナル商品を開発し販売することを基本戦略としております。雑誌と物販が事業推進における両輪でありますが、他社とも協業しながら雑誌と連動した講座(オンライン/リアル)やイベント、旅行等を企画・開催することにも取り組んでおり、シニア女性に対してあらゆるものを提供するプラットフォームビジネスとして、事業拡大に注力しております。

 全国通販事業の主要顧客はハルメク事業同様にシニア女性となります。ただし対象は「60歳代以上の女性」としているなど、ややハルメクよりも年齢が高い方々にご支持頂いているほか、ハルメク事業に比べるとお求めやすい価格帯での商品提供を行っております。また、ファッション/アパレル商品をハルメク・全国通販ともに主力商材として販売しておりますが、ナチュラル志向の商品が多いハルメクに対し、全国通販の商品はよりトレンドを重視したものとなっているなど、取扱商品のテイストが異なることも両事業の違いとなっております。

 全国通販事業の場合、ハルメク事業のようなコンテンツによる集客はありませんが、1970年の創業以来ご支持頂いてきたお客様が多くいらっしゃることから、通信販売でありながらも外商営業的な要素も取り入れた独自のスタイルで「今いるお客様を最大限に大切にする」という「顧客満足経営」を基本戦略とし、その中で経営基盤を確立したうえで、顧客理解に基づき商品選定やお客様のライフスタイルを提案するカタログ誌面の魅力の向上及びサービスレベルの向上により、新規顧客獲得を進め、事業拡大を図ってまいります。

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 人材の確保・育成

 当社グループは今後の事業成長に向けて、優秀な人材の確保・育成が大きな課題となっております。2024年3月期に多くの人材を採用したことを受け、今後は魅力的な人事制度や社内外の教育・研修により優秀な人材の維持・育成に重点を置いて取り組んでまいります 。

② 新規事業の展開

 当社グループは将来に向けての持続的な成長を実現するため、シニア女性をターゲットとしたプラットフォームビジネスの拡大に注力しております。そのプラットフォーム上で新たに取り扱う新規事業を生み出すため、株式会社ハルメクにコミュニティ事業推進室を設置している他、他社とのアライアンスも含めて、新規事業を生み出す様々な仕組みを組み込んでおります。これらの仕組みを生かし、当社グループがプラットフォーマーとして飛躍できるよう、取り組みを進めてまいります。

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