ハウス食品グループ本社 【東証プライム:2810】「食品業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、次の3要素をグループ理念体系と位置づけております。グループ理念体系により、めざす方向性を明確にし、一貫性をもった事業活動による成長を図っております。
『創業理念』
日本中の家庭が幸福であり、そこにはいつも温かい家庭の味ハウスがある。~幸せな家庭のマーク~
『グループ理念』
食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。
『ハウスの意(こころ)』
社是(「誠意・創意・熱意を持とう。」)・ハウス十論で構成
(2)経営環境
当社の経営環境は、原材料価格の高騰、経済活動の再開に伴う市場環境の変化、インフレ進行に伴う消費者の行動変容など事業環境の変動は大きく、引き続き先行きの不透明な状況が続いております。また、生産労働人口の減少など外部環境の不確実性が増しており、人材の多様性を高めることや、様々な人材が集まることで生じる価値観の違いをシナジーにしていくことが不可欠となってきております。さらに、2023年に気温・海水の温度が史上最高となるなど環境問題は深刻化しており、世界各国でCO2削減目標の引き上げが実施されるなど、企業は環境問題への対応強化が求められております。
このような状況下で、当社グループにおいては、一部製品・サービスで価格改定を実施し、足元の環境変化に対応するとともに、将来のあるべき姿を見据え、バックキャスト視点でクオリティ企業への変革を推進しております。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
当社グループは、「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。」というグループ理念の考え方のベースとなる、一企業市民として果たすべき「お客様に対して」「社員とその家族に対して」「社会に対して」という「3つの責任」を企業活動の柱としております。
第七次中期計画では、「3つの責任」全てにおいて明確な行動計画を設定しクオリティ企業への変革に向けた取組を加速してまいりました。「お客様に対して」では、「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」「付加価値野菜系」の4つのバリューチェーン(以下「VC」。)を当社グループの価値提供領域と定め、成長領域・新規領域へ経営資源を投下するなど各々のVCの強化に取り組んでまいりました。「社員とその家族に対して」ではダイバーシティの実現をテーマに掲げ「属性」・「経験」・「適性」の切り口で施策を展開し、ダイバーシティを高めるための社内インフラ整備を推進したほか、「社会に対して」では「循環型モデルの構築」と「健康長寿社会の実現」をテーマに掲げ「人と地球の健康」の実現に向け、VC全体で社会課題の解決に向けた取組を進めてまいりました。
2024年4月からスタートする第八次中期計画では、”「食で健康」クオリティ企業への変革<第二章>グローバルなVC構築で成長をめざす”をスローガンに、グローバルにプレゼンスあるクオリティ企業をめざしバックキャスト視点で「3つの責任」の取組を推進してまいります。「お客様に対して」では、「食で健康」をグローバルに届けるためVC経営の実現をめざすことを、「社員とその家族に対して」では、多様性を力に変えクオリティ企業への取組を強力に支えることを、「社会に対して」では、グローバルな企業活動で生じる環境負荷は企業の責任として取り組むことを、テーマに掲げました。
①お客様に対する責任
「食で健康」をグローバルにお届けするために「1:VC経営による成長加速」「2:VC体制の構築」「3:共創による新価値創出」に取り組んでまいります。
・VC経営による成長加速およびVC体制の構築の取組
「スパイス系VC」においては、「顧客接点の拡大(ヨコ)」と「VC統合(タテ)」を意識した、VC最適の戦略遂行と体制構築に取り組んでまいります。「顧客接点の拡大(ヨコ)」のテーマは、ハウス食品株式会社が国内市場からグローバル市場に取組領域を拡大するなど、事業会社がリードして推進してまいります。一方、「VC統合(タテ)」のテーマは、同社が顧客接点の拡大に向けて製品化プロセスの変革などに取り組むほか、調達・生産に関わる戦略機能を一元化し事業戦略との融合を推進するべく「スパイスVC調達生産戦略本部」を新設するなど、当社とハウス食品株式会社が一体となり推進してまいります。
「機能性素材系VC」においては、健康戦略素材を軸としたグローバルシフトの推進に取り組みます。ビタミン事業は、東南アジアでのコンシューマー市場拡大に向けて、既存のタイでは「C-vitt」に次いでマルチビタミン領域へ展開するほか、ハウス食品グループアジアパシフィック社の機能強化によりフィリピンやベトナムへの新市場開拓を加速します。乳酸菌事業は、2023年3月期より海外展開を重点化する体制に移行しており、欧米でのB to B事業に注力し、川上型の高収益なソリューション事業モデルを確立してまいります。
「大豆系VC」においては、長期視点で伸長するPlant Based Food市場におけるプレゼンス拡大と、生産能力強化を契機とした売場奪還など対競合戦略の実行に取り組みます。また、大豆系VCを牽引するエンジンとなるべく、中間持株会社のハウスフーズホールディングUSA社がハウスフーズアメリカ社とキーストーンナチュラルホールディングス社の機能統合を進めるとともに、自社の経営機能を段階的に強化してまいります。
・共創による新価値創出
第七次中期計画では、新規事業公募プログラムの第1期採択事業案である「Kidslation」・「タスミィ」が提供価値の検証を進めたほか、新規事業の位置づけである「付加価値野菜系VC」では、ビジネスモデル構築に向けて株式会社農業総合研究所と資本業務提携を締結しました。第八次中期計画では、引き続き社外パートナーとのビジネスモデル構築に向けて取り組み、新規事業を次世代のグループの成長力へと変換してまいります。
②社員とその家族に対する責任
生産労働人口の減少など外部環境の不確実性が増しており、人材の多様性を高めることや、様々な人材が集まることで生じる価値観の違いをシナジーにしていくことが不可欠となってきているなか、「ダイバーシティの実現」に向け、「属性」(女性の活躍支援、障害者雇用推進など)・「経験」(グローバル人材の育成、キャリア採用の強化など)・「適性」(多様な経験と組み合わせた新たな人材育成体系の構築)の3つの領域で施策を展開するなど、多様性を受け入れ、チャレンジを後押しする組織風土づくりを推進してまいりました。その結果、ダイバーシティを高めるためのインフラ(制度・施策)は整いつつありますが、グローバルなVC構築に向けてより一層、多様な人材が個性を発揮することに加えて、組織の壁を超えてダイナミックに協働・共創を進めることが求められます。
第八次中期計画では、多様性を高めるためのインフラ整備だけでなく、これらの多様性を組織内で受け入れ、多様性をグローバルなVC構築の推進力に変換していくために、5つの取組を実施してまいります。
・「5つの取組」
1)グループ内外の人材の流動性を高めるオープンな仕組みづくり
2)多様性を受け入れ、チャレンジを後押しする組織風土づくり
3)主体的な自己変革を支援、育児・介護等のサポート体制の充実
4)共創を意図した関係性や場の創出
5)VC戦略と社員の活躍を同時実現する、組織構造と人材配置の探求と実践
③社会に対する責任
当社は、食に関わる企業として「人と地球の健康」の実現に向け、VC全体で社会課題の解決に取り組んでいます。第八次中期計画では、循環型モデルの構築への取組を加速するべく、「ハウス食品グループ長期環境戦略2050」を策定し、重要課題を「気候変動への対応」、「資源循環社会の実現」と定めました。グローバル展開に伴い生じる環境負荷に対して責任を持って取り組んでまいります。
・気候変動への対応
2050年カーボンニュートラルをめざしてCO2排出量削減の指標を原単位から総排出量へ変更し、CO2排出量削減に向けた取組を加速します。Scope1・2では、多拠点一括エネルギーサービスの活用や再生可能エネルギーの拡充などに取り組むほか、Scope3では、原料調達時や家庭内調理時の排出量削減に向けて重点テーマを新たに設定するなど、サプライチェーン全体で排出量削減を図ります。また、環境投資基準の刷新により、証書購入・炭素税 など将来的に発生すると予測される費用を投資判断に組み込むことで、削減効果の高い削減テーマへの投資を加速してまいります。
・資源循環社会の実現
廃棄物を「減らす」だけでなく、「活かす」、「戻す」の方向も含め限りある資源を有効活用してまいります。廃棄物・副産物においては、発生抑制(減らす)のみ注力するのではなく、発生してしまったものの有価物化(活かす)の両輪で削減を進めてまいります。また、新たに注力する領域として製品包装など食品メーカーとして影響が大きい領域としてプラスチックゴミの削減にも取り組んでまいります。また、「水枯渇リスク地域」 を中心に、生産拠点での水の効率的な使用に努め、節水に配慮した設備の導入や、各国の法律や地域の仕組みに準じ、きれいな状態にして自然環境に戻す取組にも注力してまいります。
●財務戦略
第八次中期計画では、営業キャッシュ・フローに加えて新たな資金調達方法を活用し、VC構築に向けて積極投資を継続するほか、資本コストを意識した経営を推進するべく、政策保有株式の縮減など資本効率を高めるとともにその原資を株主還元に充当いたします。事業投資については、4系列VCの成長領域へ500億円、既存領域へ150億円、デジタル変革・環境領域へ50億円の、総額700億円を計画しております。資本コストを意識した経営については、利益還元方針を総還元性向40%以上、配当金は46円以上を安定して継続配当とすることに改定いたしました。それを基に、配当と並ぶ株主還元施策として政策保有株式150億円の縮減(2024年3月期比30%縮減)に取り組み、それを原資とした自己株式の取得を150億円計画しております。
事業投資目標
投資領域 | 第八次中期計画 | 第七次中期計画実績 |
成長領域 | 500億円 | 339億円 |
既存領域 | 150億円 | 157億円 |
DX・環境領域 | 50億円 | 50億円 |
合計 | 700億円 | 546億円 |
自己株式取得計画
| 第八次中期計画 | 第七次中期計画実績 |
自己株式取得 | 150億円 | 120億円 |
●コーポレート・ガバナンスの強化
当社グループは、内部統制システムをコーポレート・ガバナンス体制の充実と企業理念・経営目標の実現・達成のための仕組みととらえ、企業価値のさらなる向上と持続的な発展をめざし、グループ経営の視点でリスクマネジメント、コンプライアンスを含めたガバナンス体制の構築と運用の強化を図っております。
当社は、監査等委員会設置会社であり、監査等委員である取締役が取締役会における議決権を有することにより、監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンス体制を一層充実させることを目的としております。監査等委員会は、監査等委員である取締役5名(うち、社外取締役4名)で構成され、取締役の職務の執行および取締役会の決議の適法性、妥当性の監査・監督を行っております。
取締役会は取締役12名(うち、社外取締役4名)で構成され、当社グループの重要な業務執行を決定するとともに、他の取締役およびグループ会社の業務執行を監視・監督しております。なお前期より、取締役会の運営強化と実効性向上を目的として、全取締役へのアンケート形式による取締役会実効性評価を開始しております。
取締役会の任意の諮問機関として、委員の過半数を独立した社外取締役で構成し、独立社外取締役を委員長とする指名諮問委員会および報酬諮問委員会を設置し、取締役の選任・解任、報酬決定の手続きにおいて、客観性と透明性を確保しております。また、ガバナンス強化の一環として2022年1月に経営会議の諮問機関である投資委員会を設置いたしました。4系列VCの構築に欠かせない資本提携を目的とした合併や買収等において、成長投資資源をより有効に活用するために、案件起案時の審議フェーズと、投資実行後のモニタリングフェーズの両面でチェック機能を強化することで企業価値向上につなげております。
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