ハイブリッドテクノロジーズ 【東証グロース:4260】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。また、文中の将
来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、顧客の課題を解決する適切なDXの推進によって、様々な業界から社会を変革しようとする顧客の挑戦を支え、顧客の競争優位性を高めるパートナーとなり、顧客や、当社事業を共創する全てのステークホルダーと共に「新しい景色の創造」を達成します。
日本ならびに世界が大きな転換期にある中、当社グループの起源であるベトナムと日本の両国がWin-Winとなる形で、顧客と共に成長し、顧客と共に新しい景色を創造し続けることで、今後とも企業グループとしての持続的な成長を目指してまいります。
(2)経営環境
当社の事業領域であるDX市場、情報サービス産業市場は、新型コロナウイルス感染症によるリモートワーク、非対面ビジネスへの移行が収束した後も、企業の競争優位性に直結するデジタル化、DX化への関心の高まりを背景に、様々な産業におけるIT投資意欲の拡大による、継続的な拡大が期待されております。一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発表している「企業IT動向調査報告書2024」によると、調査対象となった企業の90%が前年と同等かそれ以上のIT予算の増額を予測しており、その大きな理由として業務のデジタル化対応、基幹システムの刷新を挙げております。
また、これらの需要を充足するパートナーとしての、当社開発拠点であるベトナムの親和性に関しては、「第1 企業の概況 3.事業の内容 (4)当社グループの特徴・強み」として「1)日本とベトナムのシナジー c.DX推進パートナーとしてのベトナムの優位性」に記載の通りであります。
加えて、近年はベトナム政府が2030年までのDX推進計画を含む「国家DXプログラム」を掲げる等、ベトナム国内においてもDX推進需要が高まっております。Google、Temasek、Bain & Companyが公表したe-Company SEA2023には、2023年におけるベトナムのデジタル経済規模は2023年で300億ドル、2025年までには450億ドル、2030年には東南アジアで2番目に高い成長率で最大2,000億ドルに達する試算が発表されており、エンジニアやITリソースの源泉に留まらず、ベトナム国内の需要も、今後大きな成長が見込める市場と考えられます。
(3)経営戦略
当社グループは、上述の経営環境に対し、既存事業の開発対応領域の拡大、提供可能なソリューションの拡大、サービスを提供するマーケットの拡大の3つの軸での事業成長を図ってまいります。
①既存事業の開発対応領域の拡大
当社は従来、顧客の開発需要に対し、要件定義等の上流工程から、実装、保守までを一気通貫で受託する体制を整備しており、M&Aを中心とした戦略で、その対応領域を拡大してまいりました。今後もこれらの戦略を継続し、より上流のDX戦略領域のコンサルテーションや、サービスローンチ後のマーケティング等の戦略領域等、顧客の事業戦略をより幅広く、力強く支援できる体制を築くことで、既存事業の拡大、特にストックサービスの規模拡大を図ってまいります。
②ソリューションの拡大
現時点における当社グループが顧客に提供できるソリューションは、Web・アプリ開発が主流となっており、M&Aや採用を通じて、このソリューション領域を拡げることが、2つ目の経営戦略であります。具体的には、現在ベトナム合弁会社や、外部パートナーとの業務提携を通じて提供しているSalesforceや、AWS等のインフラ構築、クラウド、ERPコンサルティング等の開拓を図ってまいります。当社取締役の衣笠嘉展は、自身の経歴の中で先述の領域において豊富な知見を有していることから、同人がこの成長軸をけん引することで、着実な事業成長を推進してまいります。
③マーケットの拡大
経営戦略の3つ目は、当社の従来の日本国内顧客を対象としたマーケットに加えて、海外の市場を開拓していくものであります。具体的には、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境」に記載の通り、昨今DX化や、その関連サービスの需要が高まっているベトナム国内において、当社の日本とベトナムのリソースを活用したハイブリッドな事業体制や、同国内における高い認知度を活用した、DXサービスのディストリビューション事業への参入を推進しております。本件においては、2024年11月14日付で、本事業を営むベトナム合弁会社の設立、並びに販売代理となるパートナーとの業務提携に基本合意いたしました。
上記の成長戦略に資する人材採用、M&A等を戦略的に実施することで、多角的な事業成長を推進してまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループの売上収益は、約89%がストックサービスで構成されていることから、同サービスを維持、拡大させることによって、経営を安定させると共に、経営戦略を速やかに達成できる経営基盤を築くことが、経営上の重要目標であると考えております。新規プロジェクトの獲得によるストックサービス件数の増加、及び既存顧客からの増員、新たなプロジェクトによるチームラインの増加、上流工程からの介在強化を通したストックサービス単価の向上により、市場を拡大し、ノウハウを蓄積するとともに、人材・新規技術獲得等への投資を継続することで、企業グループとしての持続的な成長を図ってまいります。この達成状況を図る指標として、当社はストックサービス件数とストックサービス単価を重要指標としております。
①2024年9月期までの管理指標
2024年9月期までにおいては、ストックサービスの継続性を重視し、ストックサービス件数を「各事業年度末時点(あるいは四半期末時点)で、6カ月以上の契約を締結している長期ストックサービス案件の数」、ストックサービス単価を「各事業年度末時点(あるいは四半期末時点)のストックサービス案件の売上収益の合計/プロジェクト数」で算出した平均単価としており、その推移は下図の通りであります。
[事業年度ごとのストックサービス件数とストックサービス単価]
(注1)ストックサービス件数の指標は、ストックサービスにて受注したプロジェクトのうち、前述の定義に当てはまるプロジェクトの数であり、同一の顧客から複数のプロジェクトを受注することがあるため、顧客数とは異なります。
②管理指標の改定について
2025年9月期より、次の通り指標の定義を改定する方針であります。
ストックサービス件数は、従来の契約期間が6ヵ月以上のストックサービス数の合計から、期末時点における月額取引金額が50万円以上のストックサービス数の合計に改定いたします。対象を一定以上の月額取引金額のストックサービスとすることにより、比較的小規模且つ長期に亘る契約に基づく保守契約や、当社の既存案件と比較して金額規模の小さい新規子会社の案件等、総合的な当社事業への影響度の低い案件を考慮対象から除外し、より正確に当社事業の進捗を表すことができると期待しております。
ストックサービス単価は、期末時点における月額取引金額が50万円以上のストックサービス単月売上 ÷ 期末時点のストックサービス件数に改定いたします。この改定により、ストックサービス件数と同様に、より正確に当社事業の進捗を表すことができると期待しております。
なお、改定後の定義における、過年度の各指標の推移は、下図のとおりであります。
[改定後指標における事業年度ごとのストックサービス件数とストックサービス単価]
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、今後の持続的な成長を実現する上で、以下の事項を課題として重視しています。
①開発体制の継続的な強化
今後、より一層顧客の要件を満たす事業を実現するためには、開発品質レベルの向上は不可欠であります。当社グループは、日本とベトナム両国でのハイブリッドな開発体制に特徴がありますが、グループ間コミュニケーションのさらなる強化を図る一方で、それぞれの特性を活かした開発手法の標準化、開発ノウハウの蓄積・共有を今後も進めてまいります。特に、受注前の見積り精度の向上や受注後のプロジェクト進捗確認等のモニタリングを通じて、開発品質の確保と納期の遵守については最重要課題として取り組んでまいります。なお、2024年9月期は、当社ベトナム子会社の保有するダナン拠点において開発品質の低下、人員管理の課題が顕在化したことから、更なる悪影響の発生を回避すべく、ダナン拠点を閉鎖し、既存の2拠点(ホーチミン・ハノイ)に開発リソースを集中し、経営の効率化を図ることとしました。この2拠点は、従来より強固なマネジメント体制・人材を有しており、順調に体制強化が進んでおりますが、今後は、ダナンでの教訓を活かし、従来以上に体制強化を進めてまいります。
また、日本国内におきましても、2024年9月期にWur株式会社、ドコドア株式会社を当社グループに迎え入れ、バックグラウンドの異なる多数の技術者間の交流を通じ、当社グループの技術力はより幅広く進化を遂げており、今後もこのシナジーを活かして更なる進化を進めてまいります。
②技術力のさらなる強化
DX市場の変化、それを支える技術革新は目覚ましいものがあり、それらの最先端技術を迅速、的確に自社のサービスに反映し、市場のニーズに応えることが、企業成長において重要な課題であります。当社グループは、社内外で開発実績を持つAIモデルの構築をはじめ、今後もDX基盤の構築、サイバーセキュリティ等の幅広い最先端技術の習得に努め、様々な業界・業態の顧客への提案力の向上、更なる価値創造に努めてまいります。
③新規顧客の獲得
当社グループが、持続的な成長を続けるためには、売上拡大に繋がる新規顧客の獲得が必要であると考えております。IPOによる認知度、知名度の向上も活かして、マスマーケティング、展示会への出展、プライベートセミナーの開催、リスティング、動画コンテンツの配信などを展開し、継続的に新規受注を獲得できる体制の確立を目指してまいります。
2024年9月期は、Wur株式会社の子会社化により、開発の上流でのコンサルティング能力の更なる向上を、ドコドア株式会社の子会社化により、従来は当社グループで手掛けることができなかった小規模な開発案件も受託することが可能となり、より幅広く顧客のご要望にお応えできる体制が整いました。また、2023年9月期に子会社化した株式会社ハイブリッドテックエージェントも順調に業績を伸ばしており、プロジェクトマネージャーやコンサルティング人材を顧客のもとに派遣することで、顧客のDX推進の支援を拡大しております。
④人材採用・育成の強化
当社及び当社グループが持続的な成長を図っていくには、専門性を有する優秀な人材を安定的、かつ機動的に確保することが必要不可欠と考えております。ベトナム3都市での産学連携、日本でのベトナム人脈のさらなる活用等も含めて、ターゲット別に最適な人材採用戦略を講じてまいります。また、新卒人材であっても即戦力に近いパフォーマンスを発揮できるよう、社内の育成体制を継続的に強化してまいります。日本国内で開発人材不足がますます顕著になっている今、ベトナムにおける豊富な人材を採用し、育成して日本のお客さまのご要望にお応えすることが当社グループの重要な使命であることを心に留め、今後とも優秀な人材の確保に努めてまいります。さらに、日本国内におきましても、都市部だけではなく、地方におきましても、優秀な人材を獲得すべく、M&A戦略も含め、種々の施策を実行してまいります。
⑤情報管理体制の更なる強化
当社グループは、顧客の開発要件によっては、個人情報を含む顧客の機密情報を取り扱う場合があります。これらに適切に対応するために、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO27001:2013を取得し、情報管理やセキュリティ管理の徹底を図っております。また、2022年9月にはベトナムの国家サイバーセキュリティセンターとの間で、サイバーセキュリティに関する相互支援を目的とした協力覚書を締結いたしました。今後も当社グループの情報管理体制の整備を継続しております。日本国内においては、従来から体制を整え、徹底した情報管理を行ってまいりましたが、顧客からの信頼性向上の施策として、この度プライバシーマークも取得し、更なる体制強化を進めております。
⑥経営管理・内部管理体制の強化
当社グループは、当社グループを取りまく事業環境の変化に柔軟に対応し、継続的に企業価値の向上を図っていくためには、内部統制環境の整備・強化が重要な経営課題であると認識しております。全社的なリスク管理体制の整備、コンプライアンス体制の強化、さらには適切なリスクテイク体制の構築を目指して取り組んでまいります。
⑦持続的な企業の成長
当社及び当社グループは、グループのビジョン、ミッション実現のためには、持続的な事業成長が必須であると考えております。当事業年度は、開発上流工程でのコンサルティングサービスに強みを持つ、Wur株式会社を子会社として迎え入れました。また、標準化された規格を活用した、コストと品質のパフォーマンスに優れる開発手法を強みとするドコドア株式会社の子会社化により、当社グループの顧客層の拡大が達成できました。一連の子会社化によって、当社グループのエンジニアリソースの拡大や開発品質の一層の強化、ターゲットとする顧客層の拡大がはかられたものと考えております。今後も一層顧客のDX推進と競合優位性の向上、及び日本のIT人材不足の解決の一助となるべく、持続的な企業規模の成長、事業の拡大を図ってまいります。また、これらを達成するべく、事業や市場活動によって得られた資金を柔軟に活用し、設備や人材への投資を継続しながら、企業買収や事業提携等についても積極的に検討してまいります。
⑧手元流動性の確保
当社グループは、継続的な取引である「ストックサービス」が売上収益の多くを占めているため、キャッシュ・フローは、安定していると認識しております。今後も、事業環境の変化やM&Aなどの資本政策にも対応できるように、柔軟な財政政策を実施してまいります。
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