ニプロ 【東証プライム:8086】「精密機器」 へ投稿
企業概要
当社グループは、滋賀県草津市のニプロ・ライフサイエンスサイト内にて、医療機器および医薬品の研究開発業務を当社が中核となり推進しております。
医療関連事業におきましては、長引く国際紛争による円安や、原料価格、エネルギー価格の高騰による物価高などの起因により、大幅なコスト低減を強いられた年となりました。
そのため、新規製品の原価構成の見直しや、部品点数削減を目的とした設計変更などが発生し、研究開発を行う環境には、マイナス要因となりましたが、限られた時間の中で「開発スピードを落とさずにできる手段」を考え、医療従事者の方々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上のため、使命であります医療製品の安定供給に努め、新規医療製品が生まれ育つよう取り組んでまいります。
一方、医薬関連事業におきましては、薬剤費の削減や医療の質の向上に対するニーズに応えるべく、様々な疾患領域や剤形における先発医薬品を対象に、高品質なジェネリック医薬品の開発に努めております。さらに、患者様にとって飲みやすさに配慮した口腔内崩壊錠や医療現場での取り扱いの容易さに配慮したキット製剤など、付加価値のある製品の開発にも注力しております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は20,846百万円であり、セグメントごとの研究開発活動は次のとおりであります。
(1) 医療関連事業
主に当社の総合研究所および酵素センターが中心となって、以下の研究開発を行っております。
① 汎用医療機器商品
上腕など体の中枢(心臓)から遠い部位(末梢)から挿入するCVカテーテルにおいて、造影剤の高圧注入が可能で挿入しやすさと安全性を両立させるために、ガイドスタイレットを採用した「ニプロPICCカテーテルキットf(フォルテット)」を開発いたしました。さらに、計量ボトルの形状を低床型尿バッグに対応させ、容量を200mLから350mLへ増量変更した閉鎖式の計量ボトル付き尿バッグも開発いたしました。
② インターベンション関連商品
循環器用バルーンカテーテル技術を応用し、消化管狭窄の治療時に、バルーン単体で内視鏡のチャンネルをデリバリーするE-diveを販売しておりましたが、下部消化管で高度狭窄した場合、ガイドワイヤーを併用して、狭窄部を通過させるワイヤーガイドタイプのバルーンカテーテルを開発いたしました。さらに、下肢、シャントなどの末梢血管の治療時に、ガイドワイヤーの断裂などで異物が発生した場合、先端のバスケットにより異物を簡単に回収できる異物除去カテーテルも開発いたしました。
また、末梢やシャント血管の石灰化病変や組織肥厚により硬くなった病変を30気圧以上の高い圧力をかけて拡張させる際に使用される超高耐圧バルーンVASOPENを開発いたしました。
③ 人工臓器関連商品
操作性が向上し、血小板付着を抑制するコーティングが施された動脈フィルタ内蔵型の人工肺を開発いたしました。さらに、従来のアルミ包材に比べ視認性と開封性が向上したダイアライザ用透明包材も開発いたしました。
④ 診断薬・検査薬・酵素商品
COVID-19の抗原とインフルエンザA、Bを同時に検査ができる検査キットおよび特殊健康診断で必須項目とされる有機溶剤健康診断を手軽に実施できる測定試薬を開発いたしました。さらに、馬尿酸測定試薬と総馬尿酸測定試薬に使用される3種類の新しい酵素も開発いたしました。
⑤ 医薬包装関連商品
腹腔鏡下手術時にスプレー先端部の角度調整ができるようにシャフトの剛性、フレキシ部の曲げ加工性能が向上したKMバイオ様向けのノンガスエンドスプレーを開発いたしました。
⑥ 整形外科関連商品
神経再生誘導管「リナーブ」の改良品である「リナーブスリット」を開発いたしました。
⑦ 内視鏡関連商品
整形外科領域で内視鏡を用いた低侵襲治療であるTSCP(仙骨的脊柱管形成術)に使用される屈曲シース、細径内視鏡、ブラシ、鉗子などを開発いたしました。
⑧ 細胞治療商品
精子数が少ない患者様からでも精子を遠心濃縮して回収することが可能な極少精子回収用試験管「SFNT-P」を開発いたしました。また、ニコンセルイノベーション様向けに、細胞製造過程で発生する廃液を回収するための「廃液バッグ」も開発いたしました。
その他、医療研修施設(iMEP)は、次年度開設10周年を迎えるにあたり、新たな研修プログラムの準備を進めております。さらに、6年目を迎えるベルギーiMEPは、X線研修室を新設、PTA・PCI術の研修計画を拡充し、新たにアフリカ地域もオンライン中継し、AVF&AVGの研修を実施し、質の高い医療研修を通じて、ニプロブランドの認知度向上に貢献しております。
また、東京大学・ニプロ研究開発センターは、契約を5年延長し、全診療科と共同研究を継続実施し、地の利を生かした製品化に取り組んでまいります。
この結果、当事業に係る研究開発費は11,260百万円であります。
(2) 医薬関連事業
主に当社の医薬品研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
① 注射剤
通常のバイアル製剤、バッグ製剤などに加え、医療現場での利便性向上を企図したキット製剤の開発も積極的に進めております。前立腺癌や閉経前乳癌などの治療に用いるリュープロレリン酢酸塩のダブルチャンバー型のプレフィルドシリンジ(1箇月製剤)(先発:「リュープリン」武田薬品工業)を既に販売しておりますが、このような開発難易度が高い徐放性注射剤などの分野に注力して、開発を進めております。
なお、今期は、1成分1品目の凍結乾燥バイアル製剤のジェネリック医薬品を上市し、1成分2品目の液バイアル製剤と、1成分1品目のプレフィルドシリンジ製剤の製造販売承認を取得いたしました。
② 経口剤
一般的な経口剤(錠剤、顆粒剤など)に加えて、高難度な徐放性製剤の開発にも取り組んでおります。一方、医療現場での利便性を向上させるため、錠剤に成分名を印刷するなど、個包装、アルミピロー包装といった包装仕様にも工夫を凝らした製品も提供しております。
なお、今期は、1成分3品目のジェネリック医薬品を上市し、2成分3品目の製造販売承認を取得いたしました。
③ 外用剤
粘着剤や軟膏剤の自社技術を活用し、高品質なジェネリック医薬品の開発を進めております。また、「皮膚に貼る注射剤」という今までにない新しい概念の経皮吸収製剤であるマイクロニードル製剤の開発に取り組んでおります。
④ バイオ後続品
わが国において、急速に市場拡大しているバイオ医薬品ですが、一般的に高薬価で、医療費削減の観点から、より低薬価であるバイオ後続品の必要性が高まっております。このような状況を踏まえて、弊社でも共同開発や自社単独開発を含め様々な形態で製品開発を推進しております。
なお、今期は、ペグフィルグラスチムBS皮下注3.6mg「ニプロ」を上市いたしました。
この結果、当事業に係る研究開発費は9,585百万円であります。
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