企業兼大株主ニプロ東証プライム:8086】「精密機器 twitterでつぶやくへ投稿

  • 早わかり
  • 主な指標
  • 決算書
  • 株価
  • 企業概要
  • 企業配信情報
  • ニュース
  • ブログ
  • 大株主
  • 役員
  • EDINET
  • 順位
  • 就職・採用情報

企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針・経営戦略等

 当社は、1954年(昭和29年)の設立以来「技術革新」をコンセプトとし、事業活動を通して社会に貢献したいとする経営理念のもと、つねに患者様のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上や医療現場の課題などのユーザーニーズに応える製品開発を推進しております。

 製品競争力・市場シェアともに世界トップを目指し、「地産地消」のコンセプトのもと、グローバルに事業展開を行っております。

 当社グループは、医療現場におけるニーズ、シーズを積極的に捉えながら、現場の要望に応える商品開発を行いつつ、製造工程の改善によって製品の生産能力を高め、品質の安定とコスト競争力のある製品を提供することによってグローバル市場でシェアを獲得し、販売を拡大することを基本戦略としてまいりました。また、医療、医薬、医薬用包装材料(ファーマパッケージング)の3事業にまたがる当社内の独自技術やその他の経営資源を有効に活用して、ユーザー目線に立ったより安全性の高い、価値ある製品の開発に取り組んでおります。ますます先行きが不透明な今の状況においても、製品競争力、市場シェアともに世界トップを目指し、「地産地消」のコンセプトのもとにグローバルで存在感のある企業グループへ発展し、全世界的に総合医療メーカーとしての供給責任を果たしてまいります。

 医療関連事業の国内販売におきましては、主力のダイアライザ(人工腎臓)を中心とする透析関連製品に加え、注射・輸液関連製品、糖尿病関連製品、検査関連製品、バスキュラー関連製品、SD(サージカルデバイス)関連製品などの領域において新規販路開拓を推し進め、シェア拡大を図るとともに、安定生産、安定供給のための危機管理体制の強化に取り組んでまいります。また、医療従事者の働き方改革や、オンライン診療、オンライン服薬指導に役立てるシステムの提案を通じて地域医療に貢献してまいります。

 後発医薬品につきましては、医療用医薬品の製造・販売を行う企業としての安定供給への使命を常に意識し、患者様目線を基本理念として、引き続き品質確保ならびに安定供給へ真摯に取り組んでまいります。また、総合医療メーカーとしての存在感を更に向上させるため、重点卸との関係を一層強化し、医療機関、調剤薬局での活動を通じ患者様へ貢献できるよう引き続き取り組んでまいります。

 再生医療等製品については、事業の収益化と社会貢献のためにステミラック注の適用拡大と海外展開をすすめてまいります。

 海外販売におきましては、学術活動や技術営業を通じ、基幹商品の商品価値およびサービスを向上させることで、患者様、医療従事者への付加価値を創造し、利益を高めてまいります。

商品戦略

 商品別販売組織の強化、新しい治療分野への事業展開を行い、売上高の拡大に努めてまいります。特に世界各地域で展開する「バスキュラー商品」および「感染対策商品」としてイオンレス®次亜塩素酸水等の販売準備を進めてまいります。

地域戦略

 米州において新たな透析機械の上市に伴い、より高品質なワンストップソリューションの提供が可能となることで、市場シェアの拡大を図ります。

 多くの人口を抱える市場であるアジアパシフィック地域を重点戦略市場として、グローバルマーケティングによるブランド強化により、ニプロブランドを世界の隅々まで浸透させてまいります。また、生産販売網の効率化と安定供給のため地産地消体制を強化します。

 中南米・アジア地域を中心に引き続き自社透析センターにおいて、質の高い治療の提供を続け、地域医療に貢献、またショールーム化による差別化を進めてまいります。

 加えて、コンプライアンス強化やデジタル化、環境への取り組みを行うとともに、当年度に改変した国際事業統括組織の経営統合を進めさらなる収益体質への変革に挑戦します。

 医薬関連事業におきましては、注射剤については、滋賀県に約4,000万本/年の生産が可能なバイアル製造棟(液充填ラインと凍結乾燥ラインを具備)を、2026年度中に設立いたします。これは、経済産業省の「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」に採択いただいた製造棟であり、パンデミック発生時にワクチンや治験薬等を国の要請により速やかに日本国内に供給することのできる工場となります。経口剤については、福島県の鏡石工場でのBCP対策の完了と、全星薬品工業における増産体制の構築に取り組みます。また、いずれの工場においてもMES、LIMS、QMS等のシステムの運用をより強固なものとし、FDAを始めとするグローバル基準に対応できる体制を確立します。

 ニプログループは数年前から国内で抗菌薬の原薬から製剤までの一貫生産を確立するために取り組んでおり、2028年度中に国内一貫製造での抗菌薬の出荷を達成することを目指しております。

 ファーマパッケージング事業は、「トータル医薬包装容器メーカーとして、医薬品企業の要求に応えることで人々の健康に貢献する」ことを使命としております。医療先進国における高機能ニーズの高まり、発展途上国の急速な需要拡大に対応するため、開発・生産・販売・サプライチェーンの各バリューチェーンに立脚する4つの基本戦略を設定しております。

商品競争力の向上

 主力である医療用ガラス容器の機能強化・付加価値化に加え、コンビネーション医療機器や在宅医療用分野への研究開発投資を継続します。併せて最大の市場である欧米顧客のニーズを的確に捉えた製品を上市し、当事業部全体としてのシナジー発現に努めます。

製造原価の低減

 製造工程の自動生産技術の向上に注力するとともにDXの活用、諸生産性の改善といった一工場内での削減活動を推進します。また材料や設備の共同発注、材料の内製化推進、工場間での製品集約等、製造事業全体における最適化を加速してまいります。

市場カバー率の拡大

 ガラス関連製品、ゴム栓、調製デバイス等、幅広いポートフォリオを活用した提案型技術営業を強化してまいります。加えて、国内、海外各工場における製品をクロスセルすることで各国の市場シェア向上を推進します。

安定供給

 新製品の迅速な立ち上げと併せ、国内外14工場等(外部の仕入先含む)を含めたサプライチェ-ンの柔軟性の確保と高度化(品質・コスト・納期)を更に推進します。同時に地産地消に向けた生産能力の増強を段階的に整備いたします。

 以上のように事業ごと地域ごとの基本戦略に基づき、それぞれが有機的にシナジーを生み出すことによって事業全体の継続的な成長を進めてまいります。

(2) 目標とする経営指標

 当社は2030年度に連結売上高1兆円の企業グループとなるべく、製品開発や成長投資を積極的に継続してまいりました。しかしながら継続する円安傾向、世界的なインフレーション、金利上昇局面の到来など、外部環境が大きく変化した状況においては、財務基盤を固め、利益体質へと転換することにより継続的な成長投資が可能となります。まずはフリーキャッシュ・フローの改善によって債務償還年数の圧縮を実現します。そのためにキャッシュの源泉となる本業からの収益率である営業利益率の向上、さらに投資からの回収を念頭に置いた資本効率を重視してまいります。売上高成長率は年平均7%以上、営業利益率は9%以上、純有利子負債/EBITDA倍率は4倍台、ROE14%を当面の目標といたします。

成長性

売上高成長率 年平均7.0%以上

収益性

営業利益率 9.0%以上

財務健全性

純有利子負債/EBITDA 4倍台

資産効率

ROE 14.0%

 また、2030年度連結売上高1兆円を達成するために、当社グループが実施すべきと考えることは、次のとおりであります。

 経営方針

激動の時代にめげず、ユーザーニーズに応え、製品競争力・市場シェアともに世界トップを目指し、グローバルで地産地消の考えを推し進める

 重点課題

①意欲のある人にチャンスを与える社風を守る

②最終ユーザー目線で判断することを最優先とする

③三方(ユーザー、社会、自社)良しの考え方を堅持する

④全従業員がPDCAの各ステップに関する情報を共有し、意欲を持ってPDCAサイクルを回すことができるようにする

⑤組織の長が理論と現実のギャップを理解し、それを部下が理解できるように指導を行える会社とする

 強化項目

①日本市場において地域医療貢献度No.1メーカーへの挑戦

②ダイアライザで世界各国シェアトップ

③バスキュラー製品における世界市場展開と国内市場の新分野進出

④医薬品受託事業における海外市場への展開

⑤ファーマパッケージング事業における高付加価値製品の開発と製造原価の削減

⑥細胞医薬品事業の強化

⑦新規事業シーズ育成

 当社グループは引き続きユーザー目線にたっての新商品、新技術の開発を進め、技術革新により社会貢献を志向する事業展開を継続し、医療関連、医薬関連およびファーマパッケージングの各事業において着実に成長を図り、目標達成を目指してまいります。

(3) 経営環境及び対処すべき課題

 医療関連事業におきましては、メディカル営業部門では、輸液関連製品、糖尿病関連製品、透析関連製品、バスキュラー関連製品、SD(サージカルデバイス)関連製品の各々におきまして、市場ニーズ・シーズに応えられる製品の開発及び積極的な市場展開、販売強化を行い業績の拡大取り組みを継続し、安定生産、安定供給の為の危機管理体制を強化してまいります。さらに、医療従事者の働き方改革をDXで支えるニプロ総合医療ネットワークシステムを普及してまいります。医薬営業部門では、毎年の薬価改定と原材料の高騰により後発医薬品業界はもちろん、製薬業界全体が非常に厳しい経営環境となるなか、適正価格販売により薬価維持に努め、適正利益を確保しつつ設備投資を行い、安定供給に努めてまいります。併せて総合医療メーカーとして在宅医療、地域医療連携をはじめ医療現場のニーズを捉えた提案営業を続け、さらなるニプロブランドの向上に努めてまいります。

 医薬関連事業におきましては、品質最優先とし、継続する医薬品の供給に関する課題に対処すべく生産能力の増強と拡充を引き続き進めております。

 品質管理体制につきましては、埼玉県の試験棟が2023年12月に稼働開始したことにより、各工場での試験業務の負荷軽減が進んでおります。また、2024年3月には大阪市内に設立した道修町分析センターが稼働し、埼玉試験棟同様に各工場の試験業務を担いますので、各工場での試験業務の負担の平準化がさらに進むと見込んでおります。

 一方で、受託製造の伸長や、医薬品の安定供給に関する課題に対処するため、生産能力の増強と拡充に取り組んでおり、2024年3月に竣工したニプロファーマ近江工場では、2024年中での抗菌薬製剤の出荷を目指します。また、同工場においてはバイアル製剤の製造棟についても、2023年に着工しております。プレフィルドシリンジ製剤につきましては、伊勢工場のシリンジ棟での本格的な生産を2024年度から見込んでおります。

 ファーマパッケージング事業におきましては、バイオ医薬品やワクチンを中心とした注射剤の開発が旺盛であることに加え、発展途上国における人口増や医療水準の高度化等が、医療用容器市場の中長期的な成長を牽引するものと考えております。同時に世界的なインフレーションやアフターコロナ期の在庫調整局面を巡る価格競争の進行、更には多くの国が医療費抑制策を強化するなど、利益面での下方圧力が高まっています。

 このような環境の下、成長機会を確実に捉えるとともに収益面での逆境を克服することが当事業の最重要課題となります。まずシェア拡大を実現するためには、提案型技術営業による顧客満足度の更なる向上、各国における営業部門間の連携およびクロスセルの実践が不可欠となります。価格競争力の確保においては、ニーズを的確に具現化した商品の迅速な開発・上市に加え、製造原価の低減およびサプライチェーンの最適化が要諦です。

 また、上記のテーマと併せて、事業内各社が有する開発や営業面での諸資源を最大限活用し、生産設備や研究開発に対する投資効果を向上させるための活動を展開中です。

 以上のように、各事業で優先される課題に真摯に対応していくためにも、企業としての確固たる財務基盤の確立が大前提であり、外部環境が変化した現在の状況においては大きな課題でもあります。上述の安定供給の責任を果たす上でも、まずは財務基盤の強化に関する取り組みを今後も継続的に進めてまいります。

PR
検索