ニデック 【東証プライム:6594】「電気機器」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)会社の経営の基本方針
当社は2023年7月の創業満50周年に際して、100年を超えて成長し続けることを展望して「新企業理念」を制定しました。「新企業理念」は「社是」を根幹とし、ニデックグループの50年の成長の源であった、価値観・行動規範・行動指針を継承しつつ、ニデックグループの成長の目的や存在意義を「使命(Mission)」として明確にし、また人類が抱える多くの課題を解決する世界No.1のソリューション企業集団を「目指す姿(Vision)」として新たに制定の上、全てを一体としました。
「使命(Mission)」、「目指す姿(Vision)」は以下のとおりです;
「使命(Mission)」:
■世界一高性能なモータで地球に貢献する
(全社員の弛まざる努力により、当社が世に送り出すモータを中心とした製品を通じて、地球環境の保全を始めとする様々な課題を解決すると共に、世界の人々のより良い生活の実現に貢献する。)
「目指す姿(Vision)」:
■100年を超えて成長し続けるグローバル企業
■人類が抱える多くの課題を解決する世界No.1のソリューション企業集団
このような状況下、当社は2025年度をターゲットとする中期戦略目標(Vision2025)を設定しており、事業環境変化に力強く適応する成長企業を目指しています。
その骨子は次のとおりです。
2023年度~2025年度
①連結売上高目標 4兆円
②生産性向上:従業員一人当たりの売上高と営業利益を倍増
③ROIC(投下資本利益率) 15%以上
④ESGで評価される企業に
・世界初、世界№1技術の積み上げによる社会ニーズの解決
・カーボンニュートラルを中心としたESG経営の推進
・One Nidecとしての組織、ガバナンス強化
更にESG関連項目を目標として組み込み、当社事業ごとの持続性を担保していくため、社内外のステークホルダーによる中長期の展望を軸に5つの重要課題(マテリアリティ)を特定しました。「脱炭素社会の実現」「人権の尊重・適正な労働慣行の浸透」「国際競争力が高い人材の確保・育成」など、積極的かつ持続性のある改善活動を進めてきました。特に「脱炭素社会の実現」において、2040年度までにスコープ1・2をカーボンニュートラルとする目標を設定し、CO2削減活動を推進しています。これらの活動が認められ2024年2月に気候変動に関する国際的な非政府組織CDPからBスコアを獲得しました。
当社はこの目標に加え、2024年3月にCO2排出量削減に関する新たな中長期目標を設定しました。2050年度にサプライチェーン全体のCO2排出量のネットゼロを目指し、2030年度までにスコープ1・2での排出量を2022年度に比べて42%削減、スコープ3での排出量も2022年度に比べて25%削減することを目指します。これらの目標は2015年にCOP21で採択されたパリ協定の水準に沿ったものです。当社は再生可能エネルギーの導入や省エネ活動を通じて、事業活動におけるCO2の排出量を削減するとともに、軽薄短小の技術を活かし省資源・省エネルギーの製品を開発することで、サプライチェーンのCO2排出量も削減していきます。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
現在、当社が人類共通の課題に対してソリューションを提供出来ると考えている分野として「脱炭素化」「省人化」「省電力化」「5G&サーマルソリューション」「デジタルデータ爆発的増大」の5つがあります。「クルマの電動化」「ロボット活用の広がり」「高効率モータへの需要増加」といったCO2排出抑制、労働力不足、省電力化といった人類共通の課題へのソリューションが求められている分野に経営資源を集中的に投下します。
①精密小型モータ
精密小型モータ事業にはHDD用モータ事業とその他小型モータ事業があります。HDDは主にPCやサーバを始めたとした多くの情報機器に用いられていますが、その心臓部を担うのがHDD用モータです。タブレットやスマートフォンなどの新しいIT端末の普及によりPC用途のHDDは今後大きな市場拡大を望めませんが、一方で5G通信の拡がりにより画像や動画などの高画質・高容量化、ソーシャルメディアやゲームの普及といったビッグデータ化は益々加速すると考えられます。それに伴うストレージ需要の拡大により、今後もサーバ用途等ではHDD用モータ需要は安定して継続すると見込まれます。
その他小型モータに関しては「5G通信に起因する次世代技術」や「家電製品のブラシレスDC化」、「小型モビリティ」といった分野で今後の伸びが期待できます。5G通信が主流になると通信速度は従来の100倍、通信容量は1,000倍になると言われています。しかし膨大なデータを高速で処理するがゆえにCPU(中央演算処理装置)や電子回路に高熱が生じるため、放熱・冷却といったサーマルマネジメントに対する需要が益々高まることが予想されます。この需要に対応するため、当社ではヒートシンクやヒートパイプ、ベイパーチャンバー等を組み合わせたサーマルモジュール製品を市場に提供しています。加えて、急成長する生成AIを活用したデータセンター向け需要増を取込み、水冷モジュールなどの新たな事業機会も生まれ始めています。また、家電が省電力化、コードレス化するに従い省エネ・長寿命・低騒音という特徴を持つ当社ブラシレスDCモータの需要が益々増えていきます。更に電動自転車、電動バイク、電動スクーターやミニEVといった電動化が進んでいる小型モビリティ分野も当社の成長を中長期で牽引していくと考えられます。その他のAV・IT・OA・通信機器や家電・産業機器など多岐にわたる分野においても新たな活用の場を開拓し、持続的な成長につなげていきます。
②車載
車載オーガニック(既存事業)においては、半導体等の供給制約緩和に伴いグローバル自動車生産台数が徐々に回復する中、電動化進展による旺盛なモータ等の関連需要を当社は捉え、世界No.1シェアを誇る電動パワステ用モータやブレーキ用モータを始めとした車載用モータに加え、電動オイルポンプや電動ウォーターポンプ等の車載製品を提供し、更なる市場シェアの獲得と、売上・利益の成長を強力に推進していきます。
EVトラクションモータ事業においては、激しい価格競争の進展によって健全な競争環境が失われつつある中国EV市場では他社に先駆けていち早く収益性最優先へ戦略転換を行いました。中国EV市場の競争に対応するための開発や部品調達の更なる現地化により着実な収益改善を実現していきます。また欧州ではStellantis社との合弁会社であるニデックPSAイーモーターズにおいて、当社車載事業部との協業を強化し2024年度の連結化に際して垂直立上げを目指します。これらにより中長期的な電動化シフトの波を確実に捉えていきます。
③家電・商業・産業用
現在、世界の電力使用量の約半分をモータが占めていると言われており、特に産業用モータによる消費量が大きいことから、より高効率なモータへの置き換えが急務となっております。当社は家電関連では、洗濯機、乾燥機、食洗機用モータや冷蔵庫用のコンプレッサー及びコンプレッサー用のモータ等を手掛けており、効率に優れるブラシレスDCモータへの需要の更なる高まりが今後期待されます。又、家電需要の新興国への拡大も中期的に期待されます。商業部門ではエアコン向けモータやECの配送センターで使用されるロボット向けのモジュール等を提供しており、産業部門では農業、ガス、鉱業、上下水道、海洋といったマーケットを中心に事業を展開しております。特に、建設機械向けやデータセンター向けの発電機の需要が増大しておりビジネスの拡大が見込まれます。また各国の発電・送電事業者に向けたバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の需要も高まっています。再生可能エネルギーの増加とともに、当社BESS関連ビジネスは大きな成長が期待されます。ブラジルの航空機メーカーEMBRAER社との合弁会社を設立したeVTOL(電動垂直離着陸機)向けモータも今後移動インフラの変化と共に成長が期待される分野です。
④機械装置他
世界的な課題となっている労働人口不足への対応として、中国を中心にFA(ファクトリーオートメーション)需要が高まっています。「ロボット活用の広がり」を背景に拡大傾向にある小型ロボット基幹部品(減速機)の需要を確実に獲得するため、減速機関連製品のモジュール化を加速し高付加価値製品の供給により、グローバルシェア拡大を徹底推進し売上拡大を図ります。更に当社は、工作機械事業分野でも買収を積極的に進めており、買収した会社の収益性も、短期間で大幅に改善しております。プレス機械事業同様、買収により製品ラインアップを揃え、収益改善活動を進めてゆくことにより、工作機械事業は今後も更なる成長が見込まれます。
⑤M&A
上記の目標を達成するために、精密小型モータでは、2018年11月にベイパーチャンバーを中心としたサーマルソリューション製品を持つCCI社(現 ニデックCCI)を買収しました。当社の既存技術であるファンモータを中心とした冷却技術と組み合わせて、より付加価値の高いサーマルソリューションを提供していきます。
車載では2019年10月に電子制御ユニット(ECU)の技術をもつオムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社(現 ニデックモビリティ)を買収しました。ニデックエレシスが持つECUのキャパシティを増強するとともに、当社既存の車載モータとのシナジー効果を追求します。
家電・商業・産業用では、2019年7月に冷蔵庫用コンプレッサーの技術をもつエンブラコ社を買収しました。当社の既存技術であるコンプレッサー用モータと組み合わせて、より省エネ性能に長ける冷蔵庫の実現に貢献します。
機器装置他では、2021年8月に高精度・高効率の歯車加工技術を持つ三菱重工工作機械株式会社(現 ニデックマシンツール)を買収し工作機械事業に参入して以降、2022年2月にマシニングセンタの老舗であるOKK株式会社(現 ニデックオーケーケー)、2023年2月に横中ぐり盤の世界トップメーカーであるPAMA社、2023年12月に旋盤の専門メーカーである株式会社TAKISAWAを買収しました。これら一連の買収により製品ラインアップの拡充と海外市場の強化を実現しました。
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