ニコン 【東証プライム:7731】「精密機器」 へ投稿
企業概要
当社グループでは、全社の技術戦略を統括する役員を選任し、中長期計画と連動した技術戦略を立案して、研究開発の全体最適化を図るとともに、各事業部門の開発担当部門が次世代プロジェクト本部、光学本部、先進技術開発本部、生産本部と連携しながら研究開発を推進しています。これまで培った「光利用技術」と「精密技術」の2つの中核技術に加え、他社との共同研究開発等を通じて新たな技術を取り入れることで、成長戦略の実現を目指していきます。当連結会計年度の研究開発投資は76,519百万円でした。なお、当社グループは開発投資の一部について資産化を行っており、研究開発投資には無形資産に計上された開発費を含んでいます。
当連結会計年度における主な開発状況は次のとおりです。
① 映像事業
レンズ交換式デジタルカメラでは、「ニコン Z マウント」を採用したフルサイズ/FXフォーマットミラーレスカメラ「ニコン Z f」を開発しました。「Z f」は、ニコンの歴史的なカメラにインスパイアされたヘリテージデザインと最新性能を両立したミラーレスカメラです。フラッグシップモデルの「ニコン Z 9」と同じ画像処理エンジン「EXPEED 7」を採用し、本格的な静止画・動画の撮影が可能です。洗練されたデザインと優れた操作感に加え、高いAF性能や手ブレ補正性能をはじめとした最先端技術を搭載することで、自分の表現を追求するクリエイターのニーズに応えるミラーレスカメラです。
交換レンズでは、「ニコン Z マウント」を採用したフルサイズ/FXフォーマットミラーレスカメラ対応のレンズ、APS-Cサイズ/DXフォーマットミラーレスカメラ対応のレンズをあわせて6機種を開発しました。「NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena」は、Zマウントの大口径、ショートフランジバックの特性を最大限に活用することで、開放F値1.8から円形度の高いボケを実現しています。光学系にSRレンズ1枚とEDレンズ4枚を採用することで、色付きを最小限に抑えて自然で滑らかな描写が得られます。また、ニコン独自のメソアモルファスコートとアルネオコートを採用することでゴースト、フレアを効果的に抑制。画角内に太陽などの強い光源が入るシーンでもクリアーな画像が得られます。これらにより、これまでにない光に満ち溢れた新しい映像体験を提供しています。
当事業に係る研究開発投資の金額は21,004百万円です。
② 精機事業
FPD露光装置分野では、お客様の将来のニーズに応える露光装置やサービスの提供を実現するために、さらなる生産性向上、高精度・高精細化のための様々な技術開発、アプリケーション開発を継続すると共に、次世代パネルに対応する技術開発などを進めました。
半導体露光装置分野では、多点アライメントによる計測と高次補正によって、半導体デバイス構造の三次元化に必要な高い重ね合わせ精度と高生産性を実現するArF液浸スキャナー「NSR-S636E」及びミドルクリティカルレイヤー向け「NSR-S622D」の後継機種として生産性を大幅に向上させた「NSR-S625E」を開発し、販売を開始しました。また、パワー半導体、通信用半導体、MEMSなど様々なデバイスに対応し、ニコンの既存のi線露光装置との互換性が高い縮小投影倍率5倍 i線ステッパー「NSR-2205iL1」を開発し、販売を開始しました。
当事業に係る研究開発投資の金額は20,710百万円です。
③ ヘルスケア事業
バイオサイエンス分野では、医療用のデジタルイメージングマイクロスコープ「ECLIPSE Ui」及びデジタル倒立顕微鏡のスマートイメージングシステム「ECLIPSE Ji」を開発しました。
「ECLIPSE Ui」は、接眼レンズをなくしてディスプレイで観察画面を共有することにより、病理医の身体的負担の軽減に貢献し、病理診断のワークフローを改善します。さらに、遠隔地にいる医師と観察画像をリアルタイムで閲覧する機能により、複数の医師による意見交換をサポートします。
「ECLIPSE Ji」は、観察のために必要な画像取得や解析など、従来ヒトが行う必要があった操作をAIにより自動化します。顕微鏡でありながら接眼レンズをなくしたデザインが特長で、画像統合ソフトウエア「NIS-Elements SE」と合わせて使用することで、画像の取得から解析、データ表示までを定型化した、細胞を用いた研究開発や実験が可能になります。がんや神経疾患、感染症などの病気のメカニズム解明や創薬の研究開発を加速させます。
当事業に係る研究開発投資の金額は7,880百万円です。
④ コンポーネント事業
デジタルソリューションズ事業においては、世界で初めて*全固体電池を搭載した多回転バッテリレスアブソリュートエンコーダ「MAR-M700MFA」を開発し、発売を開始しました。全固体電池の搭載により、ニコンの従来のバッテリレスアブソリュートエンコーダよりも保証温度が向上し、メンテナンスフリー化を実現しました。新たに予知保全機能や角度精度の自己補正機能を搭載し、産業用ロボット等の利用環境拡大、稼働安定性向上、モーション制御の高精度化に貢献します。
カスタムプロダクツ事業においては、ビジネスが多様化する中、様々なニーズに対応するために、多分野に渡る技術開発を実施しています。「固体レーザー分野」では、新型の193nm固体レーザーシステムを開発中です。従来の193nm固体レーザーシステムに対して「可搬型」・「小型」・「高出力」の特徴を有する光源となります。「特注分野」では、各種食品関連の異物検査装置向け技術開発として、紫外照明による蛍光撮影の実用性検証、画像演算などの画像処理技術を用いた異物検出率向上を図った画像認識の検討を実施しました。
コンポーネント事業に係る研究開発投資の金額は3,795百万円です。
* 2023年11月20日現在、発売済みの多回転バッテリレスアブソリュートエンコーダにおいて。当社調べ。
⑤ デジタルマニュファクチャリング事業
産業機器事業においては、幅広い業界の研究及び生産での非破壊検査が可能なX線/CT検査装置のVOXLS 30シリーズを開発し、発売を開始しました。このシリーズは、自動ロボットやインダストリー4.0との統合機能を活用でき、研究室や生産現場における非破壊検査・測定の自動化を可能とし、自動車、航空宇宙、金属、医療機器などの製造業の技術革新と品質基準の維持を支援します。
アドバンストマニュファクチャリング事業においては、アディティブマニュファクチャリング装置については航空宇宙産業を中心に、各分野で強いニーズが継続的に拡大しています。特に大型化への要求が近年顕著です。PBF(Powder Bed Fusion)タイプの金属アディティブマニュファクチャリング装置については、高品質と高生産を目指した継続的な開発を進めると共に、高さ1.5mの大型部品まで造形可能な「NXG XII 600E」を開発し、販売を開始しました。また、DED(Direct Energy Deposition)タイプの高精度な金属アディティブマニュファクチャリング装置「Lasermeister LM300A」及び3Dスキャナー「Lasermeister SB100」を開発しました。これらは主にエネルギー分野、航空分野で用いられるタービン部品の補修に用いられ、廃棄されずに再利用が可能になることでCO2削減に貢献していきます。なお、2024年春に発売しました。
デジタルマニュファクチャリング事業に係る研究開発投資の金額は7,716百万円です。
(注) 事業別に記載している研究開発投資の金額には、内部消去額を含んでいます。
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