ドリーム・アーツ 【東証グロース:4811】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
・ミッション「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」
ICT(情報通信技術)は今この時もあらゆる場所へ活用範囲を広げ、その用途や役割を変化させ続けています。影響力や重要性も高まるなか、ICTになにを求めるかを今一度考えることが重要であると考えております。ICTに仕事を奪われるのではなく、生みだされた時間でいかに「協創」を生みだすか。これこそがドリーム・アーツが考える、ICT本来の役割です。ICTだけではできない、人間だけではできない。ドリーム・アーツはそうした難題の解決を、ICTと「協創」でお手伝いしてまいります。
・スローガン「協創力を究めよ Peak the Arts of Co-creation」
創業以来「Arts of Communication」をスローガンに掲げてきましたが、「協創」こそが我々ドリーム・アーツ自身の存在意義であると再定義しました。人間がもつ知性の根源的・根本的な活動であるコミュニケーションから生み出される「協創」を、自らが究め続けてまいります。
・ビジョン「BD(ビッグ・ドーナツ)市場のリーディングカンパニーを目指す」
BD(ビッグ・ドーナツ)は当社グループの造語です。「ビッグ」は当社グループがターゲットとする国内の従業員1,000名以上の大企業約4,000社を指します。「ドーナツ」は、企業内システムに対する比喩であり、ERPなどのミッションクリティカルな基幹系システムを取り囲むように配置されている現場部門向けのシステム領域を指します。
現在、BD領域のシステムは、ERPのカスタマイズで対応することが主流となっていると認識しております。その開発と運用は、システムインテグレーターによって請負われており、企業は多額の投資を余儀なくされ、激しく変化するビジネス環境への対応を難しいものにしていると考えております。
近年、多様なSaaS(経費精算、請求書管理、契約・法務、顧客管理、マーケティングオートメーション、ビジネスインテリジェンス等)が普及し、BD領域の投資効率は徐々に向上しておりますが、各社固有の業務プロセスには対応することができず、大企業のデジタル化を遅らせる大きな要因となっているものと想定しております。今後BD領域はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進における核心的な領域となるため、予算配分の見直しが進み、投資が急拡大すると予想しております。
当社グループは、BD(ビッグ・ドーナツ)市場のリーディングカンパニーとして、大企業の投資効率の向上と業務デジタル化を推進し、現場で働く人々や組織の生産性を高め、より多くの付加価値を生み出す「協創」環境の創造に貢献してまいりたいと考えております。
・バリュー「DA Values」
当社グループは「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」というミッションの実現に向け、行動指針としてDA Valuesを定義しております。DA Valuesは創業以来、その時々の環境や状況に合わせて再考し、アップデートを重ねてきた当社の根幹を支える理念でもあります。役職員がDA Valuesを意識し日々の業務に取り組むよう、継続して周知徹底してまいります。
・顧客との信頼
・自律とリーダーシップ
・挑戦と変革
・機会の本質
・やりぬく忍耐と勇気
・建設的対立
(2)経営環境
我が国では、少子高齢化に伴う労働人口の減少が深刻化しており、デジタル技術の活用による生産性向上が喫緊の課題となっております。企業を取り巻く環境は、デジタル化の進展に伴う破壊的イノベーションの波が押し寄せ、DX(デジタルトランスフォーメーション)による新たな収益の柱を確立する必要性に迫られているものと認識しております。また、コロナ禍に端を発する働き方の変化に対応するため、組織全体の意識共有を図り、従業員のエンゲージメントを高めることも大きな課題となっていると考えております。
しかしながら、DX推進の役割を果たすべき国内のIT産業は、多くの産業構造上の問題を抱えております。デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会による「DXレポート2」(令和2年12月)が指摘しているとおり、ITベンダーの多くは受託開発中心のビジネスモデルを採用しており、開発費用が労働量に比例するため、生産性向上によって収益が減少するというジレンマに陥っております。また、独立行政法人情報処理推進機構の「DX白書2023」によると、国内IT人材125万3,930人のうち、73.6%にあたる92万2,470人までがITベンダーに所属しており、ユーザー企業に所属するのは33万1,460人に止まっております。そのため、企業においてはシステムの内製化が進まず、技術力・ノウハウも蓄積されないまま、ITベンダーに依存せざるを得ない状況が続いております。さらには、IT人材そのものが圧倒的に不足しており、みずほ情報総研株式会社の「IT人材需給に関する調査」(2019年3月)によると、2030年までにIT人材の需要は158万人となる一方で、供給は113万人までしか伸びず、約45万人の需給ギャップが生じると試算されており、業務デジタル化の進展に大きな影響を与えるものと懸念されております。
大企業の社内システムに目を向けると、ERPなどの基幹システムのブラックボックス化が進み、データ活用による環境変化への対応が難しい状況にあります。また、IT予算の9割が既存システムの保守に充てられ、新たなビジネスモデルに変革するためのシステム開発が進まないだけでなく、IT人材不足によるシステムトラブルやデータ滅失の危険性を抱える状況となっております。
こうした状況を受け、前述の「DXレポート2」(令和2年12月)では、DXを実現するためのフレームワークが示され、DXの目的である「ビジネスモデルのデジタル化」を成功させるには、基盤システムの刷新、業務のデジタル化、製品・サービスのデジタル化を段階的に進めていく必要性が指摘されました。
大企業がDXを推進するためには、まず非競争領域である基幹システムを刷新し、コストダウンを図るとともに、業務データのデジタル化や、社内外にまたがる業務プロセスのデジタル化を実現するといった情報基盤の整備を急ぐ必要があることも指摘されております。
(3)経営戦略
このような経営環境の下、当社グループは「デジタルの民主化」をコンセプトに掲げ、ITスペシャリストだけでなく、ITの専門知識を持たない現場部門のビジネス系人材を巻き込んだクラウド時代の業務デジタル化を推進しております。
当社グループが提供するSaaSプロダクト「SmartDB®」は、プログラミング不要の「ノーコード開発ツール」であり、直感的な操作と簡易な設定で、非IT人材による業務アプリケーションの開発を可能とすることを目指しております。IT人材の不足をビジネス系人材の活用によって補うことで、大企業の業務のデジタル化推進を支援していきたいと考えております。
また、「ノーコード開発ツール」は、業務に精通した現場担当者がシステム開発を推進することによって、要件定義や仕様設計などのプロセスを短縮し、開発生産性の向上を図ることができるものと考えております。さらには、現場部門が自ら「業務デジタル化」を推進することで、これまで放置されていたアナログ業務のデジタル化が進み、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた企業文化や組織風土の変革に取り組みやすい環境をつくることにつながるものと考えております。
「SmartDB®」は、ノーコード開発ツールでありながら、受託開発にも引けを取らない高度な機能を備えているものと認識しております。そのため、単純なデータベースやワークフローなどの標準的なものから、ERPフロントシステムや基幹業務を支えるサブシステムに至るまで、ミッションクリティカル領域の周辺システムとして幅広く活用することができるものと考えております。従来システムインテグレーターが担ってきたBD(ビッグ・ドーナツ)領域のシステムを、ノーコード開発ツールを利用した現場主導での開発・運用にシフトすることで、顧客の投資効率を向上させ、変化の激しいビジネス環境への対応力強化を支援してまいりたいと考えております。
(「SmartDB®」が導入企業にもたらす効果)
| 内 容 |
1.高速な業務デジタル化 | システムを利用する部門・担当者自身が開発することにより、工数・期間・コストの圧縮が見込める。 |
2.環境変化への対応力向上 | 外部のベンダーに依存せずシステムの変更・改修ができるため、環境変化に応じて素早く対応する体制の構築が見込める。 |
3.包括的なセキュリティ | データ、ファイル単位でのきめ細かいアクセス制限が可能であり、機密性の高い業務のデジタル化の実現を見込める。 |
4.運用負荷の低減 | システムの運用にIT人材を充てる必要が無いため、運用負荷の軽減が見込める。 |
5.企業文化・風土の改革 | 現場部門スタッフが自らシステム開発を行うことで、組織内のデジタルに対するリテラシー向上が見込める。 |
当社は複数の製品・サービスを展開しておりますが、現在は「SmartDB®」を主力製品・成長ドライバーとして位置付けており、BD領域の業務デジタル化を支援することで顧客基盤の拡大を目指します。
「SmartDB®」のライセンス体系は、利用ユーザー数に応じた「ユーザーライセンス」、データベース数に応じた「バインダーライセンス」、追加機能を利用するための「オプションライセンス」で構成されています。これらのライセンスを組み合わせることで、全社一括導入だけでなく、部門単位などの小規模グループから利用開始する選択肢を提供します。段階的にユーザーや適用業務を増やすことで、初期投資リスクを抑えながら業務デジタル化推進が可能になると考えております。また、導入後も継続してサポートや活用事例などの情報提供を行い、他部門への横展開だけでなく、海外拠点や関連会社に至るまで、企業グループ全体での利用拡大を図ります。
(「SmartDB®」のライセンス体系)
名称 | 内容 |
ユーザーライセンス | 利用ユーザー数に応じて課金 |
バインダーライセンス | アプリケーションのデータを格納するデータベース。データベース数に応じて課金 |
オプションライセンス | 他社SaaS連携オプション、API利用オプション、タイムスタンプ利用オプション、検証環境利用オプションなど |
また、「SmartDB®」の利用形態は、現場の一般的な業務をデジタル化する領域(非MCSA(※))と、ミッションクリティカルシステム周辺領域(MCSA)での利用に分けることができると考えております。いずれの形態で利用を開始しても、同一環境において他の利用形態に展開することで、高い投資対効果の実現を目指してまいります。
(※)MCSA (Mission Critical System Aid)
当社の掲げる「ミッションクリティカル領域のシステムを支える」というコンセプトのこと。Support(サポート)ではなくAid(エイド)という表現を使用している理由は、Aidという言葉が「困難な状況にある人や組織を実践的に助ける」という意味を含むためであり、当社の「BD領域の業務デジタル化」に取り組む姿勢を示しております。
(「SmartDB®」の利用形態の種類と利用例)
| 非MCSA (現場の一般的な業務) | MCSA Mission Critical System Aid (ミッションクリティカルシステムの周辺領域) |
部門導入 (QSS) | 部門データベース、部門ワークフローなど | 商品開発管理、設計工程管理、予算実績管理などの現場基幹業務システム |
全社導入 (CLLコア) | 人事・総務系申請システムなど | 契約管理システムやERPフロントシステムなど |
企業グループ導入 (CLLワイド) | 稟議やワークフローなどの標準的な利用形態 | グループの間接部門業務を集約するシェアードサービス基盤など |
(「SmartDB®」の導入支援パターン)
導入支援パターン | 内容 |
完全自走型 | 当社の提供する初期オンボーディング(3か月間)支援のみで市民開発を推進しシステムの内製化を実現するパターン |
伴走協働型 | 当社の提供する初期オンボーディングに加え、特定の業務アプリケーション開発を当社もしくは当社のパートナー企業が支援するパターン |
請負型 | ERPフロントシステムなどのアプリケーション開発や他システム連携の難易度が高い場合などにおいて、当社もしくは当社のパートナー企業がプロジェクトとして請負うパターン |
「SmartDB®」の導入に際しては、顧客企業における体制面の整備状況や、SmartDB®を利用して実現したいシステムの要件に応じて、上記の支援パターンを選択することができます。完全自走型でスタートした場合でも、活用度合の進展状況に応じて追加的な支援が必要になった場合は、伴走協働型もしくは請負型が追加的に選択されるケースがあるものと考えております。
当社グループは、当面の間「SmartDB®」の導入によって顧客との関係性を深め、経営改革・業務改革における「協創パートナー」としての地位確立を目指してまいります。また、さらに深く広い範囲での価値提供を行うため、2022年より製品間の機能的な連携を高める社内プロジェクト「スクラム作戦」を開始いたしました。本プロジェクトでは、SaaSプロダクト(SmartDB®、InsuiteX®、Shopらん®)間のユーザー管理・権限設定の共有化や、APIを介したデータ連携の高度化に取り組んでおります。
今後は「SmartDB®」を軸として、社内ポータル構築ツール「InsuiteX®」、チェーンストア特化型情報共有ツール「Shopらん®」、特定顧客向け開発運用一体型クラウドサービス「DCR(DX Custom Resolution)」の追加導入を図り、顧客の生産性向上や「協創」環境の創造に貢献しながら、収益の拡大を追求してまいります。
(4)市場規模
主力製品である「SmartDB®」は「ノーコード開発ツール」に属しておりますが、当該製品の2024年度の市場規模は808億円と予測されており、年率18.1%の成長が見込まれております。(株式会社アイ・ティ・アール:ローコード・ノーコード開発市場2023)
また「SmartDB®」はERPフロントシステムとしての活用も可能であり、当該市場の規模は2023年度で1,164億円、2027年度には2,837億円に成長すると予測されております。(デロイトトーマツミック研究所:ERPフロントソリューション市場の実態と展望2023年度版)
「SmartDB®」はSaaSとして分類されるサービスであり、国内SaaS市場の2023年の規模は1兆4,128億円と見込まれております。(株式会社富士キメラ総研:ソフトウェアビジネス新市場2023年版)
「SmartDB®」はこれらの市場に止まらず、受託開発にも引けを取らない高度な機能を備えていると認識しており、受託開発市場8兆7,673億円(総務省情報流通行政局 経済産業省大臣官房調査統計グループ「情報通信業 基本調査結果2022年3月29日」)という市場へのアクセスも可能であると考えております。
なお、「SmartDB®」の提供価格から算出した市場規模は3,564億円と推計しております。これは、当社のターゲットである1,000名以上の大企業4,161社に就業する従業員数1,485万人(総務省統計局;経済センサス平成26年調査)に、SmartDB®と他製品をセットで利用した場合の想定金額(一人当たり月額2千円)を乗じて算出したものです。
(5)競合環境
「SmartDB®」が属するノーコード・ローコード開発市場には、複数の競合製品が存在しております。しかし、当社以外の国内ベンダーの製品は、主に中小企業をターゲットとしており、大企業の高度な要求を満たすだけの機能的網羅性が十分ではないと認識しております。一方、海外ベンダーの製品は、日本特有の組織構造、意思決定プロセスへの対応などが標準機能として提供されておらず、システムインテグレーターによる追加開発や高額な導入サービスが必要となるケースが多いものと考えております。
当社のサービスは、機能的網羅性および投資効率の面で優位性があり、また、豊富な導入実績に基づく業務ノウハウを通じ、付加価値の高い導入・活用コンサルティングを提供できる点も強みであると認識しております。
(6)ビジネスモデルの変革
当社グループは、設立当初の1999年から、独立系ソフトウェアベンダーとして、自社開発パッケージソフトウェアの販売を行ってまいりました。近年になり、ようやく大企業におけるクラウド利用が進展してきたため、2018年12月にパッケージソフトウェアの新規販売を停止し、SaaSプロダクト(SmartDB®、InsuiteX®)を提供するクラウドサービスベンダーへの転換を図りました。
ビジネスモデルをパッケージソフトウェア型からクラウドサービス型へ転換するにあたっては、収益モデルの変更と、新たな組織能力を確保するための投資を必要とします。売上面では、ソフトウェアを販売した時点で全額計上する方式から、毎月一定額を回収する月額利用料方式に変更となり、成長が一時的に鈍化します。一方、プロダクトをSaaS型に適合するための開発や、顧客への導入支援や利活用促進をおこなうカスタマーサクセスチームの新設などが必要となり、コストの増加を招くこととなります。そのため、2020年12月期から2期間にわたり赤字を計上いたしましたが、粘り強くビジネスモデルの転換に取り組んだ結果、2022年12月期には再び利益を計上できる状況となっております。
各事業の売上高および総売上高に占めるクラウド事業売上比率およびストック売上比率の推移は以下の通りです。
(セグメント別売上構成の推移) (単位:千円)
| 内訳 | 2019年12月 | 2020年12月 | 2021年12月 | 2022年12月 | 2023年12月 |
ストック売上 | クラウド事業 | 1,065,910 | 1,330,903 | 1,706,239 | 2,319,222 | 3,127,016 |
オンプレミス事業 | 867,536 | 730,578 | 632,746 | 575,560 | 551,365 | |
小計 | 1,933,446 | 2,061,481 | 2,338,985 | 2,894,782 | 3,678,382 | |
スポット売上 | オンプレミス事業 | 69,965 | 63,305 | 23,184 | 23,319 | 46,070 |
プロフェッショナルサービス事業 | 728,662 | 589,666 | 576,689 | 752,205 | 715,603 | |
小計 | 798,627 | 652,972 | 599,873 | 775,524 | 761,673 | |
合計 | 2,732,074 | 2,714,454 | 2,938,859 | 3,670,307 | 4,440,056 |
(注)2019年12月期から2020年12月期の売上高は、当社単体の数値を記載しており、有限責任監査法人トーマツによる監査を受けておりません。ストック売上に含むオンプレミス事業売上はソフトウェアメンテナンス売上であり、スポット売上に含むオンプレミス事業売上はパッケージライセンスとなっております。
(全社売上に占める割合)
| 2019年12月 | 2020年12月 | 2021年12月 | 2022年12月 | 2023年12月 |
ストック売上比率
(うちクラウド事業比率) | 70.8%
(39.0%) | 75.9%
(49.0%) | 79.6%
(58.1%) | 78.9%
(63.2%) | 82.8%
(70.4%) |
(注)2019年12月期から2020年12月期の売上比率は、当社単体の数値を元に算出しており、有限責任監査法人トーマツによる監査を受けておりません。ストック売上はクラウド事業売上とオンプレミス事業のソフトウェアメンテナンス売上の合計値を総売上高で除して算出しております。クラウド事業売上比率は、SaaSプロダクト「SmartDB®」、「InsuiteX®」、「Shopらん®」及び「DCR」の売上合計値を総売上高で除して算出しております。
(7)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、成長性、収益性、キャッシュフローの観点から、売上高成長率、売上総利益率および営業キャッシュフローに影響を与える前受収益(※)残高を重視しております。特に成長指標の核となる売上高においては、総売上高に占めるストック売上高比率に加え、クラウド事業の売上高成長率、導入企業数、平均月額利用料、売上継続率を重視しております。
(※)前受収益は連結財務諸表上において契約負債に含めて表示しております。
(8)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①優秀な人材の確保と育成
当社グループの成長には、優秀な人材の確保と育成が欠かせません。新卒採用を軸としながらも、プロダクト開発、サービス運用、カスタマーサクセス、フィールドセールス、マーケティングなどの職種において、積極的な採用活動を進めてまいります。また、教育研修・評価制度の充実などを通じ、既存社員の能力向上にも努めてまいります。
②製品競争力の向上
当社グループの成長には、提供価値の中核をなすクラウドサービスの競争力が欠かせません。定期的な開発プロセスの見直しや、子会社・業務委託先の有効活用を通じ、開発スピードおよび品質の向上を図ってまいります。また、当社グループのクラウドサービスは大企業をターゲットとしているため、大規模利用に耐えうるパフォーマンスの向上や機能拡張が必要となります。さらには、顧客社内で自律的に利用が拡大するような機能の開発も求められます。今後も積極的な開発投資を継続し、製品競争力を向上させることで収益機会の拡大に努めてまいります。
③当社グループ及び導入事例、活用実績の認知度の向上
当社グループの成長には、対象市場における認知度向上が不可欠です。とりわけ、当社グループが有する豊富な業務デジタル化事例や、経営改革・業務改革の成功事例を積極的に訴求することが重要であり、顧客の「協創パートナー」として第一に選択いただける存在となるようコーポレートブランドの確立を目指してまいります。また、当社グループが提供する各種クラウドサービスについても、デジタルマーケティングやイベント出展など、積極的なプロモーション活動を通じ、認知度の向上を図ってまいります。
④仕組み・仕掛けの整備
当社グループの製品・サービスをより多くの顧客に提供するためには、「仕組み・仕掛け」の整備が重要となります。例えば、より多くの業務デジタル化人材を創出するためのSmartDB®資格認定制度や、高度なシステム要件に対応するためのAPIおよびSDK(Software Development Kit)の整備、顧客同士の情報交換を活性化するためのコミュニティ形成、また、購入しやすく投資対効果を検討しやすい価格・ライセンス体系の整備などが挙げられます。
また、開発、営業、マーケティングなどの組織運営における各種業務においても、「仕組み・仕掛け」化を推進することにより、業務品質を保ちつつ生産性を高め、人的資源の投入量に依存しない形での収益向上を目指してまいります。
⑤戦略パートナーの拡大
当社グループのSaaSプロダクトは、導入企業数および適用業務数から見て、いわゆる「キャズム」(※)を超えた状況となっております。
これまでは、直接販売によって顧客基盤を拡充してまいりましたが、今後の本格的な普及にあたっては、戦略パートナーの拡大が必要となります。現在パートナーの種別は以下の3種類に区分しております。
・クラウドソーシング(人材派遣業およびクラウドワーカー)
SmartDB®上でアプリケーション開発を行うことができる人材の創出
・クラウドインテグレーター(システムインテグレーター)
SmartDB®を開発基盤として利用
・ソリューションプロバイダー(事業会社およびコンサルティング企業)
SmartDB®上で業種固有プロセスをテンプレート化し、自社ソリューションとして提供
上記に示したとおり、人材派遣業やクラウドワーカー、システムインテグレーター、事業会社、コンサルティング企業など、様々な企業で構成されたパートナー制度を確立し、多様なニーズに合致した付加価値の提供を可能とすることを重視しております。なかでも、システムインテグレーターはDXの基盤となる基幹系システムの刷新プロジェクトを請負うことが多いため、SmartDB®の活用による投資効率の向上を図り、顧客のIT予算最適化に貢献するよう積極的な働きかけを行ってまいります。
当社が基本戦略として推進する「デジタルの民主化」は、非IT人材による市民開発に止まらず、国内IT産業の課題である多重下請構造やウォーターフォール開発による受託開発型ビジネスの変革を狙うものでもあります。上記の多様なパートナーが、顧客や元請けベンダーと主従関係を結ぶのではなく、水平的な「協創パートナー」となることで、大企業システムの在り方を大きく変え、クラウド時代にふさわしい開発・運用体制の構築とDXの推進に貢献してまいります。
(※)キャズム
マーケティング・コンサルタントのジェフリー・ムーア氏が提唱したマーケティング理論「キャズム理論」の基本コンセプト。技術進化の激しい「ハイテク業界」の製品を普及させるためには、イノベーター、アーリーアダプターと称される技術選好者が属する初期市場と、マジョリティと称される大多数の消費者が属するメインストリーム市場の間に存在する深い溝(キャズム)を超える必要があるとするもの。
⑥顧客コミュニティの形成
顧客基盤をより強固なものとするため、自社企画のイベントなどを通じ、顧客コミュニティを活性化していくことが必要となります。顧客が持つ業務デジタル化ノウハウを顧客同士で共有できるコミュニケーション基盤を構築し、優良な顧客コミュニティを形成してまいります。
⑦新サービスの開発
SmartDB®で拡充した顧客基盤に対して、より多面的な付加価値提供を行うためには、新サービスの開発が必要となります。特定顧客向け開発運用一体型クラウドサービスDCR(DX Custom Resolution)の提供を通じて探索した市場・顧客ニーズに基づき、SaaSラインナップの拡充を推進してまいります。
⑧情報管理体制の強化
当社グループが提供するサービスは、個人情報を含む顧客情報を取り扱っており、これらの情報管理は重要課題と位置付けております。個人情報保護方針等の社内規程の整備および運用の徹底、ISMS認証に基づく業務オペレーションの確立および運用、社内研修の実施などを通じ、一層のセキュリティ強化を進めてまいります。
⑨財務基盤の強化
当社グループは、クラウドサービスの開発および顧客基盤拡充を重視しており、今後も積極的に投資を行っていく方針であるため、財務基盤の強化が必要となります。直接金融、間接金融を活用し、資本市場とのコミュニケーションを深め、事業展開に見合った財務基盤の強化を図ってまいります。
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