ツクルバ 【東証グロース:2978】「不動産業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
なお、不動産企画デザイン事業につきましては、2023年11月1日付で事業譲渡(会社分割及び新設会社の株式譲渡)が完了しております。
(1) 経営方針等
(i)経営方針
当社グループは、「「場の発明」を通じて欲しい未来をつくる。」をミッションに掲げ、デザイン×ビジネス×テクノロジーの融合を強みとし、主に住宅領域の社会課題を解決することで、これまで生み出せなかった新たな価値をつくり社会に届けていくことを目指しています。
(ⅱ)事業アプローチ
当社グループは、主に住宅領域の社会変化の兆しに着目し、デザイン×ビジネス×テクノロジーの融合により、これまで生み出せなかった価値を社会に届けていくことを目指しています。そのため、事業づくりにおいても、従来の競争型のアプローチではなく、異なる領域を“和える”編集型のアプローチにより産業を再定義していく独自の手法で事業創造を行っていきたいと考えています。
| 競争型のアプローチ | 編集型のアプローチ |
基本的な戦略 | 競争優位の確立による シェア拡大・維持 | 産業の再編集による 市場創出 |
競争優位の源泉 | 機能やコスト面での優位性 | 一貫した世界観の確立による 高いエンゲージメント |
重視する顧客価値 | 経済価値・スペック | 感情価値・体験 |
オペレーションのつくり方 | 競争優位につながる 特定機能に特化し秀でる | デザイン、テクノロジーを活用し 高度なオペレーションの統合を実現 |
組織のつくり方 | 特定機能の効率的な実践が 可能な統制された組織 | 多様な職能が共存し 共創を行う組織 |
(ⅲ)共創型ワークスタイルの実践
事業プロデュース、広告クリエイティブ、不動産流通、建築・空間設計、メディア運営、編集、コミュニティマネジメント、イベントプランニング、そしてITエンジニアリングに至るまで、多様な職能のメンバーがツクルバに集っています。それぞれが自分の「色」を持ちながら、所属を超えて混ざり合い、「新たな色」を生み出す共創型ワークスタイルを実践することで、デザイン×ビジネス×テクノロジーの融合を実現しています。
(2) 経営戦略等
当社グループは、主力事業であるcowcamo(カウカモ)事業のサービス改善および組織体制の強化により事業規模を拡大させてまいります。具体的な経営戦略につきましては、以下のとおりであります。
(i)統合型の住宅流通プラットフォーム「cowcamo」の確立・拡大
① cowcamoが目指す流通構造の改革
(a)中古住宅流通のバリューチェーンをテクノロジーで統合
中古住宅に関する既存の流通構造では、再販事業者が売主から物件を買取り、リノベーションを施して再販する「買取/企画開発」のプロセス、不動産ポータルサイトの運営事業者が物件情報を掲載する「情報流通」のプロセス、不動産売買仲介事業者を通じて買主が中古住宅を購入する「不動産流通」のプロセスが、いずれも別個の事業者に分散して行われています。当社グループのcowcamoでは、中古・リノベーション住宅の企画開発、情報流通、不動産流通の一連のプロセスをデザインとテクノロジーで統合することにより、一貫した顧客体験と業務の生産性向上の両立を図っております。
(b)徹底的なユーザー視点で住宅購入の体験を革新
当事業では、デザインとテクノロジーを用いたメディアサービス及びエージェントサービスの統合により、ソーシャルメディア等のチャネルに特化した物件との出会いの体験、独自に撮影した画像や取材記事を中心としたコンテンツ型メディアを通じた物件選びの体験、エージェントとのコミュニケーションをオンラインチャットやオンラインミーティング等で行うことによる物件購入の体験等、住まい探しの初期段階から購入までの一連の顧客体験すべてをデザインする事で、住宅購入に関する顧客体験の刷新を図っております。
② 独自のポジショニング
当社グループは、cowcamo(カウカモ)事業において、情報解析等のテクノロジーによって、従来は独立に存在していた不動産ポータル、仲介業ならびに不動産事業者支援サービスを統合した新しいプラットフォームを確立・拡大したいと考えております。
日本の住宅流通領域におけるサービスは、Web業界を出自とする不動産ポータル事業者、不動産業界を出自とする仲介事業者、またシステム・ソフトウエア業界を出自とする不動産事業者向けシステムの提供など、事業体の出自により、それぞれが独立に事業・サービスを提供し、分散されてきました。しかしながら、当社グループが市場機会として着目する中古・リノベーション住宅の流通におきましては、物件の固有性と多様化する顧客ニーズを適切にマッチングさせた上で、顧客の求める一点ものの商品を企画することが重要となるため、各事業体が提供するサービスを統合した事業モデルが有効であると考えております。
また、このような統合型の住宅流通プラットフォームを確立する上では、Webサービスの開発力、仲介業務の理解ならびに仲介業務を効率化する業務システムの開発力、物件情報を供給する不動産事業者とのネットワーク及び同事業者に対する業務支援サービス・システムの開発力など、テクノロジーと業務オペレーション、組織力の高度な統合が必要となり、これが同業他社による類似サービスの展開に対する障壁として有効に機能するものと考えております。
③ 一連のプロセスをデザインとテクノロジーによって統合・最適化
当社グループは、データ(物件データ、顧客データ、デザインデータ)を中心として、一連の業務プロセスを自社開発のシステムによって効率的にデザインして統合・最適化し、エージェントの生産性を継続的に改善する方針です。業務プロセスの具体例は以下の通りです。
(a) マーケティング:マーケティング支援ツールを用いた会員データ解析、マーケティングオートメーション
(※3)
(b) 物件企画・開発:企画支援ツールを用いた査定業務の自動化、物件・デザインデータの解析
(c) コンテンツ制作:制作支援ツールを用いたコンテンツ管理、物件選定の自動化
(d) エージェント・業務支援:エージェントCRMツール(※4)を用いた顧客データ管理、顧客と物件のマッチングによる提案支援、顧客応答の自動化、エージェントアサイン(※5)の自動化
④ ユーザーを起点とした自律的成長サイクルの実現
当社グループは、中古マンション購入における一連の顧客体験の統合・刷新等により、ユーザーのエンゲージメント(※6)を高めることで会員数の拡大を図る方針です。主な会員数の拡大のサイクルは以下の通りです。
(i) オンライン・オフラインを統合してデザインされた洗練されたユーザー体験によりユーザーが蓄積
(ii) 蓄積されたユーザーの購買行動により、顧客嗜好、取引、空間・企画のデータが蓄積
(iii)蓄積されたデータを活用して売主側の仕入、リノベーション企画・開発、売却を提案
(iv) データを基にユーザーニーズに基づく物件が供給される
(v) ストーリー調の魅力的な記事により、蓄積された豊富なユーザーに訴求
(vi) ユーザーがさらに集まり、反響(※7)も集まり、早く適正な価格で売れる
(vii)それによってさらに売主が集まる
上記のように、洗練されたユーザー体験により既に蓄積されているユーザー基盤を起点とし、そのユーザー基盤に対して売主が集まり、さらにデータ活用によりユーザーが望む魅力的な物件が増え、さらにそれによってユーザーが増える、というユーザー基盤を起点とした自律的成長サイクルを実現しています。
⑤ 顧客、データ、ノウハウの蓄積により持続的な競争優位を確立
当社グループは、これまでの事業運営において、独自の顧客基盤、データ、オペレーションノウハウを蓄積して参りました。今後も独自の顧客基盤、データ、オペレーションノウハウの蓄積により、持続的な競争優位の構築を図る方針です。
(a) 顧客基盤の蓄積:cowcamoは首都圏における中古・リノベーション住宅流通プラットフォームとして多数の利用事業者数・ユーザー数を擁しております。
(b) データの蓄積:当社グループは、首都圏の中古・リノベーション住宅流通に関する独自のデータを蓄積しております。これらのデータは、自社での取材や実際の取引に基づく統合的なデータ(物件の定性的な評価情報や内装写真等の物件固有のデータ、売出から成約にいたるまでの価格推移等の取引情報データ、cowcamo上でのユーザーの物件への反響行動に関するデータ等)であり、これまでも部分的には存在していましたが、これらのデータを統合的に蓄積している点で、希少性の高い情報資産であると考えております。
(c) オペレーションノウハウの蓄積:当社グループは、オペレーション(物件情報取得、企画・デザイン、取材・記事制作、マーケティング、顧客管理、マッチング、接客支援等)をテクノロジーを活用して統合しております。一連のバリューチェーンを統合したノウハウが、同業他社による類似サービスの展開に対する障壁として有効に機能するものと考えております。
⑥ 一貫した世界観を実現するための組織
当社グループの組織的な能力であるテクノロジー、オペレーション、デザインが、構想力、プロダクト力、マーケティング力を発現する事で、中古住宅流通のバリューチェーンの統合による一貫した世界観が実現されると考えております。
(a) テクノロジー:エンジニア、データサイエンティスト(※8)を中心としたメンバーにより実現
(b) オペレーション:営業、マーケティング、コンテンツ制作を中心としたメンバーにより実現
(c) デザイン:Web/UXデザインに加え、建築デザインを専門とするメンバーにより実現
⑦ 「cowcamo」による市場創出
当社グループは、cowcamoを通じて、中古・リノベーション住宅の適切な価格形成と生涯買い替え頻度の向上により、中古物件流通市場の活性化をリードしたいと考えております。cowcamoは中古住宅の流通市場を対象としておりますが、(a)価格形成×(b)買い替え頻度向上により対象市場の拡大を図る方針です。なお、国土交通省「住生活基本計画(令和3年3月19日)」では、2018年に全国12兆円であった中古住宅・リフォーム市場が長期的に20兆円となることが目標として掲げられております。
(a) 価格形成の観点
これまで | ・再販時の物件価格は、リノベーション物件購入時の物件価格を大きく下回る傾向 ・リノベーション物件の履歴事項や物件の固有性が評価されず、経年での価格下落が大きい |
cowcamoが果たす役割 | ・リノベーション物件の流通データの蓄積によるリノベーション物件の公正な評価 ・一点ものの魅力を伝えるプレゼンテーション |
これから | ・再販時の物件価格が、リノベーション物件購入時の物件価格に近づく ・リノベーション物件の履歴事項や物件固有性を評価・伝達し、経年での価格下落を緩やかにする |
(b) 買い替え頻度向上の観点
これまで | ・20代は賃貸、30代で持ち家を購入し、同じ住宅に住み続ける「持ち家は一生もの」という価値観 |
cowcamoが果たす役割 | ・ライフスタイルに応じた住み替えの促進 ・流通中間コストの削減による買い替えの経済性向上 |
これから | ・従来の価値観に囚われず、ライフスタイルに応じて住宅を買い替える価値観 |
⑧ 事業アセットを活用した更なる成長ポテンシャル
当社グループでは、cowcamo(カウカモ)事業の事業アセットであるデータ、デザインノウハウ、オペレーションモデル、ブランドを活用することで、収益機会の拡大と収益性の向上を図る方針です。
(a) データ、デザインノウハウの横展開による収益機会の拡大:売主・事業者向けサービス
・蓄積したデータを活用し売主・再販事業者へ企画・開発を支援(供給物件の質・量の向上、収益源の拡大)
(b) デザインノウハウ、ブランドの横展開による収益機会の拡大:自社企画物件
・デザインノウハウ、ブランドを活用し、自社企画物件を提供(流通額に対する収益性向上)
(c) オペレーションモデル、ブランドの横展開による収益機会の拡大:パートナーモデル
・自社エージェントにて確立されたオペレーションモデルを横展開(事業の拡張可能性の向上、収益源の拡大)
⑨ リノベーション時代の住宅流通プラットフォームとしてのポジションを確立
当社グループはリノベーション時代の競争原理の変化の特徴として、自分らしい生活を志向する購入者層の増加、ビジュアルコミュニケーションの重要度の高まりがあると考えております。当社グループはcowcamoを通じて、リノベーション時代の住宅流通プラットフォームとしてのポジション確立を図ってまいります。
| 従来の住宅流通産業 | cowcamoが実現するプラットフォーム |
バリューチェーン上の力点 | 川上(住宅の供給者) | 川下(住宅の購入者) |
顧客の物件選択の軸 | スペック (住宅の広さ、間取り、部屋数等) | ストーリー・デザイン (ユーザーの視点に立ち、住みたい街や理想の暮らしを想像できる記事) |
情報流通に求められる機能 | 検索・絞り込み | マッチング・提案 |
キーコンテンツ | 定量情報 | 定性情報・ビジュアルイメージ |
オペレーション | 分散的 | 統合的 |
⑩ 企業価値向上に関する当社グループの考え
当社グループは、ユーザー基盤の蓄積と成約率改善による売上総利益の継続的な成長及びオペレーション最適化による営業利益率の改善、並びに創出された利益の再投資による売上総利益の更なる拡大により、企業価値の向上を図る方針です。具体的には(a)取引件数の増加及び(b)取引あたり収益の増加による売上総利益の成長と、(c)広告効率及び(d)オペレーション効率等の向上による営業利益率の改善を通じた企業価値の向上を目指して参ります。
(a) 取引件数の増加要因:会員数の蓄積、成約率の向上、生涯取引機会の拡大等
(b) 取引あたり収益の増加要因:流通価格の適正化、テイクレート(※9)の向上、周辺領域での収益化
(c) 広告効率の改善要因:広告運用パフォーマンスの継続的改善(広告運用の内製化・最適化、顧客別のナーチャリング(※10))、プロダクトの継続的改善
(d) オペレーション効率の改善要因:エージェントオペレーションの型化・高度化(営業プロセスの型化と独自CRM開発、独自ツール開発、営業支援システム導入などによる業務プロセスの省人化)、その他オペレーションの型化・高度化
なお、(c)広告効率の改善及び(d)オペレーション効率の改善により「cowcamo(カウカモ)事業」のセグメント利益率は継続的に改善しております。
当社グループが経営管理上重要視しているKPI(Key Performance Indicator の略称で主要な業績評価指標のこと)は以下の通りです。
「cowcamo」のKPIの推移
期間 | GMV(期間合計) | テイクレート(期中平均) 単位:% |
2020年7月期 | 22,694 | 4.7% |
2021年7月期 | 27,983 | 4.1% |
2022年7月期 | 36,887 | 4.6% |
2023年7月期 | 52,673 | 4.6% |
2024年7月期 | 56,003 | 5.0% |
(注)1. 「GMV(Gross Merchandise Value:流通総額)」は、特定の期間においてcowcamoを通じて消費者が購入した商品の合計値です。取引された住宅の総額やリノベーション工事などの総額が含まれます。表中の数字は住宅の購入に関して取引決済日を基準として集計した数値です。金額は百万円未満を切り捨てしております。
2.「テイクレート(付加価値獲得率)」は、特定の期間におけるcowcamo事業の売上総利益をGMVで除することで算出される流通における付加価値獲得率です。比率は小数第二位を四捨五入しております。
「cowcamo」の参考指標の推移
期間 | 会員関連指標 | 取引関連指標 |
会員数(期末) 単位:人 | 取引件数(期間合計) 単位:件 | |
2020年7月期 | 190,450 | 432 |
2021年7月期 | 288,593 | 573 |
2022年7月期 | 369,532 | 782 |
2023年7月期 | 440,480 | 972 |
2024年7月期 | 486,460 | 1,092 |
(注)1. 「会員数」は、「cowcamo」に会員登録したユーザーの特定の期間の末日における会員数です。一度も取引を行ったことのない会員も含まれております。
2.「取引件数」は、特定の期間において販売された住宅の件数の合計値です。表中の数字は住宅の購入に関する売買契約書の締結日を基準として集計した数値です。なお、同一取引において複数戸数の販売が行われる場合、従来は戸数単位で集計しておりましたが、取引単位の集計に修正しております。
業績の推移(単位:百万円)
期間 | 売上高 | 売上総利益 | 営業利益又は営業損失(△) | |||
| 全社 | cowcamo (カウカモ) 事業 | 全社 | cowcamo (カウカモ) 事業 | 全社 | cowcamo (カウカモ) 事業 |
2020年7月期 | 1,718 | 1,339 | 1,194 | 1,077 | △150 | 283 |
2021年7月期 | 1,624 | 1,240 | 1,264 | 1,152 | △358 | 32 |
2022年7月期 | 2,766 | 2,363 | 1,844 | 1,710 | △773 | △16 |
2023年7月期 | 4,152 | 3,797 | 2,522 | 2,414 | △132 | 628 |
2024年7月期 | 5,483 | 5,396 | 2,824 | 2,801 | 155 | 1,024 |
(注) 1.「営業利益又は営業損失」は、「全社」については全社の営業利益又は営業損失です。また、「cowcamo(カウカモ)事業」については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に掲げる「セグメント利益又は損失」です。なお、2023年7月期より、報告セグメントごとの業績をより適切に反映させるために、全社費用の配賦方法を見直し、報告セグメントの利益又は損失の測定方法の変更を行っております。2022年7月期以降のcowcamo(カウカモ)事業におけるセグメント利益は、変更後の測定方法に基づき作成したものを開示しております。
2. cowcamo(カウカモ)事業の主な収益源は、中古・リノベーション住宅の売買に関して売手及び買手から受領する売買仲介手数料等でありますが(純額により売上計上)、顧客ニーズに応じて一時的に物件の仕入・販売取引(再販取引)を行うケースがあります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、上記「企業価値向上に関する当社グループの考え」に記載の通り、売上高、売上総利益及び営業利益並びにGMV、テイクレートを重要な経営指標とし、高収益事業を展開していくことにより利益率の向上を図ってまいります。
(4) 経営環境
当社グループは、cowcamo(カウカモ)事業に係る事業環境を以下のように認識しています。
① 市場規模
cowcamoがターゲットする首都圏の中古マンション流通市場は、2023年時点で6.6兆円と推計されます(注1)。
中古マンションストックにおいては、築年数25年以上の物件の割合が32%(2015年)から58%(2023年)に上昇しており、2025年には全体の6割を超過すると推定されます(注2)。築年数の古い物件においては、リノベーションが実施される割合が高いことから、当社グループがターゲットとしている中古・リノベーション住宅セグメントの流通量は中長期的に拡大するものと考えております。
当社グループでは、首都圏での住宅購入においてリノベーションが普及するなかで、市場の拡大・一般化に伴ういくつかの変化を予想しております。
(a) リノベーション住宅市場の形成
・リノベーションを前提とした流通価格の形成
・「安いから」中古リノベーションから「こだわるなら」中古リノベーションへ
(b) 中古住宅の流通方法の多様化
・リノベーション済住宅の購入
・中古住宅の購入後にリノベーションを実施
・リノベーション済住宅の購入後に追加でリノベーションを実施
(c) 中古住宅流通事業者の変化
・再販事業者の拡大
・リノベーション住宅専門サイトの成長
② ユーザー基盤の拡大
当社グループは、ユーザー基盤の拡大を軸に、収益機会の最大化と市場創出に取組む方針です。cowcamoの更なる認知拡大やプロダクトの機能向上を通じて、より多くのユーザーにご利用頂けるサービスを目指して参ります。また、現在の営業エリアである東京・横浜エリア(ターゲット層人口は約200万人、うち推計中古住宅購入検討者数約180万人)から首都圏(ターゲット層人口は約450万人、うち推計中古住宅購入検討者数約410万人)への展開を通じて、一層のユーザー基盤の拡大を図って参ります(注3)。
(注) 1.公益財団法人東日本不動産流通機構「年報マーケットウォッチ 2023年度」、公益財団法人不動産流通推進センター「2024不動産業統計集(3月期改訂)3不動産流通」、リフォーム産業新聞社「中古住宅リノベ市場データブック 2022-2023」から首都圏における40㎡超のマンションの市場規模を当社グループが推計
2.公益財団法人東日本不動産流通機構等のデータより当社グループが推計
3. 東京・横浜エリアおよび首都圏のターゲット層人口(i)、推計中古住宅購入検討者数(ii)は以下の様に推計しております。
(i)東京・横浜エリアおよび首都圏のターゲット層人口:東京都及び横浜市(A1)、首都圏(A2)それぞれにおける25歳以上50歳未満の人口×推計持ち家許容割合(B)×推計中古住宅許容割合(C)により算出
A1:「住民基本台帳による東京都の世帯と人口(令和6年1月)」東京都総務局統計部
「令和6(2024)年 年齢別人口(住民基本台帳による)」横浜市政策局総務部
A2:「人口推計 2023年10月1日現在人口推計」総務局統計部
B:「平成30年度 住宅経済関連データ 3.住宅に対する国民の意識」国土交通省 において「現在借家」の世帯のうち、今後の居住形態及び住み替え方法を「借家などへの住み替え」と答えた世帯を除く世帯の割合(57.0%)
C:「平成30年度 住宅経済関連データ 3.住宅に対する国民の意識」国土交通省 において「現在借家」の世帯のうち、今後の居住形態及び住み替え方法を「中古住宅」「こだわらない」と答えた世帯の割合(56.0%)
(ii)都区部および首都圏の推計中古住宅購入検討者数:都区部および首都圏それぞれのターゲット層人口(i)×5年以内に住み替えを希望する割合(D)により算出
D: 「今後の住み替え・改善意向(14区分)/家計主の年齢(8区分) 」総務省統計局 において、世帯主の年齢が50歳未満の世帯のうち、5年以内に「できれば住み替えたい」と答えた世帯の割合(91.0%)
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループの対処すべき課題としましては、既存事業の拡大、収益性の向上及び中長期的な成長に資する体制整備が重要であると認識しており、特に下記を重要課題として取組んでおります。
① サービスの知名度向上
当社グループは、テレビや新聞、雑誌、ラジオ等のマスメディア向けの広告は実施しておらず、これまで培ってきたデジタルマーケティングのノウハウを活用することにより、ユーザー、会員を獲得してまいりました。
一方で、当面の対象市場としている首都圏の中古マンション流通市場の規模は6.6兆円(上記(4)参照) と広大であり、中でもリノベーションマンション市場は今後も堅調に拡大していくものと想定します。このため、今後のユーザー、会員獲得においては、より広範な認知の獲得が重要であると認識しており、今後はこれまで構築してきたデジタルマーケティングの効率改善と並行し、費用対効果を慎重に検討した上で、テレビや新聞、雑誌、ラジオ等のマスメディアを活用した広告宣伝活動も検討してまいります。
② エージェントサービスのオペレーションの高度化・効率化
当社グループは、これまでに開発してきた業務管理システム、蓄積してきたノウハウにより、エージェントサービスの生産性向上とサービス品質の両立に取組んでまいりました。
しかしながら、今後の事業成長のためにはさらなるユーザー数の増加が必要であり、恒常的な収益性の向上を実現するためには、引き続きオペレーションの高度化・効率化が重要であると考えております。そのため、蓄積された顧客データ・業務データのさらなる活用、業務の自動化等の施策を実施してまいります。
③ 事業開発の強化
当社グループは、早期の事業拡大のために適切な外部の事業者との連携が重要であると考えております。そのため、取引先事業者との関係を強化し、事業開発の推進を図ってまいります。具体的には、cowcamo(カウカモ)事業においては、他の事業者との連携を通じた顧客向けサービスの拡充を推進すると同時に、物件供給及び事業者向けサービスの強化を図ってまいります。
④ 技術開発体制の強化
cowcamo(カウカモ)事業においては、技術革新のスピードは非常に早く、類似のサービスや競合の参入が予測されるため、新規サービスの展開スピードを速めるべく、エンジニアの採用・チーム体制の整備を通じて開発体制を早期に強化してまいります。
⑤ 組織体制の強化
当社グループは、事業規模の拡大及び成長のためには、専門性を有する人材の採用及び社員の育成及び社員への企業理念・経営方針の伝達が重要な課題と考えております。当社グループは社内研修の強化、福利厚生の充実を図っていくとともに、志望者を惹きつけるような事業を展開していくことで、優秀な人材の採用強化に取組んでまいります。また、社員に対して経営ビジョン・ミッションを踏まえた当社グループの経験とノウハウに基づく研修を計画的に実施していくことで、社員の育成及び企業理念・経営方針の伝達を行ってまいります。
⑥ 情報管理体制の強化
当社グループは、社内の情報管理体制を整備し、情報管理の徹底を図っておりますが、個人情報等の機密情報につきましては、社内規程の厳格な運用、定期的な社内教育の実施、情報セキュリティマネジメントシステムの整備等により、今後も引き続き、情報管理体制の強化を図ってまいります。
⑦ 内部統制の強化
当社グループ事業が継続的に成長し、顧客に安定したサービスを提供し続けていくためには、継続的な内部統制の整備、強化に取組んでいくことが重要であると考えております。当社グループは、組織が健全かつ有効的に運営されるように、内部統制の実効性を高めるための環境を整備し、コーポレート・ガバナンスを充実していくことにより、内部統制の整備、強化を行っていく方針であります。
〔用語説明〕
(※1) | CRM |
| CRMとは、顧客関係管理(Customer Relationship Management)の略称であり、顧客満足度等の向上を通じて、売上高の拡大及び利益率の向上を目指す経営戦略手法またはシステムのこと。 |
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(※2) | リスティングサイト |
| リスティングサイトとは、売主または売主に依頼された不動産売買仲介が売出中の物件を掲載するウェブサイトのこと。 |
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(※3) | マーケティングオートメーション |
| マーケティングオートメーションとは、顧客開拓におけるマーケティング活動を可視化・自動化するツールのことです。 |
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(※4) | エージェントCRMツール |
| エージェントCRMツール(Agent CRM)とは、エージェント向けの顧客関係管理による顧客満足度等の向上を通じて、売上高の拡大及び利益率の向上を目指す業務支援システムです。 |
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(※5) | エージェントアサイン |
| エージェントアサインとは、自社エージェントと問い合わせがあった顧客とのアポイントメント管理のことです。 |
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(※6) | エンゲージメント |
| エンゲージメントとは、特定の企業(企業自体、企業が提供する商品、ブランド等)に対して、顧客が高い好感度や忠誠心を抱き、強い絆で結びついている状態のこと。 |
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(※7) | 反響 |
| 反響とは、顧客から電話またはメール等で受ける物件に対する問い合わせのこと。 |
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(※8) | データサイエンティスト |
| データサイエンティストとは、主に、ITやビジネスに精通するデータ分析やマーケティングを行う専門家です。 |
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(※9) | テイクレート |
| テイクレートとは、Eコマース等の業態において、プラットフォーム上で取引されるGMV(Gross Merchandise Value:流通総額)に対して課される手数料率(Eコマース等の運営事業者の売上高となる)のこと。 |
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(※10) | ナーチャリング |
| ナーチャリングとは「養育」「育成」等を意味し、マーケティング戦略の分野においては「見込み客を顧客にする」という意味で用いられる。 |
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