ソニーグループ 【東証プライム:6758】「電気機器」 へ投稿
企業概要
ソニーのPurpose(存在意義)は、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」です。そして、そのキーワードは「感動」です。
世界が感動で満たされ続けるためには、人々のクリエイティビティを解き放つテクノロジーを生み出しつづけ、我々の文明を持続可能なものにする必要があります。これを明確にするために、「我々の文明を進歩させ、この惑星を持続可能にする」を、ソニーグループにおける研究開発のミッションとして掲げました。
ソニーのPurposeを実現するためには、多様なテクノロジーが必要となります。その中核となるのが「センシング」「AI」「仮想空間」の3つの領域とそれらの連動です。現実空間でのセンサーとAIの連動により、画像認識や音声認識の高度化が期待されます。そしてセンシングされたデータや、そのデータを学習することで強化されたAIを用いて、仮想空間上での精密なシミュレーションや魅力的なコンテンツの生成が可能となります。さらに、仮想空間で得られた結果をAIにフィードバックすることで、AIの能力を強化することができます。このように、センシング、AI、仮想空間を連動させ、ソニーをAI/Data-driven Companyへと変革していきます。
そして、ソニーはこれまでクリエイターの創造的なひらめきを支えることで、社会に対してポジティブなインパクトを生み出してきました。“We are here for creators”というソニーのR&Dの方向性のもと、クリエイターのためのテクノロジーを作り、クリエイターとともに未来を創造していきます。
ソニーグループの研究開発組織は、国内外の複数の拠点と連携し、それぞれの地域の特徴や強みを活かした研究開発活動を行っています。現地の優秀な研究開発人材の獲得をめざすとともに、ソニーグループの中だけに閉じず、外部のクリエイターやアカデミアとの連携も強化していきます。すでに世界各地の大学との共同開発など様々な活動を推進しており、今後さらに拡大させていきます。
2023年度の研究開発費は、前年度に比べ71億円(1.0%)増加の7,428億円となりました。金融分野を除く連結売上高に対する比率は、前年度の7.3%から6.6%になりました。
各分野及び当社の研究開発組織(以下「コーポレートR&D」)における研究開発費の金額は以下のとおりです。
項目 | 2022年度 (億円) | 2023年度 (億円) | 増減率 (%) |
G&NS | 2,711 | 2,816 | 3.8 |
ET&S | 1,557 | 1,548 | △0.6 |
I&SS | 2,237 | 2,192 | △2.0 |
コーポレートR&D | 464 | 454 | △2.2 |
2023年度の主な研究開発活動及び成果として、以下のものがあげられます。
(1)G&NS
・PlayStation®5向けクラウドストリーミング
2023年10月、PlayStation Plusプレミアムの加入者向けに、PS5™のクラウドストリーミング機能の提供を開始しました。PlayStation Plusのカタログに含まれるゲームや、PlayStation Storeで購入したPS5用の対象タイトルなど数百本のゲームをPS5本体にダウンロードせずにプレイできるようになりました。
・Access™コントローラー
2023年12月に発売を開始したAccessコントローラーは、ゲームのアクセシビリティをさらに一歩前進させるPS5用のアクセシビリティコントローラーキットです。アクセシビリティの専門家、コミュニティーメンバー、ゲーム開発者の協力により開発された本製品は、ハードウェア及びユーザーインターフェースの両面において様々なカスタマイズが可能で、あらゆる方がより簡単に、快適に、そして長い時間ゲームをお楽しみいただけるようサポートします。
(2)ET&S
・空間コンテンツ制作システム
高画質の4K OLEDマイクロディスプレイやビデオシースルー機能を搭載したXRヘッドマウントディスプレイ(HMD)と、3Dオブジェクトの精密な操作に最適化したコントローラーを備え、空間コンテンツ制作における高度なクリエイティブ作業に対応する没入型空間コンテンツ制作システムを開発しました。
このシステムでは、両眼8KのOLEDマイクロディスプレイがもたらす高精細表示に加えて、ビデオシースルー機能により、肉眼視に近い見え方で現実の空間に仮想の物体を表示します。また、手指で造形物を把持しながらキーボードで数値入力を行うことを可能とするリング型コントローラー、ポインティングのための独自のポインティングコントローラー、これらを用いて立体視による直感的かつ精密な制作を行うことを可能とするUIにより、クリエイターが現実と仮想空間をシームレスに行き来できる、没入感のある空間コンテンツ制作体験を提供します。
・360 Virtual Mixing Environmentとそれを支えるヘッドホン「MDR-MV1」
長年にわたる立体音響技術開発の集大成として、映画サウンド制作用スタジオの音・音場環境を、精密な音響測定をもとにヘッドホンのみで再現する技術「360 Virtual Mixing Environment」(「360VME」)を開発しました。SPE及びソニー・インタラクティブエンタテインメントと連携し、プロの制作用に特化して開発を進め、SPEのサウンド制作用リファレンススタジオや、PlayStation Studiosが持つゲームサウンド専用スタジオの音場環境を高精度に再現しました。そして、新しい振動板形状を採用し専用開発したドライバーユニットを備えた、立体音響制作に最適な背面開放型モニターヘッドホン「MDR-MV1」を商品化しました。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、自宅での作業を余儀なくされたミキシングエンジニアのために、SPEと連携し、「360VME」を用いてミキシングステージの音場を再現しました。これにより、映画サウンド制作の最前線で活躍するクリエイターからも認められるサウンド制作のクオリティを、クリエイターの自宅でも実現できるようになりました。新型コロナウイルス禍の終息後においても場所の制約を取り払った新たなワークフローとしての活用が期待されており、音楽などの立体音響コンテンツ制作向け「360VME」の測定サービス事業を開始しています。
(3)I&SS
・リアルな空間再現に貢献する大型で高精細な1.3型4K OLEDマイクロディスプレイ「ECX344A」
本製品は、カメラの電子ビューファインダー(EVF)の開発で培った微細化プロセスと独自の画素駆動回路の採用により、大型の1.3型ディスプレイにおいて4Kの高解像度を実現し、VR/AR向けヘッドマウントディスプレイによるリアルな空間再現に貢献します。さらに、新開発の高速駆動用ドライバー回路を搭載することで、4Kでも高フレームレートで滑らかな映像表現を実現します。また、従来の技術では色域と輝度の性能はトレードオフの関係にありましたが、色域を広げながら光の利用効率を改善する独自の画素構造を採用することで、広色域と高輝度性能の両立を実現し、高精細性と併せることで、リアルな映像による没入感の高い体験を可能にします。
・業界最多※1有効1,742万画素※2の車載カメラ用CMOSイメージセンサー「IMX735」
システムが自律的に運転操作を行う自動運転を実現するためには、周囲360度の車外環境を高精度にとらえることができる高度な検知・認識性能が必要となります。本製品は、業界最多の有効1,742万画素を実現したことにより、遠くの対象物を高精細に検知することを可能にします。加えて、画素信号の水平方向出力を採用することで、メカニカルスキャン方式のLiDARと同期しやすく、自動運転システム全体として検知・認識性能を向上させることも可能です。さらに、独自の画素構造と露光方法により飽和照度を改善したことで、逆光などの条件下でも白飛びを抑制し、またトンネルの出入り口などの明暗差の大きい道路環境においても、対象物をより正確に検知・認識することができます。本製品により、高度な検知・認識性能を有する車載カメラシステムを実現し、安心・安全な自動運転に貢献します。
※1 車載カメラ用のCMOSイメージセンサーとして(2023年9月12日広報発表時)
※2 イメージセンサーの有効画素規定方法にもとづく
(4)コーポレートR&D
・SOTA※生成モデルとリアルタイムアプリへの応用
機械学習による画像生成の領域において、独自の新たなモデルを開発し、従来のSOTA生成モデルを上回る品質を達成すると同時に40倍の高速化を達成しました。本技術に関する論文「Consistency Trajectory Models:Learning Probability Flow ODE Trajectory of Diffusion」及び「SAN:Inducing Metrizability of GAN with Discriminative Normalized Linear Layer」は機械学習の領域で権威ある国際会議「International Conference on Learning Representations 2024」において採択されました。この高速かつ高品質な生成技術は、ゲームなどのエンタテインメント事業でのリアルタイム背景映像生成等の応用が期待されています。
※SOTA: State-of-the-Art
・リップシンク技術によるアニメーションの制作支援
従来、アニメーション制作などにおいて、キャラクターの唇の動きと音声を同期させることに多くの時間を要していました。本技術は、AIを用いることで制作工程の短縮に貢献します。この技術を導入したリップシンクツールは、既にアニメ制作現場でも活用されています。
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