ゼンショーホールディングス 【東証プライム:7550】「小売業」 へ投稿
企業概要
ゼンショーグループは、1982 年の創業時から「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という経営理念を掲げ、そのために世界中の人々に安全でおいしい食を手軽な価格で提供することを使命として取り組んできました。ゼンショーグループメンバーの行動指針である「ゼンショーグループ憲章」の冒頭には、「ゼンショーグループ宣言」として、事業の発展を通じ「万人が真に平等で、持続可能な調和的発展を続けることのできる社会を実現する」ことを掲げています。
またゼンショーグループは、企業理念をさらに進化させ、「食を通じて、人類社会の安定と発展に責任をおう」ことを掲げ取り組んでいきます。
この理念を具体化するため、ゼンショーグループは、原材料の調達から製造・加工、物流、店舗での販売までのすべてのプロセスを一貫して自らの手で企画・設計、運営するMMD(マス・マーチャンダイジング・システム)を世界に展開し、「食のインフラ」としてすべての人々に安定して「食」を供給することのできる仕組みづくりに取り組んでいます。
また、「食のインフラ」としての事業展開に加え、ゼンショーグループは、2007 年から独自の直接提携型フェアトレードに取り組んでいます。現在、アジアやアフリカなど19 ヵ国との間でコーヒーや紅茶の取引を行っており、フェアトレードから生まれる「社会開発資金」を活用し、学校建設、水道施設の整備、女性支援などの社会開発支援活動を行っています。この活動を通じ、資本主義の負の側面としてもたらされた発展の不均衡を是正し、持続可能な世界の実現に貢献していきます。
ゼンショーグループは、自社の事業活動が地球環境に与える影響についても、責任を持った対応を行います。自社の事業領域に密接に関わる、天然資源の保全、食品残渣の活用といった課題のほか、自然エネルギーの活用などへの取り組みを通じ、自社の事業領域の持続可能性と、地球環境そのものの持続可能性を担保するために行動していきます。
さらにゼンショーグループは、人材は「人財」すなわち付加価値を生み出す資本であるという考え方に基づき、人財育成や多様な人財が活躍できる職場環境の整備に取り組んでいきます。また、日本発のグローバル企業として多文化が共生する社会を実現するため、まずは自国の文化への理解を深める観点から2021年7月に京都市に「日本文化研修センター」を設置しました。今後もさらに多文化の共生に向けた取り組みを進めていきます。
(1)ガバナンス
・取締役会において、サステナビリティに関する方針や「マテリアリティ」の特定などの重要事項の決定をしており中長期にわたる事業リスクと機会を評価し、事業への影響を認識したうえで経営に反映を行っております。
・2023年3月に更なるサステナビリティ経営の強化を目的に、取締役会の諮問機関として、サステナビリティ担当役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。「サステナビリティ委員会」において、取締役会で決定した「マテリアリティ」を中心としたサステナビリティ関連課題の対応及び進捗状況の確認等のモニタリングを行い、その状況を定期的に取締役会へ報告してまいります。また、サステナビリティ担当役員の直轄組織である「地球環境室」は「サステナビリティ委員会」の事務局として、関係各部署、グループ各社と連携しグループのサステナビリティ関連課題の情報集約を行っております。なお、「マテリアリティ」については、後記「(2)戦略」に記載の通りです。
(体制図)
(2)戦略
(a)マテリアリティ
・安全な食を安定的に世界へ
・地域社会への貢献
・働きがい、生きがいのある組織づくり
・パートナーと共に成長、繁栄
・環境への取組み
(b)リスクと機会
・気候変動に伴い当社グループが直面するリスクと機会について検討を行いました。気候変動に伴うリスクと機会には、GHG排出に関する法規制の強化等の低炭素経済社会への「移行」に起因するものと気象災害の激甚化等による「物理的」変化に起因するものが考えられます。当社グループの事業領域における取組むべき「移行リスク」、「物理的リスク」、「機会」を下記の様に抽出、特定いたしました。
分類 | リスクカテゴリー (大分類) | 影響度 | リスクカテゴリー (小分類) | 内 容 |
移行リスク | 市場リスク | 中 | ①消費者の嗜好・行動変化 | ・顧客の嗜好の変化に伴う既存業態の売上高の減少 |
技術リスク | 中 | ①技術革新への対応 | ・DXをはじめとする技術革新への対応の遅れによるコストの上昇 | |
政策・法規制リスク | 大 | ①炭素税の導入・コスト上昇 | ・炭素税の導入による原材料調達コスト、物流コストの上昇 | |
②エネルギーコストの上昇 | ・化石燃料・電力価格の高騰によるコストの増加 | |||
③プラスチック規制強化 | ・代替プラスチックへの変更に伴うコストの増加 | |||
評判 | 中 | ①消費者の評判の変化 | ・気候変動対応への世評の高まりと顧客の評価による選別の進行 | |
②投資家の評判の変化 | ・ESG投資家による投資先の選別の進行 |
分類 | リスクカテゴリー (大分類) | 影響度 | リスクカテゴリー (小分類) | 内 容 |
物理的リスク | 急性的リスク | 大 | ①自然災害・気象災害の激甚化 | ・自然災害(地震等)や気象災害(台風等)による店舗、工場、物流設備への被害 |
②水ストレスの影響 | ・異常気象による熱波、干ばつ等による水の調達リスク | |||
慢性的リスク | 大 | ①平均気温の上昇 | ・平均気温の上昇による原材料の品質劣化や収量の低下 | |
・家畜生育への気温上昇影響 | ||||
・飼料価格の上昇影響 | ||||
②降水・気象パターンの変化 | ・降水・気象パターンの変化による原材料の産地への悪影響による価格の高騰 | |||
機会 | 市場 | 中 | ①消費者の嗜好・行動変化 | ・顧客の嗜好・行動の変化に沿った新規事業、業態の開発による売上高の増加 |
技術 | 中 | ①技術革新への対応 | ・DX、ロボット化の推進等による生産性の向上 | |
②再生可能エネルギーの開発 | ・再生可能エネルギー等への取組みによる炭素税負担の軽減 | |||
政策・法規制 | 小 | ①エネルギーコストの対応 | ・お取引先様を含むサプライチェーン全体での業務プロセス、設備の効率化による原材料調達コストの減少 | |
・物流の効率化による物流コストの減少 | ||||
評判 | 小 | ①投資家からの評判向上 | ・ESGへの取組み評価の向上によるサステナビリティボンド等での調達力の向上 | |
気候変動(急性的) | 中 | ①自然災害・気象災害の激甚化 | ・異常気象に適応できる供給体制、インフラ整備による顧客の維持 |
・特定した「リスク」及び「機会」は、当社グループの戦略や施策に反映を行い、持続可能な社会の実現に向け取組んでまいります。
(C)人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
人的資本への投資については、専門分野ごとの教育制度・資格試験制度の運用や、積極的な配置転換、自己啓発の奨励等を通じて競争力ある人財の育成を行うという基本方針の下、十分な教育予算や競争力ある報酬水準の確保に努めております。また、不確実性の時代において、人類が人種・宗教・民族文化が生み出す様々な対立を乗り越えるためには、多文化共生の相互理解が必要と考えております。そのための組織として、2021年7月に「日本文化研修センター」を設置し、今後のグローバル展開の土台づくりを行っております。具体的には、2022年4月から京都市内の教育施設を拠点として、日本文化に触れる研修を展開し、社員の教養向上を図っています。
人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針と社内環境整備に関する方針は次の通りであります。
①人財の育成・確保
当社は従来から、人材を「人財」と表記し、従業員の行動規範を定めた「ゼンショーグループ憲章」において「多様性、主体性、独創性を尊び、ひとりひとりがいきいきと働ける活力組織」を目指すべき組織像の一つとして掲げ、人財育成や組織作りを行っております。管理職への登用においても、ジェンダー、国籍、職務経歴等の多様性に考慮しながらも、能力評価においては機会均等に発揮できる環境づくりを行っております。具体的には、当社ではジョブ・ローテーション制を導入しており、様々な職種を経験しながら能力形成を行っており、部門別・階層別の研修や、次世代リーダー発掘のための選抜研修、日本文化に触れる研修等を実施しております。さらに、自己啓発サポートの一環として英語学習支援のためのTOEIC受験や、多言語習得のための機会の提供などを行い、また、選抜制による語学研修も実施しております。さらに、経営と労働組合の協議において、2021年に「10年連続ベア」をコミットし、今年度は従業員の給与水準を3ヵ年計画で大幅に引き上げる初年度として、大卒初任給の引き上げ、正社員組合員の給与を9.5%引き上げております。今後益々、人材獲得競争が激しくなる中、組織を牽引する人財の発掘、および採用数・定着率向上などの施策を引き続き進めてまいります。
②女性活躍推進、育児との両立支援
女性社員、育児中の社員が自身の強みを活かして活躍できる組織、及びそれを支援する制度作りを目的とし、以下のような取り組みを行っております。
・女性従業員に対し産休前から職場復帰、育児中の勤務をサポートする相談窓口の設置
・男性従業員に対する育児休業を取得するための相談窓口の設置
・小学生までの子を育児中の従業員を対象とした時短勤務の制度設定、時間差勤務制度の導入
・短時間勤務でも活躍可能な業務や職種の拡充とその仕組み作り
・家族の介護および看病並びに不妊治療、子の育児・行事参加に使用できる休暇制度の導入
・妊娠中および子育て中の従業員向けガイドブックの社内イントラネットによる周知
③社内環境整備
当社では誰もが働きやすい会社になるよう、以下の取り組みを進めております。
・地域密着型の運営による店舗運営の安定化とサービス向上
・時間管理委員会による長時間労働発生の未然防止
・深夜複数勤務体制の確立による安全で安心して働ける環境の確保(防犯体制の強化)
・全国的なクルーミーティングの開催による風通しのよい店舗運営の拡大
・クルーの待遇改善による全従業員の生活水準の維持向上、店舗でのサービス水準向上
・テイクアウト・セルフオーダーの設置に伴う作業負荷の軽減
・オペレーションマニュアルの見直しによるDX を活用した店舗での生産性向上及びクルー負担軽減
④従業員の安全・健康
従業員の安全・健康に関しましては、ココロとカラダの健康を促進するために品川本部に健康支援室があり、看護師と保健師の資格と経験を持った社員が常駐しております。また、月に数回産業医が来社し、健康に関する相談もすることができます。さらに、がん対策促進企業アクションにパートナー企業として加盟し、がん検診受診率向上を目指しております。インフルエンザの予防接種の際には、補助金を支給しております。
女性の出産や育児をサポートする制度としては産前6週間、産後8週間の休暇取得が可能であり、男女問わず育児休業(子どもが最大3歳になるまで)や育児短時間勤務(子どもが中学校に入学するまで)が可能であります。
(3)リスク管理
サステナビリティ委員会において、取締役会で特定した「マテリアリティ」に沿う取組活動及び事業を持続していく上での「リスク」と「機会」の取組事項の進捗の確認、評価を行い、適宜取締役会へ報告を行っております。環境・社会状況の変化を踏まえサステナビリティに関する方針や「マテリアリティ」等に変更が必要となった場合は、サステナビリティ委員会で検討を行い、取締役会に付議し確定してまいります。
(4)指標及び目標
当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しております。
指標 | 目標 | 実績(当連結会計年度) |
管理職に占める女性労働者の割合 | 2029年3月までに30% | 14.2% |
男性労働者の育児休業取得率 | 2026年3月までに50% | 25.7% |
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