ゼビオホールディングス 【東証プライム:8281】「小売業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、公正な競争原理のもと、良質な人材、資金と組織を作ることで、「お客様第一主義」に基づいた事業活動によりお客様、株主様、お取引先様、従業員とともに成長し社会に貢献することを経営理念としております。
スポーツ、ファッション商品を通して、お客様の求める最高の商品価値を創造、提供できる商品開発とショッピングそのものの楽しさやサービスを提供できる店舗づくりを継続的に実現し、「オンリーワン」企業になることを経営の基本方針として、日々努力を重ねてまいります。
(2) 経営戦略等
当社グループは、中長期的に予測される経営環境の変化と、短期的なマーケット動向に対応しながら、お客様との様々な接点を通じて「スポーツの新しい価値」を提案し、新しいスポーツビジネスの創造に取組んでいくことで、中長期的に企業価値を高めるとともに、社会貢献を果たしていくという企業理念を実現するために、以下の取組みを実施しております。
グループ内での経営理念の共有と浸透を進め、グループ各社ごとの企業カルチャーを尊重しつつ、それぞれが競争優位性を有する事業に特化し人材を育成することで、専門性の確保と相互補完、及び連携によるシナジーを創造するグループ運営を目指しております。また、コスト競争力を強化するためにグループ内での機能集約を進める一方で、成長領域への事業拡大に向けて、国内外の有力企業との協業や提携、相乗効果が期待できる事業や企業の買収などのM&A戦略に積極的に取組み、新たな人材やノウハウといったグループアセットの増強を努めております。
中核事業であるスポーツ小売事業においては、市場環境と立地特性により「スーパースポーツ」、「スポーツエクスプレス」、「ヴィクトリア」、「ヴィクトリアゴルフ」、「エルブレス」、「ゴルフパートナー」、「ネクサス」、「タケダスポーツ」などのそれぞれの業態が持つ「強み」と「特色」を活かした新規出店や店舗の再配置、及びEC機能の併設を進めることにより、収益性と生産性を備えた店舗網の整備を進めております。商品面では、お客様との接点である店頭での販売情報や社会情勢の変化、及びファッショントレンドをベースとして、店舗ごとの商品構成の精度向上と、お取引先様との連携や取組みの拡大による商品での差別化を継続的に実施しています。また、小売事業の成長を促進するために物流と情報システム整備に関しては継続的に投資を行ってまいります。
そして、中長期的な社会構造の変化に合わせた国内小売事業の持続的な発展のために、既存事業の改革と新たな成長戦略の立案と推進、各種の業態改革の推進、及びグローバルな価値観の変貌やガバナンス強化に向けた経営インフラと体制の整備を同時に進めてまいります。
① 新たな事業モデルの創造
コロナ禍を経た市場の変化、主要スポーツメーカー各社の流通戦略の変化、お客様の購買行動におけるオンライン販売とリアル店舗の目的と機能別に使い分ける流れなどに対応して、既存のスポーツ小売事業の事業モデルの刷新が最重要課題となっています。そのためには、マーケティングの発想を起点とした商品構成の修正と、お客様一人一人が最適な商品を選択していただけるような店舗環境とサービスを充実させた業態の刷新により、商品の基本価値だけでなく、使用価値、感動価値の最大化を進めてまいります。オンライン販売に関しては、急拡大から安定成長の局面に入り、規模の拡大と並行して、地域格差に応じた配送能力の設定によるコストコントロールを進めることで、お客様のニーズに沿ったチャネルとして育成してまいります。
また、競合環境が激化するなかで、他社との差別化のためには当社が指定する仕様での独占販売商品の取扱い拡大や、当社独自でのオリジナル商品の開発と調達が重要になります。前者に関しては、お取引先様への協業に向けた提案力を強化し、後者に関しては、商品開発とそれに向けた人材開発への取組み強化や、差別化商品を取扱う企業との提携や連携により新たな商品調達ルートの確保を進めてまいります。
人材面では各種の用品用具に関する専門知識や販売スキルを備えた外部人材の確保と、経験やノウハウの伝承による人材開発に向けた取組みを強化することで、専門店ならではの情報とサービスの提供を追求してまいります。さらに、グループシナジーを有効に発揮させるために、グループ内アセットの利用と連携だけでなく、外部のスタートアップ企業との連携強化を推進してまいります。
② 事業や店舗のスクラップ&ビルドと新たな業態変革
スポーツ小売事業において多様化するニーズにお客様起点で対応するためには、マーケティング視点での事業運営のための抜本的な業務改革が必要となります。商品管理の細分化と販売時期の売上の波動に応じた定数コントロールの強化を行うためには、本社業務の抜本的な改革と業務の標準化、及びそれを定着させるための教育体制の再構築を進めてまいります。また、地域ごとに異なるスポーツ事情を踏まえた店舗におけるエリア特性への対応の重要性が高まっており、その観点からも本社と店舗間の有機的なコミュニケーションの充実が鍵となりますので、その環境整備と業務フローの改革を推進してまいります。
コロナによる行動制限が解除され、外出需要の拡大に伴うリアル店舗の価値が見直されつつある中、店舗の業態進化とマーケット市場の変化に伴う店舗網の再配置が急務となっています。また、オンライン販売については成長過程にありますが、リアル店舗とオンライン販売を融合した、お客様第一主義に基づくOMO戦略に特化してシェアアップを図ることが必要と考えております。また、コスト上昇圧力と人材に関連する課題への対応としては、既存事業における標準化によりコロナ禍前より少ない労働時間での店舗運営を可能にするための業務改善に加え、人材育成を強化することで、収益性と販売効率を向上させる必要があります。物流に関しては、労働時間の見直しに伴う店舗間の商品移動コストの上昇が予想される中、各店舗の商品在庫見直しを進めていくと同時に、ECサービスの店頭受取などの取り組みを開始し、お客様満足度向上と経費率の引き下げを目指して改革をしてまいります。そのために、グループ全体の運営方法の統一推進とシステム投資の拡大により、中期的なコスト上昇対策と生産性向上を進めてまいります。
海外事業では、日本国内と同様にスポーツやレジャーに関するコロナ禍の影響を受けて、ゴルフ事業に関しては堅調に売上を拡大してきましたが、最近では、日本国内と同様に一旦の落ち着きを見せております。今後は、グループの海外事業としての業容の充実に向けて、傘下の海外子会社に対するガバナンスの強化と経営基盤の強化という形での経営改革を進めてまいります。
(3) 経営環境
当社グループは、国内外におけるスポーツ、レジャー用品の小売、及び卸売を主たる事業としておりますが、連結売上高の9割以上が国内におけるスポーツ用品・用具の販売となっています。具体的な事業内容につきましては、商品部門別販売実績、及び地域別売上高に示しています。
① 市場環境
国内のスポーツ、レジャー市場は、少子高齢化の進行による若年層の減少、及び地球温暖化の影響による降雪の減少といった社会情勢の変化を受けた長期的なトレンドのなかで、内容は変化しながらも、安定的に成長を続けております。そのような中、2019年12月以降、新型コロナウイルスが世界的に感染拡大したことによりスポーツ活動が大きく制約され、スポーツ用品販売業界でも、部活動やランニング需要が縮小する一方で、ゴルフやアウトドア需要が大きく拡大するなど、一時的に大きな変化が発生しました。2023年5月には新型コロナウイルスによる行動制限が解除され、外出需要の本格的な回復や訪日外国人の増加などによるインバウンド需要の活発化等がみられ、シューズやアパレル商品の需要が大きく回復に向かいました。一方で、コロナ禍に拡大したゴルフ・アウトドアのビギナー需要については一巡し、また、暖冬の影響でウインター商品市場は縮小しました。今後のスポーツ用品販売業界につきましては、コロナ禍を経て、新たな生活様式や価値観が芽生えたことや、超高齢化社会の根底にある健康志向の高まり、更には、ファミリーレジャーの需要拡大の動きと相まって、成長市場として拡大していくことが予想されます。
② 顧客動向
お客様や部活生の動向は、国内での各種競技スポーツのプロリーグ化による盛り上がりや、グローバルなスポーツ大会での競技種目の変更や追加、日本人プレーヤーの活躍などに影響され、競技種目ごとの販売状況は緩やかに変化していきます。新型コロナの行動制限が解除されて以降、シューズ、一般スポーツ、トレッキングなどの需要回復がみられ、外出需要が回復したことにより、リアル店舗の価値も再認識されてきております。また、お客様が商品や店舗を選択する際の基準が、店舗ロケーションや商品の機能、提供されるサービス内容だけでなく、企業や商品の環境問題への取組み姿勢などに変化するなど、購買行動と価値観が変化しています。さらには、近年のウクライナ紛争等の世界情勢の影響によるエネルギーを含む各種の物価上昇は続き、雇用・所得環境の改善はみられるものの、実質所得水準の引上げまでには至らないなか、お客様の生活防衛意識は高まっており、商品調達や販売手法の修正や変更をする必要があります。
③ 販売チャネル
コロナが収束したことにより、オンライン取引も急拡大から安定成長に変化し、お客様側でもリアル店舗の利用を重視する揺り戻しが起きております。しかし、中長期的にはオンライン販売の比率は上昇していくことが予想されているため、リアル店舗ではお客様が最適な商品を選択できることと、実体験ができるための役割を備える必要があり、それを支えるためのITやデジタル関連の投資の重要性が高まっています。また、大手メーカー各社の流通ルートの選別が拡大した影響で、競合する専門店では商品調達が困難になり、業界内での商流や取引関係に新たな動きが起きつつあり、専門店からの要請を受けて、同業者への卸売りを開始しています。従来の中古ゴルフクラブ販売事業でのフランチャイジーへの卸売りのノウハウを活用しながら、今後も他の事業者への卸売りによる実質的なシェアアップの可能性が出てきています。
④ 競合環境
多くの取扱商品が共通する大手メーカー各社の商品であること、同業他社における業態や出店戦略の同質化が加速しています。また、カジュアル衣料専門店やホームセンター、及び日用雑貨店などにおけるスポーツ衣料やレジャー関連商品の取扱拡大のような周辺領域からの進出が継続しています。さらには、メーカー各社が自社ウェブサイトでのオンラインでの直販を強化する流れは変わらず、競合環境は日を追うごとに厳しくなっています。
⑤ 事業運営環境
店舗で働く人材の確保や人材流動化の加速、及びスポーツ種目のトレンド変化に対応してそれぞれの専門人材を確保し、教育・育成すること、及び多様化する価値観に対応しながら働きやすい環境を整備することの重要性が高まっています。また、近年の地政学リスクなどに起因する急速な物価上昇を除いても、オンライン販売増加を支える物流関連でのコストアップや、情報処理と発信におけるITやデジタルに関連する設備投資の拡大、及び人件費単価の上昇など、事業におけるコスト上昇圧力は増大しています。また、各種の営業施策を変化させるなかでのコンプライアンスやガバナンス強化のための管理コストは増加する傾向にあります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
新型コロナウイルスの感染拡大は、当社グループの主たる事業領域である国内外のスポーツ用品販売事業の経営環境に大きな変化をもたらしましたが、2023年5月の行動制限の解除以降、その影響は解消に向かい、今後は、コロナ禍に確立された新たな生活様式を踏まえた対応を進めていくことが必要となっています。当社グループとしては、これらの急激な環境変化への対応と、従来から継続しております中長期的な社会構造の変化に合わせた取り組みを同時に進めていくことが必要になっています。短期的には、更なる拡大が見込まれるスポーツ・シューズ需要やダウントレンドの歯止めが必要なゴルフやキャンプ用品の需要を喚起し、お客様の利用目的に応じてリアル店舗とオンラインでシームレスに獲得できる体制を整える必要があります。また、中長期的な社会構造の変化や市場の変化に対しては、スポーツ事業の様々な可能性をビジネスとして成立させて行く事が重要であるとともに、人口減少が進む地域の同業者や規模の拡大が難しい専門店はスポーツのすそ野を維持するために、その存続にむけた取組みが必要となります。更には、各種の業態開発の推進にも取り組むことで、シェアアップとトップライン水準の引き上げによる総資産回転率と各種の利益率を改善し、安定的な営業キャッシュ・フローを確保するとともに、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、ROEの向上などの財務面での改善という課題に取り組んで参ります。
① 資本コストと資本収益性についての現状分析
当社グループの2023年度の業績におけるROEは2.1%であり、2023年度末の当社グループの株主資本コスト6.6%に対して低位となっています。その現状を踏まえて、スポーツ用品小売市場の持続的成長を前提にした適切なキャピタルアロケーションのもと、市場変化に対応するための成長投資と事業基盤の整備、及び株主還元の強化により、株主資本コストに見合うROEの維持向上を目指します。
② 資本コストや株価を意識した経営実現に向けた取り組み
適切なキャピタルアロケーションのもと、ROE向上に向けて、資本コストや株価を意識した経営実現に向けた取り組みを推進してまいります。
具体的には、新規出店や既存店活性化、事業インフラ整備などへの成長投資を軸とした「コア事業の深化」、事業ごとの定量・定性評価の高度化と低効率事業の縮小・撤退を推進する「事業ポートフォリオマネジメント」、坪売上高及び商品回転の向上や保有資産の流動化等による「投下資本の圧縮」、機動的な自己株式取得と長期安定配当の継続による「株主還元の強化」、更には、それらを着実に推進するための「サステナビリティ経営の実現」と「人的資本投資と人材育成」に取り組んでまいります。
③ 財務課題への取組み
これらの短期、中期的な課題を認識しながら、グループシナジーの創出とガバナンス強化による企業価値向上のために、以下の経営指標に注目しながら、財務の改善を推進してまいります。なお、EBITDA、平均運転資本及び坪当たり売上高は中核事業の収益性と生産性の観点で注目しております。
| 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
EBITDA(百万円) | 8,915 | 12,174 | 8,881 |
平均運転資本(百万円) | 45,280 | 49,788 | 53,346 |
坪当たり売上高(千円/坪) | 1,118 | 1,198 | 1,207 |
ROE(%) | 3.3 | 4.5 | 2.1 |
各指標の計算方式は、連結貸借対照表と連結損益計算書における以下の数値で算出しています。
・EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
・平均運転資本=売上債権+商品-仕入債務の前期末と当期末の残高の平均
・坪当たり売上高=売上高÷売り場面積の期首時点と期末時点の平均坪数
・ROE=親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本の前期末と当期末の残高の平均
- 検索
- 業種別業績ランキング