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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年6月30日)現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは「スマート&テクノロジーで歴史に残る社会システムを創る!」を標榜し、事業成長を図りつつ競合他社との差別化に注力するとともに、収益性の向上に取り組み、企業価値を継続的に拡大させる方針であります。また中長期的には2028年の創業100年までの方針として「Moonshot Vision 2028」と定め、既存クラウドサービスの拡充を図りつつ、リアルなまちをデジタルとコミュニティのチカラで未来の社会システム(スマートシティ)の創造を目指して推進してまいります。

(2)目標とする経営指標

当社グループは、2024年8月に発表した第3次中期経営計画(ローリング版)において、目標とするKPI(経営指標)として以下の数値を掲げております。当該KPIを採用した理由は、持続的な企業価値の向上に繋がる収益性の観点に加え、クラウドサービスをさらに充実させていく上でMRR(月次経常収益)を重要な指標として考えているためです。これらをKPIと認識し、企業価値の向上に努めてまいります。

 

(単位:百万円)

KPI(連結):営業利益

2027年6月期(予想)

デジタルガバメントセグメント

484

モビリティ・サービスセグメント

284

スマートベニューセグメント

608

全社費用

△530

連結全社

846

 

(単位:百万円)

KPI(連結):MRR

2027年6月期(予想)

デジタルガバメントセグメント

88

モビリティ・サービスセグメント

71

合計

159

(注)1.上記KPIについては、有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

2.MRR(月次経常収益)は、月次で固定的に得るクラウドサービス利用料収入を指します。

(3)中長期的な会社の経営戦略

 クラウド市場は引き続きクラウドファースト(注1)の流れを前提としながら、当社事業領域である行政デジタル化やモビリティIoT市場の拡大が見込まれております。また、クラウドサービスによりデータを取得し、データ連携基盤によってオープンデータなどその他のデータと連携、そして解析する流れも顕著であり、フィジカルなまちの中にデータを活用することで地域課題の解決を目指すスマートシティへの展開も期待されています。

 デジタルガバメントセグメントでは、自治体のデジタル化を推進することで、地域社会・住民とのコミュニケーションを創発する社会システムとしてのクラウドサービスを提供しております。今後も行政向けデジタルマーケットプレイスやガバメントクラウドを背景に行政デジタル化をさらに深化させ、MRRの獲得強化による安定的な収益と、地域社会に利便と価値を創造する事業を推進してまいります。

 次に、モビリティ・サービスセグメントにおいては、コネクティッドカーをはじめとする次世代のモビリティ社会の到来を見据え、自動車向けIoTサービスを自社で開発、展開してまいりました。他方、祖業の流れをくむカーソリューション事業におけるリース車両向け物販事業は外的環境もあり営業損失が先行していたため、2024年7月をもってその事業を譲渡いたしました。今後は、“Kuruma Base”による建機レンタルの無人化やモビリティ業界における2024年問題の解決に繋がる取り組み、法人車両の管理、商用車市場への参画など、磨き上げてきたモビリティIoT技術を活用した自社サービスの充実を目指すとともに、大口顧客との業務提携による事業拡大へも取り組んでまいります。

 最後に、スマートベニューセグメントでは、2025年4月開業を予定するGLION ARENA KOBE(注2)における、貸館事業や協賛獲得、ホスピタリティサービスの提供、テナントリーシングなど基盤となる収益を獲得しながら、データの利活用を踏まえたスマートシティ領域への展開を図ってまいります。フルデジタルで実装されるアリーナ内での消費行動からデータを連携したスマートシティモデルへ、成長産業と政府が位置付けるスタジアム・アリーナをベースに、スポーツやライブエンターテイメントが持つ共感力をまちづくりに活かしてまいります。

 また、当社グループの成長に必要不可欠な人材においては、人的資本への投資という意味も含め、賃金増や働く環境の整備に注力するとともに、引き続き業務プロセスにおけるDX化の推進を進め、多様な働き方への対応を目指してまいります。

 さらにガバナンス強化という観点では、すでに移行している指名委員会等設置会社での機関運営の高度化を進め、業務執行の役割と責任の明確化、スピード感をもった経営を実現してまいります。

5年間続いた事業ポートフォリオの入れ替えに目処を立てることができましたので、今後は次の50年通用する事業体へ現状の方針をブレさせずに、さらに深化していくことが求められます。

 当社グループの業績の拡大及び収益の向上と、社会課題の解決の両立を図るとともに、データ利活用を踏まえたまちづくりへの投資や人的資本への投資を急ぐなど経営基盤を強固なものにすることで、中長期的な視座でのさらなる成長に向けて邁進してまいります。

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 情報通信サービス業界の事業環境は、大きな環境変化が短期間で次々とやってきております。所有から利用へのクラウドシフトはもちろんのこと、IoTやSNSメディアなどの進化は目覚ましく、生成AI(注3)においては、全ての社会通念を揺るがすようなインパクトと驚きを持って受け入れられており、社会に大きな変革をもたらす可能性を秘めていると考えられています。

 一方、世界経済はロシア・ウクライナ情勢の長期化や米中対立など地政学リスクの高まりに伴い、想定を超えた経営環境の変化などは、経済活動や国民生活に大きな影響が及んでおり、今後も多方面にわたって先行きが不透明な状況になることが懸念されます。

 当社グループはこのような環境下において、以下の項目を対処すべき重要課題として取り組んでまいります。

① 高品質なクラウドサービスの提供

 社会課題の解決に資するクラウドサービスの提供を推進している当社グループにとっては、安全・安心で高品質なサービスを提供することが重要な課題であると認識しております。

 そのためには、技術力の向上をベースとして、システム障害やサイバー攻撃への対応、急激なトラフィック増への対処や、特に自然災害発生時の大量のアクセス集中においても安定的なサービスをご提供するなど、あらゆる面で安心・安全なサービス運営が必要不可欠であります。

 当社グループといたしましては、更なる安心・安全なサービス提供のためにクラウド環境の移設など計画的に整備を進めることにより、信頼性・可用性・保守性を踏まえた高品質なクラウドサービスの実現に向けて取り組んでまいります。

② 積極的な営業展開とアライアンス戦

 当社グループでは、すでに47都道府県へのシステム導入を行っており全国に向けた営業展開を行っておりますが、クラウドファーストが浸透する中、自治体や法人企業向けに引き続き積極的な営業展開を推進する意向であります。

 また、新規事業であるスマートべニューにおいても、新たな市場を切り開き価値を創造できる営業が求められており、そのような体制強化を図ってまいります。

 さらに全ての事業において、市場やサービス提供領域の拡大への対応に向け、固有の強みやアセットを有する他社とのアライアンス戦略にも取り組んでまいります。

③ イノベーションの創出

 当社グループ事業は、大きな時代の転換点において20世紀までの社会システムをデジタルのチカラで改革していくことを根幹に据えております。常に社会実装を意識して実質的な課題を念頭に置き、行政デジタル化の実現に向けたデジタルガバメント事業やCASE(注4)時代の新たなモビリティ・サービスの創造、そしてGLION ARENA KOBEを軸としたデータの利活用を踏まえたまちづくりを推進するスマートべニューなど、フィジカルとデジタルが融合する21世紀以降の社会インフラになりえる事業を推進してまいります。

 このように、当社グループにおいて引き続き創造的にイノベーションを育むことが重要であると認識しております。

④ 内部管理体制の強化

 内部統制システムの適正な維持は、当社グループにおいて重要な課題と認識しております。財務報告をはじめ、業務全般における適正なプロセスの整備と運用を徹底してまいります。

⑤ 人的資本への投資及び働く環境の整備

 人的投資の重要性が叫ばれ、賃金増なども踏まえつつ働く環境の整備は急務であると認識しております。
競合が多数存在する当社事業領域において、イノベーションを創出し、競争優位で高品質なクラウドサービスを提供するためには技術力・営業力及び組織で働く上での魅力などの裏付けが不可欠となります。

 エンゲージメントサーベイの導入など、引き続き人材採用・育成・人事評価体系の整備運用及びその他の人材育成計画を策定し、知識の習得などの技術的研修と働く上での納得感を踏まえた社員幸福度の追求を実施するとともに、遠隔地採用などを含めた多様な働き方への対応に向けた環境整備にも注力し、長く創造的な業務ができる環境を整えてまいります。

 また管理職層の充実も急務であり、組織維持運営におけるマネジメントエラーなども散見される中、外部採用や多様な働き方での当社事業への参画など、より高いスキルを有し人間的魅力に富む管理職層の登用を目指してまいります。

⑥ 安定的な収益基盤の確立

2019年より事業ポートフォリオの入れ替えを進めており、2024年7月には祖業の流れをくむカーソリューション事業におけるリース車両向け物販事業を譲渡いたしました。その中では一定の投資が必要な状況であり5期連続で営業赤字という状況になっており、今後3ヵ年の中期経営計画を達成させることを含め、着実にポートフォリオの入れ替えを終え、安定的な収益基盤を早期に確立することが必要だと考えております。

[用語解説]

注1.

クラウドファースト

:

企業や公的機関等がシステム投資をする際、クラウドを選択するようになること。

注2.

GLION ARENA KOBE

:

NTT都市開発株式会社、株式会社NTTドコモ及び当社の3社企業コンソーシアムによる民設民営のアリーナプロジェクトである「神戸アリーナプロジェクト」のもと、兵庫県神戸市中央区の新港突堤西地区(第2突堤)に建設中の多目的アリーナ。2024年2月に名称を「GLION ARENA KOBE(ジーライオンアリーナ神戸)」と決定した。

注3.

生成AI

:

データのパターンや関係を学習し、新しいコンテンツを生成することを目的とするAI。

注4.

CASE

:

Connected(繋がる車)・Automatic(自動運転)・Sharing(カーシェアリング)・Electric(電気自動車)の頭文字を取った造語で、100年以上続いた内燃機関における既存自動車の概念を覆す新たな時代を表現する言葉。

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