スマートドライブ 【東証グロース:5137】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは「移動の進化を後押しする」というビジョンのもと、国内外の顧客企業に向けて、業務効率化による生産性向上やモビリティデータなどを活用した既存サービスの高付加価値化、新規サービスの創出、DX推進を後押しするべく、事業を展開しております。
(2) 経営上の目標の達成を判断するための客観的な指標等
当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上を目指しており、主な経営指標として売上高を特に重視するとともに、適正な人員規模・人材配置による事業運営に努めております。
当社グループは、各種サービスを国内FO事業並びに国内AO事業を通じて提供しておりますが、いずれの売上についても顧客企業(国内AO事業におけるパートナー企業含む)との間の契約期間、ユーザー数及びデータ利用量に応じて定期定額契約(サブスクリプション)としてマネタイズすることで、継続的な収益(リカーリングレベニュー)を得ることができるビジネスモデルであるため、契約企業社数(エンドユーザー社数)を重視しております。
(SmartDrive Fleetのエンドユーザー社数の推移)
国内FO事業におけるエンドユーザーへの直接営業、及びパートナー企業を介したエンドユーザーへの拡販・共同営業、双方の商流における新規顧客開拓によって、SmartDrive Fleetのエンドユーザー社数は継続的に増加傾向にあり、2023年9月末における契約社数は1,100社超となっております。
(3)経営戦略等
当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上を達成するために、以下の計画を策定しております。
①国内FO事業
営業車両や配送車両を用いて事業を行う様々な業種業態の顧客企業に対して、各種SaaSサービスや収集データの分析・解析支援等を提供し、顧客企業における営業効率改善、車両稼働率改善、燃費削減などコスト削減施策や収益性の向上をはじめ、安全運転推進や運転日誌等法定作成書類の自動作成などコンプライアンス推進に資するサービスを展開しております。
具体的な販売戦略としましては、顧客リード(見込み客)を会社規模ごとに属性分けし、中小規模の顧客リードについては、リード獲得から育成、営業担当がアプローチ・商談するべきリードの特定・抽出といったマーケティング活動を自動化・効率化することによって、商談化率の向上や成約までの期間短縮、顧客の検討意向を上げる情報提供等を積極的に行い、新規顧客のさらなる獲得を目指します。
また、大規模の顧客については、特定の顧客のみを対象に個社に最適なアプローチ・提案を行うべく、顧客企業が属する業界・ドメインに合ったソリューションを提案し、POCなどを介しながら導入支援を進めます。ENT顧客の場合、契約締結当初は部分導入に留まり、その後のPOCや導入後の継続的な商談を通じて徐々に本格導入されるケースが多いため、追加POCの実施などクロスセルの実現や本格導入に向けた取引ボリュームのさらなる拡大を目指します。
②国内AO事業
アセットオーナー企業を主としたOEMパートナー企業が行うDX推進、並びにモビリティデータ等を用いた新規事業の立上げを技術的側面から後押しし、関係強化をすることで、同企業が有するエンドユーザー(法人顧客)への拡販を共同で推進します。
また、自動車メーカーやリース会社、保険会社など、OEMパートナーになり得る大手企業の新規開拓を進めることで、国内AO事業のネットワーク拡大と、それに伴う高い成長性の確保と継続的な収益の確保を実現していきます。
③海外モビリティDX事業
マレーシアでの事業展開を主としておりますが、市場特徴として社員の安全運転対策や社内向けの福利厚生サービスの充実を推進する企業が多いため、アカウントベースドマーケティングを前提に、顧客企業が属する業界・ドメインに合ったソリューションを個別提案し、POCなどを介しながら導入支援を進めます。
(4) 経営環境
日本国内の経済環境は、生産年齢人口減少に伴う労働力不足が問題視され、政府主導による時間外労働時間の上限引き下げをはじめとした労働法規の改正等、働き方改革が推進される中、労働生産性の向上に向けたソリューションへの期待が高まっております。
また、自社の競争優位性維持やビジネス変革、並びに新ビジネス創出の必要性を認識する企業は多く、その解決策として、データやデジタル技術を活用し、顧客や社会のニーズを適時に反映し、製品やサービス・ビジネスモデルの変革と業務そのものを変革し競争優位性を確立するデジタルトランスフォーメーション(DX)への関心、取組みへの必然性が高まっています。
特に自動車産業においては、近年、CASE(注1)と称される技術変化の波に直面しており、元々変革を迫られていた自動車関連産業の産業構造変化を加速させ、あるいは後退させる両面のドライバーとなる可能性があるため、自動車会社のみならずサプライヤも含め、将来の競争力獲得に向けた投資や研究開発、新規事業の立上げの必然性とニーズが高まっているといえます。
当社グループが現時点で対象とする主要なマーケットとして、国内FO事業においては国内業務用/MaaS(注2)車両向けコネクテッドサービス市場がありますが、2020年の同市場の規模は130億円と推計されております(株式会社矢野経済研究所「2021年度版 業務車両/MaaS車両向けコネクテッドサービス市場予測」)。
将来的にはカーシェアリングなどのMaaSサービス事業者が保有するMaaS端末車両や次世代モビリティの普及が見込まれ、仮に国内に約2,000万台ある商用車・法人需要車両に導入されたと仮定した場合の、国内FO事業における潜在的な市場規模は6,000億円程度(注3)と推計しております。
同様に、国内AO事業においてはCASEの中でも特に国内コネクテッドカー関連市場でのOEMパートナー企業を含む各事業者が行う「研究開発投資」領域も当社グループにおける主要マーケットに位置付けられますが、国内コネクテッドカー関連市場における各事業者の研究開発投資金額は2025年において5,660億円と予測されております(株式会社矢野経済研究所「VOL.1分析編 2017年度版 乗用車向けコネクテッドカーの事業モデル別2025年予測」)。
さらに、当社グループが事業展開する東南アジア市場においても、テレマティクス保険、フリート/車両管理、テレマティクスメンテナンス、位置情報サービス、インフォテイメント、車載マーケティング、スマートコントラクトなど、自動車のテレマティクスに対する需要は高まっており、東南アジアの自動車テレマティクス市場の規模は2025年において57.8億USドルと予測されております(Report Ocean社「自動車OEMテレマティクス市場:ソリューション別、チャネル別、車両タイプ別。Southeast Asia Opportunity Analysis and Industry Forecast, 2021-2025」)。
そのような環境下で、当社グループは、モビリティ分野に特化しながらもデータの利活用や分析に関する知見を有し、また、業務効率化や生産性向上に寄与する各種SaaSサービスを自社開発し、それらをパートナー企業向けにOEM提供・実装支援することや、パートナー企業におけるCASE関連の投資や研究開発、新規事業の立上げ支援を行い得るだけの技術的専門性を有すると自負しており、多種多様な顧客企業のニーズ、並びに上記外部環境における各種課題の解決に対応できるものと考えております。
(注1) 下記を総称した造語で、自動車の技術的進化を指します。
C(Connected):自動車のIoT
A(Autonomous):自動運転
S(Shared & Services):所有から共有
E(Electric):電気自動車
(注2) Mobility as a Serviceの略。公共交通機関等を利用して、出発地から目的地への移動を最適な交通手段による一つのサービスとして捉え、シームレスな交通を目ざす新たな移動の概念です。交通機関による移動とITサービスが融合し、移動手段がサービスとして最適化されることを意味します。
(注3) 金額換算は、当社サービスの年間平均利用料(車両1台あたり30,000円)×2,000万台(国内商用車数)にて試算。なお、当該金額はあくまでも上記の前提に基づく当社の試算値であり、高い不確実性を伴うものであって、実際の市場規模と大きく異なる可能性があります。
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループが対処すべき課題は以下のとおりです。
① 既存サービスの強化による顧客満足度の向上と販売の拡大
当社グループの各種サービスが今後も継続的に成長するためには、より幅広い業種・業態の顧客企業に選ばれると共に、継続的に利用・支持される必要があります。そのためには当該サービスのユーザビリティの維持向上や顧客企業の事業の高付加価値化や新規事業創出に資する機能の充実が不可欠であると考えております。
そのため今後も、カスタマーサポートの品質向上により、顧客ニーズや各種業界の課題を適時適切に把握し、継続的なユーザーインターフェースの改善や各種機能強化に加えることで、顧客満足度の向上やそれに伴う販売の拡大に保持に努めます。
② OEMパートナー企業との関係強化
当社グループは、複数のOEMパートナー企業との連携並びに拡販を進めており、これらOEMパートナー企業との関係強化は当社グループの市場優位性を創出する源泉となっております。
今後も市場拡大が見込まれる中で、当社グループが更なる成長を実現していくためには、販売体制の強化及び知名度の向上が重要であり、そのためにはOEMパートナー企業の新規開拓及び既存パートナー企業との関係強化・深化により、販売体制の強化を図ってまいります。
③ 開発体制の強化及び優秀な人材の確保
オープンなデータプラットフォームの開発や、テレマティクス保険用リスクAIの開発などの技術は当社グループの競争力の源泉の1つであり、継続的な強化が重要であると認識しております。そのためにも、今後も卓越した能力を持つエンジニアの採用並びに育成に注力し、重点的に投資していきます。
④ 新規事業の創造
当社グループのサービスは、特定の業種業態に限らず、事業で車両を利用する企業や、モビリティデータや営業データ等各種データを活用して事業を行う企業に向けて提供可能なものでありますが、今後更に当社グループの技術活用の場を広げていく上で、既存事業を介して培ったノウハウに加え、データプラットフォームやデータ解析・AI開発等の技術力を最大限に活かした新規事業を創造し、早期の事業化・収益化を図ってまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
当社グループは、一層の事業拡大を見込む成長段階にあり、事業の拡大・成長に応じた内部管理体制の強化が重要な課題であるものと認識しております。経営の公正性・透明性確保のためにコーポレート・ガバナンスを強化し、適切な内部統制システムの構築を図ってまいります。
⑥ 海外での事業展開
当社グループは東南アジアを主とした海外での事業展開を進めております。今後も、特に東南アジア各国の規制や現地ニーズ等に合わせ、効率的かつ効果的な進出方法を検討し、推進していきたいと考えております。
⑦ 財務上の課題
当社グループは過年度において継続的な事業成長を図るため、積極的な人材採用と既存のサービス強化と新しいサービス・ソフトウェア開発等への投資、顧客基盤拡大のための積極的な広告宣伝活動を行った結果、利益面での損失計上、及び営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスが継続しております。また、今後の計画が達成できない場合には赤字及び営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスが継続する可能性があります。そのような場合に備え、常に一定水準の手元流動性を確保し、信用獲得に努めてまいります。手元流動性確保のため、金融機関との良好な取引関係の継続や内部留保の確保を継続的に行い、財務基盤の更なる強化を図ってまいります。その取り組みとしてまず当社グループは、2022年12月15日付で、新規株式公開に伴う資金調達を実施し、財務基盤の拡充を図りました。
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