ジャパンM&Aソリューション 【東証グロース:9236】「サービス業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「相談されたら断らない」という経営方針を掲げて多くの企業から、事業承継、事業再編、事業再生等の経営課題の相談を受け、M&Aによるソリューションを提案し、1組でも多くの成約実現を目指しています。企業の規模が小さいから断る、赤字だから断るということはなく、全ての案件を引受けて、できるだけ多くの企業の経営課題を解決するために付加価値のある提案を行い、中小企業のM&Aを推進することを経営理念として活動しています。
事業承継を始めとする中小企業のM&Aの場合、多くの経営者が譲渡後においても、従業員が安心して働ける環境を提供してくれる譲受希望企業を探してほしいと考えています。そのため、事業承継を成功させるためには、株主だけでなく、譲渡希望企業やそこで働く従業員のことを考えて譲受希望企業を探すことが重要であると認識しています。
日本の企業の大部分は中小企業である一方、中小企業は事業承継・事業再編・事業再生等の多くの経営課題を抱えており、その解決にM&Aを選択する企業は一部に留まります。当社は、中小企業を安定的に発展させるためには、事業承継を始めとするM&Aを円滑に進めることが重要なことであり、当社に課せられた使命だと考えております。
(2) 経営環境及び経営戦略
①市場の動向
総務省統計局が公表している「経済センサス-活動調査 事業所に関する集計及び企業等に関する集計(2020年)」によると日本の企業等の数は368万社となっております。会社規模別の推計として、中小企業庁が公表している「中小企業の企業数・事業所数(2016年6月時点)」の比率を用いると、中小企業・小規模事業者の数は312万社となります。日本における中小企業・小規模事業者の割合は99%以上と推計しております。
また株式会社帝国データバンクが行った「全国・後継者不在企業動向調査(2022年)」によると、全国の後継者不在率は、57.2%であると調査結果が公表されております。同データより2022年時点において、年代別の後継者不在率は60代で42.6%、70代で33.1%、80代以上で26.7%と経営者年齢の高い企業において後継者不在企業が高い比率で一定程度存在しております。
そして2019年12月に中小企業庁が発表した「第三者承継支援総合パッケージ」の中では、2025年までに、70歳以上となる後継者未定の中小企業約127万社のうち、約60万社が後継者未定で黒字廃業の可能性があると言われ、事業承継の必要性が高まっております。
こうした背景の下、2023年5月30日に事業承継を推進している独立行政法人中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎ支援センター」が発表した資料によると、2022年度の事業引継ぎ成約件数は、1,681件(前年度比111%)と過去最高となり、相談者数についても22,361社(前年度比107%)と、同じく過去最高と右肩上がりの推移を示しています。潜在的な需要と成約件数には相当な乖離があるため、今後の市場規模はさらに拡大していくものと想定されます。
中小企業庁は、後継者不足による事業承継の課題解決を行うため、2015年3月に「事業引継ぎガイドライン」「事業引継ぎハンドブック」を公表し後継者のいない経営者向けにM&Aの活用促進をしております。また経済産業省では、2019年12月に黒字廃業の可能性のある中小企業の技術・雇用等の経営資源を次世代の意欲ある経営者に承継・集約することを目的に、「第三者承継支援総合パッケージ」を取りまとめ、中小企業のM&Aが年間4,000件弱に留まっているのを10年間で60万社の第三者に承継させる目標を掲げております。
以上のことから、全国の中小企業経営者の高齢化が進む一方、事業を引き継ぐ後継者は不在であると考えている経営者の割合は高い水準であり、中小企業においては後継者の不在による事業承継が大きな経営課題であると言えます。その解決策として、事業承継を目的としたM&Aの需要は今後も高まっていくと考えられます。
これらの需要に対応する事業者として、2023年10月18日に中小企業庁で公表されたM&A支援機関に登録されている3,011件の事業者が該当します。M&A支援機関10名以下の小規模な事業者が9割以上を占めております。一般的なM&A業務の報酬体系の特徴として、成約してはじめて報酬が得られること、また、成約までに長期間を要することが挙げられます。そのため、成約しても報酬が小さい案件は対象とされにくく、一定の成約報酬を得られる案件に集中する傾向があります。特に、少人数で構成されるM&A事業者は成約実績を積み上げにくいことから、成約までに要する人件費等のコストを上回る収益を少ない成約実績で確保する必要があるため、成約報酬の大きい案件に注力するものと考えております。
また、一定規模のM&A業者においては、成約時の単価上昇による売上増・効率性の向上をKPIとしていることが多いため、中小企業の事業承継ニーズには対応しにくいと考えております。
②案件獲得の特徴
当社は、提携先からご依頼者の紹介を受け、新規アドバイザリー契約の獲得を行っております。特に、中小企業を顧客として多く有する金融機関は、中小企業のオーナーから事業承継に関する相談相手として選ばれる傾向にあります。
しかし、金融機関を含む提携先の多くは、自社内のリソース及びノウハウに限りがあり、相談への対応が困難となっております。また、大手のM&A業者に紹介する場合、中小企業にとって成約報酬が高いため、顧客に紹介をしても断られてしまうケースがあります。このため、中小企業に対するM&Aアドバイザリーサービスが十分に提供されていないことが課題とされていました。
そこで、主に中小企業に対しM&Aアドバイザリーサービスの提供を行っている当社の経営方針と、提携先の抱える課題が一致したことにより、提携先から当社に対して事業承継の希望を有する中小企業を紹介されております。当社は提携先と良好な提携関係を築くことで、安定的な譲渡希望候補者の紹介を受けることが可能な体制を構築しております。当社の安定的な提携先からの紹介に対する受入れ体制は、新規参入者に対する障壁となり、当社の市場における優位性が高くなると考えております。
当社の事業は、提携先と信頼関係を構築することにより、提携先から譲渡希望企業の紹介を受け、新規アドバイザリー契約及び成約組数を積み重ねることで成長しておりますが、新たに提携先から譲渡希望企業の紹介を受ける場合、当社が当該提携先の顧客の紹介先に値するのかについて、特に金融機関は慎重に判断を行うため、提携当初の成約単価は低くなる傾向にあります。
当社は2021年10月期から金融機関との提携関係に注力しております。2022年10月期の平均成約単価は主に金融機関からの提携当初の案件が増加いたしました。その結果、2021年10月期の平均成約単価と比較して、2022年10月期の平均成約単価は下落しております。
その後、2023年10月期においては当社が金融機関からの信頼を得たことにより単価の高い案件の紹介が増加した結果、2023年10月期における平均成約単価は上昇しております。当社としては、今後においても「相談されたら断らない」方針で成約実績を積み重ね、提携先からの信頼を得ることで新規アドバイザリー契約及び成約組数の増加並びに平均成約単価の上昇を見込んでおります。
平均成約単価の推移
(千円)
2020年10月期 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 |
7,253 | 9,467 | 6,330 | 8,977 |
③競合優位性
事業承継の解決策としてのM&Aは、着手金や成約報酬の金銭的ハードルがあり、中小企業の事業承継が進んでいない理由のひとつです。M&A仲介を行う上場企業を始め、同業においては一定の手数料を得られない案件については、案件の引受ができないこと、また、ご依頼者としても手数料の負担が大きいため、圧倒的な多数を占める中小企業の事業承継案件は見送られております。一方でインターネット上の、M&Aプラットフォームを提供する企業が増え、安価な手数料でM&Aが身近な存在になり、M&Aの検討をしていなかった中小企業にも検討する裾野が広がっております。しかし、ご依頼者自身でM&Aプラットフォームから譲受企業を見つけ、複雑多岐にわたる条件の整理や交渉を行うことは、譲渡契約にあたって不利な条件を締結してしまう可能性が高くなります。そのため、専門的な知識があり、しっかりとアドバイスができるM&Aアドバイザーが必要です。
当社では、多くの中小企業の事業承継ニーズに対応するため、1チームあたり10件以上の案件を同時に進捗させることが可能な体制となっております。原則2人1組のチーム制を採用し、担当チームが提携先や譲渡希望企業のM&Aニーズの発掘、アドバイザリー契約締結から譲渡契約・クロージングまでのM&Aアドバイザリーサービスの提供に必要な一連の業務を一気通貫で担当しております。
(人)
人員数 | 2020年10月期 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 |
M&Aアドバイザー | 10 | 17 | 20 | 26 |
管理部門 | 3 | 2 | 3 | 3 |
合計 | 13 | 19 | 23 | 29 |
M&A業界では、会計及び法律等の高い専門性が要求されるため、M&Aニーズの発掘やアドバイザリー契約締結を行う部門・譲渡契約書作成やクロージングを担う部門等、各フェーズに応じて担当部署を変更する分業制を採用していることが一般的と考えております。
しかし、当社のM&Aアドバイザーの場合、中小企業の事業承継に対するM&Aアドバイザリーサービスの提供に必要な業務を一気通貫で担当することで、中小企業のM&Aに必要な知識及び経験の早期習得並びに効率的なM&Aアドバイザリーサービスの提供を可能としております。結果として、多くの案件の成約実績に繋がっているものと考えております。
また、当社はM&A経験の有無に関わらず人材採用を行っております。一気通貫で案件に関与することにより、未経験者であっても、半年から1年程度で成約実績を積むことが可能であり、人材の育成及び教育の観点でも早期の戦力化に寄与しております。
(3) 対処すべき事業上及び財務上の課題
① 信用力の向上
ご依頼者はM&Aに様々な不安を抱きながら決断を行い、理想の譲受希望企業を求め、交渉を進めていくためM&Aアドバイザリー事業者を選定する上で、これまでの実績・信用力を重視する傾向があります。そのため、当社が譲渡希望企業から選定されるためには、信用力の向上が必要不可欠であり、そのための体制構築が重要な経営課題と認識しております。信用力の向上のため、内部管理体制及びコンプライアンス体制の整備・充実等を図ってまいります。
② 人材の確保・教育の強化
当社は、M&Aアドバイザリー事業を持続的に成長させるために、最も重要な経営資源は人的資源であると考えており、多様な人材を継続的に採用、育成することが重要な経営課題であると認識しております。
そのため、当社の中期経営計画の重要戦略である人員計画に沿って、採用を行うとともに、教育を実施してまいります。
③ 案件の進捗管理
当社は、案件管理を行い、その進捗を提携先・ご依頼者に報告し、成約実績を積み上げていくことが当社の信用力向上につながると認識しております。そのため、ご依頼者と合意したスケジュール通りにM&Aを実行する必要があり、案件の進捗管理が重要であると認識しております。そこで、案件の進捗管理においては、担当者による属人的な管理ではなく、組織的な管理が必要と考えております。週次の案件検討会や経営企画室による専門的かつ総合的なサポート等を通じ、徹底したスケジュール管理を実施しております。
④ 社内管理体制の強化
当社は、積極的な人員採用により組織が拡大していることから、情報漏洩や書類紛失等の当社の信用力に影響する事象を未然に防ぐための体制整備や提供業務の品質標準化等の社内管理体制の強化が必要であると認識しております。
この課題を解決すべく、社内規程や業務フローの整備、定期的な内部監査の実施等を通じて、社内体制の強化を行っております。
⑤ 提携先の獲得・深耕
当社は提携先と良好な提携関係を築き、安定的に譲渡希望候補者の紹介を受けることが事業拡大につながると認識しております。そのため、新たな提携先の獲得及び提携先との関係の深耕に向けた提携先向けのセミナーの実施や案件獲得後の提携先に対する定期的な進捗報告等を行うことで、提携先との良好な関係構築を図っております。
⑥ 財務上の課題
当社は、現時点において営業活動による安定的なキャッシュ・フローを創出しているため、財務上の課題は認識しておりませんが、継続的かつ安定的な事業の拡大のため、手元資金の流動性確保や金融機関との良好な取引関係が重要であると考えております。このため、一定の内部留保の確保や自己資本比率等といった財務の安定性を測る指標のモニタリングを通じて、財務健全性の確保に努めています。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は持続的な成長と企業価値の向上を目標としており、経営指標として売上高及び営業利益を重視しております。売上高を指標とすることは、当社の成長や同業他社の売上高との比較、分析に有用であると考え重要な指標と位置付けております。営業利益は、当社のM&Aアドバイザリーサービスの提供に必要な費用を上回って得られる収益性の判断となるためです。
より詳細な指標としては、アドバイザリー契約数、M&Aアドバイザー人数、成約組数と認識し管理しております。
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