シャープ 【東証プライム:6753】「電気機器」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
当社グループは、当社経営理念に基づき、社会の期待や要請に応え、社会と当社の相互の持続的発展を目指すことをサステナビリティに関する基本的な考え方としており、中長期的な企業価値向上の観点から、「ESGに重点を置いた経営」方針を定め、気候変動や人権の尊重をはじめとする、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関わる諸課題への対応に積極的に取り組んでいます。気候変動への対応については、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、TCFDのフレームワークに沿って、気候変動に関する情報開示の拡充を図っています。
① ガバナンス
「ESGに重点を置いた経営」方針を実行施策レベルに落とし込み、PDCAサイクルでマネジメントしていくため、代表取締役社長を委員長とし、経営幹部、環境・人事・調達などの本社機能部門、事業本部・子会社などで構成する、サステナビリティ委員会において、方針やビジョンの徹底、施策についての審議・推進、社会的課題に関する最新動向の共有などを実施しています。
委員会における経営層によるモニタリング・レビューを通じて、SDGs/ESG分野の取り組みを継続して強化し、当社のESGレーティング・格付の向上を図りながら、持続的成長を支える強固な経営基盤を構築し、サステナブルな社会の実現への貢献を目指しています。
サステナビリティ・マネジメント推進体制図(2023年6月現在)
② 戦略
サステナビリティへの取り組みが事業機会の創出につながる重要な経営課題であるとの認識に立ち、2018年度からは事業を通じて「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」達成に向けた貢献を目指すことをサステナブル経営の基本戦略として取り組んでいます。
また、気候変動や資源枯渇など、地球規模の環境問題がさらに深刻さを増す中、当社は、1992年に定めた環境基本理念「誠意と創意をもって『人と地球にやさしい企業』に徹する」のもと、2019年に長期環境ビジョン「SHARP Eco Vision 2050」を策定しています。「気候変動」「資源循環」「安全・安心」の3つの分野で2050年の長期目標を設定し、持続可能な地球環境の実現を目指して取り組んでいます。
2022年度からは「ESGに重点を置いた経営」方針に沿い、カーボンニュートラルへの貢献を重要テーマに位置づけています。長期環境ビジョンの達成に向け、CO2排出量を2035年までに60%削減という中期環境目標を新たに設定し、関連する取り組みを加速しています。また、気候変動に関する不確実な未来に対するレジリエンスを高めるため、「1.5℃シナリオ」「4℃シナリオ」など複数のシナリオを踏まえて、リスクと機会を抽出しています。
■当社の事業における気候変動に関するリスクと機会
・1.5℃シナリオ
気候変動に対する厳しい対策をとることで、地球の平均気温を産業革命時期比で1.5℃の上昇に抑える
分析結果 | 先進国、新興国、途上国を問わず多数の国が、より野心的な排出量抑制規制を導入しており、生産方式等が大きな制限を受ける。火力発電など、従来の電力価格が高騰する一方で、再生可能エネルギーは政策的な優遇措置により従来の発電手段よりも価格が下がりはじめる。 | |||||
気候 変動 関連 ドライバー | 温室効果ガス排出量を抑制するためカーボンプライシングなどの政策が導入 | 再生可能エネルギーの主力電源化 | 消費者の購買意欲が社会・環境配慮型製品へ変化 | サプライチェーンから、温室効果ガス排出量の削減要請 | エネルギーコストの増加 | 各国で製品の省エネ規制などの導入・厳格化が加速 |
事業 リスク | (移行リスク)
温室効果ガス排出量に応じた炭素税の負担が新たに発生 | (移行リスク)
再生可能エネルギー導入費用の増加 | (移行リスク)
顧客企業からの温室効果ガス削減要請に対応するため、設備投資・調査費用の増加 | (移行リスク)
気候変動に配慮する顧客からの環境対応要請によるコストの増加 | (移行リスク)
従来エネルギーに基づいた生産・運営コストの増大 | (移行リスク)
基準の達成度合いが低い場合は、販売停止、製品・サービスの売上高が伸長しない、あるいは減少する事態が発生 |
時間軸 | 短~長期 | 短~中期 | 中~長期 | 短~中期 | 短~長期 | 短~長期 |
事業機会 | (資源の効率)
炭素税の節税による税金の出費を抑え、競争優位性の確保 | (製品・サービス) エネルギー源転換を目指す企業向けに、太陽光発電システムの販売拡大 | (製品・サービス) 環境配慮型製品の提供による顧客先企業の増加 | (市場)
顧客要求への迅速な対応による競争優位性の確保 | (エネルギー)
エネルギー源転換を目指す企業向けに、太陽光発電システムの販売拡大 | (レジリエンス)
脱炭素社会の構築に貢献する製品(省エネ製品)の販売機会の増加 |
リスク ・ 機会への主な 対応策 | 科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標を設定することで、計画的に削減 | 太陽光発電技術への長期投資継続と、電気自動車など太陽光エネルギー利用シーンの拡大検討 | サプライチェーンの上流への温室効果ガス削減要求および支援 | 組織横断的に温室効果ガス排出量削減体制を強化 | カーボンプライシング制度導入による環境設備投資の促進や、自社産の先進発電設備を積極的に購買・利用 | 各国の環境規制の変化を把握するための専門チームの設置による環境配慮型製品設計の標準化 |
・4℃シナリオ
現状を上回る温暖化対策が行われず、地球の平均気温が産業革命時期比で4℃上昇
分析結果 | 世界の脱炭素への取り組みは、先進国では遅々として進まず、途上国でも進まない。世界で異常気象が頻繁に発生する。世界平均海面水位は1m以上上昇すると想定され、都市インフラや物流システムが環境変化の影響を受け、著しく効率が低下する。 | ||
気候変動関連 ドライバー | 氷河の溶解などによる水使用量の減少や、洪水が多発 | 多数の地域で異常気象による熱中症の頻度が高くなり、死亡や疾病が発生 | 海面水位上昇によるインフラ被害の発生で、ロジスティクスネットワークが不安定化 |
事業リスク | (物理的リスク)
渇水や洪水の発生により、生産工場の稼働停止 | (物理的リスク)
従業員の健康に影響を及ぼし、生産工場の稼働停止 | (物理的リスク)
サプライヤーからの部品供給が途絶え、復旧に要する費用や納期遅延による経営コストの増加 |
時間軸 | 中~長期 | 短~中期 | 中~長期 |
事業機会 | (製品・サービス)
節水性能を有する製品の販売機会の増加 | (製品・サービス)
温暖化の進行による空調設備の需要増加 | (レジリエンス)
サプライチェーン強靭化による競争優位性の確保 |
リスク・機会への 主な対応策 | 生産工場における水リサイクルシステムの導入、および節水性能を有する製品の開発 | ビジネスリスクマネジメント規程に基づいた対応の実施 | シャープグループ事業継続計画の策定・維持・改善を実施 |
③ リスク管理
当社は、リスクマネジメントを「事業を継続的に発展させステークホルダーの期待に沿うことで社会的責任を果たす重要な活動の一つ」と位置付けています。リスク管理の基本的な考え方として「ビジネスリスクマネジメント規程」を制定し、リスク管理体制構築のもと、経営が特に大きいリスク項目を「特定リスク」として選定・管理しています。ESG関連リスクを含む全ての特定リスクについては、全社を横断的に管理する機能部門と、自らの事業領域における管理を担当する事業本部が連携し、リスクの最小化・適正化や未然防止の取り組みを行っています。
さらに、当社およびグローバルサプライチェーンにおける、社会や環境に与える負荷を低減していくために特に重要と考える取り組みテーマを毎年度特定し、関連管理策を設定の上、経営層によるモニタリング・レビューを行っています。
④ 指標及び目標
当社は、長期環境ビジョンで設定した「2050年の自社活動のCO2排出量ネットゼロ」に向け、2035年までに60%削減という中期環境目標を掲げて推進しています。この目標はSBT(Science Based Targets※)の1.5℃目標に準拠するとともに、年間4.2%以上のCO2排出量削減を目指しています。
※パリ協定に準拠した科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標。
中期環境目標の進捗状況
基準年 (2021年度実績※) | 2035年度目標 (2021年度比60%削減) | 2022年度実績 | 基準年比 |
1,350 千t-CO2 | 540 千t-CO2 | 1,118 千t-CO2 | 17%削減 |
※2022年6月に堺ディスプレイプロダクト(株)を完全子会社化したため、基準となる2021年度に遡って同社の排出量を含め、比較可能性を確保しています。
(2) 人的資本
① 人材の育成に関する方針
a. 人材育成の考え方
シャープ行動規範において、「採用や報酬、昇進、研修の機会等の雇用慣行を含むあらゆる企業活動において、差別を禁止」すること、また、「多様な属性をもつ従業員が十分に能力を発揮できる職場環境の整備」および「各種の研修や人材育成制度の積極的活用により、業務推進能力の向上に継続的に努めること」を定めています。
b. 人材育成の取り組み
上記の考え方に則り、人材育成においては、企業としての総合力を高めるための取り組みの一環として、各種の育成プログラムを準備し従業員に提供しています。従業員一人ひとりの能力の「質の向上」や「幅の拡大」を狙いとした育成プログラムにより、若手社員から次世代リーダーの育成等の取り組みを行っています。
具体的には、従業員の成長ステージに応じて、それぞれの節目で必要な知識やスキル、マインドを身につけるための各種階層別研修や、将来の会社を牽引する経営人材を育成するための経営幹部育成研修等の各種研修を実施しています。
また、上記の研修に加え、「強い個を育てる」という考え方のもと、ビジネスを行う上での基本的な知識や専門性を学ぶための環境づくりに取り組んでいます。「個々人がいつでも、どこでも、主体的に学ぶ」ことを通じて、事業に精通したプロフェッショナル人材の育成を図っています。例えば、全社員が知っておくべきビジネスの基礎知識やスキルを修得する「管理力向上研修」や、主に若手技術者を対象に技術の基礎を学ぶ「技術セミナー」等、各種のコンテンツを取り揃えています。
これらについては、従業員が自宅のパソコンや自身のスマートフォンを使って、いつでもどこでも簡単に学習ができるeラーニング環境を整えており、自己啓発による従業員の能力向上を積極的にサポートしています。
2022年度の目標 | 2022年度の実績 |
・次世代の人材育成に向けた教育体系の拡充 | ・選抜人材育成プログラムの拡充 経営幹部候補者(若手マネージャー層対象)コースの開講 ・自己啓発型社内研修の受講 シャープグループ 受講者数(延べ) : 5,310人 総学習時間数 : 9,557時間 |
・新規事業創出マインドを引き出すための 風土づくり | ・新規事業提案活動の実施 新規事業提案会の開催/スタートアップ研修の開講 |
② 社内環境整備に関する方針
a. 安全衛生および健康推進活動
基本理念「シャープグループは、世界中の全ての従業員の安全・安心・健康を守ることが、事業活動に不可欠なものと考え適切な経営資源を投入し、誠意と創意の精神に沿って、安全で働きやすい環境の実現を図ります。」のもと、会社の事業場で働く全ての従業員の安全確保と健康の保持増進を図るとともに、快適な作業環境の形成を促進することを目的として、事業場の労働災害の防止および安全衛生水準の向上に努めています。
具体的には、安全衛生活動の取り組み名称を「安全衛生」ではなく「安全衛生健康」とし、全社的な基本施策を審議決定する「中央安全衛生健康委員会」にて定めた方針や取り組みを各事業場/関係会社に展開しています。これに基づき各事業場/関係会社において、「労働安全衛生マネジメントシステム」の構築・推進や法令遵守を含めた安全・作業ルールと安全意識の徹底による労働災害事故低減、定期健康診断結果に基づく産業医面談や生活習慣病改善・減量に関する保健指導強化、長時間労働の抑制や長時間労働者に対する医師との面接指導等による健康障害防止に取り組んでいます。またメンタルヘルス対策においては、法定ストレスチェックによるメンタルヘルス不調の未然防止や組織ごとの分析結果に基づく職場改善の実施や外部専門機関等によるカウンセリング体制の充実を図っています。
2022年度の目標 | 2022年度の実績 |
・重大災害の発生ゼロ/労働災害 事故の低減 | ・シャープグループ(国内)の労働災害事故件数 重篤な労働災害に繋がる転倒、転落等の事故防止等を徹底し、 重大災害の発生ゼロ、休業災害も前年度比11.8%減 |
・過重労働に伴う健康障害の防止 | ・シャープ(株)従業員の長時間労働対策を強化 一般社員の平均時間外労働は年間76時間 (前年度比26.9%減) 長時間労働者に対し、医師面接指導を100%実施 |
b. ワーク・ライフ・バランスの取り組み
ダイバーシティ推進の基盤ともなる「働きがいを生む職場」づくりに向け、従業員のワーク・ライフ・バランス(仕事と家庭生活の調和)を実現できるよう、育児・介護・治療と仕事との両立を支援する制度の拡充や制度利用の促進を行っています。育児支援については、従業員の継続的な育児参加を支援・推奨しており、男女を問わず多くの従業員が育児のための休職や休暇等の制度を利用しています。
また、全従業員が効率的でメリハリのあるワーク・スタイルを確立するため「ノー残業デー」の設定や年次有給休暇の計画的取得推進などの施策を行っています。
指 標 | 2022年度の実績 |
育児休職/出生時育児休職/配偶者出産時休暇の取得率 | シャープ(株) 男性:95%、女性:105%、計:97% |
※取得率は育児・介護休業法の公表基準に沿って2022年度中に育児休職/出生時育児休職/配偶者出産時休暇の
いずれかを取得した従業員数を同年度中に子が出生した従業員数で除して算出したものです。
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