サッポロホールディングス 【東証プライム:2501】「食品業」 へ投稿
企業概要
当グループの研究開発は、さまざまな分野で培ってきたコア技術と強みとする素材とをかけ合わせ、さらにはオープンイノベーションも推進しながら、基盤研究から応用研究、商品技術開発までを行い、お客様が求める価値を継続的に提供するとともに、新たなカテゴリや市場を開拓することを目指しています。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は26億円です。
セグメント別の状況は次のとおりです。
[酒類事業]
1.研究開発について
サッポロビール社は「価値創造フロンティア研究所」「原料開発研究所」「技術開発部」「商品・技術イノベーション部」及び「R&D企画推進部」の体制で研究開発を進めております。これら5部門で総勢約90名(うち約20名が女性)が研究開発に取り組んでおります(研究補助者は含みません)。
2023年6月に開催された米国のビール学会であるThe American Society of Brewing Chemists (ASBC)(※1)2023年度年次大会にて、ホップの香りに着目した加工方法、活用方法や、サステナビリティに貢献できる大麦育種に関する学会発表を合計4件、また、10月に開催されたMaster Brewers Association of the Americas (MBAA)(※2)の年次大会でも、ホップ産地の違いがホップやビールの香気成分・香味に及ぼす影響(ホップのテロワール)、ビールへのコリアンダーシードの活用、さらにはビールの口当たりの新たな評価方法に関する3件の発表を行いました。その発表の件数、テーマの広範さで、ビール研究分野では、引き続き世界をリードし国際的にも高評価を得ております。
2023年4月、5月に限定発売された「サッポロ クラシック 春の薫り」、「サッポロ クラシック 夏の爽快」には本年のASBC年次大会で発表されたホップ加工技術のうち、サッポロビール社が独自開発した熟成ホップの技術(※3)が活用されました。これは、ホップを熟成(常温、長期間の保存)させた時に苦味成分が酸化で分解されて増える「分岐鎖脂肪酸(BCFA)」と言われる成分を隠し味として使うことで、香り付けに用いているホップの香りを強めることができるという技術です。また、米国を中心にクラフトビールが発展を遂げる中、米国醸造家の間で人気を博したサッポロビール社開発品種「ソラチエース」の香り成分に関する研究成果でも、食品化学分野で権威あるアメリカの学会誌に査読付き論文を発表しました(※4)。
また、サッポロビール社が開発したLOXレス大麦品種(※5)「CDC PlatinumStar」「CDC Goldstar」「きたのほし(商標名)」はカナダ及び北海道で協働契約栽培により生産されており、「旨さ長持ち麦芽」として「サッポロ生ビール黒ラベル」等の同社商品で採用しております。また、豪州においても、新たに開発したLOXレス大麦品種の普及を計画しています。
サステナビリティ視点の研究では、「短日製麦を可能にする大麦のパーリング(精麦)加工技術」について2023年3月に開催された日本農芸化学会2023年度大会(※6)で、「短日製麦の可能な大麦の育種」について上記の米国ビール学会ASBCにて2023年6月に発表しました。気候変動への対応策として、これらの研究成果も活用し、「気候変動に適応するための大麦・ホップの新品種を開発し、2035年までに国内で実用化する」ことで、持続可能な原料調達に貢献することを目指してまいります。
これらの研究成果を商品技術開発に応用し、これからもビールテイスト飲料のさらなる魅力を引き出すことで、多様なビールの楽しみ方を提案してまいります。また、品質保証研究では、これまで以上にお客様の安全・安心志向や健康意識に応えるため、原料・製品の安全性分析及びそれを支える分析新技術の研究に継続して取り組んでまいります。
「R&D企画推進部」では、経営・マーケティング・研究開発が三位一体の関係を形成できるような仕組みづくりや研究員のキャリアステージに合わせたきめ細かな研修の立案、実施などの人財育成活動等を行っております。また、サッポロビール社のR&D活動の全体像が一目でわかるコア技術マップを作成し、ホームページに掲載しました(※7)。これは研究方針策定や、ステークホルダーへの情報発信、採用活動等に寄与できるものと考えております。
※1 The American Society of Brewing Chemists (ASBC)は、1934年に設立された米国におけるビール醸造化学分野の学会です。2023年の年次大会は6月4日~6日(会場:ペンシルヴァニア州ピッツバーグ)。
The American Society of Brewing Chemistsホームページ:https://www.asbcnet.org/Pages/default.aspx
※2 Master Brewers Association of the Americas (MBAA)は、1887年に設立された米国におけるビール醸造、製麦、関連技術に関わる総合的な学会です。2023年の年次大会は10月6日~8日(会場:ワシントン州シアトル)。
Master Brewers Association of the Americasホームページ:https://www.mbaa.com/Pages/default.aspx
※3 サッポロビールが独自開発した熟成ホップの技術を本年の「サッポロ クラシック 夏の爽快」に活用。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002302.000012361.html
※4 掲載誌のJournal of Agricultural and Food Chemistryはアメリカ化学会(American Chemical Society)の発行する食品化学分野の学会誌(ソラチエース研究の掲載論文:https://doi.org/10.1021/acs.jafc.3c04740)。
※5 ビールの風味を劣化させる成分(LOX-1<ロックスワン>:脂質酸化酵素)を持たない大麦。
※6 「日本農芸化学会」は、1924年に設立されたバイオサイエンス・バイオテクノロジーを中心とする多彩な領域の研究者、技術者、学生、団体等によって構成される学術団体であり、国内の大学・研究所・企業などに所属する多くの研究者によって構成・運営されている。2023年度大会は3月14日~17日(会場:広島市・広島大学・オンライン開催)。(公社)日本農芸化学会ホームページ:https://www.jsbba.or.jp/
※7 サッポロビールのコア技術マップ。https://www.sapporoholdings.jp/research/topics/sb_core_technology/
2.商品開発について
酒類の商品開発については、2020年に策定されたサッポロビール社の経営ビジョンのもと「お酒と人との未来を創る」商品をお届けすべく活動を行ってまいりました。
「サッポロ生ビール黒ラベル」は、2023年12月製造分より順次リニューアルを実施しております。生ビールのおいしさを追求するべく、製造工程の改善を積み重ね「味や香りを鮮明に保つクリーミーな泡」に磨きをかけパッケージデザインと合わせてクオリティアップを行い、お客様の満足度向上に取り組みました。
ヱビスブランドでは、これまでの概念にとらわれない新たなビールのおいしさや楽しさに挑戦していく新ライン「ヱビス「CREATIVE BREW」をたちあげ、「ヱビス ニューオリジン」「ヱビス オランジェ」といった個性的な限定商品を展開、歴史を持つヱビスだからこそできる、ビールの多様なおいしさと楽しみ方を提案しました。
「ヱビスビール」のホップと「サッポロ生ビール黒ラベル」の麦芽を一部使用し、サッポロビール社の技術と信念をつぎ込んだ「サッポロ GOLD STAR」(発泡酒②)は、2023年12月製造分より麦の味わいをアップさせ、さらに力強く飲み飽きないうまさに磨きをかけるリニューアルを実施しております。また2023年10月には日本初(※1)、糖質・プリン体70%オフの生ビール「サッポロ生ビール ナナマル」を発売するなど新たな取り組みも行ってまいりました。
また、お客様との共創によるビールづくりを展開する「HOPPIN' GARAGE」は、定期的に新作ビールが届く会員制サービスを2021年4月に開始して以来、多くの魅力的な方々と当社の醸造技術を掛け合わせた共創を行い、個性豊かなビールを皆さまにお届けしてきました。本年はファッションビルなどでのPop-Upストアの展開を通じて、より多くの人に商品を手に取っていただく機会を設けるとともに、ECストアのリニューアルを行うことで、ストア会員数を倍増させ、売上も昨対比で114%まで成長しました。
RTD(※2)では、主力ブランドである「濃いめのレモンサワー」「男梅サワー」のお客様支持が拡大しました。また、2023年新商品として発売した「ニッポンのシン・レモンサワー」「クラフトスパイスソーダ」が好調に推移し、RTD事業としては、3年連続最高売上の1,411万ケース(※3)を販売しました。
酒類事業の研究開発費の金額は15億円です。
※1 糖質・プリン体2つのオフを訴求する日本初のビール(Mintel GNPDを用いた当社調べ)
※2 RTD : Ready To Drinkの略。購入後そのまま飲める、缶チューハイ等のアルコール飲料
※3 250ml×24本換算
[食品飲料事業]
1.研究開発について
「おいしさを探す」一環として、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社が、レモンの摂取による健康状態への効果を調査する研究を、国産レモンの産地である広島県の大崎上島町にて、5年間にわたって地元自治体や大学と協働して進めました。同地では、国産レモンの省力化栽培・供給拡大を念頭に、ICT(情報通信技術)を活用して天候に応じて自動で最適な肥料や水やりを行うレモン栽培、休耕田のレモン栽培への活用等の研究開発を継続しております。また、アルビレックス新潟のU-18の選手を対象として、レモンと牛乳の摂取が骨の健康維持に及ぼす影響についての食育活動の試験を進めました。
日本食品科学工学会第70回大会で「レモン果汁摂取による唾液中のオキシトシンと心理状態への影響」「レモン果汁のマリネが牛肉の軟化およびin vitro胃消化性に及ぼす影響」および日本官能評価学会2023年大会で「レモンの嗜好性および心理的効果に関する研究」を発表しました。
2.商品開発について
ポッカサッポロフード&ビバレッジ社の経営ビジョンにある「おいしい以上の価値」のもと開発活動を行いました。
レモンでは、「キレートレモン」ブランドにて、「マスクを外した自分にも自信をもちたい」というニーズに着目し、レモン1個分の果汁(※1)、ビタミンC1,350mg、コラーゲン1,000mg、ヒアルロン酸10mgが入った“身だしなみケアドリンク”である「キレートレモンBECARE」と、レモンに含まれるクエン酸がカルシウムを溶けやすい形に変える「キレート作用」の研究を活かした商品として、1本で1日に不足しているカルシウムをおいしく補給できる、栄養機能食品「キレートレモンサプリカルシウム」を発売しました。また、株式会社ヤクルト本社との協業商品として、酸度が高く発酵させることが難しいレモン果汁を当社独自開発の製法で発酵させて作った「レモンビネガー」を用いた「発酵果実みかん&レモン」を数量限定で発売しました。
スープでは、世の中の健康意識の高まりに応えたより健康感のあるスープをお届けするため、健康系オイルの中でも注目されているMCTオイル(中鎖脂肪酸油)が手軽に摂取できる「MCT SOUP完熟トマトポタージュ」「MCT SOUPほうれん草ポタージュ」を新発売しました。また、主力ブランド「じっくりコトコト」シリーズにおいては、フラッグシップとなる箱入りスープを8年ぶりにフルリニューアルしました。リニューアルでは、捨てられていた玉ねぎやキャベツの芯、規格外の人参など野菜の端材も一部活用した“特製野菜ブイヨン”や、特製野菜ブイヨンに真鯛の頭骨や中骨を加えた“特製野菜フィッシュブイヨン”を原料に採用し“素材のおいしさをまるごと楽しめる濃厚ポタージュ”として刷新しました。
植物性食品では、「アーモンド・ブリーズ」ブランドにてアーモンドミルクをベースにオーツミルクやココナッツミルクをブレンドした無糖タイプで1日分のビタミンEや1食分のカルシウムが手軽に摂れる「アーモンドミルク&オーツミルク無糖 200ml」と「アーモンドミルク&ココナッツミルク無糖 200ml」を上市しました。また、エシカル消費を意識した岩手県産雑穀の3種(たかきび・はとむぎ・いなきび)をブレンドし、穀物の香ばしさを活かしながら、甘味料を使わずすっきりした甘さで飲みやすく仕上げた「雑穀ミルク~milletmilk~」を上市しました。
飲料では、「ポッカコーヒー」ブランドより、深煎り豆を使用し、エスプレッソの香りが特徴でコーヒーのほろ苦さとコクをバランス良く仕上げた「ポッカコーヒーカフェラテ 260g ボトル缶」を発売しました。また茶の茎部分を使った棒茶を職人が伝統的な焙煎方法で仕上げた金沢発祥の「加賀棒ほうじ茶」から、環境負荷の軽減と、お客様のラベルを剥がす手間を削減することができる商品として、シュリンクラベルを巻かない「加賀棒ほうじ茶ラベルレス 525ml PET」を追加発売し、環境へのやさしさに配慮しました。
神州一味噌社では主力ブランドである「み子ちゃん印」が発売60周年を迎え、3月よりデザインをリニューアルしました。今後とも更にお客様から愛されるブランドへと育ててまいります。即席みそ汁では「おいしいね‼ かにだし汁カップ」「おいしいね‼ 風味豊かなかにだし汁 3食」を9月より発売し、好調なスタートを切っております。フードロス削減に向けた取り組みとして2023年9月に生みそ・即席みそ汁合わせて9品の賞味期限延長を実施しました。今後も他商品での展開を継続してまいります。
食品飲料事業の研究開発費の金額は10億円です。
※1 レモン1個分=レモン果汁約30mlとして、1本当り1個分以上の果汁が含まれています。
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