コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 【東証プライム:2579】「食品業」 へ投稿
企業概要
本項では、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに重大な影響を及ぼす可能性があると特定した主要なリスクを記載しております。
なお、本項に記載した将来の事象や想定に関する事項は、当期末現在において当社グループが判断したものです。
(1)当社のリスクマネジメント体制
当社グループでは、収益性の高い成長を実現するため、リスクと機会の管理、社員と資産の保護、危機対応能力の強化および特定のリスクに対するリスク移転メカニズムとしての保険などを統合した、包括的なビジネスレジリエンスプログラムを導入しています。
このプログラムには、リスク管理責任者(HRM)が主導し、リスクマネジメントシニアグループ(RMSG)が行うエンタープライズリスクマネジメント(ERM)、危機対応、セキュリティ、事業継続計画、保険戦略が含まれます。当社のERMのPDCAフレームワークは、COSOとISO31000に基づいており、リスクに基づいた適切な意思決定を促進することで機会を活用し、予測可能なリスクの特定と対応能力を強化し、以て、収益性の高い成長を実現するプロセスを提供しています。HRMは、将来起こり得るリスクと機会についてすべての部門に関わる広い視野を保ち、定期的な報告を通じて、経営陣と取締役会に対してリスクが可視化されるようにしています。RMSGは、各部門のリスクオーナーと緊密に協力し、ビジネスリスクの評価と管理に取り組んでいます。
取締役会は、リスク管理と内部統制システムに対する説明責任を有し、グループのリスク選好を定め、監査等委員会を通じてその有効性を見直しています。当期においては、取締役会に対して、当社グループの戦略目標達成に関わる能力に影響を及ぼし得るリスクについての情報を提供し、重要なリスクについて積極的に検討しました。
当期も引き続き経営陣のERMプロセスへの関与を強化させることに注力しました。リスクマネジメントフォーラムを四半期ごとに開催して各部門のシニアリーダーとリスクの見直しを行うとともに、経営陣とのリスクインタビューを実施しました。また、コカ・コーラシステムの関係者と連携し、コカ・コーラシステム全体に影響を及ぼす主要なリスクを考慮に入れつつ、リスク管理プロセスを強化する体制を築きました。
特定したリスクは影響度と発生可能性の観点から評価し、またビジネスに対する主要なリスクと機会は経営陣による議論と評価を通じて決定しました。経営陣のリーダーシップの下、各リスクにそれぞれリスクオーナーが割り当てられ、これらのリスクに対処するために取るべき行動が決められています。
ERMには次のようなプロセスが含まれています。すなわち、当社の事業戦略、目的および原則との整合、戦略的な方向性、倫理および価値観に関する当社グループの声明への統合、事業計画サイクルへの統合、リスクプロファイルの変更または機会を創出する要因となる可能性があるような社内外の環境についての継続的な監視、全部門でのリスク管理に関する知識を高め、十分な知識に基づいてリスクをとれるリーダーを育成するためのトレーニング、ならびに、適切な財政的保護を確保するために購入する保険の種類と金額の年次評価を行っています。
また、業務計画に関わるリスクを特定するため、経営陣とともに毎月行うリスクに関わる議論を毎月行うとともに、より広範なリスクと機会を特定するためのセッションも毎年行っています。これらの定期的な議論と正式な循環プロセスにより、最新のリスクの傾向を把握し、主要なリスクを見直す機会を提供しています。当社グループの成長戦略を実現するために、主要なリスクへの対応を各機能の年間事業計画に織り込んでいます。ERMプロセスは、グローバルな基準でのベストプラクティスに対する内部監査の対象となっており、監査責任者は必要に応じて改善の提案を行っています。
(2)重要リスク
当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに重要な影響を及ぼす可能性のある主要リスクは、下表のとおりです。当期は、他企業でもサイバー攻撃の被害が生じておりましたが、ITおよびサイバーセキュリティに関わるリスクを認識しています。また、気候変動に伴うリスクに引き続き注目しています。記載されているリスクは必ずしも事業に関わるすべてのリスクを網羅しているわけではなく、将来的に、新たな予期せぬリスクや現在は重要性が低いまたは業務上の優先度が低いと考えられるその他のリスクにより影響を受ける可能性があります。
リスクカテゴリー | 説明と潜在的な影響 | 主な緩和策 |
サイバーセキュリティとシステムの可用性 | 業務停止、システム障害やサイバーインシデントによる情報漏洩の発生 ・消費者や顧客からの信頼失墜 ・財務状況の悪化 | ・システム障害による損傷を軽減するための対策 ・サイバー攻撃の予防的な脅威の特定とシミュレーションテストによるシステムセキュリティの向上と強化 ・情報管理に関する法令の遵守 ・情報セキュリティ関連社内規程の確立と社内教育 |
コモディティコストの増加 | 為替レートの変動、原材料不足、商品価格の変動による調達コストの大幅な増加による、収益性への影響 ・コストベース増加 ・製品供給量の低下 ・製品ポートフォリオの制限 | ・デリバティブ取引の利用により、為替レートや商品価格の変動による影響を軽減 ・コカ・コーラシステム内での共同調達により低コストで原材料を調達 |
健康と安全 | 安全に関わるコンプライアンスや責任感および意識の欠如、メンタルヘルス問題、老朽化した機器の使用などによる深刻な健康上の労働問題の発生 ・死亡または重傷 ・評判の低下 ・起訴および/または罰金 | ・ISO45001認証/内部監査戦略の継続 ・メンタルヘルス調査の継続実施 ・さまざまな安全対策の実施 ・意識向上のための教育とトレーニング ・コカ・コーラシステムのベストプラクティスを活用したプログラム |
人材(確保と維持) | 業績不振や激しい雇用環境により、十分な人材の確保、維持、育成および労働組合との建設的な関係構築が困難 ・事業活動の停滞または停止 ・サプライチェーン業務の停滞または停止 ・成長計画の未達 | ・戦略的な人材育成計画、新しい給与体系の整備 ・多様な人材の採用と育成の実施(海外を含む) ・工場の無人化、オンライン化、配送業務のアウトソーシング化 ・労働環境の改善による社員満足度の向上 ・経営陣と社員のコミュニケーションの強化 |
消費者マインドセットの変化 | 健康意識や砂糖消費への懸念の高まり、または価格設定によって引き起こされる消費者の嗜好の変化 ・消費者基盤の獲得または喪失 ・消費者からの信頼獲得または喪失 ・当社グループの事業に不利益を及ぼす課税 | ・製品開発とポートフォリオ拡充に注力 ・低カロリー・無カロリー飲料の強化 ・パッケージサイズの多様化 ・消費者参加型プログラムによる健康的なライフスタイルの推進 |
自然災害 | 地震や洪水などによる社員の死亡・負傷、生産・物流・販売業務のための施設の損傷 ・事業活動の停滞または停止 ・サプライチェーン業務の停滞または停止 ・販売機会の減少 ・復元コストの発生 | ・継続性計画(BCP)と体系的かつ合理的な対応を可能とする危機対応能力の強化 ・定期的な危機・災害対応訓練とシミュレーションによる対応能力の強化 ・物流拠点の被災に備えた代替拠点の整備と輸送能力の確保 ・地震保険の付保 |
営業および競争環境の変化 | 市場環境の変化に効果的かつ効率的な対応が困難 ・消費者基盤の獲得または喪失 ・消費者からの信頼の獲得または喪失 ・販売利益の減少 ・販売可能なポートフォリオの減少 | ・製品ポートフォリオの強化と生産性の向上により、小売業者のニーズに合った製品を提供 ・営業活動に関わるコカ・コーラシステム共通プロセスの適切な推進による継続的な業務品質の向上 ・インターネット通信販売の急増に対応しオンラインチャネルを拡大 |
リスクカテゴリー | 説明と潜在的な影響 | 主な緩和策 |
成長戦略 | 事業統合、設備投資、製品開発等の競争優位性の向上や事業拡大に向けた施策実施が困難 ・減損損失による財務状況の悪化 ・株主からの信頼喪失 | ・さまざまな状況に柔軟かつ機動的に対応できる強固な体制の構築 ・複数のシナリオを考慮した事業統合戦略の策定 ・取締役会および執行役員による監督 |
持続可能性 | 気候変動リスク等に関わるステークホルダーの持続可能性への意識変化に対応できない、またはステークホルダーや規制の要件に沿った持続可能性とESGの適切な報告が困難 ・ステークホルダーの信頼と評判の低下 ・気候変動分野に関わる反対活動の増加 ・財務上の影響、すなわち気候変動に対する顧客の期待を満たせず、他社製品を選択されることによる売上損失 | ・CSV目標の達成により持続可能な社会の発展に貢献 ・リサイクルPET樹脂の使用率向上、パッケージの軽量化、使用済みPETボトルの回収など、「廃棄物ゼロ社会」への取り組みを実施 ・ESG、TCFDおよびTNFDの要件に沿った積極的対応 |
品質と食品の安全性 | 製品関連の品質および食品安全に関する事故 ・消費者からの信頼喪失 ・製品回収や不良品の大量処理に伴う収益悪化 ・ペナルティによる販売機会の損失 | ・サプライヤーの品質監査と品質認証 ・製造から販売までの全工程における品質管理の意識 ・消費者/顧客からのご指摘にタイムリーに対応をするための品質管理・報告態勢の強化 ・品質/食品安全問題への迅速かつ効率的な対応を可能とする原因特定および対応策策定プログラムの強化 |
コンプライアンスと倫理 | 法令、社内規則、倫理行動規範に対する違反 ・消費者・顧客からの信頼喪失 ・ブランドと評判の悪化 ・罰則・罰金 ・不正による経済的損失 | ・経営陣主導の行動規範に関する継続的なコミュニケーション実施 ・倫理・コンプライアンス委員会の定期的な開催 ・業務プロセスや組織構造、ITシステムの再構築による不正機会の低減 |
製造、物流、インフラ | 製造・物流業務の問題や天候・消費行動の変化などにより安定供給が阻害 ・販売量と収益の減少 ・顧客からの信頼を失う | ・市場環境の変化に対応する柔軟な供給体制の構築 ・繁忙期の需要増加に、より容易に対応できるようにするインフラ(製造ライン等)への投資 ・システム強化によるタイムリーな在庫状況の共有 |
気候変動 | 気候変動により水や農産物などの原材料が不足 ・原料調達量と製品供給量の低下 ・製造コストの増加 ・製品ポートフォリオの制限 ・当社グループの事業に不利益を及ぼす課税 | ・持続可能な調達の強化 ・ステークホルダーとの関係性強化 ・代替サプライヤーの調達、パフォーマンスデータの活用によるサプライヤーの選定と経営の強化 ・調達困難な原材料の購入量を調整、必要に応じて他の原材料へのシフト |
フランチャイズ関係 | 契約/関係の条件および更新、価格の集中、製品プロモーションのサポートに関して、商標所有者としてのザ コカ・コーラ カンパニー(TCCC)および日本コカ・コーラ(CCJC)への依存度が高いこと、または関係の変化 ・商標権の使用停止、製品開発力およびブランド力の低下による売上の減少 ・原液価格上昇によるコスト増加 ・販売サポートが減少した場合の販売促進費の増加 | ・TCCCおよびCCJCとの協力関係の維持・向上 |
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